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056 ハンター移送

王立学校卒業生は今現在ここテレイオースに居るかどうかはわからないが出身は全員テレイオースになっている、なので上手くすれば全員と面談が出来る。


ヨネ子達はその日の内に1人、翌日残りの7人の元に勧誘に向かった。

結果、1人は商業ギルドに就職し別の町に引っ越していたため勧誘出来なかったが他の7人は全員来てもらえる事になった、もちろん出発は1ヶ月後だ。


教師の勧誘が終わると次はハンターだ、ヨネ子達は先ずエレンのゲートでレクスブルクに向かった。


「『白金神龍』のマーガレットよ。ギルドマスターに会いに来たわ」


「はい、どのような御用件でしょうか?」


「王都のギルマスからの手紙を届けに来たのよ」


本当は指名依頼を出すために来たのだがランディからの紹介状を持って来たので嘘ではない、本当の事をそのまま言っても余計な質問をいくつもされると思ったのでそう答えた。


「わかりました、少々お待ち下さい」


受付嬢は素直にギルドマスターに知らせに行った、そして戻ってくるとギルドマスター室へ案内してくれた。


「初めまして『白金神龍』です」


「ああ、ベケットだ、お前達の事は聞いている。まあ座れ」


そう言われたヨネ子達はランディからの紹介状をベケットに渡すとソファーに座った、そしてベケットが紹介状を読み終えるのを待った。


「わかった、指名依頼はこちらで出しておこう。それでこれにはいつからかが書いていないがいつからだ?」


「全員揃ったらよ。いつなら揃う?」


「そうだな、予定通りなら3日後だな。だが全員が依頼を受けてくれるとは限らんぞ。国や領主からの指名依頼なら強制出来るがお前達からだとそう言うわけにもいかんからな」


「それはもちろんよ。こちらもやる気の無いハンターなんていらないわ」


「なら良い」


こうして交渉が成立したので次にコルムステルに向かった。


コルムステルでは「勝手知ったる」である、受付を通さずギルドマスター室へ向かった、それを止める者は誰もいない。

それだけ『白金神龍』は有名になったと言う事だ、ここコルムステルのハンターギルド限定だが。


「またお前たちか、今度はなんだ?」


「今度はこれよ」


ヨネ子はそう言いながらランディからの紹介状をパチェックに渡した。


パチェックはそれを一通り読んでから答えた。


「わかった、ちょっと待ってろ」


パチェックはそう言うとギルドマスター室を出た、『黒い嵐』の状況確認に行ったのだ。


しばらくしてパチェックが戻って来るとその後ろに4人の男女が続いた、『黒い嵐』はちょうど依頼が終わり報告に来ていたのだ。


「ちょうど下に居たから連れて来たぞ」


「久しぶりね、ブロスさん」


「ああ、久しぶりだな。ところでお前達も指名依頼を受けたのか?」


『黒い嵐』とは最初にパーティーを結成したときに食堂のところで会話を交わしていた、なのでお互いそれを覚えていたのだ。


「なんだ、知り合いか?」


パチェックは『白金神龍』と『黒い嵐』に面識がある事を知らなかったので以外そうな顔で聞いた。


「ええ、前に食堂で話した事があったのよ」


「まあ、ほんの挨拶だけだったがな」


ヨネ子とブロスが答えた。


「そうか、まあ良い。知り合いなら紹介はもういいな。本題に入るが指名依頼を出すのはお前たち『黒い嵐』だけだ」


「じゃあなんで『白金神龍』がここに居るんだ?」


「『白金神龍』は今回依頼をする方、依頼主だ」


「はあ?依頼主?ハンターがか?」


ブロスは変な声を出して驚いた、常識的に考えればハンターは依頼を受ける方なので気持ちは分からなくも無い。


「そうだ、まあせっかくだ、先ずは依頼内容を確認したらどうだ?」


「ああ、そうだな。じゃあどんな内容か聞いてもいいか?」


「依頼内容は護衛、期間は2ヶ月の自動更新、報酬は1期間ドラゴンの鱗3枚よ」


「期間が長いな。それより報酬がドラゴンの鱗3枚ってななんだ?依頼内容は護衛じゃ無いのか?本当はドラゴンと戦わせようってわけじゃ無いよな?」


ブロスからすればドラゴンと戦うなど悪夢だ、バハムート討伐やケントロスの素材売却などドラゴンは倒せる魔物へと変わってきたがまだまだ「ドラゴンは人間には倒せない」と言う認識は根強い。

特に未だBランクであるハンターが倒せるはずもない、なので少し怖気付いている、だがその方が無謀なハンターよりよほど優秀だ。


「期間が長いのはそれだけ必要だからよ。それに貴方たちにドラゴンを倒せなんて言わないわ、言っても倒せないでしょ」


「まあそうだな、で?報酬に出すって言うんだ、お前たちは倒せるんだろうな?何せ最強のドラゴン『白金神龍』様だもんな」


「当然でしょ、それくらい簡単よ」


ブロスは幾分嫌味を籠めて言ったのだが誰一人動揺する素振りさえ見せない事に不気味さを感じた。


「余裕だな、だがそれだけ強いならなんで護衛が必要なんだ?」


「私達は新しい国を作ってるの。護衛対象はその国民よ。だから単純に人手が欲しいのよ」


「国を作ってるだ?そんな事出来るのかよ。」


「実際にやっているようだぞ。今度その事でハンターギルド評議会が開催される予定だしな」


パチェックが口を挟んできた。


「な?本当なのか?・・・いいだろう、その依頼受けるよ。それで?場所はどこだ?準備が出来たら直ぐに出発する」


ブロスは信じられないとは思ったがギルドの最高意思決定機関が動くと聞いて信じざるを得ないと思った、なので受ける事を決定した、そして仲間にも一応意見を聞いた。


「お前達もそれで良いだろ?」


「ああ、良いよ」

「リーダーはあんただ、あんたの指示に従う」

「私もブロスについて行くわ」


全員反対は無いようだ。


「水や食料は要らないわよ、後ポーションなんかの薬類も。それを踏まえて準備にどれくらいかかる?」


「は?それがなきゃ武器のメンテナンスだけなんで直ぐに行けるが?」


「そう、なら直ぐに行くわよ」


「は?移動中の水や食料を全部持ってくれるのか?」


この世界では商隊の護衛でも無い限り移動中の水や食料は自分で用意しなければならない、なのでゲートの魔法を知らないブロスは驚いた。


「移動は直ぐよ、と言う事で手続きよろしくね」


ヨネ子はパチェックにそう言うと『黒い嵐』も全員引き連れてギルドを出た。


そしてその足で鍛冶屋に行き武器のメンテナンスをしてもらう、依頼期間が長いのでメンテナンスに来たがまだそれほど劣化していなかったためメンテナンスは早く終わった。


メンテナンスが終わるとコルムステルから直接開拓地へと向かった、ハンター達は依頼中ずっとキューシュー地方内に居る予定なのでいちいち国境越えをしない。


「どこだここは?」

「えっ?どう言う事?さっきまでコルムステルに居たのに」

「えっ?えっ?えっ?」


驚く『黒い嵐』のメンバーを無視してヨネ子がディーンに言った。


「ディーン、ハンターを連れて来たから貴方の指示で動かしなさい」


「はっ、わかりました。それで、まだ何パーティーか来るんですか?」


「ええ、一応全部で12パーティーに声をかける事になってるからそのつもりでね」


「わかりました」


ディーンはそう言うと『黒い嵐』を連れて行った。


ヨネ子達は次にアルバート王国南部のプラム伯爵領に向かった、このプラム伯爵領の東にハウリシア侯爵領、南西にブルンギルト辺境伯領がある、ただしどちらも隣接しているわけではない。


因みにプラム伯爵領はエレンが『デザートイーグル』と共にバハムート討伐にやって来た事があるのでエレンのゲートで来ることが出来た、ここがヨネ子達の知る中で最もハウリシア侯爵領とブルンギルト辺境伯領に近い場所だったのだ。


そのプラム伯爵領からは空を飛んでハウリシア侯爵領領都ハウレリアに向かった、ここではギルドマスターにランディからの紹介状を渡して結果を翌日聞く事にして再びプラム伯爵領までゲートで向かった。

次にもう一度空からブルンギルト辺境伯領領都デンパールに向かい同じようにギルドマスターにランディからの紹介状を渡すと一旦王都テレイオースに向かった。


因みにブレイザーとアスカはヨネ子とエルがそれぞれ連れて飛んだ、アスカは走る事も出来たがそれでは遅いし疲労も溜まるのでエルが連れて飛んだのだ。


テレイオースのハンターギルドでは既に有名人なので案内さえなくギルドマスターランディに会いに行く。


「どう?依頼は全員に伝えた?」


「いや、まだだ、後1パーティー残ってる。だが今日中に帰ってくる予定だから夕方だな。残りの4パーティーは引き受けてくれたぞ」


「そう、ありがとう」


そこへ受付嬢が1組のハンターパーティーを連れてやって来た。


「お話中失礼します。『光牙』の皆さんが帰って来ましたので連れて参りました」


「ああ、ちょうどよかった。入ってくれ」


『光牙』とはランディが選んだテレイオースを起点にするハンターパーティーの一つだ。


「紹介しよう、こいつらが指名依頼を出すAランクパーティー『光牙』だ。そしてこっちがハンターパーティー『白金神龍』だ」


ランディがお互いのパーティー名だけ紹介した。


「初めまして、『光牙』のリーダーコーガです」


「『白金神龍』のリーダーマーガレットよ」


「それで指名依頼という事だが、こっちの『白金神龍』と共同の依頼と言うことか?」


コーガも『黒い嵐』と同じ勘違いをした、まあ仕方ないだろう。


「いや、『白金神龍』は依頼主の方だ。それより内容は街の護衛、期間は2ヶ月の自動更新、報酬は1期間ドラゴンの鱗3枚、受けてくれんか?」


「街の護衛?どこの街だ?」


「正確には街だけではないわ。住民の護衛全般ね」


「ん?そうか依頼主はあんたらだったな。それで場所はどこなんだ?」


「ずっと南のブーストン王国の西よ」


「えらく遠いな、受けても良いがそこまで行く期間も依頼に含まれるんだろうな?」


「そこまでは私達が連れて行くわ。もちろん帰りも送るわよ」


「そうか、なるべく乗り心地の良い馬車にしてくれよ」


この世界の長距離移動は馬か馬車しか無い、なので連れて行くと言われてコーガは馬車だろうと勝手に思った。

しかしそれを否定したのはヨネ子ではなくランディだった。


「コーガ、残念だが歩きだ、ただ直ぐに着くから問題ない」


「は?なんだそりゃ?ギルマス、あんた何を言ってんだ?」


「今はわからんでも良い、それよりこの依頼受けるって事で良いんだな?」


「ああ、いいぜ。で?いつ出発だ?」


「明後日で良いか?他のパーティーにもそう言ってるんだが」


「他のパーティー?いったい何パーティー雇ってるんだよ」


「全員来てくれたら12パーティーね。尤もこの支部からは5パーティーだけど」


ヨネ子が答えた。


「12?・・・まあ良い、じゃあ俺たちは早速旅の準備をしよう」


「必要無いわ。武器のメンテナンスだけして後は家族とでも過ごしててちょうだい」


「はあ?南の果てまで行くのに旅の準備が要らねえだと?」


「そうだ、他のパーティーにもそう言ってある。さっき言っただろう直ぐに着くって。まあ言われた通りにしておけ悪いようにはせん」


ランディの言葉に今一つ納得しないまま『光牙』は帰って行った。


「じゃあ私達も明後日くるわ」


そう言ってヨネ子達もハンターギルドを後にした。


翌日はハウリシア侯爵領領都ハウレリアとブルンギルト辺境伯領領都デンパールに返事を聞きに行った、どちらのパーティーも依頼を受けてくれ準備も整えてくれていた、なので直ぐに開拓地へと連れて行きディーンに預けた。


王都のギルドマスター紹介の指名依頼と言う事で喜んで受けてくれたそうだ、どうやらハンターとしてはギルドへの功績が認められるので美味しい依頼となるようだ。


さらに翌日は『光牙』達テレイオースのハンターを、そのまたさらに翌日はレクスブルクのハンターを連れて行きディーンに預けた。


「これで全員よ、使い勝手はどう?」


「ええ、全員なかなか優秀なようで護衛が楽になりました」


「そう、よかったわ。じゃあみんな仕上げに行くわよ」


ヨネ子がそう言うとセラフィムが聞いてきた。


「マーガレット様、これで終わりでは無いのですか?」


「ええ、ハンターギルドには食堂が併設してあったでしょ。騎士達もそうだけど食事は別にして酒を飲める場所は必要だと思ってね」


「なるほど、確かに息抜きは必要ですな」


「そう言うわけでベイルーンに向かうわよ」


ヨネ子達はそう言ってリシュリュー王国王都ベイルーンに向かった、そこには数件の食堂にスカウト済みの人材が居る。


スカウトしていた人材は料理人が男性2人、給仕が男性1人女性5人、その全員を開拓地に連れて行った。


開拓地では事前に話を聞いていたディーンが既に一軒の食堂を建設済みだった、そこで全員を働かせる。


話を聞いた後から騎士達も住民達も期待に胸を膨らませていたらしい、開拓がハイペースで進み段々と街らしくなってくるとやはり酒を飲む場所が欲しいようだ。

これまでは衣食住に傾注していたため酒を手に入れる方法が無かったので期待が大きい、ただし酒は今も作っていないのでヨネ子達が他所の街で買ってきたものを提供する。


その日はヨネ子の提供で見張りの騎士以外の全員に酒と料理を振る舞う事にした、もちろん住民やハンターも含めた全員だ。


料理はあまりに数が多いので焼き肉にした、これなら外にアースウォールでコンロを必要なだけ作れるし、肉も魔物領域解放の時に狩ったドラゴンの肉が大量にストックしてある。


酒はヨネ子がこの日のために買いためたエールとワインを100樽づつ出した、まだストックはあるがそれは足りなくなった時に出せばそれでいいしそもそも足りなくなるとは思えない。

ただグラスだけは自前の物を持ってきてもらった、これだけのためにグラスを大量に買うのは無駄だからだ。


ストックしている酒は魔法師団の副団長リーアに渡した、当面はキューシュー地方で酒を作る予定がないのでそこから提供しないといけない。

なので料理人達には酒の在庫が無くなったら魔法師団に言うように言っている。


因みに渡した酒の中にはまだ提供していない蜂蜜酒(ミード)やバーニア子爵領産のウイスキーとブランデーも入っている。


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