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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第十章 レジスタンス
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レジスタンス殲滅作戦

 あの後、立てるようになるまで回復した彼女を部屋まで送り届け、俺は近くの片付けられた部屋の床で寝た。

 何故彼女が過呼吸をし始めたのか、それが気になった俺は起きたらすぐに吹雪が止んでいることを確認し、外へ出て博士の元へと向かった。


 外は雪が降り積もり、膝近くまで雪が積もっていたことで博士のいる倉庫へと着くまでに、昨日よりも行くまでに時間がかかった。

 やっと博士のいる倉庫へ辿り着くと、扉を開けて中へと入っていった。


 中へ入った俺は建物へ向かい、建物の近くまで往くと博士が眠たそうに半目の状態で出てきた。


「ん~ジャック?どうしたの?こんな朝早くに……ふぁぁ~」


「博士訊きたいことがあってきたんだが、昨日ナタリアが急に過呼吸をし始めた」


「へ?……ん~、過呼吸……過呼吸………その後気絶しちゃったとかは?」


 博士は寝癖で荒れた頭をかきながら段々と目を開くと腕を組んだ。


「心臓が止まって死にかけた」


「………感染した?いや、そんなまさか……ちゃんと魔法をかけておいたんだからそんなことは……」


 博士は心臓が止まったことを伝えると眠気が吹き飛んだのか、目をしっかり開けて少し上を見上げた。


「ジャック……ナタリアは生きてるんだよね?」


「ああ、人工呼吸と心肺蘇生法を使ってなんとか……」


「あちゃ~………それじゃあもう手遅れか」


「なに?……何が手遅れなんだ博士?」


 俺がそう訊くと博士は目を俺と合わせた。


「大丈夫……本来ならもう死んでるはずだけど、ナタリアが生きていると言うことは、偶然にも私みたいに生命の泉の力を手に入れられたんだろうね」


「どういうことだ?」


「本来、あの泉の水に触れて力を得たら、代償として身体から出る全ての液体があの泉の効果を持つようになる。と言っても、汗は一番効果が低くて、血液が一番効果が高い。つまり、身体から出てくる液体によって効果が変わってくる。唾液なんかは効果がどちらかと言うと高い方で、血液程ではないけど、人工呼吸をした時点で少量だろうけどナタリアの体内へ入っていってるはず」


「つまり、俺が人工呼吸をしたせいでナタリアが?」


 博士は装甲車の近くまで歩いて行くと、装甲車にもたれかかった。


「そうだね、親切心があだになったってこと。でも、偶然にもナタリアは力を得ることができて、息を吹き返すことができた……。だから、すぐにここに呼ばないといけない」


 博士はポケットから小型の無線機を取り出すと何処かへ連絡をしようとしていた。


「ミラーシャ?聞こえるかな?」


『なんだ?聞こえているぞクラーラ』


「ナタリアが感染、適応したみたいだからこっちに呼んで、説明をしてあげないとだから」


『なに?感染ということは……誰がナタリアに?』


「ジャック、ちゃんと魔法かけておいたんだけど、人工呼吸をしたらしいからさ」


 博士はこっちを見ながら笑って無線機に言うと無線機の向こう側から何か物が落ちるような音とノイズが聞こえてきた。


『ああ、すまんな、手が滑った。理由はわかった、ナタリアをそっちへ向かわせる。それとジャックには任務がある。三番格納庫前に行くように伝えてくれ』


「了解、それじゃあ任務があるみたいだし、送ってあげるよ」


「博士、さっき言っていた俺にかけた魔法はいつかけたんだ?」


 博士が装甲車へ上ってハッチを開けたところで博士に訊きたいことを言うと、博士は運転席へ入って顔だけを出して俺の質問に答えた。


「泣いて抱き付いた時にこっそりとね~、気付かなかったでしょ?」


「なるほど、あの時か」


「いちいち説明とかするの面倒じゃない?だから、私はさりげなく終わらせるんだよ」


「ちゃんと説明して欲しいんだがな……」


 そう呟きながら俺は装甲車の中へと入ると後ろの扉が閉まり、装甲車のエンジンが動き始めた。


「少し揺れるかもしれないけど心配しないでね~」


 装甲車が動き出したと思うと急に坂道を上っているような角度になり、エンジンが唸りを上げながら勢いよく揺れると元の角度に戻った。


 そのまま装甲車は進んでいき、数分程揺られていると装甲車が止まった。

 後ろの扉が開き、外へ出るとヘリがプロペラを回していつでも飛び立てるようにしていた。


「ヘリに乗ってジャック、ヘリの中で任務を説明してくれるはずだから」


「ああ、わかった」


「初任務頑張って、ジャック」


 装甲車は扉が閉まると走り出し、雪の中を走っていった。

 装甲車を見送った俺はヘリの方を見ると長い黒髪の女性が俺の方へ向かって歩いてきた。


「貴方がジョン・ウィリアムズ?」


「あぁ、そっちは?」


「私はヒルデ中尉です。今回の任務に貴方達の隊の隊長として同行します。詳しくはハインドの中で話しましょう」


 俺とヒルデはヘリへ乗り込むと他の新人隊員が既に乗って銃の点検などをしていた。

 ヘリの扉が閉まるとヘリが飛び始め、段々と上昇していく中、ヒルデが防寒着と装備を渡してくれた。


「貴方の装備、軽量の防弾ベストとM1903、それとガバメントです」


 ヒルデから渡されたベストを身に付け、銃はフレデリカから貰った銃にスコープが付けられたライフルとエリカが褒めていた銃、コルト・ガバメントM1911だ。

 ホルスターを受け取り、足に付けてガバメントを入れた。


「では、作戦を説明します。そんなに難しい作戦ではありません、これからレジスタンスが隠れ家としている廃城へ向かいます。そこでレジスタンスを一人残らず排除、殲滅し、城を占領します。ジョンさん、貴方に陛下から伝言があります。「作戦が終わったら片付いたウジ虫の巣をお前の土地にしてやる」と」


「なるほど……、つまり徹底的に駆除をしろってことか」


『まもなく降下地点です。準備を』


 ヒルデが身に付けていた無線機から声が聞こえ、ヒルデは立ち上がると扉の近くにあったスイッチを押し扉を開けた。


 外から冷たい空気がヘリの中へと入ってきた。

 外は顔が凍るような感覚にさせる程の寒さで、防寒着を着ていても寒いと感じさせた。


 ヘリが地面へと近付くとヒルデが飛び降り、その後に続くように俺も飛び降りた。

 積もっている雪はそれほど深くはなく、少し歩き辛い程度の深さだった。

 ヘリから曹長達が降りるとヘリは扉を閉めて上空へと上昇していった。


『ソーカル、兵員輸送完了。上空で待機します』


「了解ソーカル、そのまま指示があるまで待機せよ」


『ソーカル了解』


「ここから真っ直ぐ進んだ先に廃城があります。ヘリの音で気付かれているかもしれない為、警戒を怠らないように」


「「「了解」」」


 全員が返事を返すと、ヒルデは頷いて前を向いて銃を構え、俺達は縦に並んで城を目指した。

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