第四話
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「遠い所、疲れてはいないか。」
バッセンにそう声を掛けられたヴィオレッタは天にも昇る心地で笑みを深めた。
「はい。今回は特別に王家の馬車を借りられましたし、ここに来るのが楽しみでしたので疲れてなどはいませんわ。」
まるで背景に美しい花々が咲きほこるような笑みであった。
その様子にバッセンの眼光はさらに鋭くなると、ヴィオレッタを睨みつけて言った。
「世辞などいらん。貴方にとっては苦痛しかないだろう。」
どういう意味だろうかとヴィオレッタが首を傾げると、バッセンは言った。
「俺からは断れん。だがそれでは貴方が不憫でならない。貴方が嫌がる事はしないと誓おう。」
これは、とヴィオレッタは思った。
バッセンは自分に嫌われていると勘違いしているのではないかと、頭の中で考えがよぎる。
何故だろうと思いながらも、これは早々に勘違いを正さねばならないと思った。
「バッセン様。私は嫌々ここへ来たわけではありませんわ。」
そう言うと、一瞬、バッセンの視線が揺れた。
だが、また眼光がいっそうに鋭くなるとバッセンはハッキリとした口調で言った。
「ヴィオレッタ嬢。世辞はいいと言った。とにかく、ここにいる間は執事やメイドらは好きに使って構わん。それほど人数がいるわけではないが、貴方の世話は最優先事項としてあるから、大丈夫だと思う。では。」
「あ、バッセン様!」
逞しい背が離れていくのを見て、ヴィオレッタの伸ばした手は宙をさまよい落ちた。
遠くなっていく背。そして、扉を超えて見えなくなってしまう。
アンナは拒絶された主に、どう声を掛けたらいいのだろうと戸惑いその様子をうかがって顔を引きつらせた。
ヴィオレッタの瞳は恍惚と輝いており、ほう、と艶めかしい息をついて聞こえた。
これは大丈夫だなとアンナは判断すると、惚けている主をそのままに、近くにいた執事やメイドらと話をしていく。
あぁ。バッセン様。
何て可愛らしいお方なの。
私に嫌われていると、良く分からないけれど勘違いしているのね?
大丈夫。そんな貴方がより一層愛おしくなりましたわ。
こんな感情初めて。
ヴィオレッタの脳内にはお花畑が出来上がった。
一方、その頃のバッセンは。
なんだ、なんだ、なんだ!あの可愛らしさは!
あの可憐さは!
あの美しさは!
どれもこれも自分とは釣り合ってはいないではないか。
しかも自分に世辞まで言ってくれる心の美しさ。
やめてくれ。期待しそうになる。
「鍛練に行くぞ。」
傍にいた従者に声をかけ、バッセンはその日夜が更けるまで騎士らを扱き続けた。
「どうして・・・こんなことに・・・はぁ・・はぁ。」
「荒ぶっておられる。」
「もう・・ダメだ。」
騎士たちの屍を積み重ねてもなお、バッセンの心に平穏は訪れなかった。
ヴィオレッタちゃんは押せ押せゴーゴーで頑張ります!