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192 榮斉急襲

呉越を出たヨネ子達はそのまま各地の人材を探していた、約2ヶ月かけて80人の人材を登用したが全員文官だ、流石に戦争の無くならない世界らしく戦闘力の高い人材は粗方国が登用済みだったので仕方ない。


それに対し崔燕のように国民全てに科挙を受ける権利を与えている国は少ないので知力の高い人材はそれなりに在野に埋もれていた、その人材を登用して将来の中華帝国の文官として育てる。


と言う事で発掘した人材は全て榮斉に連れて行って教育中だ、今後泰山の城が出来上がったら今度はそちらに連れて行って教育の続きを行う。


ここでまた一旦東洋から離れる、地球の医師と看護師をドラゴニアに連れて行き教育するのだ。


連れて来たのは日本から渡辺琢磨含め7人の医師と渡辺詩音含む12人の看護師、アメリカからは医師10人、看護師15人だ、日本からはヨネ子達が去った後に琢磨がスカウトした1人が追加されている。


ヨネ子は全員集めると日本とアメリカの医師2人ずつをエルに任せてその他の医師と看護師の教育を行った。


看護師には普通に魔法を使った看護方法を主に教えた、しかし医師には病気の治療とは別に反対の病化も教えた。


病化と言っても健康な人を病気にさせるわけでは無い、これは検体対策だ。


異世界に連れて来る者は検体登録して異世界の遺体とすり替える事になっている、なのでそのままでは検体の情報と解剖結果に齟齬が出てしまい工作がバレる可能性が出て来る。


これの対策が病化だ、つまりすり替える遺体を解剖しても検体情報と齟齬が出来ない程度まで魔法で病気にして症状を進行させるのだ。


まあ優秀な医師と看護師しかスカウトしていないのでこの教育は割と上手く行ったので後は魔力を伸ばす訓練が始まる、こちらの方がよほど辛いだろう。


エルに預けた4人にはエルが教育する、基本的には心理学に近い、この4人は治療のための人材では無く異世界に連れて来るに足る人物か信用できる人物かを見極めるための人材なのだ。


医師達の教育も一段落し、後は魔法師団に任せたところで榮斉から連絡が来た、榮斉の東の隣国櫂告と燕按(エンアン)の連合軍が攻めて来たと言うのだ。


櫂告・燕按連合軍の兵力は約90000、これに対して榮斉軍は竜騎兵8000、騎兵・歩兵・弓兵併せて30000と圧倒的に少ない。


これにはもちろん訳がある、榮斉の諜報で得た情報では櫂告と燕按の間で戦争が有ると言うものだったのだ、そのため榮斉は軍備をほとんど整えていなかった。


クーデターの時には竜騎兵無しでも50000の兵を集められていたが、今回は突然の襲撃であったために徴兵が間に合わなかったのだ。


そして徴兵が間に合わなかったと言うことは食料の調達も間に合っていないと言うことだ、通常の備蓄分だけでは38000の兵士では5日分くらいしかない、なので現在は大急ぎで近隣の村落から徴収しているところだ。


一応同盟国である咸興に援軍の使者を送ってはいる、しかし援軍が到着するのは早くて半月以上かかる、このままではそんなには持たない。


櫂告と燕按は当然ながら水面下で手を組んでいる、その二国が手を組んだ原因こそ龍聖、そして周泰の部下達だ。


龍聖の出現と世界(正確には東洋)統一は周泰の部下達がヨネ子の命により広く受け入れ歓迎されるよう広めている最中である、なのでその話を聞いた櫂告・燕按の王族が危機感を持つのは当然の話だ。


そこで両国は秘密裏に会合を持ち、両国の国境の中でも最も榮斉寄りの馬韓平原で合流し共に榮斉を攻め滅ぼす密約を交わした。


ただ、馬鹿正直に連合を組んで榮斉を攻めるとなると当然榮斉も反撃の準備をする、それでは勝てなくはないが両国の被害も拡大する。


そこで考えたのは両国の戦争を隠れ蓑にすることだ、両国ともこれまで頻繁に戦火は交えている、そしてこれまで榮斉にはほとんど攻めたことがない、これはもちろん竜騎兵の精強さが抑止力となっていたからだがこれを利用して表向きでは馬韓平原で両国が戦争を行うと喧伝した。


これにはつい最近櫂告が遼鄭に戦争を仕掛けられ辛くも退けた事もいい目眩しになっている、櫂告が遼鄭との戦争で疲弊している今が攻め時に見えるため燕按が櫂告を攻めても不自然には思われないからだ。


突然の急襲に榮斉王趙驁は慌てた、そしてなんとかかき集めた迎撃軍が先の数字だ、ただ竜騎兵8000と騎兵約5000は正規兵のため練度は十分だが、それ以外は正規兵と徴収兵の混成で訓練も十分ではないので軍全体で見れば弱兵と呼べる。


それが兵数でも倍以上の差があるのだから勝てる見込みは皆無だ、なので趙驁は咸興に援軍の要請をすると同時にドラゴニアにも援軍を要請した。


ただ趙驁の思惑はドラゴニアからの援軍ではなく、ドラゴニアで訓練中のドラゴニア東洋軍の派遣要請だった。


これに対しての返事はドラゴニア東洋軍ではなくドラゴニアの騎士と魔法師の派遣だった、ヨネ子はこの事態を予定はしていなかったが予測はしていたからだ、それもごく高い確率の可能性として。


そもそも東洋統一を声高に宣言しているのである、覇権争いに奔走している各国が指を咥えて見ている方がおかしい、当然ながら出る杭は打たれる。


いくら殺し合い憎しみあっていても、より強大な敵が現れた時には一時的に手を取り合って対処することは古今東西類例にいとまは無い。


何より出過ぎれば飲み込まれるとわかっている杭をむざむざ放置するような愚かな者に覇権など取れるはずはない、東洋の各国は戦争が絶えない中で生き残って来た生え抜き達なのだ、だからこそヨネ子は可能性が高いと考えていたのだ。


現在のドラゴニアの軍制は人口が既に20万を超えた事でさらに再編が進んでいた、トップが元帥で流一が就任、その下に騎士団と魔法師団と防衛軍があるのは変わらないがその下が大きく変わっている。


防衛軍の方は第一から第三の3つの軍団がありそれぞれ10000人規模の軍隊だ、そしてルディ・ガレット・ボルトンの3人がそれぞれ軍団長としてまとめている、この3人の地位は元帥直属だが龍騎士団の団長と同じになる。


騎士団の方は総長のアスカの元一騎当千の強者だけを集めた龍騎士団と通常の即応騎士団に別れている、ただし他国にはある近衛騎士団はない。


因みに李香蘭は正式な近衛騎士だがまだ1人しかいないので騎士団にはなっていない、そして身分的には龍騎士団の団員と同等になっている。


龍騎士団はその性質上人数は多くなく一軍団200人で5軍団総勢1000人となる。

呼び方はこの世に5体しかいないとされる神龍に因んで白金騎士団、紅緋騎士団、蒼藍騎士団、碧緑騎士団、闇黒騎士団と呼ばれている。


余談だが闇黒神龍は既に陞神しているが同じ神龍以外は知らない。


即応騎士団は龍騎士団の丁度10倍、1騎士団2000人で5騎士団総勢10000人となる、そして基本的には龍騎士団のバックアップとしてセットで行動する。


具体的には第1騎士団は白金騎士団と、第2騎士団は紅緋騎士団と、第3騎士団は蒼藍騎士団と、第4騎士団は碧緑騎士団と、第5騎士団は闇黒騎士団とセットで動く。


魔法師団はリーグを総長、リーアを副総長として10師団、1師団100人で総計1000人の規模となる。


この内榮斉に派遣するのは紅緋騎士団と第2騎士団、さらに第4魔法師団の総勢2300人だ。


榮斉派遣軍に対しヨネ子が訓示する。


「ではこれより全員を榮斉へと連れて行きます。敵軍90000に対し味方軍は訓練もおぼつかない弱兵が四万弱しかいません。ですが東洋では治癒魔法使い以外の魔法使いがほとんどいません、なのであなた達ならいくら数の差が圧倒的であろうと問題なく勝てると信じています。皆さんにはドラゴニアの威光を見せつけてくれる事を期待します」


「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおお」」」」」」」」」」


全兵士が気合の雄叫びを上げて榮斉へと向かった。


向かった先は王都魏陵の近郊、戦場となる国境付近には誰も行ったことが無かったので仕方ない。


ただここから戦場までは騎馬強化を使っても3日かかるが、敵の進行も数が多いだけにあまり早くはない上に榮斉からの連絡が早かったため開戦には間に合うようだ。


因みにヨネ子達は今回戦いを見学せずドラゴニアに帰っている。


3日後、ドラゴニア軍は無事戦場に到着した、そして紅緋騎士団の団長アーネストが榮斉軍指揮官に挨拶に行く。


「初めまして、ドラゴニア帝国所属龍騎士団が1つ紅緋騎士団団長アーネストと申します」


「これは丁寧なご挨拶有難うございます。私が榮斉軍を預かる将軍劉堅(リュウケン)と申します以後宜しくお願いします。早速ですが貴軍はどれほどの陣容でこられたのかな?」


「我が軍は龍騎士200即応騎士2000、魔法師100、総勢2300です」


これを聞いた劉堅は少し難しい顔をした、これには2つの理由がある、1つは兵数が思ったより少なかった事、もう1つは魔法師がどの程度戦で使えるか判断しかねている事だ。


東洋では治癒魔法使い以外の魔法使いが極端に少ない上に攻撃魔法の使える者でも威力はそう強くないからこそドラゴニアの魔法使いの実力がわからないのだ。


「それは・・・申し訳ない、私では貴殿らの実力が良くわからぬのだが、率直に言って貴殿らでどれくらいの兵と戦えるのか答えられるか?」


「もちろんです。我々はこちらの世界の兵の実力については聞かされています、その上でマーガレット様は勝てる規模と人選で送り出してくれました」


「はて?勝てる規模と人選とな?それはもしかして貴殿らだけでこの戦に勝てると申しているのか?」


「はい、その通りです」


「バカな、いくら貴殿らが強かろうとたった2300人であろう。たったそれだけで90000もの敵兵に勝てると申すか?」


「もちろんです。いくら多かろうと敵に攻撃魔法の使い手はほとんどいません、それに対しこちらは100人もの生え抜きの魔法師を連れて来ています。これで負けるようでは本国に帰ってからの訓練が厳しさを増してしまいます」


「魔法使いとは、いやドラゴニアの魔法師とはそれほど強いのか?これほどの不利な状況を覆すほど」


「いえ、相手にまともな魔法師がいないからこそですよ。それより作戦はどういたしますか?」


劉堅は返事をせず駒を並べた地図を睨み出した、そして敵の配置と今後の作戦について思考を巡らせている。


アーネストも劉堅と共に地図を睨み出した、そしてそこに第4魔法師団長フェリーナが報告にやって来た、フェリーナは3人目のエルフの幹部だ。


「今敵の配置を確認して来ました」


そして地図上で敵の配置を正確に伝える、どうやら連合軍ではあるが指揮系統はそれぞれの国ごとにあり布陣もそれぞれの国ごとに行なっているようだ。


「すまぬがなぜこれほど正確にわかるか教えてもらえるか?」


劉堅は不思議に思ったのだ、早くから戦場に到着し情報を集めまくっていた自分達より後から到着したドラゴニアの方がより正確に敵の布陣について知っていたからだ。


「構いませんよ。我が国の魔法師は全員空を飛べます、だから空から偵察したんです」


当のフェリーナではなくアーネストが説明した、もちろん劉堅は絶句している。


しばらくして劉堅は指揮権をアーネストに渡した、これは別にアーネストを格上と思ったとかあまりの実力差に心が折れたとか言うわけではない、単にアーネスト達の戦闘力が予測不能だったので作戦立案が不可能だと悟ったためだ。


なのでここからはアーネスト主体で作戦が立てられていく、ただしいくら実力があろうと自分たちだけで戦うと言う事はない、榮斉軍にも立場や矜持というものがあるからだ。


そこで出した作戦は紅緋騎士団と即応騎士団が敵燕按軍50000と戦う、榮斉軍は櫂告軍40000と戦う。


魔法師団は30人が騎士団のサポート、20人が榮斉軍竜騎兵のサポート、残り50人が榮斉軍の残りのサポートに着く事になった。


騎士団に着く20人は普段と何も変わらない、しかし竜騎兵に着く魔法師は戦闘の補助より治癒要員と呼ぶべきだろう、そして残りの魔法師は治癒要員兼防御要員と呼ぶべきだ。


そもそも今回は開戦と同時に魔法師による魔法攻撃は行うが榮斉軍側はそれ以降は基本的に榮斉軍に任せるからだ、でなければいくら戦に勝とうと胸を張って勝利したとは言えなくなる、それでは榮斉軍、中でも劉堅の立場が無くなってしまうので仕方ないとも言える。


作戦が決まると直ぐに配置換えを行う、榮斉軍は練度が低いため少し動きが悪いがそれは諦めるしかない。


それでも全員が予定した配置に着くと緊張した空気の中で開戦を待ち構えた


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