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045 第二次訓練開始前夜

アンジェの港もミロスと同じくらいの規模だった、ただ、やはりミロスほどの活気は無い。


ヨネ子達はサッサと入国の手続きをしてアンジェの町に入った、ここでも船員は港から出ないため手続きは早い、そして直ぐに街を出ると開拓地へとゲートを繋げた。


「ディーン、新しい国民を連れて来たわよ」


「これはマーガレット様、今度はどんな人材ですか?」


「この人達は全員製塩職人よ。だから明日からしばらく海岸付近をメインに開拓してくれる?」


「わかりました、何人か割り振ります。それより家の建築があまり捗っていないのですがどうにかなりませんか?」


まだ開拓地に来て数日なので家は一軒も建っていない、今は全員馬車とテントで寝泊まりしている。

そして開拓者の中に家屋建設が出来る者は30人ほどしかいない、せめて拠点となる場所には早急に必要数の家を建てたいとディーンは思っている。


「そう思って一応2日後に職人2人と見習いを5人連れて来る予定にはなってるわ。後は予定を早めてウィンス村からも連れて来るようにしたら良い?」


「はい、ありがとうございます」


この日はこのまま開拓地に泊まる事にした、海岸方面に行くのは明日なので製塩職人達の荷物も明日で無ければ出せないからだ。

開拓者達がここに来た時の馬車は皆固定して家屋として使っている、馬車用の50頭の馬は皆駄馬や農耕馬として転用している、なので収納魔法でなければ海岸まで荷物を運べないのだ。


その日の夜、開拓者を全員集めてバーベキューパーティーを開いた、製塩職人のお披露目のためだ。

肉は騎士の何人かが取って来てくれた、野菜は普段なら騎士達が採集をしているが今日はヨネ子達の収納に入れてある物を使う。

食材調達を騎士達が行っているのは開拓に多くの人員を割くためであり、それが出来るのはヨネ子が渡していた資源地図のおかげだ。


騎士達がバーベキューの準備をする横でヨネ子達はイルカの魔物とクラーケンの解体を始めた、特にクラーケンは予想通り食べられるようなので今夜のバーベキューに提供する。

ただ、クラーケンは全長20メートル程と大きい上に騎士達の獲ってきた肉もあるので半分はヨネ子の収納に戻した。


一夜明け開拓者全員で朝食を摂ると、早速騎士3人と開拓者5人と馬5頭を引き連れて製塩職人を海岸方面に連れて行った。

キューシュー地方には中央に大きな川が有るが開拓地は川から少し離れている、なのでそのまま徒歩で半日ほど南下するだけで海岸に着く、そこには遠浅の岩石海岸、いわゆる磯が広がっていた。


ベロラムの職人達が行うのは入浜式塩田と言う方式、海岸の沖合に堤防を築き潮の干満を利用して塩田内に海水を引き入れる、塩田内に砂を敷きつめておけば毛細管現象により自然に砂の上部に海水が供給され太陽と風により自然と乾燥されると言う方法だ。


普通なら最初の堤防を築くのにかなりの時間と労力がかかる、しかし今回はその最初の工程をヨネ子の魔法「アースウォール」で行った、塩田の為の堤防などエルもエレンも知らないので任せられなかったからだ。

そのおかげでかなり時間の短縮が出来たので、後は開拓者達に任せてウィンス村へと向かった。


「村長、今度は大工だけを連れて行きたいんだけど何人居る?」


「これはマーガレットさんいらっしゃい。大工だけですと20人くらいですね」


元々家屋建設は重要なので最初の人選で半分以上を送っていた、なのでもうそれだけしか居ないのだ。


「そう。では明日迎えに来るから準備させておいて」


「わかりました」


ヨネ子は次にバーンブルクに向かう、そして馬車を2台買うと御者を2人雇ってマレロ村へと向かった。


「レノ、来たわよ。荷物は馬車に積ませて」


「いらっしゃいませ。準備は既に出来ていますので早速積み込ませます」


ヨネ子はさらにリシュリュー王国王都ベイルーンへと向かった、ここでも馬車を10台買うと一旦ウィンス村に行き御者を10人連れて来て馬車をウィンス村に向かわせた。


翌日、マレロ村から馬車2台を連れウィンス村に行くと前日の10台と合わせて12台でエムロード大王国との国境に行く、前回と同じように国境ごとにゲートで渡っていく。

ただ『白金神龍』とブレイザーの5人はゲートで国境を越えて、馬車が来るのを待ってから次に行くようにしている、ヨネ子達5人の最終記録は港からブーストン王国に入国したところで終わっているからだ。


そして前回同様キューシュー地方の東側からはゲートを使わずに馬車で行く、これも道を作るための一環だ。

前回と違うのは護衛の騎士がいないところ、なので今回は『白金神龍』が護衛と道案内を兼ねて連れて行く。


途中周辺警戒中の騎士と会ったが護衛には加わらせなかった、護衛よりブーストン王国を警戒する方が重要だからだ。


「アーネスト、連れて来たわよ」


今日はディーンではなくアーネストが騎士達の指揮をしていた。


「これはマーガレット様、エル様、ありがとうございます。ディーンは今海岸の方に行ってます」


「そう。とりあえず馬車2台は製塩職人の家を作るように海岸まで連れて行ってちょうだい」


「わかりました。ところでマーガレット様。伐採チームの方からそろそろお願いしたいと言って来ているのですが」


お願いしたいとは木材の乾燥の事だ、木材は伐採して直ぐは水分が多くて使い物にならない、乾燥と同時に歪んでいくからだ。

なので普通は一年ほどかけて乾燥してから柱や板に加工して使うのだがそんなには待てない、そこである程度伐採してから纏めて魔法で乾燥させる事にしていた。


「わかったわ。じゃあ伐採場まで案内してちょうだい」


「はい。マイキー案内してくれ」


「了解です」


案内を命令されたマイキーという名の騎士は馬から降りてヨネ子達を伐採場まで連れて行った。


伐採場には木の種類毎に数十本づつ大木が積み上げられていた、最も多いのは杉の仲間、次は松の仲間、この2種類が全体の7割を占める、後の3割は南米産のキングウッドやゼブラウッドなどと呼ばれている木の仲間や樫の仲間などがある。


家屋の建設職人の3分の2と騎士の内数人がここに来てから今まで伐採していたのだ、特に騎士達は全員身体強化が使えるのでかなり活躍したそうだ。

因みに残り3分の1の職人は家の土台となる石を取りに行っている、海岸に向かった職人達も場所の確認が出来てから先ずは土台となる石運びから始める。


これも乾燥具合はヨネ子しかわからないのでエルやエレンに任せるわけにはいかない、なのでここでもヨネ子が種類毎に乾燥させて行く。


「良くそんなにいろいろ出来るわね」


エルに関心して言われた。


「貴方の期待に応えようと思ってね」


「それはありがとう。氷河を出て本当に良かったって思ってるわ」


「どういたしまして。それより次はフライツェンよ」


「そうね、今度は何人見つけているかしら」


「今度は馬移動だから30人くらいいると良いんだけど」


「そうですね、ブーストン王国と戦う事になるなら早めに鍛えておきたいですしね」


エレンがそう答えると『白金神龍』とブレイザーの5人はフライツェンへと向かった。


フライツェンでは買い物をして1泊してからハンターギルドに向かった、時間はいつものように昼過ぎ、そしていつものようにアバロン達は既に来て待っていた。


ハンターギルドの食堂にはこの時間には珍しい多くの客がいた、ただその中にハンターはほとんどいない、大多数はアバロンが連れてきた元騎士だ。


「今回は成果が上がったようね」


ヨネ子がアバロンに言った。


「はっ、馬をいただいたお陰で移動が早くなりましたので」


アバロンは胸を張って答えた。


今回の元騎士は35人、その内5人は魔法使いだった。


「へー、今度は魔法使いがいるのね」


「はい、全員中級以上の魔法使いです」


「そう、では前回同様先ずは武器を調達しに行きましょう」


ヨネ子がそう言うとゲートで全員をボレアースに連れて行った、そして前回同様グレンデル工業で30人の騎士には剣と槍を、5人の魔法使いには短剣を選ばせた、ついでなのでアバロン達の剣のメンテナンスもしてもらった。

ただ今回はこのままボレアースに1泊する、魔法使い用の魔杖を作るためだ。


「私とエルは魔杖を作りに行ってくるから後の3人はみんなに街を案内してあげなさい」


ヨネ子はエレン、アスカ、ブレイザーに向かって言った、あまり多くはないがエレンはこの街の通貨を持っているので問題ないだろう。


「「「わかりました」」」


3人は返事した、もちろん通訳のためだと言うことはわかっている。


そしてヨネ子はエルと共に魔女の館ボレアース本店に向かった、ここはエレンが魔杖を作ってもらった所だ。


「魔杖を作って欲しいんだけど」


ヨネ子が店員に向かって言った。


「いらっしゃいませ。店主のローガンです。作って欲しいと言うことはオーダーメイドと言う事ですか?」


「そうよ、これが設計図。そしてこれが素材よ」


ヨネ子はそう言いながら『デザートイーグル』のミランダと同じタイプの設計図とドラゴンの素材を渡した。


「こ、これがドラゴン。この魔石も・・・初めて見ました」


「明日までに出来る?」


「はい、出来ます」


「それで料金はいくら?」


「そうですね、今回は製作費だけですので全部で10万ダグマです」


「わかったわ」


ヨネ子はそう言うと魔女の館ボレアース本店を後にした、そして次に宝石屋に行く、亜空間の指輪を作ってもらうのだ。

指輪を作ってもらっている間に家具屋に行ってトイレも作ってもらう、数はどちらも50個、前回の余りが9個あるが今回の余剰分15個と合わせて24個は予備だ。


トイレの注文まで終わると宝石屋に戻る、そして亜空間の指輪を受け取ると宿へと戻って行った、後は翌日受け取るからだ。


「遅くなったけど私がマーガレット、隣がエルよ。これからよろしく」


夕食時、ヨネ子は遅ればせながら自己紹介をした、エレンとアスカとブレイザーは既にお互いの紹介を済ませている。


ヨネ子の自己紹介後は元騎士達も順番に自己紹介していった、元騎士は男26人女4人、元魔術師は男2人女3人だった。


食事が終わるとヨネ子達5人も部屋に戻った、そして部屋でティータイムを楽しみながら相談する。


「今度の訓練だけど、エレンは魔法使いの方を担当してちょうだい。ミランダに教えた通りの事を教えれば良いだけだから簡単でしょ」


「わかりました。それで訓練場所はどこにしますか?」


「場所はこの前と同じディーンの修行場で行うわ。最初に騎士達に魔法を教えるでしょ、その時に魔法使い達には短剣術を教えるつもりよ」


「ああ、それで魔法使い達には短剣を渡したんですね」


「そうよ、基本的な近接戦闘くらいは出来ないと。懐に入られたらおしまいなんて事にならないようにね」


「それはそうですね、わかりました」


「それで魔物領域での訓練はどうするの?今回は魔法使いとパーティーを組ませる?」


今度はエルが聞いて来た。


「いいえ、騎士と魔法使いは分けて訓練するつもりよ。魔法使いとの連携は今度の30人が一人前になった後ディーン達も入れた全員で訓練すれば良いわ」


「わかったわ。じゃあ魔物領域の訓練は前と同じね」


「私は今回何をすれば良いですか?」


今度はアスカが聞いて来た、前回はまだ修行中という事で一緒に訓練していたが、今はもう一人前として扱われているからだ。


「アスカは今回基本的には全体の指揮をしてもらうわ。人間とは身体の構造が違うから人間に出来る事とできない事が良くわかっていないでしょ、その違いを覚えて指揮出来るようになってもらうわ」


「確かに今までは指揮する前に自分で戦ってましたからねえ。わかりました」


ブレイザーは相変わらず大人しい、料理人なので人数さえわかればそれでいいからではある。


翌日昼過ぎ、ヨネ子はエルとエレンを伴って魔女の館ボレアース本店に行き魔杖を受け取った、そして家具屋に行きトイレを受け取る。


その後一旦宿に帰って3人でトイレを指輪の亜空間に設置して行く、そして魔杖にエレンやミランダの魔杖と同じように蔓草の種を仕込んでいく。


全ての作業が終わると全員でフライツェンに帰った、そして今度は絨毯やアバロン達騎士に支給したのと同じ物を50セット買って指輪の亜空間に追加で設置していった。


「全員整列」


ヨネ子の号令でアバロン達騎士と元騎士達が整列した、ブランクがあるとはいえさすが元騎士達だ、綺麗に整列している。


「これから支給品を配ります」


そう言うとエレンとアスカとブレイザーの3人が元騎士達に指輪を配っていった、そして支給品の詳細と指輪の使い方を教える。


これで訓練の準備は終了だ、ヨネ子はさっそく全員を訓練場へと連れて行った。


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