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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十章 レジスタンス
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落ちた先は戦場

 周りがとても騒がしい、銃撃戦をしているらしく、激しく撃ち合いをしているようだ。

 銃を撃つ音、爆発音、掩護を求める声、そして俺の名前を必死に呼んでいる声が聞こえてきた。


『ジャック……ジャック!……ジャック!!応答して、ジャック!!』


 クラーラの声に目を開けると俺は全身に痛みを感じ、体を起こすことができなかった。


「ぐ………うぅ………クラー…ラ………」


『ジャック!良かった、生きてた……。ジャック、立てる?』


 体を動かそうとするとしたが、頭を上げるのが精一杯で体を動かすことはできなかった。

 全身の痛みに耐えられずに一旦、体から力を抜いて動かすことができる頭を動かして横を見るとどうやら俺はトラックの荷台へ落ちたらしく、トラックの荷台の屋根が布だったおかげなのか、なんとか生きている。

 なんとか動こうとしていると誰かがトラックの荷台へ上がってきた。


「ジョンさん!今治療を……」


 荷台へ上がって来たのはエリカだった。

 エリカは手を向けて俺に治療をしようとしたが、トラックに弾が当たる音が聞こえ、俺に覆い被さるようにして伏せた。


「カバー!!」


 エリカが伏せたまま横を向いて叫ぶように言い、伏せたまま治療を開始した。

 エリカの治療を受けている間、俺達の周りで銃を撃つ音が聞こえ、トラックに弾が当たる音が少なくなった。

 時々、布を突き破って弾が飛んでくる音が聞こえてくる中、エリカは治療を続けた。

 段々、痛みが引いていき、少し体が動くようになってくるとエリカは治療を止めて立ち上がり、俺の両脇を持って立たせると俺を担ぎ上げて肩に乗せるようにするとトラックの荷台から降りた。

 荷台から下りるとエリカはトラックの影に隠れ、トラックの後ろのタイヤに俺をもたれかけさせるようにゆっくりと降ろすと治療を再開した。


「ブラッドレーだ!!」


 1人の女性の叫び声が聞こえると同時にエリカは治療を続けながらトラックの下から反対側を覗いた。


「ブラッドレーか……テトラ!マリナ!」


 エリカが誰かの名前を呼ぶと2人の女性がエリカの近くへ銃を持って走ってきた。

 2人はトラックの影に入ってくると俺の目の前でしゃがんでエリカに顔を向けた。


「なんでしょうか?少尉殿?」


 灰色の髪を束ねている女性が笑顔でエリカにそう訊くとエリカは片手で治療を続けながら2人の方へ首を動かして顔を向けた。


「2人で協力してブラッドレーを奪いなさい、貴女達ならできるわね?」


「無茶言いますね少尉殿、ですが……わかりました。私達もそう思っていたので、そうしましょう」


 2人がお互いに顔を合わせると灰色の髪の女性が右手で拳を作り、もう片方の暗い茶色をした髪の女性は左手で拳を作ると2人は笑顔で武器を持ったまま拳と拳を合わせた。


「貴女達の腕を見せてみなさい」


「了解!」


 2人は普段とは違う表情になっているエリカの指示を受けると、右へ小走りでトラックの運転席側の影から向こう側を覗くと、灰色の髪の女性が走ってトラックの影から出ていき、追いかけるように茶色の髪の女性も走っていった。

 しばらくエリカの治療を受けていると城の扉が開いて、ナタリアがAK-12を持って走り、トラックの影に滑り込んできた。

 ナタリアは俺の左側に滑り込んで来ると片膝立ちの姿勢でエリカと顔を合わせた。


「エリカ、戦況は?」


「やや劣勢です。練度はこちらの方が上ですが、数で押されています。レジスタンスがブラッドレーを出してきましたが、あの2人を向かわせました。ブラッドレーを奪えれば少しは楽に進めるはずです」


「そう、負傷者と死者は?」


「ヴァレリアが移動中に足を捻りましたが既に治療を終えています。他に負傷者は無し、戦死者は出ていません」


「了解、よく頑張ったわ。あとは私に任せなさい」


 ナタリアは右手を銃から手を離すと親指を立ててそう言った。

 エリカは少し笑うとすぐに2人に指示を出した時と同じ無表情に戻した。


「治療が終わりました。もう動いても大丈夫です」


 エリカの手を借りて立ち上がると同じように立ち上がったナタリアから銃を差し出されて、受け取るとナタリアは魔法で収納していた銃を取り出してトラックの影から走って出ていった。


『救出のはずが、これじゃ戦争だな。よし、私が迎えに行く』


「ジェーンが来てくれるのか?」


『ああ、その様子だと脱出するのが難しいだろう。待ってろ、準備の時間も考えると約20分くらいだ。頑張れ』


「ああ、わかった」


 ジェーンとの通信が終り、渡されたAKを両手で持ってエリカに顔を向けると、エリカは心配そうな表情をして城を見上げていた。

 きっとメイソンのことが気がかりなんだろう。


「心配するな、メイソンなら無事だ」


「そうですか、良かった……。それを聞いて安心しました」


 エリカはこっちに顔を向けて安心した表情をすると、再び城を見上げて左手を胸元に置き、目を閉じた。


「お元気で……メイソンさん」


 彼女はそう呟き、目を開くと胸元に置いた手を前に伸ばして魔法で銃を取り出した。

 エリカが取り出した銃は、ジェーンのトラックが横転した時に貰った確かG3と言う名前の銃だった。


「エリカ、訊きたいことがあるんだが……」


「はい、なんでしょう?こんな状況なので、なるべく手短にお願いします」


「わかった。訊きたいことは単純だ。何故、全員魔法を使わずに独房から脱出しないで、大人しくしていたんだ?」


「確かに、そう思うのは当然ですね。私達がそうしなかったのは、あの転生者が居たからです。私達が束になっても勝つことができない転生者を相手にして脱出をするのは無謀です。なら、大人しくして救援を待つしかなかったんです」


「そんなに強いのか?」


「ええ、転生者1人は一個機甲師団と同様に考えよ、と士官学校の教科書に必ず出てくるくらい強いです」


 機甲師団はよくわからないが、あの学校で教科書に出てくるくらい強いということだろう。

 奴と会って戦いとは呼べないことをしている時、確かに手を抜いているのがよくわかる行動をしていた。

 俺が階段を下りている間は撃たなかったり、俺が部屋から飛び出して撃った時は俺が持っている銃を狙って撃ってきたり、俺と直接戦うのではなく、仲間のヘリに俺の相手をさせて奴は俺をあぶり出そうとしてきた。


「なるほど、わかった。それなら奴がここに来る前に脱出しないとな」


「ええ、ナタリアさんの元へ行きましょう。ナタリアさんから作戦と指示を聞かないといけませんから」


「わかった」


 エリカは姿勢を低くしてトラックの影から顔を出して様子を確認すると、安全だと判断してトラックの影から出ていき、俺もエリカと同じように姿勢を低くしてトラックの影から出てエリカの背中を追いかけ、ナタリアの元へと向かった。

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