表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/208

006 ボレアース

予定通り魔物の素材を手に入れたヨネ子は早速エレンと共に氷河人の地へと向かう、もちろんエレンのゲートを使って。


氷河人の地は大陸の北方に広がる雪と氷に覆われた広大な氷河の中に有る7つの町を指す。

人間の踏み込まない氷河の奥地には火山の地熱で温められて雪の積もらない地域が7つある、そこに町を作り周りの土の土地で農業をすることにより氷河の中だけで生活が出来るようになっている。

そのため人間とは隔絶して生活出来ていたのだが、ドワーフはこの地にしかいない為人間はドワーフを絶滅した種族と今も勘違いしている。

因みに氷河人には人間もいる。


やって来たのはボレアースと言う町、ここはかつて旧『デザートイーグル』が訪れて全員の武器と魔杖を作った場所だ。

エレンにはそれ以上にマンモスの魔物をオークションにかけた町としての記憶の方が鮮明に思い出せる。


氷河人の町にもハンターギルドはあるしハンターも居る、ただしこちらは呼び方がハンターは同じだがギルド名は素材ギルドと言う。


「すいませんギルマスのガスパールさんは居ますか?」


この地でのマンモスの魔物のオークションはギルド主催で行った、そのため旧『デザートイーグル』は全員ギルドマスターのガスパールとは面識がある、なのでエレンは迷わずギルドマスターを呼んでもらった。


「失礼ですが、どなたでしょうか?」


素材ギルドの受付嬢はエレンの事を覚えていなかったので素性を聞いて来た、尤も旧『デザートイーグル』全員が揃っていれば思い出したかもしれないがヨネ子と2人では気が付かないのも仕方ない。


「『デザートイーグル』のエレンが来たと言ってもらえればわかります」


「えっ?『デザートイーグル』ですって?・・・そ、そう言えば見たことがあるような。すいません直ぐに呼んで参ります」


受付嬢は名前を聞いてエレンの顔をマジマジと見た、そして確かに見覚えのある顔だと思い慌ててガスパールに伝えに行った。

そして慌てて戻って来ると2人をギルドマスター室に案内した。


「久しぶりだな。それより他のメンバーはどうしたんだ?」


ガスパールは機嫌よく迎えてくれた、しかし『デザートイーグル』ではなくエレン1人だけが初対面の人間を1人だけ連れて来たことに疑問を持った。


「お久しぶりです、私は今『デザートイーグル』を抜けてこのマーガレットさんと2人で組んでいます」


「初めまして、マーガレットと言います」


エレンの説明の後自己紹介をするヨネ子、相変わらず素っ気ない。


「ああ、初めまして、ガスパールだ」


ヨネ子に合わせたわけではなかろうが、ガスパールも素っ気なく自己紹介した。


その後ソファーに座って、連れて来てくれた受付嬢が全員の紅茶を用意すると早速ガスパールが聞いて来た。


「それで、今日はどんな用事で来たんだ?」


「私達はまた武器を作ってもらおうと思いまして、それで素材を売って代金を作りたいので許可をもらえませんか?」


氷河人の町でも人間界と同様に素材が売れるのはハンターだけだ、しかし氷河人でも無いエレンとマーガレットがハンター登録するのは無駄な手間だ、なのでガスパールに直接許可をもらおうと考えた。


ガスパールもエレンが氷河人でない事は知っているしその連れのマーガレットが氷河人とも思えない、なので二つ返事で許可してくれた。


そして部屋の端に控えていた受付嬢に連れられ素材の買取窓口に向かった、受付嬢が一緒なのはガスパールの言葉を伝えるためだ、「ハンターでは無いが買い取りするように」と。


しかしここで問題が発生する、素材が氷河で手に入らないものばかりなので査定に時間がかかるというのだ、まあ当然だろう。

ただこれはヨネ子には想定内だ、査定が終わるまで氷河人の地で無一文と言うわけには行かない、なので素材の内価値がすぐにわかる魔石だけ先に売ることにした。


魔石には等級が存在する、黒い魔石が1等級で30〜70マニ、少し赤みのある2等級が100〜300マニ、かなり赤い3等級が500〜1500マニ、少しくすんだ赤の4等級が3000〜10000マニ、真っ赤な5等級が20000〜50000マニで取り引きされている。

ただし氷河人の地の通貨単位はダグマと言い価値としては1マニ=10ダグマくらいだ。

これ以外に赤みがかった透明の最上級という魔石もある、ドラゴンやマンモスの魔物の持つ魔石だがこれはまだ市場に出たことが無いので価格の判定が出来ない。


因みに魔石の黒は魔素、赤はマナの色だ、魔石は魔物が大気中の魔素とマナを取り込んで成長する。

そしてその中から魔素を先に使い無くなればマナを使って身体能力を向上したり魔法を使ったりしている。

そのため強い魔物ほど魔素の割合が減り赤くなるので、基本的にはSランクの魔物が5等級を、Aランクの魔物が4等級を、Bランクの魔物が3等級を、Cランクの魔物が2等級を、それ以下の魔物が1等級を持っている。

値段にばらつきががあるのも種類や年齢によって色にばらつきがあるためだ。


今回売る素材は全部でグリーンバジリスク1頭、象の魔物3頭、水牛の魔物3頭、虎の魔物6頭、コブラの魔物4頭である、なので魔石は5等級1個、4等級16個となる。


結果魔石は全部で152万ダグマで売れた、円に換算するなら約1520万円だ。


魔石以外の素材代は翌日もらうことにして宿を探しに街に繰り出した。


宿はエレンが『デザートイーグル』として来た時と同じところに決めた、名前は『熊熊亭(ユウユウテイ)』サービスに問題無かったので決め易かったからだ。


2人は荷物など無いので宿が決まると早速町の散策に出かけた、ヨネ子にとっては好奇心を掻き立てられる場所だ。


まず向かったのは当然ながら市場だ、見ず知らずの町に来たなら物価調査は最優先に行いたい。

氷河人の地は広い農地があるが開墾などが出来ないため土地は有限だ、そのため食用植物の栽培を優先しているので繊維製品が割高な印象を受ける、逆に動物や魔物は豊富なため革製品が安い。

同じ理由で野菜が高く肉類が安い印象も受ける。


この地は地熱のお陰で地表近くは暖かいが人間の背丈より上は極端に寒くなる、そのためリンゴや梨のように背の高い木に実る果物は無い。

逆にイチゴのようなベリー系の果物は地熱が安定しているお陰で二期作や三期作が出来るので豊富にあり安い。


ここでの酒はワインだけのようだ、ブドウの木の生育が良いためブドウが豊富に取れるお陰だ、そのせいもあってかそれ以外の酒を作る必然性が無かったのが理由だろう。


調味料は3種類、塩と砂糖と酢だけだ。

塩は岩塩生産を主産業とする街がありそこから手に入れている。

砂糖はサトウキビが出来ない土地なので甜菜大根から精製している、因みに人間界の方はサトウキビ由来の砂糖ばかりで甜菜大根由来の砂糖は無い。

酢もいわゆるワインビネガー1種類しかない、酢作りは酒作りと縁が深いためワイン以外の酒が無いこの地では仕方ないのかもしれない。


食品以外に目を向けると家の作りが特徴的なのに目が行く、住宅の殆どが一階は半地下になっていて二階建となっている。

これは暖房費の節約のためだ、半地下にする事で天然の床暖房と壁暖房が手に入る、このお陰で暖房用の薪が必要無くなるので森林資源の保護にも繋がる。

二階建なのは人間の背丈より上が極端に寒くなることを利用した天然の冷蔵庫として使うためだ。


その他に町を歩いていて目につくのはハンターや警備の人達が持つ武器や防具だ、こちらはヨネ子の鑑定の魔法でも詳細がわからない、理由は簡単、現代地球には存在しない素材を使っているからだ。

流石のヨネ子でも知らない素材の鑑定は出来ない、成分比率まではわかるがその成分の知識が無ければ何かはわからない。


適当に買い食いしながら一通り町を見て回ったヨネ子とエレンは家具屋に寄った、これから2人で旅をするにあたり風呂とヨネ子用のトイレを作ってもらうのだ。


エレンは『デザートイーグル』にいた時野営でも風呂に入っていた、ヨネ子の設計により風呂を持ち歩いていたからそれが出来た。

その風呂は現在『デザートイーグル』が持っている、なので自分たち用の風呂が必要になったのだ。


トイレは流一が使っていた物があるが、そこはやはりヨネ子的には人の物なので自分用のトイレを作る。


家具屋での注文が終わると、受け取りは翌日にして次に宝石屋へと向かう。

風呂は金属プレートに、トイレは指輪に亜空間の魔法陣を刻みそれぞれの亜空間に設置して持ち歩くので金属プレートと指輪を注文するのだ。


一応の予定を消化した後は宿屋で休む、後の事は翌日だ。


一夜明け素材ギルドの喧騒が収まり出す10時頃、ヨネ子とエレンは素材ギルドに向かう、もちろん前日渡した素材代の受け取りのためだ。


「すいません、素材の鑑定は終わりましたか?」


エレンが受付に質問した。


「はい、代金もこちらにご用意しております。お確かめ下さい」


受付嬢は大き目の皮袋を渡して来た、この世界の通貨は人間界も氷河人の地も硬貨しか無い、なので随分重そうだ。


代金はヨネ子とエレンの2人で数える、この世界では親しい間柄であっても金銭の受け渡しはその場で確認するのが礼儀とされているからだ。

受付嬢から渡された明細書の金額は528万ダグマ、代金もちょうど528万ダグマで間違いなかった。

人間界ならもう少し安かったようなので稀少価値分が上乗せされているのだろう。


代金を受け取ったヨネ子とエレンはこの地に来た目的を果たすべく鍛冶屋へ向かった、もちろんこの町1番の鍛冶屋であり最高の職人でもあるグレンデルが経営するグレンデル工業だ。

グレンデル工業は旧『デザートイーグル』の流一、セリーヌ、アメリア、ユリアナと全員の友人でもあるイリアという騎士の持つ武器を作った場所である。


グレンデル工業に着くと早速グレンデルを呼んでもらった、ここでも最初誰かわかってもらえなかったが『デザートイーグル』の名前を出すとすぐにグレンデルを呼んでくれた。


「お久しぶりです、グレンデルさん」


「おお、久しぶりだな。ところで他のみんなはどうした?」


「実は私は『デザートイーグル』を抜けて今はここに居るマーガレットさんと組んでいるんです」


「そうかい。俺がここの親方のグレンデルだ、よろしくな」


エレンに紹介されたのでグレンデルはぶっきら棒にヨネ子に挨拶する。


「私はマーガレット、今日は貴方に武器を作って欲しくてやって来ました」


ヨネ子もギルマスのガスパールにしたのよりは丁寧に挨拶した。


「おうそうかい、で?どんな武器を作って欲しいんだ?」


職人らしいと言えばそれまでだが、立ったままいきなり商談を始めてしまった。

もっともヨネ子もエレンもそんな事はあまり気にしないのでそのまま話を続ける。


ヨネ子の依頼は今持っているサバイバルナイフと同じ形で素材をミスリル・ドラゴナイト合金にする事と、ショートソードと素材解体用にナイフを同じ素材で作ってもらう事。

遠距離攻撃用にボウガンも作ってもらう、遠距離攻撃は魔法でも出来るが物理攻撃も用意しておいた方が攻撃の汎用性が広がるからだ。


剣やナイフには魔法陣を刻み魔剣にする、刻むのは『超振動』と『自己修復』の2つ、『超振動』は斬れ味をあげるため『自己修復』は手入れを簡略化するためだ。


ここまでで料金は450万ダグマとなった、残金は200万ちょっと、なので一本100万ダグマで二本バトルナイフを注文した。


これはシェーラ用だ、シェーラの持つナイフは人間界のミスリルで作られた逸品だ、だがここボレアースのドワーフ製の物に比べると随分見劣りする。


当然ながらこれも魔剣にする、刻む魔法陣は1本は『自己修復』と『物理防御』、もう一本は『自己修復』と『魔法防御』、物理防御の方は柄を赤に、魔法防御の方は柄を青にする事で見分ける。

『超振動』にしなかったのはシェーラは基本的にミランダの護衛だからだ、なので切れ味は普通でも構わない、尤もドワーフが最高の素材で鍛えるのだから今持っているナイフより切れ味は断然上がる。


因みにシェーラ用のナイフを作ったのは予定していたからではなくお金が余ったからこそのついでだ、氷河人の地のお金は人間界では使えないので残していても仕方ないのでそうする事にしたのだ。


注文も終わり出来上がりを聞くと3日後だと言う、この世界は現代地球と違い錬金術に近い魔法鍛冶なのでそんなに時間はかからないのだが、今受けている急ぎの注文があるからという事だった。


グレンデルはボレアース1番の鍛治師と評判なので実質世界一の鍛治師なのだ、先客がいても不思議ではない。


2人はおとなしく出来上がりを待つことにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ