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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十章 レジスタンス
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脇役らしい悪あがきを

 スコープ越しに次々と来る敵を吹き飛ばす。

 スイッチを押しているだけで見えていた奴らは体に大穴が空いて倒れるか、体の一部が消えて雪を赤く染めて死んでいった。

 レジスタンスを排除し続けていると戦車の攻撃で装甲車が強く揺れ、砲塔に大穴が空いた。

 穴が空いた位置は俺が座っている座席の右側で、あと少しで直撃して腕が持っていかれるところだった。


「もう限界か……?」


 後ろを見ることはできないが、まだ後ろへ行けるほどの時間は経っていないはず、俺はまだ動く装甲車で再びレジスタンスを撃とうとスコープを覗いているとまた衝撃で装甲車が揺れた。

 揺れの後に戦車の攻撃で空いた穴から黒い煙が入り込んで来たのが見えた。


「……マズイな」


 俺は座席から立ち上がって中にある扉から装甲車に入ってきた時に通った兵士達が乗れるように椅子がある空間に出て、開いたままの後ろの扉から装甲車の外へ出た瞬間、周りに響き渡るほどの音が聞こえた後に装甲車が爆発した。

 爆風に押されて降り積もった雪の上に倒れ、身体中から痛みを感じつつも素早く立ち上がり、少し横へふらつきながらもナタリアがいる場所へ向かって走った。


 前を見るとさっきの2人がまだ後ろまで行けていないのが見えた。

 俺はナタリアの元へではなく、2人の後を追うようにして走った。

 後ろから何発もの銃弾が飛んで来る音が聞え、足元や頭の横を弾が通っていき、姿勢をなるべく低くして弾が飛んでくる中を走っていると、何処からかヘリの音が聞こえてきた。


『よし、到着した。降下する』


 雪が降っている中を飛んできたヘリは上空で旋回をしてからエリカのすぐ近くへ下りてくると扉が開いた。

 ヘリの扉が開くと中からサングラスとヘッドセットをしているジェーンが片手で銃を回しながらヘリから降りてきた。


『待たせたな』


 エリカ達がヘリへ乗り込み始め、ナタリアも銃を撃ちながらヘリへ向かい始め、俺はポケットに入っているSAAを取り出し、後ろから撃ってくる奴らに向けてヘリへ向かっている2人のために少しでも時間を稼ごうと後ろに振り向いて追いかけてくる奴らに向けて銃の引き金を引いた。

 横に顔を向けてナタリアの様子を見るとナタリアも時間稼ぎの為なのか、銃を撃ちながらヘリに向かっていた。


 しかし、ナタリアは足に銃弾が当たったのか姿勢を崩してその場で片膝を着くと、痛みに顔を歪ませながら銃を敵に向けて撃っていた。


「おい!大丈夫か!?」


 無線機で呼びかけようとしたが、彼女が持っていた無線機は煙を上げて雪の中に落ちていた。

 恐らく運悪く銃弾が当たって壊れてしまったんだろう。

 ナタリアからヘリに視線を向けると2人がヘリへ乗り込み始め、ジェーンがこっちに向かって走ってきた。


「ジャック、これ以上はここに居られない。早くヘリに乗り込め」


「待て、ナタリアを置いていくつもりか?」


「戦車の砲撃を防げるほど、私のヒューイは装甲が厚いわけじゃない。ナタリアには悪いが、待っている時間はない、諦めろ」


 ジェーンはそう言うと銃を撃ちながら近付いてくるレジスタンスの4人を右手に持っていたSAAを腰だめで持つと左手を使い、早撃ちをして一瞬で4人を撃ち殺した。


 確かに一人の為に他の奴らが死んでしまうのは最悪だ。

 なら一人を犠牲に多く命を救える方が良いだろう。

 普段の俺ならジェーンに賛同してナタリアを見捨てて逃げるだろうが、今の俺にはナタリアを見捨てて逃げようと思うことが何故かできなかった。


「悪いがナタリアを置いていくことはできない」


「そうか、好きにしろ。だが、それならこれを持っていけ、こいつと交換だ」


 ジェーンはいつの間にか俺が手に持っていたSAAを左手に持ち、それを回しながら腰にあるホルスターへしまい、左手で足のホルスターから拳銃を取り出すと銃を持ち方を変えて握る部分を俺に向けて差し出した。


「これは?」


「グロックだ。こっちの方が装弾数がある。すぐに飛び立つが、本当に良いのか?」


「ああ」


「フフフ、男は女のことになるとバカになるな」


 ジェーンから受け取った銃のスライドを引いて弾倉内の弾を銃へ送り、俺はナタリアの元へ銃を持って走り始めた。

 追いかけてくる奴らに向けて銃を撃ち、ナタリアの元へと走りながらヘリを見ると、ジェーンがヘリへ乗り込み、俺に向けて右手で親指を立ててから扉を閉めた。


 視線をヘリからナタリアに移し、ナタリアの元へ来れた俺は近くまで来ていた奴らに向けて銃を撃ち、ナタリアの側で片膝を着いて彼女の肩に手を置いた。


「大丈夫か?」


「貴方、なにしに来たの!?」


「一人じゃ寂しいかと思ってな」


「はぁ!?貴方なに言ってるのよ!?カッコつけてるの!?」


「いや、そうじゃないが……それより早く立て、トラックで逃げるぞ」


 ナタリアに肩を貸して立ち上がらせ、右手に持っている銃で近付いてくる奴らを撃ちながら近くのトラックに向かった。

 ヘリに視線を向けるとヘリは高く空へ飛び始め、機体を傾けると城壁の外へと出ていき、城壁の向こう側へ姿を消すと音も小さくなっていった。


「馬鹿な男……私、馬鹿は嫌いなの。貴方みたいな、何も考えてない奴は特にね」


「大丈夫だ。何も考えていないわけじゃない」


 ナタリアを連れてトラックの近くまで来た俺は胸ポケットから道具を出してトラックの鍵を開けるとナタリアを先に乗り込ませ、反対側へ回っている間にナタリアが運転席の扉の鍵を解除し、反対側へ回った俺は運転席へ乗り込んだ。


「貴方、鍵なしでこいつを動かせるの?」


「わからない、軍用のトラックなんて盗んだことがないからな」


「考えが甘いわね。よくそれで何も考えてないわけじゃない、なんて言えたわね」


「なら歩いて逃げるか?その足じゃ無理だと思うがな」


 ハンドルの下を拳銃の銃底で殴って開け、線を選んで引きちぎってエンジンをかけようと試してみる。

 何回か線を合わせては離すを繰り返しているとエンジンがかかり、エンジンがかかった後はライトを付けてアクセルを踏んで門へ向かう。


「本当に動いた……。貴方、映画の中から出てきたの?」


「そんなわけない、本当に映画の登場人物だったら俺は間違いなく脇役だな」


「それも主人公にあっさり殺されるね」


「余計だと言いたいが、そうだろうな」


 雪が降る城内を走っていると、今にも崩れそうなボロボロの門が見えてきたが、その門の前に誰かが立っていた。

 目を凝らしてよく見てみるとさっきの転生者の少年だった。


「主人公のお出ましだ」


「脇役に勝利は無いわ、どうするのよ?」


「勝てないなら……脇役らしく悪あがきをしてやらないか?」


「ふっ……そうね、脇役らしく悪あがきしてやろうじゃない」


 覚悟を決めたように言ったナタリアの言葉を聞いた俺はトラックを止め、ナタリアは銃の弾倉を変えると扉を開けて外へ出ていった。

 俺も扉を開けて外へ出るとナタリアは銃を撃ち始め、転生者は拳銃のような物を取り出すとナタリアが放った銃弾を避けながら勢いよく近付いてきた。


「ああぁぁぁぁっ!!!」


 ナタリアの悲鳴が聞え、急いで反対側へ銃を構えながら向かい、トラックの前から反対側に行くと奴が殴りかかってきた。

 奴に銃を持っている手を殴り飛ばされて俺の手から銃が離れて雪の中へと落ちると、俺がまだ隙を見せている内に殴ろうとしてきた奴の左手を避けて俺は右手で奴の右手首を掴み、少し腰を落としてから左手を奴の脇下へ通して左側の腰に奴の体を乗せるようにして投げ飛ばした。


「ぐっ!……クソ!!」


 地面に倒れた奴は抵抗しようとしてきたが、素早く腕を後ろにさせて組伏せ、奴に何をされても俺に手を出すことはできなくさせた。


「格闘は素人同然だな、転生者」


「くぅっ!放せ!!」


 俺が背中の上に乗っている状態で暴れまわる奴にそんなことを言っていると、後ろから誰かが近付いて来た。

 奴を組伏せたまま振り返ると、体が動かせない様子のナタリアを立たせて、首にナイフを突き付けている男が居た。


「こいつを殺されたくなかったら、そいつを放せ」


「クラーガ……」


 クラーガが強くナタリアの首にナイフを突き立てるのを見た俺は、奴の言う通りに転生者の背中の上から退くと奴が立ち上がって、足のホルスターから銃を取り出して俺に向けてきた。


「よせ!カズ!……こいつらには生きていてもらわないと困ると言っただろう?」


 一歩下がって奴から離れると、悔しそうな表情をしたまま銃を下ろし、ホルスターへ戻した。


「………そうだった。頭に血が上がってた。ごめん、クラーガ」


「気にするな、さぁ、来てもらおうか。アンゲル帝国の兵士」


 車に乗ってきたレジスタンスに囲まれ、銃を向けられた俺はクラーガを睨みつけたままレジスタンスに手を後ろにされて手錠をかけられた。

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