第六話
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バッセンは執務室にて、自分の右腕とも言えるロアム・ハウワーに厳しい瞳を向けられていた。
「バッセン、一体何で、ここ連日、あんなにも騎士らの屍の山が築かれるんだい?」
ロアムは銀色の髪に青色の瞳をもつ美丈夫であり、中性的なその顔立ちは一部の者から熱狂的な支持を受ける、騎士団一のモテ男であった。
そんなロアムの事をバッセンは信頼はしている。だが、この男に話してしまえばヴィオレッタへの関心を持たれることからは逃れられないだろう。
だからこそ、バッセンはロアムや他の騎士らにはヴィオレッタの事をまだ話さないでいた。
いや、話そうとは思ったのだ。
ヴィオレッタが騎士舎を見たいと言ったあの日、ならば一緒に行ったついでに皆に紹介すればいいとバッセンは思っていた。
だが、あの色気漂うヴィオレッタを見た瞬間に、ダメだと思った。
何がダメなのかは良く分からないが、バッセンの本能が、他の騎士らに見せてはダメだ。それ以上に、ロアムに見せてはダメだと言う気持ちが湧きあがったのである。
だがしかし、さすがにもうこれ以上は黙ってはいられないだろう。
恐らく、ロアムは気づいているが、あえて、バッセンの口から聞くために朝一でこの執務室にやってきたのであろうから。
「実は・・・。」
バッセンはしぶしぶと言った様子で、ロアムにヴィオレッタがここに来ることになった経緯を伝えた。
そして聞き終えたロアムは、にやにやとしながらバッセンに言った。
「っふ。良かったじゃないか。キミもそろそろ結婚してもいい年だろうし、ヴィオレッタ嬢と言えば、貴族の中でも有名な、あの妖精姫だろう?」
やはり知っていたかと思ったバッセンは眉間にしわを寄せると言った。
「ヴィオレッタ嬢には・・・どうにかして、家へと帰れるようにしてやりたい。」
「はぁ?」
ロアムはその言葉に驚き、訝しげにバッセンを見た。
「何を言っているんだ。まぁ、まだ正式な結婚はしていないにしろ、嫁ぐという名目でここへヴィオレッタ嬢は来ているのだろう?何故返す?」
「それは・・・俺のような男に、ヴィオレッタ嬢は似合わない。」
その自己肯定感の低すぎる言葉に、ロアムは顔を歪ませると大きく息を吐いた。
「あのさぁ、貴方、俺らの中で何と呼ばれているか知っているか?砦の英雄だぞ?そんな貴方が何故そんなに卑下する必要がある?」
その言葉に、バッセンはロアムを真っ直ぐに見ると言った。
「ヴィオレッタに会えば分かる。あの彼女を見て、俺に似合っていると、本当にお前は言えるか?!見てみれば分かるだろう!」
「いや、噂しか知らないから見たことはないが・・・なんだ。貴方は気に入っているんじゃないか。」
その言葉にバッセンは顔を真っ赤にすると、眼光を鋭くして視線を泳がせた。
何だ。何だ。
結構気に入っているんじゃないか。
ヴィオレッタ嬢の目撃情報は入っていたし、俺も情報は入手していたが、何で言わないのかと思っていたら、まさか、気に入っているから見せたくなかったのか?
ロアムはバッセンの様子を見るとにやりと笑った。
「どんな令嬢なんだ?」
バッセンはその言葉にたじろぎ、そして小さな声で言った。
「美しい・・・・・・人だ。」
ロア厶はその言葉に身悶える思いであった。この、顔面凶器のような厳つい男から、そのような言葉が出るとは思っていなかったロアムは笑いそうになるのをどうにか堪えた。
「なら結婚して手に入れればいいじゃないか。」
そう言った瞬間、ギロリと殺気が飛んできてロアムは全身の鳥肌が立った。
「彼女にも選ぶ権利はある。」
何故こんなにも頑固なのかと思いながら、ロアムはより一層ヴィオレッタへの関心が高まった。
「ふふ。俺にも紹介してくれ。貴方の右腕の俺をまさか会わせないなんて事、ないよな?」
その言葉に、バッセンは殺気を消して視線を泳がせると言った。
「・・分かった。」
何故渋る必要があるのだとロアムは思い、そしてはっと気づいた。
俺に、取られたくないとか、思っているのか?
それに気づいたロアムはにやりと悪い笑みを浮かべると、バッセンを囃し立てて昼食を共にすると言うからそこに混ぜてもらう約束を取り付けた。
あぁ、会うのが楽しみだ。
その頃、ヴィオレッタはバッセンの右腕と言われる美しすぎる砦の守護者と有名なロアムと、二人で執務室にこもっていると言う話を聞き、何となくそわそわとした。
バッセン様、もしや男色とか・・・そういう事では・・・ないですよね?
そうなったら、私、どうしたらいいのかしら?
ダメよ。ヴィオレッタ!
弱気になってはダメ!
たとえ男色であろうとも、私がこの身を鍛え上げてバッセン様のお好みの男の娘風に仕上がればどうにか目を向けてもらえるかもしれないわ!
アンナはヴィオレッタの考えている事が絶対に違うと思いながらも、主に美味しい紅茶を淹れた。