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049 第二次訓練終了

『デザートイーグル』のホームに来ても何かする事があるわけでは無い、ただブレイザーだけはチョコレートを受け取ったりヨネ子に教えてもらった新作料理をメアリとシェンムーに教えたりとする事はある。


ヨネ子達はここで2日寛いだ後訓練後半に向かう、先ずはフライツェンで元騎士達とキャサリン達を迎えに行く。


「全員揃ってるわね」


朝のハンターギルドは依頼を受注するハンターでごった返すので今回は町の中央広場に集まってもらっていた。


「はっ、アバロン以下37名準備は整っております」

「こっちも良いわよ」


アバロンとキャサリンが答える。


「では出発します」


ヨネ子の言葉に合わせエルとアスカの2人もゲートを繋ぐ、行き先はこれも前回同様リシュリュー王国とエムロード大王国の国境にあるエムロード大王国側の魔物領域だ。


エレンもゲートを繋いだが行き先はルビー公爵邸、今回はエレンがルビー公爵一行を迎えに行く。


「公爵様、準備は出来ていますか?」


「おお、迎えはエレンだったか。出来ておるぞ」


弾む声でエレンを迎えるルビー公爵、急に領を不在にする事になったのでこの休み中は忙しかったであろうに元気いっぱいだ。

グリードとミーシャもウキウキ顔だ、ルビー公爵と共にこっそりハンターをしているだけあり魔物領域での実戦訓練が待ち遠しいのだろう。

それに対しリッカルトとテレシコワの顔には不安が見て取れる、まだ魔物とは戦った事が無いのかも知れない。


「では向かいましょう」


そう言うとエレンは公爵一行を連れてヨネ子達の元に向かった。


「全員揃ったようね」


ヨネ子はそこから元騎士達に3人パーティーを組ませた、全部で10組、そのパーティーをさらに5組ずつに分けそれぞれの指揮官にアバロンとクレイトンを任命した。


ルビー公爵達には公爵、グリード、リッカルトの3人でパーティーを組ませた、元騎士達と連携する必要はないからだ。

ただこれだけでは戦力不足でありただ魔物を狩るだけで大した訓練にはならない、なので護衛と指導のために公爵パーティーにはアスカを同行させる。


魔法使い組7人は別メニューだ、こちらは午前中は座学、午後に7人全員で対魔物戦の実戦とした。

午前中を座学にするのは朝の魔力枯渇のためだ、午前中で魔力を回復させ午後に実戦、それが終わると残りの魔力を使ってしまうようにして最大魔力も効果的に上げていく。


「では訓練開始」


ヨネ子の号令で騎士達は魔物領域に入って行く、魔法使い組はエレンの指示に従う、そしてヨネ子とエルはそれを見届けてから上空監視へと向かった。


元騎士達は初めての実戦ということもあり少し緊張している、そしてこれまで対人戦闘しか経験がない者がほとんどなので実力の割に苦労していた。

ただアバロンとクレイトンはこの訓練も経験済みのため部下達に適切に指示していく、お陰で順調に魔物戦をこなしている。


ただ前回の訓練からまだ3、4ヶ月しか経っていないので個体数が十分には回復していないように感じる、上空から見る限り戦闘箇所が前回より少ないのだ。


それでもここはAランクの魔物領域なので広くて魔物の数自体はかなり多い、訓練を行なっている魔物領域外側の個体数が少ないだけで中心部に固まっているのだ。


そこでヨネ子はエルに言って中心部の魔物を全体に散らすようにした、ヨネ子が行っても良かったがエルのドラゴンとしての威嚇の方が効果が高いだろうと思ったからだ。


「エル、中心付近の魔物を全体に散らして来てくれない?」


「そうね、訓練には少し数が少なそうだし良いわ」


そう言って中心部に行き、主まで逃げられると困るので先に気絶させると周りを全体的に威嚇した。


流石に全力で威嚇すると中心部の魔物がいなくなるので加減はしたが、そのおかげで訓練場所には前回と同じか少し多いくらいの魔物が出現しだした。


「なんだ?急に魔物が増えていないか?」


「ああ、なんか急に増えたように感じるな。大丈夫か?」


エルが魔物を中心部から追い立てた事を知らない元騎士達は急に魔物が増えた事に不安を覚えた、ただアバロンとクレイトンにすれば今位が普通だと思っているので動揺することはない。


「どうした、これが魔物だ、動揺はスキに繋がるぞ、気を引き締めろ」


「「「「「「了解」」」」」」


アバロンの檄に気を引き締め直して討伐を行う元騎士達、前半1ヶ月の訓練が生かされている。


前回と違いアバロンとクレイトンは経験者なので身体強化の使い所を適切に指示していく、おかげで初日の討伐数としては前回よりやや少なめだった、ただし前回は人数が41人だったので訓練の成果としては今回の方が上だ。


ルビー公爵の方も順調に魔物と対戦していた、ただし解体は行なっていない。

元騎士達は将来的に魔物領域解放の戦いをする事になる、なので前回同様その場で解体してそれに集まって来た魔物をさらに狩るようにしている。

それに対しルビー公爵達はその必要が無い、なので狩った獲物は全てアスカが収納に入れる、尤もルビー公爵達の獲物は全てヨネ子達の収入になると言うことも理由の1つだが。


ルビー公爵達もアスカから戦い方や身体強化の使い方などを聞きながら対戦している、さらにルビー公爵とグリードは魔物戦の経験者なので危なげなく初日を終えた。


魔法使い組の魔物戦も順調と言えた、この魔物領域は森のため火魔法や強力な土魔法は使えないという制約がありながらもウィンドカッターや身体強化を使って短剣で戦ったりソーンコントロールで魔物の動きを奪って攻撃したりと魔法を駆使して戦っていた。


2日目以降も元騎士達はパーティーメンバーを入れ替えながら2週間同じ訓練を続けた、ルビー公爵達も訓練自体は同じだ、ただ3日目以降はアスカが指示しなくなったところが違うくらいだ。


それに対し魔法使い組は少し違った、5日目までは同じ訓練を続けたが6日目以降は魔物領域を荒野に変えたのだ。


場所はルンビニーの西、馬なら1日かからない距離にある魔物領域だ、ここはエレンが『デザートイーグル』時代にルビー公爵と共にヘルスコーピオンを狩るために行ったことがあるのでゲートを繋げる事が出来るのだ。


訓練も荒野のため制限が無い、ただ難を言えばBランクの魔物領域なのでAランクの魔物との対戦が出来ないのが残念ではある。


魔法使い組は6日目から2週間目まで、午後はこの魔物領域で訓練を重ねた。

因みに後半の1週間は魔法使い全員がそれぞれゲートで訓練場を移動するまでに成長していた、それは魔法使い全員が収納魔法を使えるようになったことも意味する。


魔物領域での実戦訓練が2週間になった所でいよいよ最終訓練に入る、Sランクの魔物領域での訓練だ。


場所は前回と違いリシュリュー王国のクラウディア辺境伯領、ローランド伯爵領、バーニア子爵領にまたがる魔物領域にした、前回と同じ場所では魔物の個体数が回復していないとわかったからだ。


拠点はバーニア子爵領側にした、領主が友人のイリアで近くにはマレロ村もあり声を掛けやすいので当然だろう。


移動初日は訓練はしない、全員でテントを張り拠点作りから始めるからだ、風呂も訓練中の魔法使いが作る。

その間ヨネ子達『白金神龍』とルビー公爵はアバロンに指揮を任せてイリアに挨拶に向かった、ブレイザーは残って昼食の準備だ。


「イリアは居る?」


「あ、貴方達は『白金神龍』の皆さん。今ご領主様に伝えて参ります」


門番は『白金神龍』の事を覚えていたのですぐにイリアに伝えに行ってくれた、まあアスカがいるので忘れていてもすぐに思い出すと言えばそれまでだが。


「ご領主様がお会いになるそうです、お入り下さい」


門番に通されたので早速屋敷の中に入ると玄関でイリアが迎えてくれた。


「皆さんよく来てくれました。さあこちらへ」


イリアはそう言って領主自ら全員を応接室へと案内した、普通ならメイドの仕事なのでメイド達が端の方で困った顔をしていたのは見なかった事にしておこう。


「イリア、最初に紹介しておくわ。この人はエムロード大王国のルビー公爵よ」


「これは公爵閣下でありましたか。私はここバーニアの地を治めますイリア=ローランド=フォン=バーニア女子爵と言います。以後お見知り置きをお願いします」


「これは丁寧な挨拶をありがとう。俺はアラミス=フォン=ルビー公爵という。それはそうとここは公式の場では無いのでマーガレット達と同じように接して欲しいのだが」


「わかりました、ではそうさせていただきます。それで、今日は何か用があって来たんですよね」


「そうよ、ここの魔物領域で騎士達の訓練をする事にしたから挨拶に来たのよ」


「あらそうなの?えっ?それで公爵様がここに居るってことは一緒に訓練するの?」


「そうだ、俺の騎士と魔法使いも2人づつ連れてきて一緒に訓練しているんだ」


ここでメイド達が紅茶を運んで来たので一旦会話を打ち切った、そして一口喉を湿らせてからヨネ子が口を開いた。


「ねえイリア、そろそろブランデーとウィスキーの最初の出荷時期じゃないの?」


「あらマーガレットさん、よくわかったわね。実は先週最初の1樽を王家に献上したのよ、その後王都の商会の目ぼしい所に声をかけて試飲用の酒を渡したの、気に入ってくれたら来月あたり商談に来てくれるかもしれないわ」


「それは良かったわ。どちらも1樽づつで良いから分けてもらえる?」


「もちろんよ。そうだ、せっかくですから皆さん試飲してみませんか?」


「そうね、お願いするわ」


それを聞いていたルビー公爵がヨネ子に尋ねた。


「さっき言ったブランデーとウィスキーでしたかな、それは何ですか?」


「酒精の強い酒よ」


「ほう、酒ですか。それは楽しみですな」


しばらくして全員にワイン用のグラスが配られ、メイド達がブランデーとウィスキーの入った瓶を持ち注いで回った。


「なんだこれは、こんな旨い酒は初めてだ。イリア殿、俺にも是非この酒を1樽づつ分けてもらえんか?もちろん言い値を払おう」


ルビー公爵はかなり感動したようだ、ヨネ子が評価する前にイリアに食ってかかるように言い募った。


「ええ、もちろん良いですよ」


イリアはその勢いに押され、少し困惑気味に答えた。


「中々良い出来ね。ただこの酒は年を経る毎に美味しくなるから全部は売らずに一部は生産年が解るようにして取っておくと良いわよ」


「そうなんですね、ではそうします」


酒の話はここで止めた、そして話を変える。


「それからこれを貴方に渡しておくわ。ついで・・・って言うと失礼かもしれないけど公爵にも」


ヨネ子はそう言うと通信の魔道具をイリアとルビー公爵に渡した、番号はイリアが「8008」ルビー公爵が「8009」だ。

そしてそのまま使い方と、自分達と『デザートイーグル』の番号を教えた。


「これ、使ってみて良いですか?」


「どうぞ、セリーヌにでもかけてみるのね」


そう言われたイリアはさっそくセリーヌを呼び出した。


【セリーヌ、私よ。誰だかわかる?】


【えっ?その声はイリアなの?】


【正解。今マーガレットさん達が来てて通信の魔道具をもらったの。これでいつでも貴方達に連絡が取れるわね】


【そうね、じゃあイリアの番号を教えてちょうだい】


【そうだったわ。私の番号は8008よ】


【8008ねわかったわ】


【それじゃあまた今度ゆっくり話しましょう】


【そうね、それじゃあ】


「マーガレットさん、これすごいです、ありがとうございます」


イリアは通信の魔道具を手に入れた事と久しぶりにセリーヌと話せた事で少し興奮している。


「じゃあ今度は俺だな」


そう言うと今度はルビー公爵が通信の魔道具を使う、相手はアメリアだ。


【はい、アメリアよ】


【おお、アメリアか、俺だ、わかるか?】


【え?うーーーーん。ごめんなさいちょっとわからないわ】


【一緒に魔物狩りに行った事もあるのに連れないのう。アランだよ】


ルビー公爵はハンターの時はアランと名乗っている、『デザートイーグル』と最初に会った時もその名前を使っていたのでそう名乗った。


【アラン?一緒に魔物狩りに行った?・・・えっ?ルビー公爵ですか?】


【やっと思い出してくれたか。久しぶりだな】


【はい、お久しぶりですって、え?今セリーヌにイリアさんから通信があったばかりだけど、もしかして一緒に居るんですか?】


【おお、正解だ。中々良い勘をしているな。今『白金神龍』のみんなとイリア子爵の屋敷にお邪魔しているんだ】


【そうなんですね。じゃあ公爵の番号も教えてもらって良いですか?】


【ああ、番号は8009だ】


【8009ですね、わかりました】


ルビー公爵の通信が終わるとイリアがエレンに聞いた。


「もしかしてセリーヌ達も公爵様と知り合いなの?」


「そうよ、割と親しいわね」


「そうか、だったらセリーヌ達も来れたら良かったのにね」


イリアはまだゲートの魔法を知らなかった、なので何となく思った事を口にしただけだったのだがエレンはそれに応えた。


「じゃあ連れて来ましょうか?」


「えっ?連れて来るって、今?」


「ええ、今」


「えっ?セリーヌ達はコルムステルにいるんじゃないの?ここに来ているの?」


「あら?イリアさんはゲートの魔法を知らなかったんでしたっけ?」


「ゲートの魔法?いえ、知らないわ、その魔法ならすぐに来れるの?」


「ええ、説明するより実演した方が早いですよね」


エレンはそう言うと『デザートイーグル』のホームにゲートを繋げた、そしてイリアの手を引いてそれを潜る。


「あらエレン・・・とイリア?久しぶり、来てくれたのね」


「セリーヌ、本当に?・・・・・本当に直ぐに来れるのね」


喜んで抱きついたセリーヌとは対照的にイリアは呆けていた、まあそれくらい驚いたのだから仕方ない。


イリアが我に帰ると『デザートイーグル』を連れてイリアの屋敷に戻った、そして初対面同士の者も居るのでそれぞれの紹介をする。


ミランダとシェーラはイリアとは初対面でありバーニア子爵領に来るのも初めてだ、それでもこれで次からはミランダがゲートを繋げる事ができるようになった。


この日はそのまま食事もイリアの世話になって夜中に解散した。


翌日からは3人パーティーを解散して16人づつの2軍に分かれて魔物領域に入った、指揮官は引き続きアバロンとクレイトンだ。

ルビー公爵達はリーダーをグリードにしてアスカが入った4人パーティーで狩りを始める。


魔法使い達はいつものように午前中は魔力枯渇からの座学、そして午後は魔物狩り、ただし今日からは荒野に行かず同じ魔物領域で訓練する。


今回の魔法使い達は魔物狩りではあるが、狩るより戦闘補助をメインに訓練した、特に索敵と地中に潜む魔物を探すアースソナーは広さも精度も向上させるよう重点を置いて訓練した。


この体制で5日訓練した後、ミーシャとテレシコワは魔法使いの訓練から離れた、6日目から最終日まではルビー公爵達と連携の訓練をするのだ。


元騎士達は正式に騎士になってから魔法使いとの連携を訓練する予定だが、ルビー公爵達はそう言うわけには行かないからだ。


そしてミーシャとテレシコワが加わり6人となったパーティーは訓練に勤しむ、ミーシャとテレシコワが1日交代で索敵を使うので元騎士達よりずっと効率が良い。


ルビー公爵、グリード、リッカルトの3人の戦闘力もかなり上がった、グリードはAランク、ルビー公爵とリッカルトはBランクの魔物をソロで余裕で倒せるようになている。


なのでこの間Sランクの魔物とも4度遭遇したがアスカの手助け無しで討伐している、尤もその内1度はSランクの魔物が2体同時に出てきたので一体はアスカが単独で倒した、アスカの出番も有って何よりである。


こうして約2ヶ月に及ぶ訓練が終了した、今回もまずまずの成果だと言えるだろう。


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