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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十章 レジスタンス
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転生者とレジスタンス

 基地へ戻ってきた俺はミラーシャの部屋へと呼ばれ、ミラーシャの部屋にあるソファに座ってミラーシャがテーブルに広げている写真を見ていた。


 写真には戦車や戦闘機、装甲車等が沢山写っており、この国の兵士とは違う装備をしている兵士達の写真もあった。


「奴等は最新の武器、兵器を使ってる。転生者が本気を出すとかなり面倒なことになる。その前に潰すつもりではあるが、今我が軍には転生者を倒せるような優秀な部隊が少なく、戦えば負けるのは明白だ」


「フランシールが言っていたが、ナタリアがいた部隊は転生者を1人で倒せるような兵士ばかりを集めた部隊と言っていたが、本当なのか?」


 俺は写真からミラーシャに視線を移し、フランシールから聞いた話をミラーシャに訊いてみるとミラーシャは顔をしかめた。


「フランシール?……奴の言葉は信じるな、あいつは嘘つきで、無慈悲でドライアイスなんかより冷たい心を持ってる正真正銘の魔王だ。ハントレス隊は確かに優秀だったが、隊員1人で転生者を1人で倒せるなら、フレデリカの国はもうとっくの昔に消えてなくなってる」


 ミラーシャは反対側のソファに腰を下ろし、何かの本を開いて俺に差し出した。

 本を開いたまま受け取ると、写真に写っている戦車と同じ戦車の絵と説明が書かれたページだった。


「そのM1エイブラムス戦車はこの国の軍が保有しているどの戦車よりも遥かに優秀な戦車だ。今ある戦車に改良を加えても勝てない」


「この国にある戦車はどんな戦車なんだ?」


 大体、転生者側が使っている戦車の解説や説明を頭に入れることができた俺はミラーシャに質問をするとミラーシャは立ち上がるとテーブルに手をついて俺が持っている本のページを変えるとソファに戻った。


「私の国で主力として使われているのはT-72とT-64だ。全て改良は加えたが、エイブラムスに勝てるほどの性能ではない。もし勝てるとしたらクラーラが作ったT-72だろう。あれならエイブラムスにも勝てるが、コストが高すぎて量産できない上、そもそも一からクラーラが作った戦車を扱える戦車兵がいない」


「……どんな戦車なんだ」


「………一言で言って色々ぶっ飛んでる戦車だ。作った本人も何故作れたのだろうと考えるほどにな……」


 一体どんな戦車なのか気になるが、そんな戦車でなければ勝てない戦車を相手は使ってくるかもしれないということは理解した。


 少し本を見ていると扉が開き、目を閉じている修道服を着た、見覚えのある銀髪の女性が入ってきた。


「ほぅ、クソッタレのお出ましだ。今すぐ頭をぶち抜いてやろうか?フランシール?」


 魔法を使って銃を取り出すとフランシールに向け、睨み付けるような目を向けた。


「あらあら、昔から血の気が多い騎士様でしたが、相変わらずようですね。ミラーシャ団長?」


「相変わらずふざけた喋り方だな、気に入らん」


 ミラーシャは引き金を引き、銃から火が吹き出すとフランシールが一瞬手を振り、握った手を開くとフランシールの手から何かが落ちた。


「チッ、本当に気に入らない……。貴様のせいで何人もの私の部下が死んでいった……」


「あら、いつもの昔話ですか?……フフ、良いですよ。また団長のお仲間さんのことと、あの腰抜け勇者様のお話もしましょうか?」


「……フ、フフ、本当に……ぶち殺してやろうか?」


 ミラーシャはソファから立ち上がると銃を向けたままフランシールに詰め寄った。


「よせ、ミラーシャ」


 扉が開きジェーンが部屋へ入ってくるとフランシールの前に立ち、ミラーシャを止めた。


「くっ……」


 ミラーシャは銃を下ろし、黙ってソファへ戻ってくると銃を魔法でしまい、ソファに座って腕を組んだ。


「フランが私達に協力してくれる。と言っても、本当にこの国が終わってしまう前に助けてもらう為の切り札としてだ。今はまだ手は借りない」


「お久しぶりですね。ジョンさん」


「ああ、随分と嫌われているようだが……」


「フフ、そうですね。当然と言えば当然ですが」


 フランシールは俺の隣へ座るとミラーシャはフランシールを見ないように横を向いてジェーンだけを見ていた。


「団長の国を堪能させてもらいましたが、良いところですね。虫が走り回ってなければもっと良かったのですが」


「……ふん、忠告のつもりかフランシール?」


「ただの報告ですよ。虫は放っておくと手に負えないほど増えます。だから、早めの駆除を行った方がよろしいかと思いますよ。ミラーシャ団長」


「……手は尽くしてる」


 ミラーシャは横を向いたままそう答えるとジェーンがミラ。


「会うたびにこんな感じだから、気にしなくて良いぞジャック。今はそんなことより転生者の話をしなければならない。ミラーシャ、地図を」


 今にも殺し合いを始めそうな2人を気にせずにジェーンはミラーシャが取り出した紙を取りテーブルの上に広げると、紙には地図が描かれ、廃城と国の場所がわかるように印も付けられていた。


「奴等は今、元々フランが根城にしていた山の崖の下にある城を拠点にしている。ボロボロだが転生者に防衛用として迫撃砲や銃座を置かれたら落としにくい鉄壁の要塞になってしまう」


「昔のままなら入りやすいように門は無い上に内側に閉じ込めて迎え撃つ為の構造をしているはずですので、正門から入るのはおすすめできません。他に入り口を作る必要がありますね」


「何処がいいと思う?」


 ジェーンに訊かれたフランシールは腕を組んで考えていた。

 表情があまり変わらないせいで何を考えてどう思っているのか俺にはわからないが、何処か楽しそうにしている感じがするような気がした。


「……そうですね。丁度崖下に作った城ですから、崖からロープを使って城内へ入るのはどうでしょうか?色々な方法の中でもこれがいいと思いますよ」


「なるほど、となると……まずは1人が城の中へ潜入し、レーダーを破壊して他の部隊が安全に入ってこれるようにした後、ヘリで部隊を城内へ下ろして制圧する、と考えることができるが何か質問はあるか?」


 ジェーンがそれぞれの顔を見るとミラーシャが口を開いた。


「レーダーの種類がわからない、航空機や陸上の乗り物を探知する物なのか、それとも魔力を探知するレーダーなのか」


「心配いらない、種類は大体わかる。他の転生者が使っているレーダーはほとんどが魔力を探知するものだ。恐らくレジスタンスに与えたレーダーもそれだろう、転生者は基本的にお人好しばかりだ。最新のシステム、武器、兵器を惜しむことなく与えるはずだ」


「となると……魔力を持っていない奴がこの作戦にふさわしいと言うわけだな」


 ミラーシャがそう言うと全員が俺を見た。

 何故俺が呼ばれたのか少し気になっていたが、このためだったのかもしれない。


「頼めるか?」


「おい、何故俺なんだ?俺は素人なんだぞ……。仮に中へ入ったとしてもどれがレーダーで、どうやって破壊するかなんてわからない」


「大丈夫だ、小型の無線機を持たせる。クラーラと無線をして確認してくれればいい、私とミラーシャも無線でサポートする」


「……どうしても俺が行かなきゃならないのか?」


「あぁ、お前が適任だ。戦闘能力に不安が残るが、お前なら戦闘をしない方法も考えられるだろう?」


 確かに逃げることや隠れることは得意だが、相手も素人とはいえ俺よりも武器を使うことには長けているはず、それに見つかれば逃げ場のない城内全体が警戒状態になってしまうはずだ。

 そんな所へ自分から入っていくのは自殺行為だ。


「ジェーン、俺は……」


 どうにかして断ろうと口を開くと扉が叩かれて部屋に紙を持った兵士が入ってくるとミラーシャに紙を渡し、ミラーシャの耳元で何かを囁いて部屋から出ていった。


「どうした?」


 ジェーンがミラーシャに聞くとミラーシャは紙をテーブルの上に置き、ジェーンに顔を向けた。


「ナタリアとエリカが何者かに誘拐されたそうだ。2人が連れ去られるのを見た者が多く、信憑性は高いそうだ。それに拐われたのは2人だけじゃないそうだ」


「レジスタンスか?」


「恐らくそうだろう、国の中にもレジスタンスに協力している者はいる。法律で抑えようとしてもそれも限界はある。兵士達も裏切らないとは限らない」


「……急がなければならないな。ジャック、すぐに準備しよう、2人も含めて他の兵士が用済みになったら何をされるかわからない」


 腕を組んで何か考え始めたかと思うとジェーンは立ち上がり、扉へ歩いていった。


「お、おい、ジェーン!俺はまだ良いとは言ってないぞ……」


 先に立ち上がって部屋から出ていったジェーンを追いかけるようにソファから立ち上がり、部屋から出てジェーンを追いかけた。

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