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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第九章 心と体の変化
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クロエ曹長

 クロエを探して士官学校の中をうろついていると一人の軍服姿の女性が前に立ち塞がった。


「貴女、ここは士官学校よ。私服姿でうろつかないで、制服はどうしたのかしら?」


「制服?……あぁ、短いスカートなんて穿きたくないな」


「……えっ!?お、男!?……貴方、身分を証明できるものは?」


 女性は腰に下げているホルスターに右手を置き、俺に左手を差し出した。


 俺はポケットからカードを取り出して女性に渡すと女性はホルスターから手を離して、ポケットから青いライトを取り出し、カードを照らして確認すると、ライトをしまってカードを俺に返した。


「ごめんなさい、男は今は最前線に行っていて、ここは男は入れない場所だから疑ってしまったわ。貴方、何をするためにここへ?」


「クロエ・ドラクロワと言う名前の女性を探している」


「クロエね、あの娘なら今、食堂に居るんじゃないかしら。でも、何故クロエを?」


「ミラーシャから頼まれた作戦のためにな、新人を呼んでこの作戦をやることになっている」


「へ、陛下が?……あぁ、ええっと……貴方のカードに階級が書いていなかったけど、もしかして貴方ってスペツナズなの?」


「スペツナズ?……いいや、スペツナズじゃないが、それはなんだ?」


 少し期待するように聞いてきた女性に俺はそのスペツナズが気になり、聞いてみると女性は何故か嬉しそうな顔をして腕を組んだ。


「へぇ……まぁ、いいわ。スペツナズは陛下しか命令を下せない、極秘部隊なの。幽霊みたいな部隊でね、本当にあるかもわからないとまで言われているわ。けど、今までどんなにこの国に危機が迫ったとしても、回避できたのはスペツナズのおかげだと皆、信じているの。その証拠に、各地の最前線で突然現れた謎の部隊が窮地に陥っていた仲間を救ったという記録が残っている」


「つまり、凄い部隊なんだな。それで食堂は……」


「えぇ!その通りよ!会えて光栄だわ」


 俺は手を握られて無理矢理、握手をさせられた。


「いや、俺は今日軍に入ったばかりの新人なんだが……」


「あら、そうなの?私はスペツナズのファンなの。できればスペツナズになりたかったのだけど、もう歳のせいで無理ね。でも、こうして会えたこと、とても嬉しく思うわ。クロエを探しているのよね?案内するわ」


「いや、だから………はぁ……まぁ、良いか」


 誤解を解こうと考えたが、彼女の様子からしてそれは無理だと感じ、俺は彼女の後を追った。


 食堂に着くまで永遠とスペツナズの話を聞かされながら食堂に着くと女性は扉を開けて中へと入り、食堂の中を見渡した。


「アメリア大佐!御一緒に御食事でもいかがでしょうか?」


 クロエを探している彼女に黒色の制服姿をした若い女性が彼女に近寄ってきた。


「えぇ、良いわよ。クロエ曹長を探しているのだけれど、どこにいるのかしら?」


「クロエ曹長ですか?クロエ曹長はあちらですよ」


 若い女性が指を差した方向に長く赤い髪を束ねた女性が本を見ながら食事をしていた。


「ありがとう、あとは大丈夫だ」


「えぇ、お役に立てて良かったわ」


 俺はクロエの元へと歩いて行き、近くまで行くと丁度空いていた席に座った。


「クロエ・ドラクロワだな、話をしたいんだが……」


 俺が声を掛けてもこっちを向かずに本を見続け、本を読みながら食事をしていた。

 集中しているようだったため、少し時間を置いてから話しかけようかと思っていると彼女が食事をする手を止めて本に紙を挟んで閉じた。


「男が私に何の用かしら?」


「話があって来た。クロエの力を借りたい」


「断るわ、私そんなに暇じゃないの」


「話を聞いてから決めないのか?」


「はっ、どうせくだらない事でしょ?他を当たってくれるかしら」


 彼女は立ち上がると何処かへ行こうとした。


「ミラーシャ皇帝陛下の頼みでも、くだらないと言えるのか?」


 俺は席から立ち上がって立ち去ろうとする彼女に言うと、彼女は足を止めて振り返り、俺と目を合わせた。


「良いわ、詳しく聞かせなさい」


「まずは場所を変えよう、ここは人が多いからな」


「なら良いところがある。付いてきなさい」


 俺はクロエに付いていき、人が少ない場所へと行った。

 クロエが案内した場所は休憩所のような場所で、夕食を食べる時間だからか人は居なかった。

 クロエと俺は休憩所にあった椅子に座った。


「さぁ、話を聞きましょうか、閣下の頼みって何かしら?」


「あぁ、大雑把だが、ミラーシャから頼まれたのはレジスタンスの隠れ家を潰して壊滅させる作戦だ。俺を含めた新人の部隊を作るために、俺が目を付けた新人を今回の作戦に参加してくれるか、会って回っていた。クロエが最後だ」


「そのクロエって馴れ馴れしく呼ばないでくれるかしら?」


「あぁ、そうか、すまない。何て呼べばいい?」


「曹長と呼びなさい、二度と名前で呼ばないで」


 彼女は少し怒っているのか、腕を組んで睨み付けてきた。


「わかった曹長、それで作戦には参加するのか?」


「えぇ、勿論参加させてもらうわ。それで指揮は誰がとるのかしら、まさか貴方じゃないでしょうね?」


「まだ決まっていない、君が指揮したいなら希望すればさせてもらえるんじゃないか?」


「そう、安心したわ。貴方みたいな男が部隊を動かせるわけないものね」


「そうだな、話は終わりだ。俺はこれで……」


 俺は椅子から立ち上がって立ち去ろうとすると腕を掴まれて俺は曹長を見た。


「待ちなさい、貴方の実力を見せなさい。どれ程のものなのか」


「そうか、何をするんだ?」


「付いてきなさい」


 曹長は俺の腕から手を離すとそのまま歩き、俺も後を追って彼女に付いていった。


 彼女に付いていくと広い空間になっている場所へ案内され、彼女は壁にあったコンソールを操作すると広い空間がボロボロの建物の中に変わった。


「まずは肩慣らしに出てくる的を全て撃って最上階に行きなさい、最上階まで行ってクリアならここへ戻ってくる。撃ち漏らしの的があったら戻ってこないわ」


 彼女は俺に銃を差し出しながらルールを説明した。

 どうやらここは訓練用の何かの施設らしく、何もなかった広い空間がいきなり何処かのボロボロの建物の中になったのは、お化け屋敷と似たような技術を使っているからかもしれない。


 俺は差し出された武器を取り、開始位置についた。


「それじゃあ、始めるわよ。ブザーがなったら開始の合図、貴方の実力を見せてもらうわ」


 俺は開始位置で合図を待ち、そして、合図が出た瞬間に俺は廃墟の中を進んで的を撃ち抜いて行った。


 時間はかかったが、全ての的を撃ち抜いて最上階に着くと最初の場所へ戻され、廃墟の中からただの広い空間に戻っていた。


「ふーん、酷いわね。クリアリングはできているけど、動きが素人丸出し、銃の扱い方だってそう、貴方一体何処で訓練を受けたのかしら?」


「いいや、訓練なんてしたことがない。これが初めてだ」


「はぁ?……なにそれ、話にならないわね。閣下が頼む程だから優秀な奴かと思ったけど、とんだ食わせ者ね。まぁ、貴方の実力がわかって良かったわ、貴方に任せたら確実に部隊は全滅するとわかった」


「そうか、それは良かった。そんなに自信があるなら曹長に任せても大丈夫だな」


「ええ、それで良いわ。もう用は済んだ。さっさと失せなさい」


「あぁ、そうさせてもらう」


 俺は銃を壁に立て掛けるように置き、扉を開いて広い空間の場所から廊下へ出て外へ向かった。

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