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198 ディラルク王国での戦い

エレンと流一の対応は早かった、2人は直ぐにアスカと相談して傭兵として東方に向かう騎士を募ったのだ、ただ本国防衛の任がある為当然ながら幹部は出兵不可にした。


龍騎士団、即応騎士団総勢約11000名の内ハンター登録しているのはその約3割の3500名程、この内傭兵を希望したのは約3000名、想定以上の数だ。


さらに魔法師団にも声をかけていた、こちらも希望者は100人を超えたがその全員を送り込むわけには行かない。


因みに騎士団や魔法師団でハンター登録している者は多いが実際にハンターとして活躍している者はごく少数だ、皆安く素材を手に入れるためや次の魔物領域解放戦があった時のための魔物戦の訓練のために登録しているからだが、そのためほとんどの者はCランクから上がっていない、しかし当然ながら実力は全員Aランク以上だ。


エレン達3人はヨネ子達にも手伝ってもらい人選を開始した、結局傭兵として東方3国に赴くのは総勢735人となった。


内訳は睨み合いになったグランドラス王国に騎士100人魔法師5人、激しい戦闘が予想されるエムロード大王国とディラルク王国に騎士300人魔法師15人づつだ。


この間に『デザートイーグル』にも打診してエムロード大王国への救援の約束を取り付けている。


人選が終わるとそれぞれ目的の国へ向かう、『白金神龍』は選抜された105名を連れてグランドラス王国へ、ただしセラフィムだけは315名を連れてディラルク王国へ向かった。


時間の節約のためにゲートを使って行く事にしたが選抜された魔法師の中にディラルク王国に行ったことのある者が居なかったからだ、ただセラフィムはこの後も引率代わりにディラルク王国に留まる。


エムロード大王国には『デザートイーグル』が行った事があるのでこちらは『デザートイーグル』に連れて行ってもらった。


それぞれのチームが向かったのはそれぞれの王都だ、ハンターの傭兵募集は3国とも王都が一括して行なっているからだ、それだけに急いでは来たが緒戦には全く間に合っていない。


緒戦のグランドラス方面はカペラ宗主国の思惑通り戦線は膠着していた、グランドラス軍はエムロード大王国、ディラルク王国との取り決めに従い数度攻城攻撃を試みてはいたが守勢に回られたままでは全く切り崩す事が出来ずに攻めあぐねていたからだ。


ディラルク方面はディラルク軍の劣勢が顕著だった、理由は総指揮官に任命されたウェンディー侯爵が無能だったからの一言に尽きる。


ウェンディー侯爵はカペラ宗主国軍の数が35000人と聞いて侮ったのだ、そのため功名心から派閥の力を使い無理矢理総指揮官の地位を得て出兵して行った。


結果は惨敗、55000の兵の内死者こそ3000人程と少なかったが1年以上戦線復帰不可能な者が20000人も出てしまった、それ以外でも今回の防衛戦には使い物にならない兵も10000人以上いる。


結果ドラゴニアの騎士達が来るまでに国土の約1割を占領されてしまった、現在カペラ宗主国軍は占領した城塞の1つで占領地の住民を無理矢理徴兵して40000人規模で再編成を行なっている。


エムロード大王国方面も劣勢を強いられている、エムロード軍の総指揮官はシャイア公爵、特段優秀と言うわけでもないので良く戦っているとは言える。


エムロード大王国にはカーレムとザールクリフと言う2つの属国が有る、エムロード大王国ではその属国を巡って3つの派閥が鎬を削っている、1つは国王やルビー公爵の属する最大派閥の現状維持派、もう1つは属国を本国に組み込む併合派、最後の1つは属国を再び独立させる独立派だ。


この内シャイア公爵は独立派になる、そして独立した暁には国王若しくは公王になろうと目論んでいるのだ、そのため戦場となっている属国のザールクリフを守るために必死で戦っているという事だ。


しかしこちらもカペラ宗主国軍35000に対して50000人と数的に優位には立っていたが、クロンジェクト将軍の用兵の前ではあまり意味が無かった。


数的優位にある為籠城戦術をとらずに野戦を行った事がそもそもの劣勢の原因だ、籠城して相手の兵を削る戦術なら数的優位がさらに大きくなるので有利に戦争を進められたかもしれないが時既に遅しである。


そんな情勢の中でグランドラス王国王都イーグランデに着いたヨネ子達はハンターギルドではなく王宮に向かった、そして自分達及びドラゴニアの騎士と魔法師の傭兵契約を行った。


これはドラゴニアの騎士と魔法師を独立遊軍とするためだ、ハンターギルドで傭兵依頼を受けるとグランドラス軍の指揮命令系統に組み込まれる事になるので動き辛いのだ。


傭兵契約から16日かけてヨネ子達は他の兵士と共に国境を超えた、カペラ宗主国がグランドラス王国とは籠城戦と決めたので戦場がカペラ宗主国内のラクーン城塞となっていたからだ。


この増援によりグランドラス王国軍とカペラ宗主国軍の兵力差は60000対30000と2倍になった、しかし攻城戦となれば最低でも攻める方は3倍は欲しい、なのでグランドラス王国軍の指揮官はまだ積極的な攻勢には出なかった。


ヨネ子達もこの指揮官の方針に従って敵の城塞前で野営をする事にした、兵数はあまり多くなくてもドラゴニアの騎士と魔法師ならこの状況を打破出来る力は持っている、しかしヨネ子達の目的はカペラ宗主国を倒す事ではなくグランドラス王国を守る事なのでグランドラス軍が積極的に攻撃しない以上余計な手出しはしない事にしているからだ。


ディラルク王国に向かったセラフィム達も王都サレンダーでヨネ子達と同じように独立遊軍として傭兵登録した、そしてこちらは緒戦で大敗を喫している為8日後には最前線に到着し交戦する事となった。


ディラルク王国は増援したとしても緒戦の敗退が響いて兵数は40000人しかいない、ただカペラ宗主国側も徴兵再編して40000人と同数での戦いである。


現在ディラルク王国側が占領された城塞は4つ、カペラ宗主国軍はその内の2つの城塞に20000人づつが立て籠っている。


カペラ宗主国が籠城したのは単純に食料調達を行う為だ、元々35000人分の兵糧しか用意していないので追加徴兵した5000人分の食料が足りないのだ、なので占領地で無理矢理徴収している。


普通であればこんな事は敵に妨害される為出来ない、だがディラルク王国の総指揮官ウェンディー侯爵は無能な為必要な密偵を放っていなかった、なのでディラルク王国側はカペラ宗主国が兵糧不足になっている事も現在進行形でディラルク王国内の占領地で悪質な食料徴収をしている事も知らないのだ。


そのため通常の籠城と思ったウェンディー侯爵はセラフィム達増援部隊が来ても1週間程は城塞前での睨み合いを続けていた、こちらもドラゴニアの騎士と魔法師なら難なく攻める事が出来たのだがヨネ子達と同じ理由でディラルク王国軍の方針に順じていた。


数日後、やっと動きがあった、カペラ宗主国軍が野戦に出て来たのだ、リヒテン将軍率いる40000の全軍だ。


これに合わせてウェンディー侯爵も応戦する構えを見せた、相手の陣に合わせて方陣を敷く。


この時セラフィム率いるドラゴニアの騎士達は陣の後方に位置取っていた、ウェンディー侯爵があからさまに参戦させたくない態度だったからだ、緒戦の敗戦を反省するどころか未だに功名心にはやっているのだ。


戦闘はディラルク軍の魔法師団の攻撃から始まった、そして攻撃と同時に歩兵が突撃して行く、魔法攻撃で怯んだところを突くつもりだったのだろう。


しかしカペラ宗主国軍には全く通じていない、そして戦闘開始から30分もせずディラルク王国軍の敗戦が濃くなって来た。


これに対しウェンディー侯爵はただ狼狽えているだけで何も対処が出来ていない、仕方ないのでここでセラフィムがドラゴニアの騎士達を動かす事にした、ドラゴニアの騎士達は独立遊軍なのでそれが出来る。


騎士達が騎馬強化を使い参戦すると戦況は不利から膠着状態へと変わった、しかし状況が不利すぎたので有利な状況までにはならない。


騎士達は向かって左から戦闘状態の前線へと突っ込んでいったが敵を蹴散らすと言うほどではないからだ、これはカペラ宗主国軍が想定外に強かったとか言うわけではない、単に戦闘の邪魔をして魔法師達がディラルク軍の兵士の治癒を優先するように立ち回っているからだ。


しかしディラルク軍が優位に立ったわけでもないのにリヒテン将軍は全軍を城塞に撤退するよう命令した、この辺りの見切りの良さは流石としか言いようがない、ここからは再び有利になる事はなく撤退が遅れるほど兵士の損耗が激しくなっていたはずだからだ。


これによりディラルク軍は一応勝ち戦と言えなくもない1日を終えたが兵数は40000対37000ととうとう逆転されてしまった。


因みにこれはドラゴニアの魔法師達がいたからだ、もしいなければディラルク王国軍の兵数は30000近くまで減っていただろう、それほどひどい戦いだった。


翌日、リヒテン将軍はそのまま籠城していた、想定外の強者が参戦して来た事により対応を考えるためだ。


これに対しウェンディー侯爵は昼ごろまで敵軍がでてこないのを確認すると37000の兵の内7000をほぼ空城となった城塞に向かわせた、城を1つでも取り返したと言う実績が欲しかったためだ、この後に及んでなお功名心や保身に走るとんでもない指揮官だ。


ただいくら無能な指揮官とはいえドラゴニアとしてはディラルク王国をカペラ宗主国に渡す訳には行かない、なのでここは指揮官を変更すべくセラフィムが王宮へとゲートで直訴に向かった。


セラフィムと国王の謁見はすぐに叶った、なのでまずは戦況を報告する。


「陛下、貴軍は現在カペラ宗主国軍に対しかなり不利な戦いを余儀なくされています。こう申しては陰口のように聞こえるかもしれませんが指揮官の能力が全く足りておりません。直ぐに別の指揮官に変更願います」


この後セラフィムが戦場に到着した時の状況から先日までの状況について知り得る限り詳細に伝えた。


「なんと、戦況はそれほど逼迫しておったのか。なるほど、良く伝えてくれた、直ぐに将軍を更迭する故待っていてくれ」


ディラルク王はそう言うと直ぐに重臣達を集めて会議を行った、そして新たな指揮官を任命する、それはかつて騎士団の団長も務めた事があるグリムト伯爵だった。


セラフィムは早速国王の勅書を受け取ったグリムトを連れ戦場に戻って行った。


国王の勅書を持つグリムト伯爵がやって来た事にウェンディー侯爵は狼狽えていた、爵位としてはウェンディー侯爵の方が上だが指揮官をグリムト伯爵が担うのは王命だからだ、そしてウェンディー侯爵はそのまま本陣で事の成り行きを見守る事になった。


翌日、再び戦は野戦となった、今度は40000対30000、ディラルク軍の方が数的に不利になってしまった。


しかし今回はドラゴニアの騎士達が最前列に揃い偃月陣を敷いた、突撃して短期決戦に持ち込む作戦だ、グリムト伯爵は遊軍であるはずのドラゴニアの騎士達に頭を下げて先陣を願い出て来たからだ。


これに対してカペラ宗主国軍は方円陣を敷く、元々はドラゴニアの騎士達は数が少ない上に遊軍なので方陣で迎え撃つはずだった、そしてドラゴニアの騎士達が向かって来た時鶴翼の陣に移行してドラゴニアの騎士達だけをすり潰す予定だった、今はそれが出来るほど戦力差が生まれているからだ。


しかし予定外にドラゴニアの騎士達が先鋒になり短期決戦に持ち込もうとしているのを見て長期戦に持ち込むよう作戦を変更したのだ。


そして戦闘が開始される、予定通りドラゴニアの騎士達が真っ先に突っ込む、ただ今回は身体強化だけで騎馬までは強化していない、騎馬まで強化すると後に続くディラルク軍の騎馬や兵士を置き去りにしてしまうからだ。


だが今回の戦いはそれだけではない、ここに来てドラゴニアの魔法師達がその実力を見せつける、騎士達が突撃したと同時に敵陣の中心で特大のトルネードブレイクをお見舞いしたのだ。


これまでウェンディー侯爵のせいでドラゴニアの魔法師達の実力がカペラ宗主国軍に漏れていなかったのが幸いした、カペラ宗主国軍のリヒテン将軍は完全にこの魔法師達の実力を読み違えてくれたからだ。


こうなってはカペラ宗主国軍の混乱は止まらない、いきなりの魔法攻撃に指揮命令系統は全く機能せず40000の将兵がただの烏合の衆と化してしまった。


そこへドラゴニアの騎士達を先頭にディラルク軍が襲いかかって来たのだ混乱に拍車がかかったのは言うまでもない、そしてほんの1時間もせず戦闘は終了した、カペラ宗主国軍の将兵で城塞に逃げ込めたのはほんの10000人ほどだった。


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