謎の液体の正体
建物へ入ると椅子がいくつかあり、作業台のような台の上に銃が置かれていた。
「よし、ここなら誰もいないからね~」
博士は作業台の上に置いてあった紙を一枚取ると椅子に座り、俺も近くにあった椅子に座ると博士は足を組んで紙を台に投げると視線を俺に向けた。
「ジャック、これから真面目な話をするからさ。私の口調が変でも信じて聞いて」
「あぁ、わかった」
「まずね、ジャックが目覚めるまでに少し血液を取らせてもらったの。その血液を検査して、わかったのが……貴方は老いることができなくなったことだね」
「老いる……つまり、歳をとらなくなった?」
「そういうこと、あと体の色んな機能が向上しているはずだよ。五感の向上に計算能力や記憶能力、気配や視線を感じる力も段々と上がってきているはず」
俺は自分の手を見た。
手を見たところで自分の体がどうなっているのかはわからない、いつもより手が綺麗に感じるくらいだ。
「何かを打ち込まれてるってジェーンから聞いてたけど、これはある泉の水の効果だね」
「どんな泉だ?」
「名前は無いようなものだけど、生命の泉って言われてるよ。でもね、この泉は本来、実験とかで使っちゃいけないんだよ」
「何故だ?」
「えぇっとねぇ、この泉の水はこの世界の人間や転生者が少しでも触れるだけで内蔵が全部破裂しちゃうんだよ。原因は未だにわからないけど、恐らく魔力に反応して起こってしまう症状だと、私は仮定してる。そんな理由があるから、この泉を知ってるのは一部の関係者だけで、実験をしたり泉から持ち出したりした人は死刑にされる」
あまりの理由に驚いて、目を思わず見開いた。
自分の体に打ち込まれた液体が青酸カリなんかよりも危険なものだったことに俺は驚いた。
「魔力………確か、転移者には魔力が無いらしいが、それが関係しているのか?」
「私の仮定だけどね、でもこうしてジャックは生きてるし、私やミラーシャみたいに……ああ、私のこととか話してなかったね。実はね……この世界の人間でもごく稀にだけど、その泉の水に触れると強力な力を手に入れることがあるんだ。私とミラーシャとかがそうだね」
「その泉の水に触れたのか?」
「アハハハ……まぁ……何て言うか……。泉の中に落ちちゃったって言った方が正しいね……」
博士の顔から笑顔が消え、落ち込むような表情になったが、すぐに笑顔を作るが目から涙が出ていた。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫!大丈夫!目に埃が入っただけだよ!」
「そうは言うが、鼻声になってるぞ」
「大丈夫だって……大……丈夫……」
博士は涙を流しながら椅子から立ち上がると俺に近付き、抱き付いてきた。
「おい、博士。俺はティッシュやタオルじゃないぞ」
「うるさい……美少女に抱き付かれて嬉しいとか言ってよ……」
俺は抱き付いてきた博士をどうすればいいのか悩んだが、そのままなにもせずに好きにさせてやることにした。
「美少女……か、博士……博士は十代に見えるが……」
「うん…………泉に落ちたの……まだ17の時だったから……胸も成長しかけで止まっちゃったし………迷惑な水だよ、あれは……」
「……そうか」
「ごめん、泣き止むまで……このままでいたら恋に発展したりとか……」
「それは無いな、博士が子供にしか見えないからな」
「なっ!私は立派なレディですー!胸とか大きくないけど17歳だし、もう立派なレディなんだよ!大人のレディ!そう!レディ!!」
博士は俺から離れると両手を広げて大人の女性であることを訴えてきたが、どうにも子供にしか見えない。
「いや、レディに憧れてる子供にしか見えないな」
「むっ……こうなったらどっちがレディか勝負だよ!ジャック!」
「どうして俺なんだ。俺は女じゃないぞ」
「あ、じゃあ私が作った女になる薬でも飲んでみる?」
「断る」
簡単に女性になってみるなどと訊かれて首を縦に振る奴が居るのだろうか、そう思いながら博士の提案を断った。
「ジャックが女性になったら凄い綺麗だとおもうんだけどなぁ~、ちょっとだけでも駄目?」
「駄目だ。ちょっとじゃ済まないだろ」
「お願~い、私ジャックが女性になったらどうなるか気になるんだ~。ちょっとだけだから、ね?ね?」
「断る」
さっきとは違い、元気になった博士に何回も薬を勧められて女性になることをねだられたが、俺は屈せずに断り続け、諦めさせた。
「もう、ジャックは恥ずかしがり屋だな~。まぁいいか、それでね。さっきの続きだけど、私が泉に落ちた時にミラーシャも一緒だったんだ。彼女はある国の騎士団長で、凄い強い魔法剣士だったんだよ。でも、私を助けるために泉の中で目を開けて泳いだせいで、目の色が毎年変わるようなおかしな目になっちゃって、その事で国の人にも仲間にも気味悪がられて、騎士団を……抜けることに……」
博士は笑顔を取り戻して椅子に座るとさっきの話の続きを話し始めた。
しかし、ミラーシャの話になったところで再び暗い表情に戻ってしまった。
「博士、まずは博士の体の変化を聞きたい」
「あ、そうだね。まずは私の体の変化を話さないとだね。私の体は成長が止まって、五感とか脳の機能が向上したけど身体能力はそのままなんだ。魔力も1つだけだけど突出して高い適性になった」
「なるほど、魔法の適性はどうやったらわかるんだ?」
「知りたい?じゃあ、この機械を使えばわかるよ」
博士は台の上にあった機械を取ると、スイッチを押して起動した。
俺は立ち上がってその機械の画面を覗き込むと起動中の画面から検査を開始したことを知らせる画面になった。
「これで魔力適性が調べられる。転生者は大体の場合、全ての適性が高い上に魔力量も上級職の魔法使い以上にある。おっ、結果が出たね」
画面に博士の魔力検査の結果が出た。
魔力適性の結果、火属性・上級、水属性・下級、風属性・中級、光属性・下級、闇属性・測定不能。
「測定不能?」
「測定不能はこの世界ではとても珍しい結果なんだ。転生者は例外としてね。……泉に落ちてから私には闇属性の適性が凄いあるんだ。落ちる前も闇への適性は高かったから、よく珍しいものを見るような目を向けられたよ。落ちた後の適性を調べた時は、周りの人達も引いてたけど検査をしてくれた人にまで引かれたよ」
博士は笑いながら機械を俺に渡した。
博士から機械を受け取ると機械が勝手に動き始め、俺の魔力適性を調べてくれた。
結果が画面に出たが、予想通り全て適性なしだった。
「まぁ、わかっていたが……使えないと言われると余計に魔法を使える奴らが羨ましいな」
「まぁ、仕方ないよ。その代わりにジャックは身体能力が上がってるわけだし、私やミラーシャみたいに永遠の命も手に入れてるしね」
「……800歳超えの美少女か、笑えるな」
「笑うところじゃないよ」
博士が腕を組んで怒ったような表情をすると扉がゆっくりと開いた。
扉から中へ入ってきたのは、ナタリアだった。
「ん?どうしたのナタリア?そんな暗い顔をして」
「ええっと………銃をそろそろ返して欲しいんだけど博士。用があるから……」
「え?なら早く言ってよ~。終わってるけどさ~」
博士は立ち上がると台の上にあった銃を手に取るとナタリアの近くまで行き、ナタリアに渡した。
ナタリアは銃を受け取ると小さく礼を言って小走りで出ていった。
「聞かれてたみたいだね~。本当、正直者だよねナタリアは」
「後を追わなくて良いのか?普通の人間からすれば、800歳超えの人間なんて化け物と同じだ」
「ならジャックが追いなよ、私の体力だと追いかけられないからさ」
「はぁ……そうだったな。仕方ない、また後で話そう博士」
「頑張ってね~」
俺は扉を開けてナタリアの後を追いかけることになり、倉庫から外へ出ると積もった雪にまだ新しい足跡が残っていた。
俺は足跡をたどってナタリアの後を追った。




