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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十章 レジスタンス
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装甲車対戦車

 ナタリアの元へと向かっている途中で何かを踏みつけ、足を退けて足元を見るとさっきまで俺が持っていたピースメーカーが落ちていた。

 偶然見つけることができたSAAを拾い上げて再びエリカの背中を追い、SAAは防寒着のポケットへ入れた。


 エリカと共にナタリアが身を隠しているトラックへ俺達も隠れた。

 ここまで来る間に周りを見たが、簡単に作られた木製の屋根の下にトラックが止められている物しか建物がなく、他には身を隠せる程度の瓦礫があるだけで隠れられる場所が限られていた。


「城の中はこんなに何も無いものなのか?」


『殺風景なのは嫌いですか?でも、我慢してくださいね。城の機能を復活させると城の外へ出ている全員を殺してしまいますから』


 俺が呟くように言ったことに対してフランシールがとんでもないことを言った。

 突然、フランの声が聞こえたことにも驚いたが、それよりも驚いたのはここにいる全員を殺せるとは、一体どんな機能なんだろうか。


『まぁ、城の機能はほとんどある人に壊されてしまったので、一部の場所で殺すことができる程度です。ねぇ?ジェーン?』


『さて、なんのことだか。それよりも予想より早くヘリの準備ができた。そっちに10分くらいで着く』


「わかった」


 ジェーンと通信をしている時に兵士達が歓声を上げているのが聞え、それをトラックの影からナタリアが見ていた。


「やっとね。ブラッドレーの強奪に成功したみたい、ブラッドレーを掩護しながらボスが来るまで待つわよ」


「了解しました。ジョンさん、離れないでください」


 ナタリアがトラックの影から出て、銃を撃ちながら装甲車へ走っていき、それを追うようにエリカと俺も走って装甲車の近くまで走っていった。

 装甲車の周りに居た敵を排除しつつ、散らばっていた兵士達も装甲車の元へと集まった。

 今気付いたが、ナタリア達は独房に入れられていた時の私服ではなく、何処かで奪ったのか防寒着を着ていた。


 先程の2人が強奪した装甲車は景色に溶け込む為か、白く塗装されていて、見たたけだと戦車のようにも見えるが、砲が戦車よりもとても小さい為、素人の俺でも戦車とは違うとわかった。


「ブラッドレーを盾にしつつ応戦!」


 ナタリアが指示を飛ばすと兵士達が装甲車の影に隠れながら射撃を開始し、装甲車は見た目は小さい砲とその右側にある銃で射撃を開始した。

 装甲車の砲から飛び出した弾が次々とレジスタンスを吹き飛ばし、装甲車は砲と銃を使い分けながら俺達を殺そうと迫ってくる大勢のレジスタンスを葬っていった。


『機体の調子が良い、このまま上手く行けば5分で着くな』


『私のグレイちゃんに無理させないでよ?ジェーン』


『クラーラ、グレイゴーストは元々私が作ったんだぞ?貸すとは言ったがくれてやるとは言っていない。勝手に私物化してもらっては困る』


『自分じゃ滅多に使わないくせに……』


『聞こえているぞ。ジャック、上手く行けばそっちに着くのは5分後だ』


「ああ、早くしてくれ、こんな何もないところで銃撃戦はしたくない」


 銃の弾倉を交換しながら言い、再び敵に狙いをつけて銃を撃っていると空気が振動する程の音が聞こえ、素早く装甲車の影に隠れると装甲車の反対側が爆発し、応戦していた1人の兵士が爆風で後ろへ勢いよく倒れた。


「ああぁぁぁぁっ!!熱い!!熱い!!」


「ユリア!」


 兵士が悲鳴を上げて顔を押さえながら転がっているとエリカが兵士に駆け寄って銃を左手で持ち、右手で兵士の服を掴んで装甲車まで引きずり、装甲車の影で包帯を取り出して負傷した兵士の治療を始めた。


「クソッ……エイブラムスか……」


 ナタリアが装甲車の影から反対側を見てそう呟くと、装甲車の後ろにある扉を開けて装甲車の中へと入っていった。

 ナタリアが装甲車へ入っていった後、装甲車が動き出して音がした方向へ車体を向けた。

 開いたままの扉からナタリアが出てくるとエリカの肩を叩いて近くの瓦礫を指差し、エリカはその瓦礫を見た後にナタリアに顔を向け直して頷くと兵士を担いで瓦礫へ走っていった。


「全員、対戦車戦闘用意!」


「「了解!」」


 後ろの扉を中にいた兵士が閉めてから装甲車が走り出すと兵士は地面へ伏せて銃を構え、俺とナタリアも同じように地面へ伏せるとナタリアは周りを見渡し始めた。


「エミリー、貴女はあの瓦礫を盾にして邪魔な敵を排除して。ヘレナ、貴女はエミリーの掩護よ。貴方は……とりあえず前に出て敵を引き付けて、ブラッドレーから2人が脱出する時の掩護をして、エリカのいる場所に行くまで貴方は敵を引き付けなさい」


「俺に囮になれと?」


「ええ、そうよ。もし、逃げて帰ってくるようなら容赦なく撃ち殺すわ」


「……わかった」


 俺に与えられた役目は装甲車に乗ってる彼女達が逃げる時に囮になること、気が進まないがやらなければここで殺されてしまいそうだ。

 ナタリアは冗談で言ったのか、本気で殺す気は無いようだが、ナタリアの言葉を聞いた他の2人から殺気を感じ、ここに居たらこの兵士2人のどちらかに殺されると感じた俺は立ち上がって装甲車を追って走った。


 装甲車の後ろに着いた俺は装甲車を盾にしながらレジスタンスの攻撃に応戦し、砲を撃ち続けている装甲車の後ろを歩いた。

 撃っていると弾切れになり、予備を持っていない俺は弾倉を替えるために周りを見るとレジスタンスの死体を見つけ、死体から弾倉を奪い、持っている銃の弾倉を外して捨てて新しい弾倉に替えた。


 装甲車の後ろで戦っていると、装甲車の砲塔に付いている箱が動き始め、動きが止まってから少し間を置いて箱から何かが発射された。

 装甲車が続けて箱からもう一度何かを発射するとさっきと同じ音が装甲車の前から聞こえ、俺は応戦を止めて装甲車の影に隠れて地面に伏せた。

 地面に伏せた瞬間に装甲車の前から爆発する音が聞こえ、装甲車は黒い煙を噴き出しながらゆっくりと止まった。


『掩護するから2人の脱出を手伝いなさい』


 無線機から聞こえてきたナタリアの声を聞いた俺は後ろを振り向くと、瓦礫に身を隠しながら撃っている2人が射撃を始め、ナタリアは装甲車の右側を2人に任せて左側の様子を見るためか、2人とは違う場所にある瓦礫の影からこっちの様子を見ていた。


「ああ、わかった」


 さっきナタリアがやったように装甲車の後ろの扉を開けると、車内にある扉が開いて中から暗い茶髪の兵士が這いずって出てきた。

 近寄って肩を貸して車内にあった椅子に座らせてやると、爆発の音がすると同時に装甲車が激しく揺れた。


「マリナ………マリナが………」


「マリナ?運転席にいるのか?」


「ええ……」


「俺に任せろ」


 兵士に持っていた銃を渡して装甲車の外へ出て装甲車の左側から前へ行こうと左側から顔を出すと装甲車から転がるようにして地面に落ちた兵士と目が合った。

 すぐに助けてやりたいが、装甲車の前から戦車が銃を乱射してくるせいで立ったままだと蜂の巣にされそうだ。

 俺は這いずって兵士の元へ行くことにし、地面へ伏せて、腕と足を使って伏せたまま移動して動けない様子の兵士の側まで行った。


「助けに来たぞ」


「君が助けにくるなんて……ね……。足がうまく動かないんだ……」


 彼女の足に視線を向けると、彼女の太ももに銃弾が当たったらしく、彼女の太もも辺りが血でスボンが濡れていた。


「引きずってやる」


 俺は伏せた状態から片膝立ちの姿勢になり、彼女の脇下から腕を通して体を少し持ち上げ、弾が飛んでくる中、姿勢を低くしたまま引きずって装甲車の後ろまで彼女を移動させる。


「ちょ……ちょっといいかな……?」


「なんだ?胸に腕が当たってることならわかってる。だが我慢してくれ」


「が、我慢ね……、わかったよ……。わざとやってるわけじゃない……よね?」


「こんな時にそんなことを考えるほど余裕はない、それに後ろにいる奴らに気付かれたら殺される」


「あぁ……確かにね……」


 彼女には申し訳ないが、どうしても引きずっていると胸の下が腕に当たってしまう為、どうすればいいかと一瞬考えたが、こんな状況では考えている暇も無いと、その事は考えずに前から攻撃してくる戦車と後ろの視線を気にすることにした。


 装甲車の後ろまで彼女を移動させた俺は彼女に肩を貸して立ち上がらせると、装甲車の中から茶髪の兵士が出てきて彼女に肩を貸した。


『よし、次は2人がこっちに来るまで掩護しなさい』


「どうやってだ?」


『まだブラッドレーは使えるはずよ。ブラッドレーの25mmを使って敵の攻撃を引き付けて』


 俺は兵士に彼女のことは任せて装甲車の後ろから中へと入っていった。

 兵士が出てきた場所から座席やスイッチなど機械がある場所へ入っていき、座席に座ってスコープを覗いた。


「どうやって操作すればいい?」


『説明するわ。よく聞きなさい』


 俺はナタリアの説明を聞き、砲塔の動かし方や武器の使い方、使える機能などを短く教えて貰い、2人の兵士の為に俺は砲を使ってレジスタンスの奴らに照準を合わせて砲を撃ち始めた。

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