第二十九話
更新が遅くなり申し訳ないです。
ここしばらく忙しくしていまして、待ってくださってくれた皆様申し訳ありません。
更新再開しますので、楽しんで読んでいただけたら幸いです。
カイルア王国国王ロデッセウムは、虚ろな瞳でにこにこと笑みを深めた。
傍に控えている執事やメイドらも虚ろな瞳は変わらず、その腕には腕輪が輝いている。
「やっと手に入る・・・。」
その言葉は部屋の中に響き渡る。
立ち上がり、騎士らに指示をするとロデッセウムは馬車に乗り込んだ。
「あぁ。長かった。だがやっと妖精を得ることが出来るのだ。」
ロデッセウムは、これまで生きてきた中でほしいと言ったものは必ず手に入れてきた男である。その男が唯一手に入れることが出来なかった物が、傾国の乙女と言われたヴィオレッタの母であるアンバーであった。
ロデッセウムが少年と言われていた頃、国同士の交流の場で一度だけまだ幼いアンバーを見たことがあった。
美しい妖精がそこにはいた。
ロデッセウムはその日からその妖精に心を奪われ、何度も水面下でアンバーを手に入れられるように画策したがことごとくそれが防がれ、そしてバレンタイン公爵にあっという間に囲われてしまい姿を見る事すら叶わぬことになった。
欲しいと願っていたものが手に入らない苦痛を、初めてロデッセウムは知り、それが執着となった。
何としてでも手に入れたい。
ロデッセウムはアンバーが手に入らないのならばその娘を手に入れればいいのだと考えた。
だがそれすらもことごとく潰されてしまい、ロデッセウムの苛立ちは年々増し、それと同時に国も荒れていった。
いう事を聞かない者は、力でねじ伏せればいい。
それはカイルア王国の本質であり、ロデッセウムもそれに倣った。
そして、やっと妖精を手に入れる事が出来る。
「妖精を攫いに行くぞ。」
笑みがこぼれる。
妖精を捕まえ、一緒に馬車に乗って帰ってしまおう。
そして王国の一室に囲ってしまおう。外に出さず、鎖で縛りつけ、誰にも目の触れない場所へと閉じ込める。
後は王子に国を譲って、毎日妖精を眺めて暮らせば自分は満たされるような気がする。
「あぁ。楽しみだ。」
ロデッセウムの笑みは歪に歪み、その瞳は何を見るのか。
執事やメイド、騎士らはそんな王を歪んだ瞳でじっと見つめる。
そこに映るのは、希望か絶望か。
それが分かるのはいつなのか。
「バッセン様・・・その・・・もっとギュッとしてくださいませ。」
潤んだ瞳でそう言われたバッセンは自分がこれ以上力を入れればヴィオレッタが壊れてしまうと腕に力を込めるなど出来なかった。
すると、ぷうっと怒ったようにヴィオレッタが頬を膨らませる。
「ヴィ…ヴィオレッタ。その、あまり可愛い顔をするな。」
「え?バッセン様がいつも可愛らしいお顔をされているのに?」
「は?」
「ほら、その呆けたお顔も大変可愛らしいです。もう。こちらの理性を試しているのですか?」
時々バッセンは、ヴィオレッタが何を言っているのか良く分からない。
それは、その様子を見守っていた護衛達も同じであった。
読んでくださりありがとうございます。
もしよろしければブクマや評価をいただけるとさらに頑張れますので、よろしくお願いいたします。






