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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第九章 心と体の変化
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ナタリアの後を追って

 足跡をたどって行くと三階建ての建物の中へ足跡が続いていた。

 足跡をたどって中へ入り、二階へ階段で上がると廊下に足跡が残っており、更にたどって行くと1つの部屋へたどり着き、俺は部屋の扉を三回叩いた。


「隊長、居るか?」


 中から足音が聞こえてくると扉が開き、ナタリアが顔を出した。


「な、なによ……用があるって言ったでしょ……」


「わかりやすい嘘をつくな、話を聞いたんだろう?……何処かで話さないか?さっきの俺と博士の会話のことで話したい」


「うっ………わ、わかったわよ……」


 俺が扉から離れると彼女は大人しく部屋から出て部屋に鍵をかけた。


「それで……何処で話すのよ……」


「誰もいない場所が良いんだが、何処かないか?」


「そうね……ここはもう私以外誰もいないから何処で話しても大丈夫よ」


「……そうか、ここは寒い……暖房が付いてる部屋が良いだろう」


「だったら良い場所があるわ。ついてきて」


 俺とナタリアは三階へ上がると会議室へ入ると彼女が壁にあったスイッチを操作して暖房をつけた。


「まだ寒いけど、我慢していれば暖かくなるわ」


「ああ、わかった」


 俺は大きいテーブルに並べられた椅子に適当に座り、彼女を見ると何故か遠くの方に座っていた。

 俺は椅子から立ち上がって彼女の近くまで行き、椅子に座ると顔を背けた。


「貴方……私のことを覚えてるかしら」


 彼女は顔を背けたままそう言った。


「……教会の時のことか?」


「えぇ、そう。あの時、貴方を撃った兵士が……私なのよ」


「ああ、そうか」


 あの時の生き残りは一人だったのだから、ミラーシャから聞いたときにすぐに気付いた。

 だから、それほど驚くこともなかった。


「………それだけ?」


「なんだ?他になにか言って欲しいのか?」


「貴方……撃たれたのよ?当たり所が悪かったら死んでいたのかも知れないのよ?」


 彼女は顔をこっちへ向けると表情が真剣な顔になっていた。


「その時はその時だ。俺は死んでいない、俺なんかより君の方が辛い思いをしているんじゃないか?」


 彼女は落ち込むような表情になると目に涙を浮かべていた。


「兵士として生きてるんだから、別れは突然やってくるものよ……別に……辛くなんて………」


 涙が彼女の頬を伝い、テーブルへ落ちていき、彼女は泣き始めた。


「……運が悪かったな」


「……貴方は、そう…思うの?」


 泣きながら訊いてきた彼女に俺は頷いた。


「……あぁ、周りは運が良かったと言うかもしれないが……仲間がいなくなったのに運が良いとは、言えないからな」


「貴方も……そういう経験が?」


「……仲間はもう居ない、信用していた仲間達は皆、旅立った」


 彼女の質問に答えると彼女は更に声を出して泣き始めた。


「お、おい、大丈夫か?」


 流石に呼吸困難になっているんじゃないかと心配になって俺は声をかけた。


「や、やめで……そんなぁ……がなしそうな顔でぇ……言わないでよぉ……えっぐ……」


 彼女はテーブルに突っ伏して自分の腕の中で声を上げながら泣いていた。

 彼女が落ち着くまで俺は彼女の背中を無意識に撫でていた。


 彼女が落ち着きを取り戻して顔を上げると机は涙で濡れ、彼女の顔にも涙の跡が残っていた。

 俺はハンカチを取り出して彼女に渡すと彼女はハンカチで鼻をかんだ。


「大丈夫か?……話はできそうか?」


「え、えぇ……あっ、ごめんなさい……ハンカチで鼻をかんじゃったわ……」


「洗えばいい、……思ったより感傷的なんだな、隊長は」


「そ、そんなことは……無い……わよ?」


 彼女はハンカチで涙を拭き、俺の肩に手を置いた。


「貴方は生きていて辛くないの?……仲間が居なくなったのに、生きづらくないの?」


 彼女は俺に同情するような視線を向け、俺は自然と微笑みを浮かべた。


「生きづらいな、……よくここまで生きているなと自分でも思う。……親しかった仲間は皆、逝ってしまった。あとに残された俺はただ生きてるだけだ。生きる意味も目的も見付けられず、ただ彷徨い続けるだけの男だ」


「ただ生きてるだけ………貴方は強いのね」


「強くはない、俺は何も守れなかった……自分の身を守るのが精一杯で、……親代わりになってくれた仲間も、小さな命も……誰一人として、守ることはできなかった……」


 俺がそう言うと彼女は悲しそうな顔になった。


「そう……なんだか……私と似ているのね。……私も、元々は反政府側で……レジスタンスに居たの。色々あってレジスタンスから政府側になったけど……政府側になる前の仲間達は皆、居なくなってしまった……。唯一、生きてるんじゃないかって思うのは私の幼馴染の男ね」


「………幼馴染……か」


 俺はパーカーのポケットへ手を入れると何故か屋敷で整理した時に出したはずのペンダントが入っていた。

 ペンダントを取り出して彼女に差し出すと彼女はゆっくりと受け取った。


「これ……そう、そういうことね……」


「屋敷でハンクが殺したレジスタンスから盗った遺品だ」


「そう……でも、なんでかしらね……不思議と寂しい感じも辛く感じたりもしないわ」


「……そうか」


 彼女はペンダントを眺めていると彼女の腹から空腹を知らせる音がなった。


「お腹空いたわね……」


「そうか、なら話はここまでに……」


「待って、もっと話さないかしら?食事でもしながらね」


「……わかった」


 一旦、話が終わった俺達は会議室を出て階段を降り、ナタリアの部屋まで俺はついていくことになった。

 一緒についていく理由は、彼女は取りに行きたいものがあるらしく、俺に部屋までついてくるように頼んできたからだった。


「ち、ちょっと……早く歩かないでよ……」


「普段よりも遅く歩いてるつもりなんだが……」


 ナマケモノのように遅い彼女を連れて部屋へ向かっているが、彼女の進む速度がとにかく遅く、俺は普通に二歩三歩歩いただけで離れてしまう。

 ここまで怖がりだったのは予想外だった。


「うぅ……お願い……一人にしないでよ……」


「わかった。じゃあ、手でも繋ぐか?」


「えっ?……で、でも、それは好きな人とやることで……そうだわ、貴方の腕に抱き付いてればいいのよ。その方が怖くないし、落ち着けると思うわ」


「いや、それも好きな人とやることだと思うんだが……」


 彼女は俺の腕に抱き付いてくると無意識なのだろうが胸の谷間に俺の腕を挟んだ。

 今まで経験したことがなかったからか、心臓が普段よりも速く動いているような気がした。


「お、おい……」


「な、なによ、何か居たとか言わないでよ?」


「いや、そうじゃないが……」


「な、なにか言いたいことあるならハッキリ言いなさいよ……!こっちは必死に怖いの我慢してるのに!」


 彼女は強く腕を抱き締めて更に胸の中へと腕を沈めていった。


「わかった。わかったからそんなに強く抱き締めるな、動きにくいだろ。別に何か居たとかじゃない、大丈夫だ」


「ほ、本当に?信じるわよ?」


「あぁ、本当だ。信じていい」


 段々と胸に腕が挟まれていても落ち着いていられるようになってくると、そのまま彼女に腕を捕まえられたまま部屋へとゆっくり向かった。


「こんなに怖がりでよく一人でここに戻ってきたな」


「あ、あの時はライトがあったから……明かりがあっても怖いのは変わりないけど、無いよりは安心するから……」


「なるほど、なら今も持っているんじゃないか?」


「だったら良かったんだけど……。貴方が来たときに部屋に置いて出てきちゃったから、今は持ってないわ……。ひっ!?……な、なんの音?」


 彼女は風の音に反応して俺の腕に抱き付いたまま周りを見渡した。


「大丈夫だ。風の音だ」


「そ、そう?早く部屋に…ひぃっ!」


 強く風が吹いて窓が激しく揺れると彼女は腕を掴んだまま俺の体に抱き付いてきた。


「大丈夫だ。そんなに怖がることはない、ただの風だ」


 俺は彼女の肩に掴まれていない方の手を置いて震える彼女を落ち着かせようと風だと伝える。


「もう嫌ぁ……暗いところ大っ嫌い……早く部屋に入りたい……」


 涙声で子供のようなことを言うと俺の体を強く抱きしめた。


 俺は彼女に抱きしめられて動けず、しばらくしてやっと彼女が動けるようになり、なんとか彼女を部屋まで送ると扉の鍵を開けて彼女が部屋へ入っていき、ライトを持って出てきた。


「博士の所へ行きましょう。今は食堂も開いてないだろうから」


「ああ、わかった」


 彼女はライトのスイッチを入れ、博士のもとへ俺達は歩き出した。

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