第二十四話
その後、ヴィオレッタは自分の理性を総動員してバッセンに襲いかかることなく部屋を後にした。
だが、部屋に帰ったヴィオレッタはベッドに突っ伏しながら何度も可愛らしいバッセンの姿を思い出しては悶絶した。
だが、ふいに思い出す。
「私そういえばバッセン様に結婚しますと言っていないわ。」
ガバッと起き上がったヴィオレッタは寝間着姿のまま扉にてをかけて思う。
このまま、夜這いにいってもいいのではないか。
悶々とするヴィオレッタに、側に控えていたアンナがそっと肩に手をおき首を横に振った。
「お嬢様。寝間着のままではなりません。」
「ダメかしら?」
「はい。」
しぶしぶベッドに戻ったヴィオレッタであった。
ヴィオレッタはこの夜、夜這いに行かなかったことを次の日後悔した。
朝食の場にてバッセンの表情は険しく、一通の手紙をヴィオレッタに手渡してきた。
嫌な予感しかしないその手紙は国王陛下からのものであった。
読むのが嫌で思わずバッセンの方へとヴィオレッタが視線を向けると、読むように促すように視線が交わされた。
小さくため息をつき、手紙を読む。
ヴィオレッタは視線を走らせて手紙を最後まで読んでから、またため息をついた。
手紙には要約すると王子の婚約発表をするので、バッセンと共に出席をしてくれとのことであった。
問題となるのは、王子の婚約発表ではない。
ここに、他国の用心も数名参加すると記載されている。
なるほど、とヴィオレッタは納得する。
おそらく、カイルア王国と何かしらの取引があったのだろう。
この婚約発表の夜会に参加すれば否応なく危険にさらされる。
だが、王命。断ることなどは出来ない。
「ヴィオレッタ嬢。心配するな。何があっても俺が守る。」
ヴィオレッタはその言葉にチクリと胸がいたんだ。
バッセンはきっと守ってくれるだろう。
だが、本当にそれでいいのだろうかと頭の中で声がする。
バッセンに守ってらえばきっと安全だろう。けれど、これから先ずっと自分は守られ続けるのか。
ヴィオレッタは大きく深呼吸をするとはっきりとした口調で宣誓するように言った。
「私も運命に抗って見せます。私はバッセン様のお嫁様に絶対になります!!」
その言葉にバッセンは目を丸くし、ヴィオレッタはそんなバッセンの手をギュッと取り握った。
「バッセン様。今回の夜会が終わりましたら、私をお嫁様にしてくださいませ。」
「い、いいのか?」
「はい。」
バッセンはニッと笑みを浮かべると頷き、その後はロアムと作戦を練るといって部屋から出ていってしまった。
ヴィオレッタも朝食を済ませると、夜会に間に合うようにドレス等の手配に忙しくするのであった。
「ヴィオレッタ・・・。」
王城にて、ヴィオレッタの名を呼ぶ者は何度目かのため息をもらした。
「こんなはずじゃなかったのに・・。何でこうなったんだ。」
後悔しても、もう時間は戻りはしない。






