第五話
たくさんの感想ありがとうございます!
お返事を返したいのですが、他でも連載しているものがあり、中々、お返事できずにいます。
なので、この場をお借りしてお礼をさせていただきます。
返信は中々できませんが、もちろん全て読ませていただいています。本当にありがとうございます!
読んでくださる皆様に、感謝申し上げます。
ヴィオレッタは次の日より行動を即座に開始した。
朝はアンナに美しく磨き上げてもらい、可愛らしくふんわりとした水色のワンピースを身に纏って朝食へと向かった。
会場にはすでにバッセンがついており、ヴィオレッタは可愛らしい笑顔をバッセンに向けて挨拶をした。
「おはようございます。バッセン様。」
「あぁ。よく休めたか?」
「はい。ぐっすり眠ることが出来ました。今日は、バッセン様はどちらへ?」
「午前は執務室で書類仕事を済ませ、昼からは騎士舎へと鍛練に行く。砦の中であればヴィオレッタ嬢もどこへ行っても構わない。自由にするといい。」
その言葉にヴィオレッタの瞳はきらきらと輝いた。
「では、昼食は一緒に食べて、それから一緒に騎士舎へと行ってもかまいませんか?」
その言葉にバッセンの眼光が鋭く光った。
「何・・・だと?」
「ダメでしょうか?」
しゅんとした様子で、上目使いでヴィオレッタがそう言うと、バッセンは一瞬惚けたのちにはっと気力を取り戻すと、咳をしてから答えた。
「ダメではないが・・面白いものなどないぞ?」
「ふふ。大丈夫です。」
「そうか。ならばそのように手配をしておこう。」
ヴィオレッタはバッセンとの会話が終わってしまったと少しばかり残念に思いながらも、料理が運ばれてきたのでゆっくりと朝食を食べた。
料理の内容を見て、ヴィオレッタは笑みを深めた。
どれもこれも、ヴィオレッタの住んでいた領での特産物や、地元の料理である。
おそらくヴィオレッタの事を気遣っての料理であろう。
「今日のお料理は、バッセン様が決めて下さったのですか?」
そう問いかけると、バッセンは手を止めて少し視線を泳がせたのちに口を開いた。
「たまたま食べたかったのだ。」
「そうですか。私の住んでいた領でよく出る料理が多くて、なんだかとても心が温かくなりました。ご配慮ありがとうございます。」
にっこりとほほ笑んでそう言えば、バッセンはしばらくぼうっとヴィオレッタを見つめていた。
そしてまた、はっとしたように眼光が鋭くなると、急いで自分の料理を食べ挙げて席を立ってしまった。
「仕事があるので・・・先に、失礼する。」
ヴィオレッタは立ち上がり、礼をするとにっこりとした笑顔でバッセンを見送った。
「お仕事頑張ってくださいませ。バッセン様。」
「あ・・あぁ。」
バッセンの耳がわずかに赤くなっており、ヴィオレッタはなんと可愛らしいのだろうかと心の中で身悶えた。
その後、午前中は室内でハンカチに刺繍を縫い、昼食をバッセンと済ませて騎士舎へと向かった。
この城というか砦の中はそうとう広いようで、バッセンとはぐれたら絶対に戻ってこれないと感じたヴィオレッタはバッセンの歩調に合わせた為にほぼ軽いランニングのような状態でバッセンについていくこととなった。
アンナは他のメイドらとの仕事の振り分けなどの話を聞きに行っており、今はバッセンと二人きりである。
「騎士舎は・・はぁ・・遠いのですね!はぁ、はぁ。」
「ん?そんな事はない。すぐだ。」
「そ・・そうですか。はぁ、はぁ。」
体力には自信のあるヴィオレッタではあったが、足の長さの違いか、バッセンの歩く歩調が速すぎて息が上がっていた。
ダンスではこれほどまでにポカポカとなる事はないので、新鮮な感覚にヴィオレッタは少しばかり楽しくなりながら騎士舎へとついて行った。
「ほら、ここが騎士舎だぞ。っ!?ど・・・どうしたのだ?!」
「はい?なんでしょうか。はぁ・・はぁ。」
ヴィオレッタの顔は上気し、瞳はうるうるとしており、何と言うか、色気と言うのであろうか、この騎士舎にはふさわしくない雰囲気をヴィオレッタが全身から醸し出していた。
ヴィオレッタは少し汗をかき、軽く走っていたせいで乱れた顔にかかる髪をゆっくりと耳にかけると、驚いた表情のまま固まっているバッセンの顔を見て首をこてんと傾げた。
「どうかなさいまして?あ、あれ!騎士様が戦っておられますね!」
騎士たちの鍛練する姿が見えて、ヴィオレッタは体を柵の方へと近づけた。
その瞬間、ふんわりとした甘い香りを感じ、その上、ヴィオレッタの艶めかしいうなじが見えてバッセンは息を飲んだ。
「騎士様らは、毎日鍛練を頑張っておられ・・っへ?ば、バッセン様!?」
「黙っていろ。舌を噛むぞ。」
次の瞬間ヴィオレッタは俵のように担ぎ上げられると、バッセンは全力で屋敷の方へと走り抜けたのである。
突然元居た場所へと全力で走って戻されたヴィオレッタは、その速さと、バッセンの逞しい腕に担ぎ上げられたという事に顔を真っ赤に染めた。
バッセンの腕は、ヴィオレッタが想像していたよりもがっしりとしていて、逞しく、もっと抱きしめていてほしいと思うほどではあったが、屋敷へとつくとすぐに降ろされてしまった。
降ろされて屋敷へ戻されたヴィオレッタは、何が何だか分からず、真っ赤な顔のままバッセンを見上げた。
「あの・・バッセン様、私、何かいけないことをしたのでしょうか?」
バッセンは鋭い眼光をヴィオレッタに向けると言った。
「騎士舎へは立ち入りを禁じる。」
「へ?」
「では。」
「ば、バッセン様?!」
バッセンは全力でその場から走り去ってしまい、残されたヴィオレッタは困惑してしばらくの間そこから動けないでいた。
私、何かしてしまったのかしら。
せっかくバッセン様の体を鍛える姿をこの目に焼き付けるチャンスだったのに。
嫌われてしまったのかしら。
い、いいえ。そんなことないわ。ないはず。
明日はもっと仲良くなれるわ!
ヴィオレッタは多少気分が落ち着くと、何がいけなかったのであろうかと腕を組んで考えるのであった。
「はぁ、はぁ、はぁ。昨日に続いて、今日もか。」
「一体、何があったんだ。」
「っく・・バッセン様は一体どうしたんだ。」
「これでは・・・屍の山を築くだけだぞ・・・・っく・・・」
騎士が一人、また一人と屍の山へと加わっていく。
バッセンは邪念を振り払うかのように騎士らを扱いて行った。
何と言う可憐さだ!
しかも、あんな・・あんな色香!
こんな猛獣ばかりいる場所に連れてきては危険だ!
彼女は自分の魅力に無頓着すぎやしないか!
あぁ・・・辛い。
今日も見事な屍の山が出来上がった。