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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第一章 犯罪者と異世界の少女
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異世界の物

 宿へ帰るために来た道を戻り、周りを見渡しながら俺は魔王軍の幹部と遭遇した時のことを思い出し、次に遭遇した場合どうするか考えていた。


(近接は話にならない、銃か何かあれば良いがそんな都合よくある訳もない)


 俺は魔王軍の幹部やそいつらと同じ力を持った奴をどうやったら上手く逃げるまでの時間を稼げるかを考えていたが、中々そんな都合良く行くはずもなく、俺の考える限りでは逃げることができない、走ってもすぐに追い付かれて殺される。

 隠れても恐らく無駄、だからといって戦おうと思えば相手には戦いと言うよりはお遊びだろう。


(次に会ったら確実に死ぬな…)


 と考えていると何かを踏んだ感触がした。

 足を退けてみるとそこには土を被った拳銃が転がっていた。


(これは……動くのか?)


 拾い上げてよく見てみるが特に目立った傷もなく、まだ動きそうな感じではあった。

 だが弾倉だけ抜けていることに気が付き、周りには薬莢が2つくらい落ちていて、弾が入っていない空の弾倉と弾が1発も使われていない弾倉が少し離れたところにあった。


(何故こんなところに?)


 疑問に思うことはあるがとりあえず銃に弾倉を入れ、銃の中にもう1発入っているか確認をした。

 銃の中にも弾があることを確認して、安全装置をかけてパーカーのポケットに入れ、俺はまた宿へと歩き出した。


 何事もなく無事に宿に着いた俺はさっきの女性が守っていた扉の方へと近付き、アルと子供の声が聞こえることを確認し、階段を上って部屋へと入った。


 俺は部屋に入るとポケットから銃を取り出し、椅子に座って銃の点検をした。

 あれだけ土を被っていたら動作不良を起こす危険があるため、よく確認して本当に使えるものかどうか見てみる。


 しばらく銃の点検をしているとナディアが食事を持って部屋に入ってきた。


「ジョン…何してるの?」


「銃の点検だ」


「銃?」


「そうだ」


「これ……見たことある」


 ナディアはそう言うと魔法を使って何かを取り出した。


「これは?」


「色々な銃のことが書いてある本」


 ナディアが取り出したその本には銃の名前や詳細、手入れの仕方が書いてあった。


「これはどこで?」


「魔法で異世界の物を色々出してた時に…」


「車の本とかは無いのか?」


「待って、探してみる」


 ナディアが本を探している間、俺は今持っている銃を本に書いていないか探した。

 そしてようやくその銃の名前が分かった。

 コルトM1911とイラストの下に名前が書かれていて、整備の仕方についても書かれていた。

 他にも書いてあることは沢山あったが、今は整備の仕方だけを知りたい為、整備の仕方が書かれている所を探した。

 整備の仕方の書かれた場所を見つけ、書いてあることに従いながら整備していく、整備が終わったらしっかり撃てるかどうかを確認するだけだ。


「ナディア」


「何?」


「撃てるかどうかを試す、耳を塞げ」


「わかった」


 ナディアに注意をしてから椅子から立ち上がり、的を部屋の中にあった花瓶にして、よく狙って引き金を引いた。

 花瓶は狙った所が割れて破片が散った。


「問題ないな」


「凄い音…耳を塞いでても良く聞こえる」


「崩れているとはいえ部屋の中だからな」


「これと似た物がある…」


「そうなのか?」


「うん」


 ナディアは何かを光から取り出した。


「これ……マスケット銃って書いてあった」


「マスケット?」


 本で探してみるとマスケットについて書かれていたが、これは1発しか弾が入らないため一回撃つ度に再装填が必要な銃だった。


「使えるかな…?」


「ああ、大丈夫だ。無いよりは良い」


「あとこれ…」


 マスケットをナディアに返して、ナディアが取り出した銃を受け取った。

 ナディアが取り出したのは円盤の様な物が付いた銃だった。


「……なんだこれは」


「面白い銃だよね」


 知らない銃だが、本のページをめくって探すと本に載っていた。

 DP-28と言う銃らしい、どうやら軽機関銃と言う種類の銃らしい。


「…まだある」


 今度は何を取り出すのかと思っているとボンベが2つ付いたような見た目の物を取り出した。


「…………」


「どうかな?」


「それは……銃なのか?」


「えっと、確か…火炎放射器…だったかな……これは銃じゃない?」


「銃なのかはわからないが武器ではある」


 そんなことより重くないのかを聞きたかったがそれは扉を開けた奴に遮られた。


「なぁ、大丈夫か?」


「ああ、大丈夫だ」


「いきなりデケェ音がするもんだから皆驚いてたぜ?」


「なら大丈夫だと伝えておいてくれ、特に問題はない」


「そうか、それなら良かった。邪魔したな」


 そう言い残すと扉を閉めてアルは下に戻って行った。


「ナディア、他にも異世界の物はあるのか?」


「うん、あるよ」


 ナディアがどれだけ俺のいた世界の物を持っているのかを確認したかったため、ナディアに頼んで食事をしながら異世界の物を紹介してもらった。

 ナディアが持っていた物の量は多く、俺が知っている物やナディアも俺も知らない物の話を除いてもかなり量があるようで、話は夜まで続いた。


「異世界にも…この世界にある物と同じ物があるんだ」


「そうだな、少し違うだけでそこまで違う訳でもないのかもしれないな」


「でも、私が持ってる物のほとんどは…王国とか帝国とかに住んでる人達が持ってるような物ばかりで、村や小さな町だと見かけない物ばかりなの…」


「なるほど、つまりこっちでは高価な物なのか……そういえばナディア、聞き忘れていたがここはどこだ?」


「ここ?ここは…ヴァルトヘイル帝国」


「国の中心人物は?」


「国の中心人物はミサキ・サトウ皇女…転生者」


「ミサキ・サトウ…会うことはできるのか?」


「うん、会えるけど…皇女様が居るのは相当遠くの国だから、何日もかかると思う」


「そうか、もし会えるなら会ってみたいものだな」


「なら会いに行くか?」


 突然後ろから声をかけられて思わず拳銃を手に取った。


「…ハルか」


「そんなに驚くことはない人間、それで奴に会いに行きたいのか?」


「いや、会えるなら会ってみたいと思っただけだ」


「なら我に言えば良い、今すぐにでも会わせてやろう」


「ハルなら…確かに会えるね」


「元大魔王だと皇女に簡単に会えるのか?」


「なに、皇女などと言っても所詮ただの小娘だぞ?」


「皇女様だよ、ハル…」


「我からすればただの小娘だがな」


「それはハルとは違いが大きいから…」


「そんなに違うのか?」


「ああ、我とは比べ物にならない」


 ハルの言い方や表情からして相当自信があるようだ。


「まあ、その内会ってみよう」


「あそこは警備が厳重でな、会うなら我も付いて行かなければ貴様だけでは捕まるぞ」


「そうか、覚えておく。その前にこの国がどんな国か知ってから会いに行く」


「それなら…この近くに確か大きな街があったから、そこに向かう?」


「そうだな、なら明日はそこに向かおう」


 とりあえず明日の目的地を決めた俺とナディアは寝る準備を始めた。


「では我は隣の部屋で寝る」


 そう言ってハルは部屋から出て行った。


「ナディア」


「何?」


「ぬいぐるみがあっただろう?」


「うん」


「それを抱いて寝てくれ」


「どうして?」


「俺が眠れなくなるからだ」


「?うん、わかった」


 ナディアから離れて寝ようとした時、服を掴まれて俺の体はそれ以上進まなくなった。


「でもジョンも一緒に寝て」


「…ああ、わかった。だから引っ張るな」


 ナディアから離れて寝ようと思っていたが結局、ナディアと一緒に寝ることになってしまった。

 だがぬいぐるみのおかげか、その夜はよく眠れた。

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