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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十章 レジスタンス
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地下への階段を探して

 城内へ入るといくつものランタンが廊下を照らし、壁の一部が崩れて廊下に石の破片が散らばり、割れた花瓶や朽ちた木の台が崩れて廊下は散らかっていた。


『ハハハハ!!見ろフランシール!お前の城が廃城同然にボロッボロだぞ!フハハハハ!!は、腹がよじれる。クフ……アッハハハハ!!』


『オホホホ、団長の犬小屋よりはマシかと思いますよ。あ、犬小屋ではなく、豚小屋の方が正しいですね。オホホホホ』


 急に笑いながら悪口の言い合いを始めた2人の声に驚いた俺は素早く近くの部屋へと身を隠してしまった。


「……おい、脅かすな。何事かと思ったぞ」


『豚小屋だと?貴様の穴だらけの廃城なんかよりはマシなんじゃないか?』


「おい、聞いてるのか?」


『あらあら、ジェーンと私は除いて淫乱な女性しかいないような場所は豚小屋と言っても差し支えないでしょう?皆さん、溜まった性欲をお互いに出しあって仲良くしているようですからねぇ』


「おい、お前ら……」


『私は同性愛には口出ししない、兵士達がどう性欲を処理しようと私には関係の無いことだ。お前には性欲がないからわからないだろうがな』


「クラーラ、2人を止められないか?」


『無理…だね。言葉じゃ止まらないし、私は倉庫にいるから、ここから歩いてジェーン達の所へ行くのは嫌だ』


 俺は頭に手を置いてどうするか考えることにした。

 俺の声は2人には届かないらしく、どうにか止めてもらいたいがジェーンは慣れているせいか、音を聞く限りだと止めるような動きはしていない、クラーラはあの倉庫に居るらしく、2人を止めるならジェーンに止めてもらうしかないのだが……。


『フフ、では……団長も処理をしてらっしゃるのでしょう?……なにをしてその欲を満たしているのかは、私はよく知ってますよ』


『なんだ?知ったかぶりはよせ、私はそんなことせずとも……』


『は~い!注目~!これが金庫に保管されていたジェーンの水着しゅ……』


『待てぇぇぇぇえっ!!なななな、何故貴様が持っているんだ!?ちゃんと金庫に厳重にしてしまっておいたはずだぞ!?』


『ほう、見てみたいな。私の水着姿がどの角度で、どう撮られているのか……、なぁ?……ミラーシャ』


 どうやらジェーンも駄目なようだ。

 最初は頼りになるかと思ったが、どうやらこいつらはまったく頼りにならない変態と冗談好きの集まりのようだ。


『ま、待ってくれジェーン。別に変なことに使ってたわけじゃない……わ、私はただ思い出を残そうと……』


『フフ……大丈夫だ。隠さなくてもいいぞ、もっと良いことをこれからしてやるんだ……。きっと……頭に残って……一生の思い出になるぞ?』


『い、いや………それはどういう………な、何故手足を縛り始めるんだ?や、止めてくれジェーン!本当に思い出を……ああっ!!』


「クラーラ、ジェーン達の音声は俺に聞こえないようにしてくれ、こいつらはサポートする気がないらしい」


『う、うん、そうだね……』


 クラーラに頼んで通信を切ってもらい、やっと静かになった所で俺は先へ進むことにした。


『え、えっと、ジャック?……怒ってる?』


「ん?……いや、怒っていない。あいつらのことは今は忘れる。クラーラ、サポート頼む」


「う、うん……任せて……」


「元気がないな、どうかしたのか?」


 先程まで元気な声を出していたクラーラの声が小さくなり、心配になった俺は彼女に訊いた。


『えっ?ええっと……じ、実は私………性に関わる言葉とか聞くと色々想像しちゃって、駄目なんだ……』


「なるほど……、クラーラは心が綺麗なんだな。あいつらとは違って心が汚れていないようだ」


『そ、そうなのかな………だってフラン、私は除外するようなこと言ってなかったから……私も……』


 どうやら彼女だけの問題ではなく、フランシールが言っていたことも元気がないことに関係しているようだった。


「クラーラ、大丈夫だ。気にしない方がいい、性欲なんて誰にだってある。三大欲求…だったか?その内の1つとされるくらいだ。気にしても仕方ない」


『三大欲求か……、食欲、睡眠欲、性欲の3つのことだね。そう言われると、確かに気にしない方がいいのかもね……。ジョンは何か強い欲がある?』


「俺か?……睡眠だな。いつも我慢しているが昔から眠いと思うことが1日に何十回もある。……最悪なことに今はあまり眠りたくないのにその欲のせいで苦しめられてるがな」


『そうなんだ、そういえばジェーンも睡眠欲が強いって言ってたけど、ジェーンは起きようと思えばすぐ起きられるらしいから何処でも寝るんだよ。それこそ道端でも草原や森の中でもね』


「そうなのか、俺も似たようなものだがな。寝られる場所があれば寝られる。ん?」


 俺は誰かの話し声聞こえて近くの柱へ身を隠すと部屋から男と女が出てきた。

 男の手に包帯が巻かれていることが確認できると俺は入り口で男2人の話に出てきた奴だとわかった。


「あいつから話を聞き出すか」


『ねぇ、ジャック?』


「なんだ?」


『そこって汗が出るほど暑い?』


「いや、防寒着を着ていても寒いと感じるくらいだが……」


 俺は何も話さずに廊下を歩いている2人が俺が身を隠している柱を通り過ぎていくと男か女かわからないが、とても臭かったことで部屋で何をしていたのか理解した。

 手に包帯をして治療をするだけでそこまで時間はかからないはず、なら他のことを部屋でしていたのなら今出てきてもおかしくはない。


『ま、まさか………』


「いや、銃の点検か何か部品をいじっていたんだろう。男か女かどっちかはわからないが、オイルと鉄のような臭いがした」


 本当は違う臭いだったが、彼女に変な想像をさせないために俺は嘘をつくことにした。

 性の話に戻るのは俺としても嫌なことだ、俺自身もあまり性に関する話は好きじゃない。


『そう…なの?……じゃあ、なんであんなに汗かいてるのかな?』


「さぁな、クラーラなら何かわかるんじゃないか、銃のことは俺にはよくわからないからな」


 俺は柱に隠れながら2人の後を追いかけ、地下への道を探すことにした。

 しばらく追いかけていると地下へと続く階段のようなものがあり、その階段の前で男が女に引き止められていた。


『あっ、階段だ。あそこから下へ行けそうだね』


 通信を聞いていると男と女が向き合ったことを確認した俺は柱へ隠れた。


「そういえばクラーラ、クラーラはどんな欲が強いんだ?」


『えっ?えぇっとね……。私も睡眠欲…かな、私も意識せずに寝ちゃう時があるからさ』


「俺と同じか」


『うん……ねぇジャック。突然だけど…ね、訊きたいことがあるんだ」


「なんだ?」


 急に恥ずかしそうに訊きたいことがあると言ってきた彼女は、深呼吸をして心の準備をしているようだった。


『え、えっと……す、好きな………好きなね……えぇっと……そう、好きな食べ物!何が好きなのか知りたかったんだ。帰ってきたら作ってあげるよ」


 明らかに誤魔化していて、何を訊こうとしたのかは想像できたが、俺は彼女の質問だけ答えることにして、余計なことは言わないことにした。


 彼女が勇気を出して訊いてきた時に俺も答えられるように考えておこう。


「好きな食べ物か……、ステーキやビーフ……そう、肉料理が好きだ。あとは甘いものも好きだな」


『そうなんだ……、わかった。じゃあ、ジャックが帰ってきたら頬っぺた落ちるくらい美味しい肉料理を作ってあげるから、楽しみにしててね!』


「そうか、それは楽しみだ。さっさと終わらせて帰るとしよう」


『うん!早く帰ってきてね。待ってるから』


「ああ、なるべく早く終わらせる」


 俺は柱から顔を出して2人が居なくなっていることを確認し、階段まで音を立てないように走っていった。


 階段の前に着いた俺は銃を構えてゆっくりと音を立てないように気を付けながら階段を下りて地下へと向かった。

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