街巡り
大きい建物から外へ出て、検問所を通って街へ出ると道路があり、車が行き交って工場やレンガで作られた5階建ての建物が多く建ち並び、多くの人々の姿もあった。
俺は街中を見渡しながら歩き、エリカとソフィの後ろをついていった。
ソフィも珍しい物を見る目で道路を走る車に目を奪われて時々、街灯や人に当たりそうになり、エリカが腕を引いて引き寄せてソフィが人や物にぶつからないようにしていた。
「ソフィさん、さっきから危ないですよ。もっと気を付けてくださいね」
「ご、ごめんなさい、珍しい物がいっぱいでつい……」
「珍しいんですか?車とかは転生者の方が来てから造られるようになったんですから、ソフィさんのいた国の方ではそんなに珍しく無いんじゃないかと思っていました」
「私が生まれ育った国は車が走るには道が狭すぎると言うことで、馬車だけだったんです。首都に行けば車は走っていたと思いますよ」
確かにフレデリカの国は道が狭いところが多く、広い場所が少なかったように感じた。
そもそも人が道を埋め尽くすような街で車を走らせるとなると歩いた方が速いような気がする。
「あっ!そうだ。私、街に帰ってきたら甘いものが食べたかったんですよ!一緒に食べませんか?アイスクリーム」
エリカはアイスクリーム屋を見つけると子供のようにソフィの腕を引っ張ってアイスクリーム屋へ誘っていた。
「えぇ?寒いのにアイスクリームですか?」
「寒くても食べたくなるんですよね。まぁ、ここはいつも寒いようなものですが、ご一緒にどうですか?」
「うーん、わかりました。私も最近は甘いもの食べていませんし、久しぶりに食べたいです」
「決まりですね。じゃあ早速入りましょう!」
「俺には聞かないのか、別にいいが……」
2人が入っていった店に俺も入っていき、カウンター越しに店員と話す2人を見守りながら、監視カメラを探す。
しかし、店内には監視カメラのようなものは無く、人が入ってきたことがわかるように扉に鈴がある程度でセキュリティは甘く感じた。
店内を見渡していると肩を叩かれて振り返ると、エリカが目を細めて俺を見ていた。
「何も盗んじゃいけませんよ?」
「わかっている。だが、あまりにも隙だらけの店だな。これだと強盗に入られやすいんじゃないか?」
「そんなことをありませんよ。店の店員さんの襟元を見てください、あれは階級章なんです。あの人は伍長さんみたいですね」
エリカの言う通り、店員の襟元を見ると店の制服に縫い付けられた階級章があった。
「この国では店が強盗などに襲われた際、犯人を殺害しても良いという法律があります。これを悪用された事例もあって、再発防止の為に各店舗には必ず国の兵士が勤務して店の人達の監視をしています。人間関係にトラブルが生じた場合には兵士が対応する場合もあります」
「つまり、警備員の代わりに兵士が店には必ずいるということか?」
「そんな感じですね。悪用された事例は減りましたが、未だに悪用している所はあるそうです。怖い話ですね」
「お待たせしました」
店員が大きい声でそう言うとソフィは店員からアイスを受け取り、エリカがカウンターに戻って店員から2つ受け取ると1つを俺に差し出した。
「まぁ、悪いことをしなければ大丈夫ですよ。治安もそこまで悪くありませんから」
「そうか、それなら安心だ。いきなり後ろから刺されたりするのは嫌だからな」
俺はエリカからアイスを受け取り、エリカが札を出して代金を払うと俺達は店の外へ出た。
「外で食べるより店の中で食べれば良かったんじゃないか?」
俺はゆっくりと味わいながら、アイスにかぶりついてアイスを平らげ、寒そうに体を震わせているエリカに言った。
ソフィは寒そうに体を震わせているエリカの様子を見かねてエリカの背中を撫でていた。
「うぅっ、寒い……でもアイスは美味しかったです。やっぱり甘いものは良いですね」
「大丈夫ですか?何か温かいものを食べるか、飲んだ方が良いんじゃないでしょうか?」
「そうですね。では、そこのお店でコーンスープでも頂きましょう。服はちょっと後になりそうです」
俺達は服屋に行く前に腹ごしらえをすることになり、近くにあったレストランへと入って店員に案内されてテーブルに座った。
レストランは皿やフォークなどの食器が売り物になる為、時々裏口から盗みに入ったことはあったが、正面の出入口から客として入るのは初めてだった。
「メニューを選びましょうか、どうぞ」
1枚の紙をエリカから渡されて、俺は紙に書かれている料理の名前を見て、どうすれば良いのかわからず、エリカに聞くことにした。
「エリカ、これをどうすれば良いんだ?料理の名前を店員に言えば良いのか?」
「へ?もしかして、ジョンさんレストランに来たのは初めてなんですか?」
「あぁ、客としてはな」
「まさか、そんなことってあるんですね。わかりました。私にお任せください」
エリカは近くにあったボタンを押すと店員が歩いて俺達が座っているテーブルの所へ来た。
「御注文をどうぞ」
ペンとパンフレットを持った店員が俺達に聞いてくるとエリカがメニューを見て料理の名前を読み上げて注文し、注文を終えると店員が再確認の為にエリカが注文した料理の名前を読み上げて再確認すると少し待つように言って、店員は何処かへ行った。
「スープだけじゃなかったのか?」
「折角レストランに来たわけですし、スープ飲んで出ていってしまうのもなんだかもったいないじゃないですか」
入る前はスープだけと言っていたが、メニューを見ているうちに食欲が湧いたのか、エリカは多くの料理を注文していた。
「……まぁ、それもそうだな。特に忙しいわけでもない、ゆっくりしていこう」
「料理が来るまで何かお話をしましょう。何かありますか?何もないなら私、ソフィさんに聞きたいことがあるんですよ」
「なんでしょう?」
「ソフィさん、好きなことってありますか?」
「好きなことですか……、そうですね……」
ソフィは腕を組んで俯き、考え始めた。
そして、顔を上げてエリカと顔を合わせると少し恥ずかしそうな表情をしていた。
「……実は、兵隊さんの行進を見るのが好き……なんです。カッコいいなと子供の頃からパレードとかよく見ていました」
「意外ですね。軍事に興味があるようには見えませんでしたが、でも、その気持ちわかりますよ。カッコいいですよね」
エリカが頷いてソフィの好きなことに共感していると店員が温かい飲み物を持ってテーブルに置くと再び何処かへといった。
「靴の音や戦車、ヘリコプターの音とかとても好きで、よく兄と一緒に見ていました。軍歌の合唱も好きでしたね」
2人ともそれぞれ飲み物を取ると隣に座っていたエリカが俺の方へ飲み物を寄せてくれた。
どうやら見た目や香りからしてミルクココアに似た物のようだ。
「そういえばソフィさんは向こうで特殊部隊に入っていたんですよね?やっぱり好きなのが関係してたりとかするんですか?」
「それはありませんね。私が部隊に入ったのは、目的があったからで、それを終えたら辞めるつもりでした」
「そうなんですか、でも軍人になってみてどう感じましたか?」
ソフィはカップを手に取ると中身を少し飲み、カップを置いた。
「そうですね。想像以上に大変でした。毎日、トレーニング、模擬戦闘訓練に射撃練習、格闘訓練と毎日忙しい日々でした」
「えぇ、私も教官に絞りに絞られ、心が折れそうになった日々を思い出します。でも、そのおかげで生き抜いて来られたので、教官には感謝しています」
「感謝……ですか、私もジェーンさんに感謝しなければならないのですが……、どうにもジェーンさんのやり方と自分のやり方が合わなくて、訓練している時はいつもジェーンさんに怒っていました。でも、いつも上手く逃げられてしまうので、殴り合いとか言い合いになったことは一度もありませんでしたね」
「ボスは……まぁ、なんと言うか、あんな感じですけど優しい人ですよ。冗談とかよく言いますし、映画の中の人みたいな言葉とか言うような人ですけど、悪い人ではないです」
2人はジェーンの話になってお互いにジェーンについて思ったことを共有し合っていた。
エリカは好意的のようだが、ソフィはどうやらあまり好意的では無いようだ。
かといってジェーンのことが嫌いなわけではなく、どっちでもない曖昧な感じのようだ。
2人の話は料理が来るまで続き、俺は窓の外を眺めながら2人の会話を聞いていた。




