第二十二話
ちょっとロアムさん達が主役を食べ始めたので軌道修正していきます(笑)
ヴィオレッタは、バッセンにクッキーを渡すとにこにこと恥じらいながらクッキーを咀嚼する姿を見つめた。
大柄なバッセンがモソモソとクッキーを咀嚼する姿ははたからみれば少し不気味にも見えるのだが、ヴィオレッタからしてみればなんとも可愛らしく、愛らしく、癒しの時間であった。
「バッセン様は可愛らしいですね。」
思わずそう言うと、バッセンは顔をしかめた。
「冗談でも笑えんぞ?」
「真面目にです。私、バッセン様を見ていると幸せな気持ちになりますわ。」
その言葉にバッセンは耳まで赤くするとクッキーを大きな口で食べて、お茶を飲むと、言った。
「ヴィオレッタ嬢。」
「何ですか?」
「俺との結婚は・・嫌ではないか?」
その言葉に、ヴィオレッタははっきりした口調で返した。
「嫌ではありません。」
「何故?俺は自身の姿かくらい分かっている。君に俺が不釣り合いなことは分かっている。」
ヴィオレッタには、バッセンの言う不釣り合いという意味がわからなかった。
「それは、誰が決めることなのですか?」
「ん?」
「私はバッセンが結婚するならばいいです。誰に不釣り合いと言われようと関係ないと思うのですが。」
その言葉にバッセンは目を丸くしたあとに、大きく息を吐いた。
「君と話していると、自分がいかに小さい男なのかが分かる。」
「?バッセン様は大きいですよ。」
「ふっ。」
バッセンがふわりとした柔らかな笑みを浮かべた。
それを見たヴィオレッタは心臓がどくどくとなって、心の中がふわふわとした。
何て素直に笑う人なのだろう。
嘘なんてない、自然な笑み。
きっとこの人と結婚したならば幸せになれる。
「ならばヴィオレッタ嬢。結婚をするか。」
「え?」
ヴィオレッタが首をかしげると、バッセンは覚悟を決めたように言った。
「結婚をしてくれるか?」
その言葉に、ヴィオレッタはじっとバッセンの瞳を見つめた。
そして、少しだけ胸がチクリといたんだ。
この人は、私を守るためにそう言ったのだ。
私を愛してくれたわけではない。
きっと結婚したならば幸せにしてくれる。
けれど。
ヴィオレッタは曖昧な笑みを浮かべて首を横に振った。
それは、私が本当にほしいものではない。
私をほしいと言ってくれたらいいのに。
ヴィオレッタは既成事実なんて口でいいながらも、本当は自分を強く求めて欲しいのだとその時にやっと自覚した。
私を見てほしい。
私を求めてほしい。
私を愛してほしい。
そう思うと、瞳からポタリと涙がこぼれ落ちでいた。