第十九話
感想を皆様ありがとうございます。
感想を読むと楽しくて返信したくなるのですが、そうすると更新が遅れそうで、でも返したいけど、と堪えています。
返信できずすみません!そのかわり更新を頑張ります!!
あの事件から数日が経ち、ヴィオレッタは毎日楽しくバッセンが鍛練する姿を見ていたのだが、ふいに気がついた。
「アンナ。私、いつになったら、バッセン様と結婚出来るのかしら?」
そうなのである。
結局のところ、今バッセンとは婚約という形でしかなく、おそらくは先日のゴタゴタによりさらにバッセンとの結婚が遠退いた。
一瞬脳裏を最悪の展開が過るが、それは考えないように蓋をしてヴィオレッタは言った。
「もう少し、色気のある格好をしたら、既成事実・・いけるかしら?」
予想の斜め上の考えに飛躍したヴィオレッタを止めるべく口を開こうとしたが、アンナは少し空いた口をまた閉じた。
ヴィオレッタの安全の為には、本来であれば結婚したほうがいいのだ。
だが、とアンナは思う。
おそらくはそれが今されないということは保険なのだろう。
それはヴィオレッタに利益のないもの。
ならばとアンナは化粧道具を整え、次に持ってきたドレスを見てからヴィオレッタににこりと笑みを向けた。
「お嬢様の美しさにお喜びになるでしょうね。」
「そうだといいわ!そして、そのまま既成事実を目指しましょう。」
あの頭の固そうなバッセンがそのような事になるとは到底思えないがヴィオレッタは意気揚々とアンナに仕上げてもらうのであった。
朝食会場に先に着いていたバッセンは、ヴィオレッタをいつものように待っていた。
一緒に食事を行うことが日常となり、バッセンは毎朝起きるのがいつもよりも早くなっていた。
「おはようございます。バッセン様。」
鈴のように可愛らしい声が今日も聞こえ、バッセンは顔をあげてヴィオレッタを見た瞬間にその凶悪な顔がさらに凶悪に歪んだ。
いつも着ているものよりも胸元が大きく開いた大胆なドレスは、確かにヴィオレッタによく似合っていた。
大胆なのに下品には見えない。
その上、淡い薄い緑の色合いは、ヴィオレッタを儚げに見せ、思わず抱き締めていなければどこかへと連れ去られてしまうような感覚を抱かせる。
だが。
ガタンっと、勢いよく立ち上がったバッセンはアンナを睨み付けた。
このメイドは良い仕事が出来すぎる。
「バッセン様?アンナがどうかしましたの?」
自分を見てほしかったのに、アンナに視線を向けるバッセンに、ヴィオレッタは少しほほを膨らませた。
その可愛らしい様子にバッセンは「うっ・・」と、何かを堪えるような表情を浮かべるとヴィオレッタに言った。
「今日も・・見学に来るのか?」
「え?はい。あの、駄目ですか?」
「いや。駄目ではないのだ。だが・・。あのな、ヴィオレッタ嬢。君はもう少し自分の魅力について知っておいた方がいい。そんな・・格好でいたら、騎士らはもう鍛練どころではない。」
「それは・・バッセン様も私に魅力があると思っていただけている、と言うことでしょうか?」
「んん?いや、そうではなくて。いや、違う。君に魅力かあるのは当たり前、いや、そうではなくてだな。」
「こういう格好はお嫌いですか?」
「いや、そういうわけでは。あ、違う。嫌いか好きかと言われれば好きだが、ってそうではない!」
「好きですか?」
「好きだがって、そうではないのだ。俺が話したいのは!」
ヴィオレッタは花がほころぶように可憐な笑みを浮かべた。
「そう言っていただけて、とても嬉しいです。」
「う・・朝食を食べようか。」
「はい。」
バッセンはその日、騎士らの鍛練の時間をヴィオレッタと重ならないように調節し、騎士らのブーイングが凄かったとか、凄くなかったとか。