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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十章 レジスタンス
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潜入開始

 俺は激しい吹雪の中、厚い防寒着を着てゴーグルをし、山を登っていた。

 吹雪のせいで先が見えないが腕時計のように腕にしているコンパスのおかげで方向はわかるため、迷うことはない。


 ジェーンに説得される形でこの作戦をやることにした俺だが、はっきり言って気が進まない。

 降り積もった雪で進む足が遅くなっていると耳にしているピアスが振動して通信が入ってきたことを知らせた。


『あーあー、聞こえる?ピアス型無線機の調子はどうかなジャック』


「無線機の調子は問題ないが、俺は気分が乗らないな。麻酔銃1つで敵の所へ行くなんて……馬鹿げてる」


『そう怒るなジャック、大丈夫だ。私達もお前の視界を映像化したものを見てアドバイスをする。だからよく偵察してくれ』


 俺が耳に付けているピアスは俺が見たもの、聞いた音を博士達の方で映像化し、音声として出せるそうだ。

 仕組みがどうなっているのかはわからないが、簡単に言えばこれも魔法を使った技術らしい。


「それで、いつになったら着くんだ?」


『もうすぐのはずだよ。崖から足を踏み外さないでねジャック』


 博士からの通信を聞きながら歩いていると道の先が無くなり、立ち止まるとあと一歩踏み出せば崖から落ちるところだった。

 しゃがんで崖の下を覗いてみると吹雪で城のような影は見えるが、それ以外は真っ白になっていた。


『着いたな、崖を下りて城内へ入るんだ。崖から下りる方法は教えた通りにやるんだぞ』


「ああ、了解だ」


 崖から下へ下りる準備を始め、杭を雪をかき分けて地面に打ち込み、ロープを杭にしっかり縛って崖から投げ、ロープを下へ垂らした。


 準備を終えたらあとはロープを使って下へ下り、城内が見えたら偵察をする。

 ロープを掴んで崖から身を乗り出し、壁を蹴るようにして下へと下りて行く。


『良いぞ、上手いものだ。吹雪に煽られても焦らずにな』


「あぁ」


 壁を蹴って下へと下りて行くと、吹雪が弱まって城と城内の様子が見えるようになった。

 吹雪が弱くなった隙に偵察をしておこうと一旦下りることを止めて城内を見渡した。


 城内には戦車と装甲車の2両見え、その他には戦車の近くで転生者と髭を生やした男が話をしている様子が見えた。


「博士、あの戦車はエイブラムスだったか?」


『うん、M1A2だね。色々改良されてるみたいだし、他にもM2歩兵戦闘車が見えるね』


 吹雪が段々と弱くなっていき、下の方も見えるようになった為、見渡していると自分が足を着ける予定の場所に鎧を纏った何かが居た。


「下に何かいるようだが……」


『スケルトンガーディアンですよ。ジョンさんが下りる場所を守るように指示したので、防衛しているのでしょう』


「そうか、安心して下へ下りられそうだ」


 城内を見渡して他に兵器は見えず、レジスタンスの奴等が所々で話しているのしか見えないことを確認し、再び下へと下り始めた。


「博士、ナタリアの様子は何か変わっていたのか?」


 俺は城へ俺達が行っている間にナタリアに何か変化があったのかが気になり、博士に訊いてみることにした。


『う~ん、それがね………私達より変化が少なかった』


「変化が少ない?……直接水を飲んだり、触れたりしたわけでは無いからか?」


『いや、それはないよ。感染した人も同じになるってことはわかっているんだ。効果が薄いから、ということは無いかな』


「じゃあ、どうしてだ?」


 俺は動きを止めずに下へと下りつつ、博士に訊く。


『うーん、私にもわからない。でも、何かが異質になってるのがあるはずなんだ。でも、調べたら魔力適性が前の検査の時よりも上がっているのはわかったんだけど、その他の能力は普通のままなんだ。もしかしたら、彼女しか知らない能力が突出して高くなったのかもしれないね』


「何か……」


 そういえば極端に暗闇を怖がっていたことを思いだし、それが関係しているのではと思い、少しミラーシャに訊いてみることにした。


「ミラーシャ、ナタリアは軍に入る前からずっと暗闇を怖がっていたのか?」


『ん?あぁ、暗いところはとにかく怖がっていた。あと静かな所も駄目だと言っていたな、理由は教えてくれなかったが』


 ミラーシャからの情報を元に考えると前の世界の新聞で見た情報だが、霊の声が聞こえると言う人達は、慣れるまでは声が聞こえるせいで夜や静かな所にいることができなかったと、新聞に書かれていた。

 もしかしたらナタリアにはそういった能力があるのかもしれない。


 そんなことを考えているとやっと城内の地面に足を着けることができ、俺はロープを放してゴーグルをずらして頭へ移動させ、麻酔銃をホルスターから出した。


「着いたぞ。……それで、何故骨が動いてるんだ?」


 下りてる途中で気付いてはいたが、何故か鎧を纏って剣を持っていたのは骨だった。

 どう見ても白骨死体の奴等が骨を鳴らしながら歩き回っていた。


『あら、骨はお嫌いですか?嫌いなら肉付けもできますが』


「いや、嫌いじゃなくて単に驚いただけだ。骨が歩くなんて見たことがない』


『あまり気にしなくて良い、ここでは常識は通じないぞジャック』


「そうか……、それもそうだな」


 俺は深く考えることは止めて城へ入るための入り口を探すために城の壁に張り付くようにして、敵がいないか警戒しながら先へ進む。


 入り口らしき場所を見つけ、近くまで行くと見張りなのか、2人の男が話をしながら扉の近くに立っていた。

 俺は近くにあったトラックの影から耳をすませて2人の会話を訊いてみることにした。


「寒いな……、やっと吹雪が止んだのは良いことだが、それでもこの寒さはこたえるな」


「そうだな、また吹雪が吹いたら中に入るか。それよりも、綺麗な女ばかりだよな、あの国の兵士達は」


「まぁ、皇帝が選んだエリートなら綺麗な女ばかりだな、普通だったり、良くない顔の女もいる」


「なぁ、あの暗い色の紫の髪の女、いい体をしてたよな」


「ん?なんだ、お前あの女のこと狙ってるのか?」


「まぁ……ちょっとな、別に変なことをしようってわけじゃない。ただ話してみたいと思ってるだけだ。でも、許してくれねぇよな……」


「……俺も、白い髪の子と話してみたいな」


「なんだよ、お前も狙ってる女がいるんじゃないか」


「うるせえ、別に良いだろ。男なら綺麗な女を見たら話しかけたくなるってもんだ」


「そうだよな、はぁ……牢屋見張ってる奴ならいい女と話せるんだろ?良いよなぁ」


「そんなことは無いと思うがな、さっき腕に噛みつかれて今治療してるんじゃなかったか?」


「でもよ、美女に噛みつかれるなんて良くねえか?」


「俺は怪我はしたくないな、手を出して怪我をするくらいなら見てるだけでいい」


 どうやら牢屋の見張りが治療を受けているらしい、なら今すぐに中へ入ってそいつに会わないとならない。


 俺はトラックの影から敵を狙えるように上半身を傾けて銃を構え、銃の照準器で男の首辺りを狙いをつけて引き金を引いた。


 音もなく発射された麻酔針が男の首に命中し、男はふらつき、その場で倒れた。

 もう1人も倒れた男に気を取られている内に同じように銃で狙って引き金を引き、倒れた男と同じようにもう1人も倒れた。


『良いね、これで中に入れるようになった。ジャック、何かわからないことがあったら私に言って、なんでも答えられる自信があるから』


「そうか、頼りにしてるぞ博士」


『そろそろ博士じゃなくて、クラーラって呼んでよ……。なんか博士だと皆と違って仲間外れにされてる気分になる』


「あぁ、悪かった。ならこれからは名前で呼ぶ、頼りにしてるぞクラーラ」


『うん!任せなさい!』


 姿は見ることはできないが、クラーラがモニターの前で胸元を拳で叩いているような気がした。


 俺は夢の中へと行った敵を起こさないように気を付けながら城の扉を開けて、中へと入っていった。

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