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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十章 レジスタンス
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空飛ぶ戦車

 俺は防寒着のフードを被った状態で防寒着の色を利用して雪の上でうつ伏せになって壁の裏に隠れていたが、機関砲でほとんどの壁が破壊され、隠れる場所が無くなっていき、周りに遮蔽物が無くなりそうになっていた。

 逃げ道を考えているとピアスが振動して通信が入った。


『聞こえてるかしら?無事なら返事をして』


「ああ、聞こえてる。だが、返事を返すのがやっとだ。今ハインドに襲われてるからな」


 こうして通信をしている間も攻撃をされて壁を壊され、破壊された壁から出てくる粉塵が前髪や服に着き、俺は粉塵まみれになっていた。


『ハインドに?こっちもハインドに3人やられた。貴方、城の上を飛び回ってるハインドに襲われてるの?』


「ああ、そうだ。今、逃げ道を考えてる。SAAではどうにもならないからな」


『……悪いんだけど、ちょっと待って。確か私が目を覚ました場所にロケットランチャーがあったわよね?』


「おい、もうこっちは遮蔽物が無くなっている状態だ。待ってたら蜂の巣より酷い状態にされる」


 確かに筒のような物があったのは覚えているが、まさかそれを渡すから戦えと言うのだろうか。

 そう思った俺は今の状態を伝えて戦えるような状態では無いことを伝えようとした。


『そう、私の考えはこう、私がランチャーを転移魔法で貴方のところへ送って、貴方は受け取ったランチャーでハインドを落としなさい』


 しかし、彼女は俺の言ったこと聞き入れずに予想通り戦えと言ってきた。


「おい待て、話を聞け。待てるような状態じゃない、そんなものよりロープか何か……」


『武器庫に着いたら連絡し直す。それまで耐えなさい、いいわね?』


「おい!クソッ……、人の話を聞かない奴だな」


 仕方なく、時間稼ぎをする方法を考えるが今持っているピースメーカーだけではどうにもならない、かといって周りにある物を使おうかと考えたが、あるのは瓦礫と飾られていた物なのか、剣と鉄製の鎧があるぐらいだ。

 やはり逃げる方法を考えようと思っているとヘリの横の扉が開き、中から大量に火炎瓶が投げられ、それが俺の周りに落ちて火柱が上がり、燃え広がった。

 俺は周りの雪が徐々に溶けていくことがわかり、立ち上がるとヘリの中から奴が何かを撃ってきた。

 何とか形を残している壁に身を低くして隠れていると周りで爆発が起き、爆音で耳鳴りがした。


 流石に今回ばかりは死ぬような気がした俺は死ぬ覚悟を決め、もし生きて帰ったらこんな状態になった原因のナタリアに必ず仕返しをしてやるとしよう。


『MGLだ。6発撃てるグレネードランチャー、40mmの擲弾は生半可な威力じゃないよ。榴弾やガス弾、発煙弾も撃つことができる。転生者が使っているのは連射性能を向上した物みたい、通常よりも早く連射してくるから同じ場所に留まるのは良くないかも』


 俺はクラーラの説明を聞きながら銃を奴へ向けて撃とうか考えていると爆風で火炎瓶のガソリンが広がり、さっきよりも広い範囲で燃えていた。


「どうした?怖気づいたのか!?」


 奴は大声でそう言って挑発してきたが、こっちはその挑発に乗れば俺の体が丸焼けにされてしまう為、迂闊に壁の外へ出ることはできなかった。


「隠れても無駄だ!!出てこい!!」


 奴の挑発には乗らず、じっと隠れていると空気の流れが変わったような気がした。

 風が吹き始め、周りに落ちた炎が風に煽られて消えた。


『やった!吹雪が来たみたい、時間を稼げるよ!』


 クラーラが言った通り風が強くなり始め、吹雪が来た。

 ヘリはさっきのように空中で止まる動きができなくなり、機体を揺らしながら横の扉を閉めて俺のいる建物を中心として周りを飛び始めた。

 ほとんど壁が壊されたせいで、吹雪の風を遮るものが無く、伏せることで何とか飛ばされずにいたが、このままでは何もできない為、今の俺は無防備だ。

 この状態で襲われれば確実にやられてしまう、何とかしたかったがあまりの風の強さに立つことはおろか、身を低くして移動することもできない。

 伏せながら移動もできないことは無いが、今動けば確実に的になる。


「くっ……このままじゃまずい……」


 床に這いつくばっているとピアスが振動して通信が入ってきた。


『今武器庫に着いたわ。そっちは大丈夫かしら?』


「いや、吹雪のせいで立てそうにない。このままじゃやられる」


『……大丈夫、すぐに止むわ。そっちに送る準備を始めるから、貴方も戦う覚悟を決めなさい』


「はぁ……気が進まないがやるしかないか。隊長、頼むぞ」


『ええ、任せなさい。と言っても私にできるのはランチャーを送るくらいだけど』


「それで十分だ」


 ナタリアとの会話が終わると吹雪が弱まり、ヘリが戻ってきた。

 ヘリは戻ってくると再び横の扉を開けて奴がグレネードランチャーを撃ってきた。

 爆音が響き渡り、グレネードがこっちへ飛んできたことを確認した俺はすぐに立ち上がって前転をするようにして隠れていた場所から距離を取ると俺のいた場所が吹き飛ばされ、壁が無くなった。


「よし、隊長、始めてくれ」


『了解』


 ナタリアの返事が返ってくると同時に目の前に光が現れ、そこから筒のような形をした物が床へ落ちた。

 俺はその筒を拾い上げてまだ何とか姿勢を低くして隠れられる程度の残っている壁へと滑り込んだ。


「やっと出てきたな、待っていたぞ!!」


「クラーラ、どうすればいい?」


 俺は手にした筒を見てどうすればいいのかを訊いた。


『M72LAWか、ナタリアがもう撃てる準備をしてくれたみたい、あとはスイッチの前にあるセーフティーを解除してスイッチを押すだけだよ』


 スイッチの前と言われて黒いスイッチがある場所の前を見ると四角い形をしたつまんで引っ張れる部品があり、そこを引っ張ってみると音がしてそれ以上は引っ張っても動かなかった。


「これで良いのか?」


『うん、それでよし、あとは肩に乗せる感じで持って、ヘリに当たるように風向きに注意してスイッチを押して撃つだけだよ』


「わかった」


 俺はランチャーを肩に乗せるようにして持ち、壁から飛び出して空中で止まっているヘリへ照準器を合わせ、黒いスイッチを押した。

 スイッチを押した瞬間に筒からロケットが飛び出し、少し風で斜め上へズレてヘリに当たった。


「なんだと!?」


 ヘリは黒い煙をエンジンから噴き出しながら制御を失って回転し始め、俺が立っていた場所へ回転しながら突っ込んできた。

 俺は弾が無くなり、軽くなった筒を捨てて壁の後ろへ飛び込んでうつ伏せになるとヘリの尻尾のようになっていて、小さなプロペラがあるところが俺のいた壁を破壊して頭上を横切り、ヘリはプロペラが折れて横倒しになると元々階段があった場所に頭から突っ込むようにして動きを止めた。


『おお、ハインドを1人で落とすなんて。凄いよジャック』


「1人じゃないぞクラーラ、ナタリアがランチャーを送ってくれなけば俺は戦うことができなかった。ナタリアには、あとで無理矢理戦わせてくれたことの礼をしないとな」


 久しぶりに死ぬ覚悟を決めた。

 ヘリとは二度と戦うような真似はしたくない。


 俺は立ち上がって墜落したヘリにSAAをいつでも撃てるように構えながら近付いていくと、ヘリの中から音が聞こえ、立ち止まって銃を構えているとヘリの中から転生者が平然とした様子で出てきた。

 転生者は素早く俺に片手でグレネードランチャーを持って向けてきた。

 俺が撃たれる前にと引き金を引いたが、こっちが撃つと少し遅れて向こうも引き金を引き、転生者が放ったグレネードは俺の目の前で爆発し、俺は爆風で後ろへ吹き飛ばされて、そのまま城の外へと飛び出してしまい、夜の空を見ながら下へと落ちていった。

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