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第二十七話

「はぁ・・・。ヴィオレッタ様、申し訳ございません。殿下は今混乱しているのですわ。ちゃんと私から話をしておきますので、どうかお許しください。」


 フィオレリーナの言葉に、ヴィオレッタはにこりと笑みを深めた。


「ええ。フィオレリーナ様がそうおっしゃるのであれば。」


「ヴィオレッタ嬢!!」


 すがるようなアレックスの瞳に、ヴィオレッタは晴れやかな笑顔を向けた。


「お幸せに。」


 ヴィオレッタは立ち上がるとバッセンと共に部屋を後にした。


 部屋を出たとたんにアレックスの小さな悲鳴が聞こえたので、少しばかり部屋の中で何が起こっているのかが気にはなったが、振り返らなかった。


 知らない方が良い事もある。


「ヴィオレッタ嬢。」


「なんです?バッセン様。」


「本当に良かったのだな?」


 その言葉に心外とばかりにヴィオレッタはバッセンに視線を向けると言った。


「私はバッセン様が良いのです。これ以上疑うのであれば怒りますよ?」


 バッセンはその言葉にほっとしたように息をつくと、嬉そうに頬を緩めた。


 そんな姿も可愛いと思ってしまうので、怒るに怒れない。


 その時、横に控えていた執事にバッセンは声をかけられ、眉間にシワを寄せると頷いた。


「ヴィオレッタ嬢。国王陛下から謁見の間へと来るようにとのことだ。疲れているとは思うが、いけるか?」


「はい。・・・このまま何も知らないまま、というわけにもございませんでしょう。」


「あぁ。では、行こう。」


 知らない方が動きやすいこともある。


 だが、自分はバッセンと共に歩んでいくことを決めた。


 ならばしっかりと状況を知り、行動していかねばならないだろう。


 ヴィオレッタは覚悟を決めるとバッセンと共に長い廊下を歩いていく。


 執事に案内され、謁見の間へと通された二人は国王陛下の前に頭を下げる。


 国王陛下の横にはヴィオレッタの父も控えている姿が目に入った。


「この度は、」


「挨拶はいい。頭をあげてくれ。急ぎ話をしておくべきのとがある。バレンタイン公爵。」


「はい。」


 ヴィオレッタの父はヴィオレッタとバッセンに視線を向けたから苦々しげに話し始めた。


「カイルア王国を調べたところ、国内ではクーデターが起こりそうだ。つまり、ここで国王暗殺が行われる可能性が高い。」


「それは。」


 バッセンの表情が険しくなるも、バレンタイン公爵は言った。


「カイルア王国の王はもうダメだろう。国内は悲惨な状況であり、国として保っているのが奇跡だ。我が国の選択肢は2つ。カイルア王国の王をクーデターを企む者らに差し出すか、巻き込まれることをさけるためにヴィオレッタをおとりにして遠ざけるか。」


 その言葉にバッセンは顔を上げるとヴィオレッタの父を睨みつけ、口を開いた。


「私の婚約者をおとりのなど出来ません。」


 バレンタイン公爵はその言葉に冷たい瞳を向けると言った。


「我が娘は、国のためならばその身を差し出す覚悟は持っている。」


「私が嫌なのです。」


 はっきりとした拒絶の言葉に、バレンタイン公爵は満足げに頷くと国王へと視線を向ける。


「バッセン辺境伯はこういっておりますが、国王陛下、どうなさいますか?」


 国王は大きくため息をつくと、バレンタイン公爵とバッセン、それにヴィオレッタに視線を移してから口を開いた。


「今後の為にもクーデターに力を貸したなどと、噂が立つのは困る。」


 その時、書類を手に持った国の宰相であるアレッサンドロが現れた。


「やはり婚約発表の場を狙ってきそうです。また、カイルア王国国王の方は、ヴィオレッタ嬢を婚約発表の前に誘拐する計画を立てているようでして、はてさて、困りましたな。」


 アレッサンドロの言葉に国王はヴィオレッタに視線を移すと言った。


「やはり、クーデターに力を貸すというのは、得策ではないのだが。」


 ヴィオレッタは自分にも話に加われと国王が行っているのだと感じ取ると、勇気を振り絞るようにして息を小さく吐き、そして顔を真っ直ぐにあげると言った。


「私は、おとりになってもかまいません。」


「ヴィオレッタ嬢!」


 バッセンの声にヴィオレッタは笑みを向けると言った。


「私は公爵家令嬢です。国の為とならば命を差し出す事さえ厭いません。それに、バッセン様が共にいて下さるのであれば何の問題がありましょう?」


 国王はにやりと笑みを浮かべると頷いた。


「ありがたい。褒美は取らせる。バッセン辺境伯。ヴィオレッタ嬢を守りながらおとりとなりカイルア王国国王をクーデターの首謀者らの元へと誘導する。作戦を考える。よいな?」


 バッセンは唇を噛み、強く握る拳は怒りに震えていた。


 ヴィオレッタはそっとその手を握ると、バッセンに寄り添った。


「私は、胸を張って貴方のお嫁様になりたいのです。ですから、お願いします。」


 その真っ直ぐな澄んだ瞳に、バッセンは大きくため息をつくと国王へと目を向け頷いた。


「わかりました。その代り、ヴィオレッタ嬢が危険になると判断した場合、作戦がどうなろうとすぐに離脱させます。よろしいか?」


「よい。」


 ヴィオレッタはにこりと微笑み、バッセンと結婚するために頑張るぞと意欲を高めたのであった。









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