041 開拓地へ
ボレアースに着くと早速グレンデルを伴ってブラキオ商会に向かった。
「おいブラ、出来てるか?」
「おおーグレンか、出来てるぞ」
「じゃあ見せてちょうだい」
ヨネ子が言うとブラキオは直ぐに魔道具100個と魔動石363個程を持ってきた、魔動石は渡した魔石全部を加工したようだ。
「これが至急の100個、魔動石は受け取った魔石を全部加工しておいたぜ。ただ番号はまだ振って無え」
「それで良いわ」
ヨネ子はその場で1つ1つ確認しながら番号を振って行った、そしてその番号をそれぞれの魔道具の裏に書いていく、これで試作品と合わせて103個の通信の魔道具が手に入った。
「注文通りね。後は急がないけど時々取りに来るからよろしくね」
「わかった、で、追加の分は一個5000ダグマで良いか?」
「それで良いわ。じゃあお願いね」
「わかった」
商談が成立するとブラキオ商会を後にした、そして一旦グレンデル工業に向かう。
「これを貴方に預けておくわ、何かあったら連絡するからよろしくね」
ヨネ子はそ言うと9000の番号の通信の魔道具と魔動石をグレンデルに渡した。
「わかった、こっちも何かあったら連絡するが、お前さんのは0000で良いのか?」
「ええ、その通りよ」
話が終わるとヨネ子達は次に素材ギルドに向かった、ギルドマスターのガスパールにも1つ預けておくためだ。
「ギルマスは居る?」
ヨネ子が受付にそう言うと直ぐに伝えに行ってくれた、ヨネ子達を覚えていたからだ・・・・・絶対に怒らせてはいけない相手として。
そして直ぐに呼びに来たのでギルドマスター室に向かった。
「お久しぶり」
「ああ、久しぶりだな。また素材でも売りに来たのか?」
「いいえ、今日はこれを渡しておこうと思って来たのよ」
ヨネ子はそう言いながら通信の魔道具を1つガスパールに渡した、番号は9001だ。
「何だこれは?」
「これは通信の魔道具よ。今後何かあった時はこれで連絡を取り合えるようにね」
「通信の魔道具だって?それでどうやって使うんだ?」
「先ず魔力を込めながら0001と押してから「ON・OFF」を押してみて」
「こうか?」
ガスパールが言われた通りにやってみると、相手の魔道具からエレンの声が聞こえた、エレンはこの実験のために部屋に入らず待機していたのだ。
「お久しぶりですガスパールさん。エレンです、わかりますか?」
「なっ!?お前は今どこに居るんだ?」
「ギルドマスター室の外に居ます」
エレンはそう言いながらギルドマスター室に入って来た。
呆然とエレンを見つめるガスパールにヨネ子が説明を続ける。
「こっちから呼び出した時は魔道具が震えるから「ON・OFF」を押したら話が出来るようになるわ。話が終わったらもう一度「ON・OFF」を押す事。良い?」
「あ、ああ、わかった」
呆然とはしていたが話はしっかり聞いていたようだ。
「それからグレンデル工業のグレンデルも持ってるから後で番号を教え合うと良いわ」
「グレンデルも?そうかわかった、そうしよう」
ガスパールに魔道具を渡した後はウィンス村に向かった、そしてスクレを呼び出す。
「スクレ、ちょっと来なさい」
「はい、何でしょうか」
「これを諜報員全員に配りなさい」
そう言うとヨネ子は80個の魔道具をスクレに渡した、番号は0010〜0089だ、そして使い方を教える。
「ありがとうございます、これで情報の伝達が早くなります」
スクレは早速帰って来ている連絡員に魔道具を渡して説明していた。
翌日には50人の村人をゲートでハンバルングまで連れて行った、馬車を受け取るためだ。
受け取った馬車は50人が御者となってウィンス村に帰って行った、馬車に荷物を積み終えたころ護衛の元騎士達がやって来る事だろう。
しかしそれまでもう数日ある、なのでそれまでは『デザートイーグル』のホームで過ごす事にした、もちろん『デザートイーグル』にも通信の魔道具を渡しておくためだ。
「またお邪魔するわよ」
「ただいまー」
「こんにちは」
ヨネ子は遠慮なく、エレンはいつものように、エルは普通に挨拶して『デザートイーグル』のホームに入る、他の4人もそれぞれ挨拶して入っていった。
「いらっしゃいませ」
いつものように最初にメアリが迎えてくれる、今日は最初の挨拶がエレンでは無かったからだろう返事が「お帰りなさい」では無かった。
いつものようにリビングで寛ぐヨネ子一行、メアリとシェンムーも全員に紅茶を用意する。
「皆さん、『デザートイーグル』のみんなは明日まで仕事で帰って来ませんけど大丈夫ですか?」
紅茶が用意された後にメアリからそう言われた、ハンターとはそうそう毎日家に帰れる仕事では無いので仕方ない。
「ええ、良いわよ。今日は渡したい物があって来ただけだから」
ヨネ子はそう言ってここでも通信の魔道具を出した、そしてメアリとシェンムーに使い方を教える。
「これ凄いですねー。これが有ればいつでも直ぐに連絡が取れるんですね」
「そうよ、これを貴方達に渡そうと思って来たの。取り敢えず全員に一つづつ置いとくわ」
ヨネ子が渡したのは番号が8000〜8007の8個、『デザートイーグル』5人にメアリ、シェンムー、マルコ用だ。
番号もこの場で決めた、8000から順番にセリーヌ、アメリア、ユリアナ、ミランダ、シェーラ、メアリ、シェンムー、マルコだ。
そしてヨネ子達の番号も教えた、0000から順番にヨネ子、エレン、エル、アスカ、ブレイザー、ディーン、アーネストだ。
アスカは今のところ一人では使えないが、魔力操作の訓練をすれば使えるようになるはずなので持たせる事にした。
この日はハンターギルドでアスカ、ディーン、アーネストの3人が訓練をしただけで終えた。
翌日も『デザートイーグル』が帰ってくるまで暇なのでコルムステルの街を見て回る、そして食料を大量に買い込む、調査の時に一週間肉以外は収納の中の食材を使うだけで買い足せ無かったからだ。
これからも同じような事があるかもしれないので買える時に買っておく。
そしてこの日もハンターギルドでアスカとディーンとアーネストは訓練をする、前日は3人だけだったが今日はヨネ子とエルが付きっきりでシゴいている。
ヨネ子的にはそろそろ弟子を卒業させようと思っている、3人の強さは既にSランクの魔物をソロで倒せるくらいにはなっているからだ、武道で言うなら免許皆伝と言ったところだろうか。
キューシュー地方解放の時にはディーンは相性次第、アーネストはまだ無理だった事を考えると短期間でかなり成長している。
それにアスカは『白金神龍』の一員なので同行を続けるが、ディーンとアーネストには元騎士達の指揮官として働いてもらいたいと思っているのだ。
元騎士達もこの前の訓練でかなり強くはなっているが指揮する者が居ないのは問題がある、しかし強くなったからこそ誰でも良いと言うわけには行かない、その点ディーンとアーネストなら信頼出来るし腕っぷしも指揮能力も申し分ない。
そう言うわけでかなり厳しくシゴいていたので少し時間が遅くなった、なのでホームに帰ってみると『デザートイーグル』の方が先に帰っていた。
「いらっしゃい、私達はお風呂済ませたからみんなもどうぞ」
玄関に入ると風呂から上がってリビングに向かう途中のユリアナに会ってそう言われた、驚いた様子が無いので既に聞いていたのだろう。
なのでヨネ子達はお言葉に甘えて先に風呂を済ませる事にした。
風呂から上がりリビングに行くとセリーヌ達はそれぞれ自分の番号の通信の魔道具を持ってはしゃいでいた、よほど嬉しいのだろう。
「どうやら私が説明する事は何も無いようね」
はしゃぐ『デザートイーグル』を見てヨネ子が言った。
「はい、これ凄いですね。さすがマーガレットさんです。それでこれいくらするんですか?」
親しき中にも礼儀有りとは言うが、セリーヌもその辺りはキッチリとしている。
「要らないわ。魔物領域解放を手伝ってくれたお礼よ」
「あれは私達も儲けましたし、そう言うわけにはいきません」
「良いのよ、その代わり次も手伝ってくれると嬉しいわ」
「もちろんです。割と強い魔物が多くて楽しかったのでこちらからお願いしたいくらいです」
アメリアが喜んで返事した、『デザートイーグル』一の脳筋らしい。
翌日はまたウィンス村に向かった、開拓に行く者の準備は万端整っている、そして昼過ぎにやっと護衛の元騎士達28人がやって来た。
この日は村長宅で元騎士達を労った、疲れているからと言う事もあるが開拓第一陣の者達との顔合わせをしておく必要があったからだ。
これからかなりの長期に亘って共に過ごす仲間なのだ、先ずはお互いに顔を合わせて挨拶させなければならない、何か用事や問題が発生しても誰に言って良いのかわからないようではどうしようも無いからだ。
そしてその席でヨネ子が発言する。
「では明日からいよいよキューシュー地方に向け出発するわけですが、元騎士達は本日を持って正式に騎士とします。そして騎士団長をディーン、副騎士団長にアーネストを任命します」
ディーンとアーネストには『デザートイーグル』のホームで事前に通達していたので驚いたりする事はない、ただ寂しそうにはしていた、別行動になるのが寂しいという気持ちが無いわけでは無いが、本当に独り立ち出来るのだろうかと言う不安の方が大きいからだ。
ただこれはヨネ子とエルが凄すぎるからそう思うだけで、普通に騎士として考えればディーンもアーネストも世界でもトップレベルの実力者なので問題は無い。
「まだ国はこれから作るのであり国名さえ有りませんが、騎士の皆さんは新国家の騎士として誇りを持って仕事に当たるように」
「「「「「「「「「ははっ!」」」」」」」」」
ディーンとアーネストを含む騎士達全員が元気よく返事した。
その後ヨネ子はディーンとアーネストを呼び今後について指示を出した、ここから50台の馬車でまともに迎えば開拓開始は3ヶ月近く先になる、これでは時間がかかる上に物資も余計に必要になる、特に食料がだ。
そこでヨネ子は国境毎にゲートで移動する事にした、いきなりキューシュー地方に行けば良いと思うがそれでは後々問題が起こる可能性が有る。
取り敢えず開拓者と騎士達全員がキチンと段階を踏んでキューシュー地方まで行った証拠を残さなければならない、そうしなければキューシュー地方と隣接するブーストン王国以外には行けなくなってしまう、入国した証拠が無ければ出国が出来ないので最悪スパイと思われて死罪と言う事も十分ありうるのだ。
なので出発して直ぐはリシュリュー王国の国境まで行き出国、隣のエムロード大王国は魔物領域のせいで入国審査の砦が遠いためその砦の前までゲートで行き入国してからガベン王国との国境まで行き出国する。
ガベン王国に入国すると今度はレベンド王国、最後にブーストン王国に入国してからゲートでキューシュー地方の入り口まで連れて行く。
開拓地まで連れて行かないのは道が無いためだ、街を作れば当然道が必要になる、なので少しでも沢山の人や馬車を通して轍のような物でも良いので道を作って行かなければならない。
開拓を始めても騎士団の半数はこのブーストン王国へ続く道を何度も往復させる予定だ、そうする事で移動しやすいコースが見つかり、そのコースが道となる。
なのでゲートでの移動はここまで、後は開拓団と騎士達に任せた。
因みに開拓団の団長とディーン、アーネストにはヨネ子謹製の地図を渡している、川や森の場所はもちろんだが、危険生物の分布を知ってもらうのが主な目的だ。
開拓団と騎士達の移動を済ませたヨネ子達は取り敢えずブーストン王国の王都ブータンのハンターギルドに行ってみる事にした、出来ればこの国の国王と会い話を通しておきたいからだ。
だからと言ってヨネ子達はもちろん『デザートイーグル』でさえ来たことの無い国なので素直に国王に会える可能性は少ない、いや全く無いと言っても良いだろう、だからこそそのキッカケを掴めないかハンターギルドに行ってみるのだ。
そしてハンターギルドで情報掲示板と依頼掲示板を見る、情報掲示板には何も情報が無かった。
依頼掲示板の方はそれなりに色々貼ってある、もちろん難しいか割の良くない依頼ばかりだ、割の良い依頼など貼り出したと同時に奪い合いになるのが常なので仕方ない。
しかしその依頼の中には王族はもちろんだが下級貴族の依頼さえ無かった、なので取り敢えず今日は宿に泊まり今後について考える事にした。




