表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/208

021 魔物で訓練

ヨネ子とエルとディーンの3人が村に戻るとブレイザーが迎えてくれた、エレンとアスカはまだ狩りから戻っていないらしい。


「おや、お帰りなさい。その方が修行をしていた男ですか?」


「そうよ、名前はディーン。これから一緒に旅をするからね。それからディーン、この人は私たちの料理人でブレイザーよ」


ヨネ子がお互いを紹介した。


「私はディーン=ベネディクト。お二人の従者となりました、以後よろしくお願いします」


「私は専属料理人のブレイザーです、こちらこそよろしくお願いします」


「ディーン、後2人仲間がいるけど今は狩りに出かけてるみたいだから後から紹介するわ。それから、あなたはこれから修行を付けるんだから従者では無く弟子よ」


「はっ、わかりました」


ヨネ子に言われディーンは認識を改めた、だが従者でも弟子でも敬うべき存在に変わりはないので喋り方は変えないようだ。


昼過ぎ、村の外でディーンは早速ヨネ子とエルにしごかれる、今度はエルとの模擬戦だ。

エルはまだ人の身体に慣れていない、日常生活はもちろん軽い戦闘まではヨネ子との剣の訓練で問題無く動くようになったが、ディーン相手のような本格的な戦闘になるとやはり動きが悪い。

それでもエルは神龍なのである、圧倒的なスピードと膂力でディーンに遅れを取ることはない、この戦闘はお互いにとって良い訓練になっている。


日が傾きかけたころやっとエレンとアスカが帰って来た、それを見たディーンは即座に反応する。


「少女よ、危ない、早く逃げろ」


ディーンにはアスカがエレンを狙っている猛獣のように見えたのだ、落ち着いて見れば仲良く歩いて来ていると分かるのだがエルとの訓練で興奮状態の身体と疲れた頭では勘違いしても仕方ないかもしれない。


ディーンの言葉を聞いて立ち止まったエレンとアスカに向かってディーンが走り出す、エレンの救出に向かっているつもりなのだ。


その光景をヨネ子とエルは落ち着いて静観している、この2人にはこの後の決着が予想出来ているからこそだ。


走ってくるディーンに対してアスカも全面に出て戦う姿勢を見せる、アスカには静観しているヨネ子とエルが見えたのでこの男を殺さず無力化する事を期待されていると瞬時に理解した。

この男が敵ならヨネ子やエルが生かしておくわけはないし、自分の手に余るようなら手は出さずとも声はかけてくると思ったからだ。


ディーンはアスカが走って来たのを確認すると少し手前で止まって剣を構えた、余り近付き過ぎると間合いが取れないからだ。

それに対しアスカは猛然と突っ込む、アスカの戦闘は肉弾戦なので当然だ。


ディーンは突進してくるアスカに対して小さく鋭い剣撃を加える、ヨネ子に最初に言われた事をしっかり守っている。

しかしアスカはそれを難なく躱す、アスカもずっとヨネ子やエルに鍛えられて来たのだからこれくらいは出来ない方がおかしい。


ディーンはその後も大技を封印して鋭くて早い剣撃を浴びせるがアスカの身体を捉えることは出来ない、アスカの方も防戦一方で攻撃の糸口が見えない、剣を持つ相手に肉弾戦ではよほど実力に差が無ければ攻撃の間合いに入る事も容易では無いからだ。


それでもディーンはエルとの訓練中だったのだ、当然ながら疲労はかなり蓄積している、なので直ぐに動きが悪くなった。

アスカは当然それを見逃さない、一瞬の隙を突いてディーンの横腹に頭突きを加えて倒した。


「やっぱりまだアスカの方が強かったわね」


戦闘の結果を確認するとヨネ子がそう言ってディーンに近付いた。


「ど、どう言う事ですか?」


ディーンは横腹を押さえながら立ち上がり聞いた。


「その子はアスカ、私達の仲間で言わば貴方の姉弟子ね」


ヨネ子がディーンに説明した、それを聞いたアスカがヨネ子に質問する。


「マーガレットさん、この人が探してた修行中の男ですか?」


「そうよ、名前はディーン、これから私達と一緒に旅をするの。仲良くしなさい」


「わかりました。ディーンさんよろしくね」


アスカは直ぐにディーンに向かって挨拶をした、しかしディーンにはまだ状況が良く飲み込めていない、まあスノーサーベルタイガーが人間の言葉を喋っていて仲間で姉弟子などと言われて直ぐに納得できる人間の方が少ないだろうが。


そこへエレンとエルもやって来た、そしてエレンも挨拶する。


「ディーンさんと言うのね。私はエレン、よろしくお願いします」


エレンは挨拶が終わると直ぐにディーンの診断をした、アスカの頭突きをまともに食らって吹っ飛んだのだ無傷のはずはない。

案の定肋骨2本にヒビが入っていたのでそれをすぐさま治療した。


そこでやっとディーンは正気に戻った。


「あ、ああ、ありがとうございます、ディーンと申します。エレン様ですねこれから宜しくお願いします」


そしてまだ信じられないといった顔ながらアスカにも挨拶する。


「アスカ様、仲間とは知らず失礼をいたしました。私はディーンです、宜しくお願いします」


ディーンからすればエレンもアスカも格上だと思ったので全員を「様」付けで呼んだ。

しかし流石にヨネ子とエルはともかくエレンとアスカは言われ慣れていないので「様」付けされるのには違和感を覚える、なのでどちらも「さん」付けで呼ぶ事になった。


予定外の顔合わせが終わると全員で村に戻る、そしてその夜はエレンとアスカが狩って来た動物の肉でパーティーを開いた。


翌日、エレンとアスカの狩って来た動物の一部をお礼として村長に渡すとリシュリュー王国王都ベイルーンに向け再び旅立った。


因みにエレンとアスカの狩って来た動物はまだ結構ある、当分肉には苦労しないだろう。


村を出てから2日目、ようやくリシュリュー王国に入った、場所はクラウディア辺境伯領。

ベイルーンまでの街道はこの後ローランド伯爵領を通って行くのだが、ローランド伯爵領の北には『デザートイーグル』の友人イリア=ローランド=フォン=バーニア女子爵の治めるバーニア子爵領がある、なのでエレンの希望も有り一旦バーニア子爵領領都バーンブルクを目指す事にした。


クラウディア辺境伯領からバーニア子爵領へは直行出来ない、間にクラウディア辺境伯領、ローランド伯爵領、バーニア子爵領の三領に跨る広大な魔物領域があるためだ、そのため通常は魔物領域の西側を回るコースが取られる。


ヨネ子達もこの西回りコースで向かう事にはしたが、ハンターパーティー『白金神龍』としては魔物領域を素通りと言う訳には行かない。

この魔物領域は広さが東京23区と同じくらい有りSランクの魔物が生息する場所なのだ、収入としてもアスカとディーンの訓練としても素通りするのは勿体無い、なので1日は魔物狩りをする事にした。


クラウディア辺境伯領では人材集め的には大した収穫は無かったが、気候が合っているのか野菜がふんだんに売っていたので食料的には大収穫と言ってよかった。


そんなクラウディア辺境伯領を後にする前に予定通り魔物領域へと繰り出す一行。


「これから魔物領域に入るけどブレイザーは残って食事の準備、エレンもブレイザーの護衛として残っててちょうだい」


「「わかりました」」


エレンとブレイザーが返事する。


旅を始めてから魔物領域で狩りをするのは今回が始めてだった、なので今回は2人に指示を出したが次からは護衛役だけ指名する予定だ。


「じゃあアスカは私と、ディーンはエルと組んで狩りをするわよ」


ヨネ子が2組に分けたのはそれぞれヨネ子がアスカを、エルがディーンの訓練を兼ねるからだ、一緒に行動するとどちらか片方ずつしか戦えないので効率が悪い。


「私も狩って良いの?」


エルが聞いて来た、魔物戦はよほど数が多くない限りディーン1人でも対処出来ると思っているからだ。

尤もそれはSランク以外だ、ディーンの実力ではまだSランクの魔物を単独で討伐するのは難しい。


「訓練になりそうにない雑魚なら素材を痛めずに狩っても良いわよ」


「わかったわ」


相談も終わりそれぞれ魔物領域へと入って行く、そしてヨネ子、エルそれぞれが索敵魔法を使う。


ヨネ子は早速Sランクの魔物の反応を捉えたのでアスカと共にそこへ向かう、途中AランクやBランクの魔物と遭遇したがアスカと2人簡単に蹴散らして最短距離でSランクの魔物の元に到着した。


「じゃあアスカ、自由にやってみなさい」


魔物はフォレストリザードと言う亜竜、リザードとは言うが足の長いワニのような魔物だ。


「行きます」


アスカはそう言うとフォレストリザードに向かって行った、そしていきなりの前足の振り下ろしがもろに決まったが大して効いているようには見えない。


その後もアスカの猛攻が続くがフォレストリザードもその見た目からは想像できない動きで致命傷は避けている、何よりアスカの最大の武器である牙での攻撃は完全に避けられている、本能的に牙を最も警戒するべきとわかっているのだろう。


フォレストリザードも噛みつきや尻尾での攻撃を繰り出すがアスカには全く通用しない。

結果、約20分ほどで危なげなく倒すことが出来た。


「アスカ、もうちょっと相手の事を見て攻撃するようにしなさい。貴方は正面から攻めすぎるわ」


ヨネ子は完勝と言っていい勝利にも褒めることは無かった。


「相手を見てですか?どう言う事でしょう?」


アスカには言葉以上のことはわからなかった、相手を見ていなければ攻撃を躱すことなど出来ない、つまり自分は相手をしっかり見ていると思っているのだ。

もちろんヨネ子が言いたいのはそんな事ではない、弱点や攻め方を考えろと言いたいのだ。


「例えば今の相手。脚を掛けるなり横腹から突き上げるとかしてひっくり返してしまえば簡単に首元を噛み裂いて勝てたわよ」


「ああ、なるほど。そう言うことですか。わかりました、次はそうします」


ヨネ子のアドバイスが終わると次の魔物を探す、ヨネ子の索敵範囲は広いので直ぐに次の獲物が見つかった。


そこへはまた最短距離で向かう、なので再びAランクやBランクの魔物との対戦が待っているがまたもや簡単に蹴散らして目的の獲物のところに到着した、またもやフォレストリザードだ。


「今度は5分以内に倒しなさい」


「わかりました」


ヨネ子の指令に元気よく答えて向かって行くアスカ、そしてアスカはフォレストリザードの直前で空中に駆け上がる。


フォレストリザードは身体構造上上方の視界が弱い、なので上方から死角を突いて側面に降り立ち頭突きで横腹から突き上げた。


流石によく見えていない状態から攻撃を受けたのでアスカの思惑通り仰向けに倒れ込んだ、そこへ間髪入れずアスカの牙攻撃がフォレストリザードの喉元に決まった。


攻撃開始から決着がつくまで1分弱、ヨネ子のアドバイスが遺憾なく発揮された。


「良くやったわ、その調子で頑張りなさい」


これにはヨネ子も褒めるしかない、それを聞いたアスカは嬉しそうに答える。


「ありがとうございます」


その後も2人は狩りを続けアスカはSランクの魔物を合計6体倒していた、素材としても最初のフォレストリザード1体以外は美素材と言っていい。


その頃エルもディーンにSランクの魔物と対戦させていた、こちらはまだ単独では荷が重いのでエルがそばでサポートしていた。

サポートと言っても攻撃には参加しない、ダメージの大きそうな攻撃だけを凌いでいたのだ。


ダメージの少ない攻撃はスルーしているのでディーンの身体は結構傷だらけになっている、それでもなんとかこちらもフォレストリザードを倒すことが出来た。

ディーンの今の実力的にはAランクの魔物の単独討伐もギリギリくらいだ、それだけにサポートを受けたとは言えSランクの魔物を狩れた事は自信になった。


こちらはヨネ子達とは違いサクサクとは進まない、Aランクの魔物相手でも蹴散らしたりは出来ないからだ。

そしてその実力では保たない物がある、そう、2体目のフォレストリザード戦の途中でディーンの剣が折れてしまったのだ。

元々山の中の修行で使っていたため手入れなど出来ていない、それをそのまま使っていたのだ、それに剣自体もディーンの実力に見合った物ではなかった事も折れた原因の1つだろう。


仕方ないのでそのフォレストリザードはエルが倒した、そしてエルのゲートでさっさとエレン達の元へと帰って行った。


エルとディーンが帰ってしばらくするとヨネ子とアスカも帰って来た、悔しそうな表情のディーンと対照的にアスカは上機嫌だ。


「ディーンはどうしたの?」


ヨネ子が理由を聞いた、エレンやブレイザーは心配しているがヨネ子はそんな事はしない、心配するよりその心配事を解決する方が遥かに建設的だと思っているからだ。


「剣が折れてね。仕方ないから途中で帰って来たの」


エルが説明する、誰も気にしてはいないが当のディーンが剣を折ってしまった事を気にして落ち込んでいるのだ。


「仕方ないわね、じゃあ食事が終わったらディーンの剣を買いに行くわよ」


ヨネ子がそう言うと少し遅めの昼食が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ