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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十章 レジスタンス
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捕虜解放

 エリカは独房の外へ出てくるとメイソンの手を握った。


「大丈夫です。大丈夫……」


「エリカさん……俺は……」


「良いんです、貴方は正しい判断をしたんですよ……」


「エリカさん……」


 エリカは銃を地面に置くと彼の手を両手で包むようにして握った。

 雰囲気からして、どうも2人は俺が来るまでに話をしている内にお互いに惹かれあってしまったようだ。


 2人を見ていると前の世界の相棒を思い出し、俺はもう運命の人には出会えないだろうという根拠の無い思いが込み上げ、その場に居ることが辛く感じた。


「……俺は邪魔なようだな。エリカ、ここは任せた」


「えっ!?ジョ、ジョンさん!」


 俺はエリカにここの兵士達を任せ、走ってナタリアがいる尋問部屋の方へと急いだ。

 メイソンの腰には鍵があった為、エリカが上手くやってくれれば兵士達を出してくれるだろう。

 俺はそんな甘い考えをしながら、通路を走って2人の邪魔をしない為にナタリア達の元へと向かった。


 階段の前まで戻ってくると反対の通路を進み、悲鳴が聞こえてきた場所へ足を進めていくと、ランタンの火が揺れ始め、風は吹いていないはずの通路に風が通るような音が奥から聞こえた。


 更に奥へ進んでいくと、レジスタンスの死体が通路の中央で仰向けに転がっていた。

 壁や天井にまで赤黒い血が付き、血を吹いてレジスタンスの奴ら死んだことが想像できた。


 レジスタンスの死体からは大量の血が流れ、通路にいっぱいに広がっていた。

 死体の側を通る際に血溜まりを踏んだ音が通路に響き、その度にランタンの火が揺れて風の音が聞こえてきた。


 銃を構えて進んでいくと、先に助けに向かった2人が錆びた鉄の扉の近くに倒れていた。

 壁にもたれるようにしてうつむいているアンジェラに近付いて脈を確認しようと手を伸ばした時、ランタンの光でアンジェラの目や鼻、耳と口から血が出ていることがわかり、伸ばした手を引っ込めてスーザンを見ると同じように血を流して横を向いて倒れていた。


 2人が死んでいることを確認した俺は扉へ近付き、扉の向こうから感じる気配の正体を確認しようとゆっくりと扉を開けた。

 ライトを持っていなかった為、扉の近くにぶら下げられていたランタンを1つ取り、部屋の中を照らすと私服姿のナタリアが血溜まりの中で仰向けに寝ていた。


 ナタリアに駆け寄ってすぐに首に指を当てて脈を確認すると、ちゃんと脈があり、生きていることが確認できた。

 ランタンを床に置いて、ナタリアの体を抱き上げるとナタリアの髪に付いていた血が髪を伝って髪の毛の先で滴となって血溜まりへ落ち、静かな部屋の中に血の滴る音が静かに響いた。


 ナタリアを背中に背負い、ランタンを持って部屋の外へ出ると通路のランタンの火が一斉に消え、通路の明かりは俺が持っているランタンだけになった。

 不気味に感じながらも足を前に出すと何かをつま先で蹴り、足元を見るとスーザンに渡した銃が転がっていた。

 ナタリアを背負ったまま屈み、銃を片手で取り、立ち上がる勢いを使ってナタリアを背負い直し、階段を目指した。


 暗く、俺の足音だけしか音が聞こえなくなった通路を進んでいると目の前でランタンが勝手に揺れだし、ランタンが揺れて出る音が通路中に響き渡り始めた。

 足を止めずに進んでいると今度は、耳鳴りのような音が聞こえ、頭が徐々に痛くなってきた。


「くっ……なんだ。何が起こってる?」


 訳のわからない現象に呟き、足を進めていくといつの間にか階段の前まで歩いてきていた。

 ナタリアを背負い直し、階段を上って階段の出入り口を目指す。


 階段を登っていくと頭痛が強くなっていき、まるで外へ出るなと言っているかのように強くなっていった。

 歯を食いしばってなんとか意識を保ちつつ、階段を上っていると半分を過ぎた辺りから、頭痛が和らぎ、階段を上りきると頭痛は消えた。


「……なんだったんだ?」


 上ってきた階段を見ると、階段から足音が聞こえてくることに気が付き、階段の奥を見ようと凝視しているとピアスが振動し、無線がきた。


『ジャック?聞こえてる?ジャック?』


「ああ、聞こえてる」


 クラーラの声に返事をして階段の前から離れて廊下を歩き、近くの部屋の扉を開けて中へ入った。

 扉を閉めて部屋の中をランタンで照すと部屋には鉄製の箱が積み上げられ、その内の1つの箱が蓋が開いており、箱の中にボタンが付いた鉄の筒と鉄の箱の近くには木箱に入った爆薬のようなものが沢山部屋の中に積み上がっていた。


『そっか、良かった。急に無線が繋がらなくなったから心配したよ、映像もなにも見えなくなったんだけど、何かあったの?」


「ああ、遊園地のお化け屋敷みたいなことになってた。遊園地のお化け屋敷よりも不気味だったが」


 俺は箱の山を手で押してみて、簡単には崩れないことを確認してからナタリアを背中から下ろし、箱の山にもたれかけさせてランタンをナタリアの側に置き、木箱へ近寄った。


『えっ?なにそれ、だからランタンを持ってたの?』


「あぁ、それよりもクラーラ、ここに爆薬があるようだが……」


『ん?……C-4爆薬だね。主に破壊工作に使われる物だけど、どうしてそんなところに?』


「これは使えそうだ。貰っておこう」


 AKを床に置いて箱から四角い粘土のような物を取り出したが、両手で持つほどの大きさだった為、どこにしまうか悩んだ。


「物をしまうためにバッグがあれば良かったな……」


『C-4は粘土みたいなものだから、割って小さくすることもできるよ』


「そうなのか?……粘土か、やってみよう」


 俺は爆薬の中心を割るように力を加えるとクラーラが言ったように粘土のように割ることができた。


「おお、本当に粘土みたいだな。爆発はしないのか?」


『ジャック、なんか楽しそうだけど………まぁいいや、衝撃を加えて爆発することはないから大丈夫、爆発させるには信管か雷管が必要だから、安全性が高くて、燃やしたとしてもゆっくり燃えるだけだから……ジャック?何してるの?』


 俺は爆薬を使って肩慣らしに蛇を作ってみた。

 昔は盗んだ粘土でよく遊んでいたが、粘土が何処へか行ってしまってからは新しい粘土を探す余裕もなかった為、粘土で遊ぶことはなくなってしまった。

 クラーラの話を聞きながら作った久しぶりの作品はいい感じに出来上がった。


「クラーラ、これが何かわかるか?」


「へ?……えぇっと、蛇…かな?器用過ぎない?目と口があるんだけど……」


「正解だ。懐かしいな、昔よくこうやって仲間と遊んだ。ちょっと待ってくれ、今難しいやつに挑戦する」


『えっ?ちょっとジャック?』


 俺は蛇を一度丸めて形を団子のように丸くし、そこからまた違う作品を作り始めた。


『ね、ねぇ……それ粘土みたいにできるけどね?爆薬なんだよ?そうやって使うものじゃ……』


「羽根とくちばしはできたな、後は足も作るか」


『ねぇジャック?ねぇってば!……もう、夢中になってるし……』


「大丈夫だクラーラ、ちゃんと聞いてる。よし、できたぞ。クラーラ、見てくれ」


 できた作品を片手に乗せてランタンの光が当たってよく見えるようにランタンの近くに作品を移動した。


『……鷹?……というか、なんでこんな短い時間でそんなの作れるの?』


「正解だ。昔は本当によく遊んでいたからな、やっている内に速くなった。久しぶりに楽しかった。ありがとうクラーラ」


『う、うん……」


 爆薬を丸めてポケットへしまい、木箱からクラーラが言っていた信管か雷管のような物を見つけ、それは反対側のポケットへ入れた。


「後はそうだな、ここには何か武器がないか……」


 山になっている鉄箱の一番上を取って床へ下ろし、鉄箱の蓋を開けてみるとそこには奴らが持っていた黒いサブマシンガンが入れられていた。


「確かMP40だったな、ここに置いてあったのか」


『要らなくなった武器をそこに入れてるみたいだね』


「1つ持っておきたいが……弾倉を入れる場所がないな」


 銃は諦めて蓋を閉じてナタリアに顔を向けるとナタリアがゆっくりと目を開け始めていた。


「隊長、気が付いたか?」


「……えぇ、ここは?」


 まだ目覚めたばかりのナタリアは弱々しい声でそう訊いてくると周りを見渡していた。


「レジスタンスの武器が置いてある部屋だ。随分と弱ってるな、大丈夫か?」


「大丈夫よ……、どうして貴方がここにいるの?」


「隊長と他の兵士を助けに来たんだ。他にもやることがある。立てそうか?」


 ナタリアはふらつきながらも立ち上がると自力でゆっくりと横にふらつきながら銃の近くへ来るとしゃがんで俺が置いた銃を取り、深呼吸をし始めた。


「大丈夫……大丈夫……」


 ナタリアは深呼吸を止めると俺の方へ体を向けた。


「私に何かにできることはあるかしら?手伝うわよ」


「そうか、なら……」


 俺がナタリアに頼もうとした時、部屋の扉が開き、俺はホルスターから銃を抜いて部屋の入り口に向けて構えると、そこにはエリカが手を上げていた。


「エリカ?……無事だったのね、良かった」


「ナタリアさん!心配しました。体は大丈夫ですか?」


 エリカは上げていた手を下げると部屋へ入ってくるとナタリアの前まで歩いてきた。

 俺はエリカがナタリアの前まで行った後に部屋の入り口へ歩いていき、廊下を見ると独房に入れられていた兵士達とメイソンが廊下にいた。


「えぇ、大丈夫よ。何も問題ないわ」


「良かった。ジョンさん、他の方は……」


 俺はエリカに顔を向けて横に首を振るとエリカは落ち込んだ表情になった。


「……そう…ですか、残念です」


「ナタリア、無事だった兵士を連れて城の裏側にある崖に向かってほしい、そこに俺が使ったロープがある。それを使ってここから脱出してくれ」


「わかったわ。任せて」


 俺はナタリアにエリカ達を任せて部屋から出てメイソンに手招きをした。

 メイソンは頷いてこっちへ歩いてきた。


「手を貸せ、メイソン。彼女達を無事に外へ出す為にやらなければならないことがある」


「わかりました。協力します」


 メイソンは俺が拾い上げてエリカに渡した銃を持っていた。

 エリカはどうやらメイソンに銃を返したらしい。

 俺はメイソンを連れて次はレーダーを破壊するためにメイソンから情報を聞き出しながら廊下を歩いて行った。

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