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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第九章 心と体の変化
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男嫌いな女の街へ

 俺は川からエリカを抱えて川辺に上がっていた。

 偶然にもエリカが持っていた銃と俺が持っていた銃も流れ着いていて、俺はそれを横目に見ながらエリカを近くの窪みに連れていき、ゆっくりと寝かせた。


「武器を取ってくる。ここで待っててくれ」


「……はい、気をつけてくださいね」


「あぁ、すぐ戻る」


 俺は走って武器を取りに行き、武器を拾ってすぐにエリカの居るところへ戻った。


「戻ってきたぞ、エリカ。大丈夫か?」


「……平気です。私のG3は?」


「ほら、これのことだろう?」


「……ありがとうございます。ジョンさん」


 エリカは銃を渡すと眠そうに目をこすっていた。

 彼女を見て俺は周りを見渡し、燃えるものが無いかを探した。


「眠いなら少し待ってくれ、このままでは凍死してしまう」


「……はい………ジョンさん……?」


「なんだ?」


「……この子、いい子なんですよ。博士もこれをカスタマイズした銃を持っていますし、私の……お気に入り……なん……です……」


 銃を抱き、ゆっくりとした口調で彼女は持っている銃のことを喋ろうとしていたが、睡魔に負けて目をゆっくりと閉じると銃を抱いたまま、静かな寝息を立てて眠った。


「……はぁ、少し待ってくれと言ったのに……」


 俺は仕方なく、それほど離れていない距離に燃やせるものがないか窪みから探した。

 濡れた服に体温を奪われていき、このままでは本当に2人とも凍死してしまう。


 窪みから少し外へ出て燃えるものがないかと探していると肌を一切露出せず、黒い服に身を包み、ガスマスクとヘルメットをしている兵士2人が歩いて来た。


「目標を発見した。これより保護する」


 俺は持っていた銃の弾倉を交換してレバーを引っ張り、撃てる状態にすると銃を向けた。

 俺が銃を向けると同時に兵士達は動きを止めたが、兵士は持っている銃を向けようとはしなかった。


「スピリット、目標を無力化しろ」


「了解」


 男の兵士の後ろに居た女の兵士が手を前に出した瞬間、雷のように青い光が俺の体に飛んでくると、俺はスタンガンで攻撃されたかのように全身に力が入らなくなり、銃を手離してその場で倒れた。


「こちらゴースト、目標の2人を確保した。これより帰投する」


「ぐっ…うぐっ……クソ……」


 俺は薄れていく意識の中、エリカの無事を祈って全身から力を抜けて目を閉じた。







「あぁ、男物の服だ。さっさと持ってこい」


 扉が閉まると共に俺は聞き覚えのある声に目を覚まし、俺は体を起こすと柔らかいベッドの上にいた。


「目が覚めたか?」


「お前は……!」


 俺はベッドから降りてソファに座ってカップを手に持っている女と距離を取った。


「随分と嫌われたものだな」


「嫌いにならない方がおかしい」


「まぁ落ち着け、ここは特等級の客室だ。普通はジェーンみたいに親しい奴しか入れないんだが、お前は特別だ」


 部屋を見渡して武器になるものを探していると飾られているライフルを見つけ、俺はそれを取って銃身を持って鈍器の代わりにした。


「おいおい、私の大切なウィンチェスターを乱暴に扱わないでくれないか?」


「知らないな、お前がここから居なくなれば考えてやる」


「フフフ、それは出来ない。お前がここにいるのは私と話をするためだ」


「話?……何を?」


 女はカップを置くとソファから立ち上がった。


「なに、簡単だ。お前には……私と友好関係を築いてもらう」


「………何を……言ってるんだ?」


 俺は殺されそうになった相手から仲良くしようと言われたことに驚き、思わず何を言っているのかと聞き返した。


「まあそうなるだろうな、そうだろう。あぁ、まぁなんだ。私は男が嫌いなんだが、ジェーンが仲良くしろと言うのでな、私はジェーンの希望通りにしたいだけだ。無理か?」


 突然のことに俺は頭が回らなくなった。

 こいつに俺と仲良くしろとジェーンが言ったのはわかったが、言われた通りに俺と仲良くしようとするのは理解に苦しむ、こいつは確か国のトップだったはずだ。


 たった一人の女性、それも特別凄いわけでもない職業の人間の言うことを聞いてしまう奴が国のトップで大丈夫なのだろうか、と思いながら俺は返事を返す。


「無理だ。未だに憶えているぞ、あの時の光景をな。リーナの居場所を聞こうと俺を死ぬ寸前まで痛め付けてきた時のことが俺にとってトラウマになってる」


「すまなかった。だが死ななくて良かったじゃないか、普段は最後に銃で頭を撃ち抜いて終わりなんだぞ?」


「何一つ良くないな、電気ショックを食らわされ、爪を剥がれ、炎で炙られ、鞭で叩かれてできた傷口に塩水をかけられたあとに棍棒で殴られて何本か骨を折られた。一体何が良かったんだ?危うくあの世に行きかけたんだぞ?」


「うーむ、じゃあ何をしたら許してくれるんだ?許さなくともいいが、私を敵として見ない方法は?」


 なんとしてでも仲良くしたいのか、そんなことを聞いてきた。

 だが、俺は殺されかけて怒らないほど馬鹿みたいに優しくはない、俺はどう仕返しをしようかと考えた。


「そうだな。何でもするなら……」


「ああ、良いぞ」


 まだ喋っている途中で返事を返された俺は固まった。

 驚きだ、何故躊躇いもなく俺の言ったことを受け入れるのか。


「何が希望だ?私の体か?見たいなら見せて……」


「待て待て、別に体は望んでいない。服を脱ごうとするな」


 俺は服を脱ごうとした女を止めて飾られていた銃を元に戻した。


「はぁ、何故そんな躊躇いもなく服を脱ごうとするんだ。そんなにジェーンに嫌われたくないのか」


「ああ、もしジェーンに嫌われたら私は自決すると決めているからな」


 どうやら博士の言う通り、そして俺の想像以上にジェーンのことが好きなようだ。

 本当にできるのかどうかはわからないが、躊躇いもなくそんなことを言うのだから本当にやるかもしれない。


「俺の知っている奴じゃないような気がしてきた。双子か?」


「いや、私の家族はリーナだけだ。あぁ、そうだ。自己紹介がまだだったな、私はエカテリーナ・ミラーシャ・ヴェジェルニコヴァだ。ミラーシャと呼んでくれ」


 俺は握手を求められたが、手を出さずに睨み付けた。


「はぁ、わかった。そうだな、私の国を見て回るといい、ここはお前の居た世界よりは前の時代ぽっいと思うが娯楽は沢山ある。誰か連れて行きたい相手がいれば、そいつと行っても構わない」


「ジェーン達は何処に?」


「今はそうだな、部屋の外で待っているんじゃないか?」


 ミラーシャが振り返ると扉が開き、ジェーンが入ってきた。


「目が覚めたか?良かった。ソフィが心配していたぞ」


「ジェーン、俺はこの女と仲良くする気は無いぞ」


「そういうな、仲良くしておけば後々良いことが沢山あるぞ。ミラーシャの名前は何処でも役に立つ、仲良くしておいて損はない」


「……そうか」


 ジェーンの言う言葉を信用していいのか、俺はまだ決めることができないと思い、俺はジェーンの横を通って部屋を出た。


 正直、ミラーシャと仲良くするには記憶を消さなければ無理だろうと思っている。


 俺は部屋から廊下へ出るとエリカとソフィが待っていて、俺が部屋から出てくると2人は俺に近付いてきた。


「ジョンさん!無事で良かった……。橋から落ちてから2人のことが心配で……本当に無事で良かったです」


「ジョンさん!凄いですよ!凄いんです!私達を助けてくれた人達、極秘作戦を主に行っている特殊部隊の人達だったんですよ!」


 少し興奮気味のエリカの肩に俺は手を置いて近付こうとするエリカを遠ざけた。


「少し落ち着け、そんなに凄いのか?」


「はい!軍に入ったとしても目にすることはないと言われる人達で、表には絶対に顔を出さない幽霊みたいな人達なんですよ~!私、あまりにも嬉しくて握手をしてもらってしまいました!」


「なるほど……」


 エリカは寝ていた為、奴らの会話を聞いていなかったから不自然に思うことはないだろうが、そんな部隊が俺達を目標として探していたのはとても不自然に感じる。


 何故、表に顔を出さない奴らがエリカは別として俺も一緒に目標として探していたのか、俺は疑問に思った。


「ジョンさん?ジョンさん!」


「ん?……あぁ、なんだ?」


 少し考えに浸っていたかったが、それは後にして俺はエリカの話を聞くことにした。


「街へ出かけませんか?私、ソフィさんとお話をしたいです」


「それなら2人で行けば良いんじゃないか?」


「それもそうなんですが、ボスが一緒に連れていったらどうかって言っていたので、私とソフィさんはどっちでも良いって意見が一致していますから、あとはジョンさんが決めてください」


 俺はどうするか迷ったが、ここに居ても特にやることは無いため、2人に付いていくことにし、街へ出かけることにした。


「ああ、わかった。ついていこう」


「決まりですね。じゃあまず街へ出たら服を買いに行きましょうか」


 もう既に行く場所は決めているらしく、2人は服の話をしながら廊下を歩き、外に出た後も話題を変えて楽しそうに話をしていた。

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