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076 第二次ブーストン王国戦

第二回会議の後はブーストン王国との戦争まで雑用をこなす事にした、とりあえず最初は鉄鉱石の採取、下流域に作る橋用だ。

本来は土手の整備をしないと作らないものだが、今回は橋をかける部分の土手だけ整備して作る事にする。

そうしなければ対岸の土手の整備の時に毎日ゲートで作業員を送り迎えするか、整備が済むまで作業員を危険な場所で野宿させる事になるからだ。


鉄鉱石の採取が終わると今度は一旦レベンド王国の王都タペヤラに飛ぶ、レベンド王国のブーストン王国との国境に近い場所に国営の銅鉱山があるからだ。

ヨネ子達はレベンド王国と交渉して硬貨用の銅を買い付けに来たのだ。


銅の買い付けは普通の商談だが、買い付けに来た相手が『白金神龍』だったため責任者のトップである財務大臣が交渉する事になった。


レベンド王国の財務大臣はわりと優秀でタフネゴシエーターと呼ぶにふさわしい相手だ、しかし駆け引きではヨネ子の方に分がある。

結果、金1キログラムに付き11.5トンの銅を買い付ける事が出来た、この世界の相場は金は銅の1万倍くらいの値段が妥当なので安く手に入れたと言えるだろう。


支払い方法は交渉通り金の現物にした、ドラゴニアは通貨がマニでは無いのでドルでの支払いより鉱山から採掘された金の方が良いだろうとの判断からだが、もちろん金で払う理由は説明したのでレベンド王国側も納得してくれたからだ。


交渉が成立するとヨネ子は即座に金のインゴットを1つ財務大臣に渡し受け取り証の発行を受けた。

金のインゴットは地球のインゴットを参考に作らせた、重さは丁度1キログラム、ただ現在の地球の純金の純度は99.99%なのに対しこの世界の技術では99.70%がせいぜいなのは仕方ないとしておこう。


だが銅の受け取りは1.5トンを直ぐに受け取り残りは少し遅くなると告げた、ヨネ子としてはブーストン王国との戦争後に馬車を使って運ぶつもりだからだ。

馬車を使う場合はどうしてもブーストン王国を経由しなければレベンド王国に入国出来ないので戦争が終わるまで動けないという事情があるので仕方ない。


今回は金のインゴット1つ分だけだが、鉱山の採掘が進めばさらに追加で購入する予定ではある。


交渉が成立した後はレベンド王国の官吏と共に銅山へと向かった、もちろん直ぐに受け取るとした銅1.5トンを持ち帰るためだ。

官吏が一緒なのは道案内のためと銅山への売買の通知のためだ、国営なので勝手に銅山に行っても国からの命令書が無ければ渡してもらえない。


王都のタペヤラから銅山までは馬車で5日もかかった、ヨネ子達『白金神龍』にとっては退屈な時間だったがそれは仕方ないだろう。


ヨネ子達は銅を受け取るとそのままアルケオンに戻った、そして1ドル、5セント、1セントの銅貨を造らせる。

デザインは既に決めていて鋳型も作っているので試作を行う、鋳造なので材料さえ手に入れば直ぐに大量生産が出来るようにしておくためだ。


硬貨の生産の目処が立つとハンターギルドに向かった、戦争中には騎士や魔法師が居なくなるのでその穴埋めのためのハンターを雇うためだ。

審査から1ヶ月半ほど経っているので気の早いハンターは既に来ている、全部で34パーティーとソロ8人、総勢151人だ。

護衛や警備を担っていた騎士や兵士は約100人ほどだったので十分な護衛が雇える。


開戦予定日まで10日となった日アルケオンでは戦争参加者が集まっていた、前回は騎士と魔法師だけだったのでゲートで向かったが、今回は兵士もいるため国境まで徒歩で移動するのだ。


ドラゴニアの行軍は他国の2倍くらい早い、それは輜重隊が居ないおかげだ、食料や予備武器などは全て魔法師団の異次元収納で運ぶからに他ならない。

その代わりに食事の準備は自分たちでする事になっている、騎士や魔法師は訓練時に特訓をしているので問題ないが兵士達には困る者も出ている、これから覚えてくれることを期待するしかない。


結果国境までは5日で着いた、この後は『白金神龍』は見守るだけ、今回の総指揮官は魔法師団長のリーグが務める。


リーグは野営の指示や作戦会議、スクレとの情報のやり取りなどそつなくこなして行っている。


開戦予定日の前日に敵が予定通りやってきた、そしておよそ10キロの距離を保持して野営を始める、敵の諜報員を捕まえずに泳がせていたので視認出来るところまで来る前に野営を始めたのだ。


翌日朝、リーグは全軍を配置に着かせた、10キロの距離が有れば敵軍がやって来るのは昼頃になるとは言え緊張が弛緩した状態で迎え撃つのは油断に繋がるため朝から万全の体制を敷いた。


そして昼前、ブーストン軍の姿を視認した、魔法師団は全員上空20メートルほどで待機しているからまだそうでも無いが、騎士団や兵士たちにとっては12000人の敵軍は長大な壁のように感じられた。

ただそれに臆するものは騎士の中には一人もいない、残念ながら兵士の中には数人いたが・・・。


それでもそれも開戦までだ、開戦と同時に魔法師団が打ち込む魔法により壁は崩壊するので本来の力を取り戻すだろう。


敵軍との距離が500メートルほどまで詰まった時、リーグの命令で3人の魔法師が開戦の狼煙を上げた。

3人が威力を弱めた「カタストロフ」という魔法を中央、右翼、左翼にそれぞれ放ったのだ。

「カタストロフ」とは水蒸気爆発を利用した爆破攻撃だ、アースウォールで石油コンビナートのオイルタンクのような容器を作りそこに水を満たしてその中でマグマを発生させる、アースウォールの厚さを調整する事で爆発に指向性を持たせられるので開戦の一撃には重宝する魔法だ。


これによりブーストン軍は出鼻を挫かれたと同時に約半数の兵士を無力化された、特にブーストン軍にも先制で魔法攻撃をするつもりの魔法使いが20人参戦していたが圧倒的な力の差を見て早々に魔法での戦闘を諦めた。


開戦の一撃の後はリーグは待機の指示を出していた、魔法一発で逃げ出してくれるならそれで良いと思ったのだ、敵軍との距離が500メートルでは騎士はともかく兵士は武器や防具を捨てた敵兵に武装したまま追いつくなど不可能だからだ。


「うろたえるな!全軍突撃ー!」


敵指揮官は魔法に臆する事なく突撃を命じた、半数が倒されたとは言えまだ自軍の数は約6000人もいる、ドラゴニアの方は総数で170人程なので単純な兵士数は16・17倍になるのだから数で押し切れると思っても仕方ないだろう。


リーグの期待は裏切られたわけだがそれだけにやる事は決まっている、迎撃するのみだ。


「兵士は中央から突撃、第一騎士団は右翼、第二騎士団は左翼から展開、敵軍を挟みこめ」


リーグの指示が飛ぶ、徒士のため足が遅いが人数の多い兵士が中央、騎馬のため足の速い騎士が右翼と左翼から突撃すれば当然両翼から敵を挟み込む陣形になる。


本来多数の軍勢で少数の軍勢を迎え撃つ「鶴翼の陣」を少数の軍勢側がやっているようなものだ、戦の常道から言えば愚作に他ならない、が、今回ばかりはそうはならない。


単純に戦闘力で考えれば敵兵は多いとは言え職業軍人では無い、ドラゴニア側も兵士は職業軍人では無いが戦争に向け専門に訓練を受けてきているので約3倍ほどの力の差がある、これが騎士達だと10倍20倍どころの差では無い。

その上敵側の負傷者は即戦線離脱だがドラゴニア側はしばらく戦線離脱するだけで回復して戻ってくる。

さらに騎士達が逆三角型に展開する事で数で包み込まれることを回避している、この差が少数での鶴翼の陣を可能たらしめているのだ。


とはいえやはり数の差というのは厄介なもので騎士団のさらに外側から回り込もうとする一団もいた、だがリーグ達はそのためにいるのだ。

その一団にはリーグの両脇にいた魔法師達が対処に向かい軍団事「スプライト」の魔法で沈められていった。

「スプライト」とは雷の一種「高高度雷放電」を地上で再現したものだ、広範囲高威力の雷魔法なので混戦状態では使えないが、騎士団から離れて迂回する一団で有ればフレンドリーファイアを気にせず打てるので効果は抜群だ。


既に騎士達を回り込もうとした部隊が全滅したところで勝敗は決していたがブーストン側の指揮官はなおも抵抗を続けていた、しかし夕方が近くなり自軍の兵士も戦闘可能なものが1割近くまで減ったところでようやく諦めて撤退指示を出した。


「全軍撤退、撤退ーー!」


もはや殿軍を置くことも出来ないほどボロボロにされている、なので今更撤退と言われても全滅どころか殲滅されるのがオチだった。


しかしリーグはそこまではしない、だが素直に見逃すのも「ドラゴニア軍は甘い」という間違った認識を与えるかもしれないので不味い、そこで逃げるブーストン軍には最後にリーグとリーアの2人で「トルネードブレイク」を放ってダメ押しとした。


「トルネードブレイク」は回転方向が違う2つのトルネードをぶつけて対消滅させることで周りに無数の風の刃を撒き散らす魔法だ、規模は大きいが当たりどころが悪く無い限り即死はしない魔法なので相手の弱体化を狙うには最適な魔法だ。

因みにリーグもリーアも単独でも使えるがより広範囲を対象にしたい今回のような場合は2人で協力して発動する事も出来る。


ブーストン軍の指揮官は上手く逃げていったようだ、しかし戦場には1万人近い負傷者が放置されている。

元々指揮官や下士官は貴族だが兵士は平民だ、なのでいい待遇は受けていない上に負け戦の時などは当然のように放置されている。


戦闘終了後、リーグがヨネ子に意見を求めてきた。


「マーガレット様。この後は負傷兵の治療に当たりたいと思いますがお許し願えますでしょうか」


リーグの言う負傷兵とはブーストン軍の兵士の事だ、ドラゴニア側は負傷した端から治療していたので今回も死者負傷者は0である。


「良いわよ、生きて帰ってくれた方がうちの軍の強さを広めてくれるから都合が良いしね」


「はっ、ありがとうございます」


「そうそう、治療は重傷者だけにしなさい。軽傷者は騎士団に言って集めるだけで良いわ」


「軽傷者は治療しないのですか?」


「いいえ、数が多そうだから軽傷者は私が引き受けるわ」


「わかりました、では騎士団に伝えます」


リーグはそう言うとディーンとアーネストの元に行き軽傷者を集めるように言った、そして自身は魔法師団員を集め重傷者を手分けして治療していく事にした。


軽傷者は数が多いが騎士団70人が総力を上げて集めたので暗くなる前には集め終わった、ざっと見概算1500人ほどだ。

軽傷者とは言っても単純な切り傷だが深くて出血量が多いなど自立歩行が困難な者たちだ、打撲だけや傷が多くても自立歩行出来るものは既に逃げ出している。


ヨネ子はそれらの負傷者を「エリアヒール」により1度に治療した。

本来治療は傷に合わせて行うものだが、軽傷なら傷をどうこうせず自然治癒力を向上させるだけでも治療できる、つまり「エリアヒール」とは自然治癒力を向上させるイメージ1つで多勢の傷を癒す魔法なのだ、とは言えリーグ達では自分の周りの広くても10メートル四方ほどの広さにいる者たちを治療するのが限界なのだが。


魔法師団が重傷者の治療をし、騎士団が軽傷者を集めている間兵士たちが遊んでいるわけにもいかない、なので兵士たちは戦場跡に転がる死体を集める仕事をしていた。


死体をこのまま放置していてはゾンビ化するし疫病の原因になるしで良いことはない、だからと言ってブーストン王国の者や死者の親族が迎えに来ることも考えづらい、もし来たとしてもとっくにゾンビ化してあちこちで腐臭と腐肉を撒き散らせている頃にしか到着しないだろうからだ。


集められた死体は概算2000人、この世界的には多い戦死者数となる、最初の「カタストロフ」の影響が大きいせいだろう。

ただし、この世界では地球の中世ヨーロッパや日本の戦国時代同様小さな傷でも戦後に破傷風などの感染症で死亡したり後遺症が残り以後の生活に支障が出るものが続出するが、今回は負傷者を全員治療しているので最終的な戦争の死亡率としてはそう高くは無いとは言えるかもしれない。


この死体集めは暗くなるまでかかった、その死体はセラフィムが魔法で焼いた。


魔法師団員による重傷者の治療は夜中近くまでかかった、魔法師団員は全員4つ以上の魔法の並列起動が出来る、なので暗くなってからは自分で火魔法を使い灯りを確保しながら治療を続けていた。


治療を受けた敵軍の兵士たちは自分達を傷つけた相手だとしても感謝していた、徴兵された平民とは言え戦争である以上殺されるか負傷して置き去りにされても仕方ないとわかっているからだ。


敵軍兵士は治療が終わっても戦場跡を離れず他の兵士の治療を見ていた、そして全員の治療が終わるとその場に集まり見張りを立て休んだ。


これはもちろん知らない土地で夜中に歩き回るのが危険だからだが、敵軍とは言え傷を治療してくれた者たちが襲ってくるわけはないと言う妙な信頼を持ったせいでもある。


翌朝、ドラゴニア側が朝食の準備をしている頃、ブーストン軍の兵士たちはそれぞれ帰途に付いた。


この後帰郷した兵士達と、生き残ることが出来た傭兵を受けたハンター達によりドラゴニア軍の精強さがブーストン王国内に広がっていくことになった。


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