第三十五話
見事カイルア王国の王子を国へと送り返したヴィオレッタとバッセンは王城に帰ると次の日、国王と宰相それにヴィオレッタの父と共に話し合いの場が持たれた。
ヴィオレッタとバッセンは事の顛末を事細かに説明し終えると、国王は満足気に頷いた。
「さすがはバレンタイン公爵の娘だな。肝が据わっている。」
その言葉にバレンタインは頭を下げ、ヴィオレッタも同じようにすると、国王はおもしろそうに口を開いた。
「さぁでは、問題もなく片付いたことだし・・ヴィオレッタ嬢。キミの願いを聞こうか?」
国王の言葉に、ヴィオレッタはあくまでも表情は令嬢の仮面をつけてにこやかに言った。
「私はバッセン様と早急に結婚をさせていただきく思います。」
「ほう?バッセンはどう思っているのだ?」
楽しそうな表情の国王に、バッセンは顔を赤らめながらも同意するように頷いた。
「そ、そうしていただけたら、幸いです。」
にやにやとした笑みを浮かべた国王は次に視線をバレンタインへと移す。
はっきり言って、バレンタインは昔から娘の事となるとかなり甘い男だった。ヴィオレッタがどう思っているかは知らないが、妻にそっくりなヴィオレッタをバレンタインが愛さないわけがない。
無表情を取り繕う顔で、何を思っているのかと探るが、その表情が崩れる事はなさそうで、国王は諦めると二人に向き直って言った。
「ヴィオレッタ嬢いいのだな?」
「はい。私はバッセン様と結婚できるならば幸せでございます。」
はっきり言えば、ヴィオレッタをバッセンに嫁がせるのは多少もったいない。政治の駒としての使い道は他にもあるのだがと思う。
けれど、バッセンに視線を移すと先ほどの惚けた顔とは一転し、こちらの動向を探るような様子が見られる。
ヴィオレッタを嫁がせなかった場合反旗を翻されかねない。
そうなれば国としては一大事である。
国王は小さく息をつくと頷いた。
カイルア王国側も聖女が砦にいるとなれば手を出しづらいだろう。もし今回のウソがばれて砦が攻められたとしてもバッセンが納める限りは落ちる心配はないだろう。
「分かった。許可しよう。バレンタイン公爵もいいな?」
「国王陛下のお言葉とあれば。」
狸め。
ヴィオレッタは嬉しそうにバッセンに寄り添い、バッセンもほっとしたように息をついた。
二人の結婚式は早々に日取りが決められ、そしてあれよあれよという間に時が過ぎていく。
二人の結婚式まで、もう少しであった。
砦を見事に守りきったロアムらは、王都からの知らせでヴィオレッタとバッセンの結婚が決まったことを知り歓喜に沸いた。
「ついにバッセンも結婚か。」
ロアムは酒を一気に飲み干しながらそこで、ん?と思う。
「なぁ、俺達が血にまみれて戦っている間、あいつらきっといちゃこらしてたんだよな。」
「え?」
「は?」
「ほ?」
ロアムは一瞬で酔いを醒ますと、すっと立ち上がった。
「うん。何だかめでたいが、少しばかりむかつくな。」
「ふ、副隊長?」
ロアムはにっこりと楽しそうに笑うと言った。
「少しばかりむかつくから、俺達の祝いだと、面白い事企画してやろうか。」
「ひえぇぇぇ。」
自分達までまきこまないでくれと、騎士達は悲鳴を上げた。






