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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第八章 過去、忘れることのできない記憶
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急ぎの出発

 勢いよく迫ってくる全身に長く白い毛を生やした奴を見た俺は俺はトラックへ戻ろうと乗り込もうとした。


「ジョンさん?どうし…まっ……あぁっ!!」


 しかし、俺が乗り込もうとした時にエリカが床に置いておいたままの銃を踏んでバランスを崩し、俺に覆い被さるようにして倒れ、俺はエリカを抱き抱えて下敷きになった。


「痛たた……あっ!ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」


 エリカは俺の上から退いて立ち上がると手を差し出し、俺は差し出された手を掴んで立たせてもらった。


「エリカ、そっちは……ぐっ……」


 背中を強く打ち、背中全体が痺れるような痛さを感じながら俺は背中を伸ばした。


 そして、白い奴が迫ってくる音を聞いたエリカは後ろを振り向くと奴が既にエリカを殴ろうとしていた。

 俺はエリカの腕を引っ張って後ろへ行かせ、体の前で腕でクロスを作って防御する姿勢をとった。


 白い奴に勢いよく殴られると俺は腕が折れるような感覚と体が浮くのを体で感じ、体が飛ばされて洞窟の壁へと叩きつけられた。


「うぐ……ゴホッ……あぁっ!!……うっ……ゴホッ…ゴホッゴホッ」


「ジョンさん!」


 俺は仰向けに倒れて腕が動かなくなり、腕の痛みで叫びそうになったが、それは口から出てくる血によって阻まれた。

 体の内側から感じる痛みと吐き気からして、どうやら肋骨も何本か折れたらしく、折れた骨が内蔵に突き刺さったようだ。

 俺は、恐らく肺に骨が突き刺さったことで出てきた血を外へ吐き出した。


「ジョンさん!……しっかり!今すぐに治療しますから……!」


 血を吐き出しながら意識が朦朧とし始め、洞窟内に銃を撃つ音が響き渡り、その音がジェーンの持っていたリボルバーの音だったことから、ジェーンがあの白い奴と戦っているところが想像できた。


「ジョンさん!そんな……酷い……」


「ソフィさん!トラックの中にある担架を取ってきてください!ジョンさんをトラックへ乗せます!」


「は、はい!」


 両腕の痛みが無くなり、動かせるようになったことでエリカが腕の治療は終わったことはわかったが、体の方は治療が難しいのか、難しい顔をして胸元に手を置いて目を閉じた。


「……主に中心から折れてるみたいね。骨を再生して、内蔵の傷を塞げば大丈夫……心臓は……無傷か」


 真剣な表情をして俺の体の状態を確認すると目を開けると足音が近付いてきた。


「担架を持ってきました!」


「急いでトラックへ運びましょう、ソフィさんはそっちを持ってください」


「はい!」


「タイミングを合わせましょう、私がカウントしますのでそれに合わせてください。良いですね」


「わかりました!」


「行きますよ、321」


 2人が俺の身体を持ち上げて担架に乗せると俺の体が再び持ち上がり、担架を使って2人でトラックへと運び込むつもりのようだ。


 2人がトラックの中へと運び終えると扉が閉まる音がし、エリカが両手で俺の胸元に手を置くと光を放ち、治療が始まったことがわかった。

 エリカが汗を流しながら治療をする中、トラックのエンジンが動き始めて車内が揺れ始めた。


「大丈夫か?大丈夫そうだな、動くぞ。トロールの集団なんて相手にしていられない」


 トラックが動き始め、何かを轢いたのか強い衝撃が来た。

 エリカはバランスを取りながら治療を続け、ソフィは治療を受けている俺を見守っていた。


「マズイな、トロールなんかより厄介なのがいるじゃないか」


「治療終わりました。ジョンさん、何処かおかしいところとか、吐き気やめまいなどはありますか?」


 俺はゆっくりと体を起こして体を動かして確かめてみるが、さっきまでの痛みが嘘のように無くなり、体の調子も問題なかった。


「大丈夫だ。ありがとう、エリカ」


「いえいえ、元はと言えば私のせいですから、無事治療が終わって良かったです」


「良かった……。ありがとうございます。エリカさん」


「喜んでるところ悪いが、問題発生だ。武装したスケルトンの軍団だ」


 ジェーンはトラックを止めると天井にあったハッチを開いて何かを持ち上げて外へ出すと何か作業をしていた。


「M2HBを一人で持ち上げるなんて、流石ボス」


「重機関銃をセットした。1人は銃座に、残り2人は銃座弾薬に補充の手伝いだ」


 ジェーンは俺達にそう伝えると運転席へ戻っていき、再びトラックが動き始めた。


「では私が銃座に行きます」


 エリカは台に乗ると重機関銃を操作して撃てるようにするとすぐに撃ち始めた。

 エリカが撃つと同時にトラックに何かが当たる音がし始め、激しい雨の中にいるかのように無数の音がトラックの車内に聞こえてきた。


 俺は1枚鉄の壁を挟んで運転席の後ろからトラックの進んでいる方向を見た。

 目の前から無数の光が見え、その光が銃を撃っている光だと理解するのに時間はかからなかった。


「パンツァーファウストを持ったスケルトンが居るようです!」


「しっかり掴まってろ!」


 トラックは加速すると激しく揺れながらエンジンが唸りをあげ、ジェーンはスケルトンの大軍を避けて森へ向かった。


 木々を避けて進み、森の奥へと進んでいくが進んでいる最中に突然、トラックが激しく揺れると横転してそのまま木に天井から衝突した。


 エリカはさっきの衝撃で車内へ戻って来ていた為、無事だった。

 しかし、何処かに頭をぶつけて頭の皮膚が切れているのか血が流れ出ていた。


「皆さん、大丈夫ですか?」


「エリカ、お前は大丈夫じゃ無さそうだぞ」


「いいえ、ボス、平気です……。私は平気です……」


「無理をするな、包帯を巻いてやるからじっとしていろ」


 ジェーンは転がっていた救急箱を取って包帯を巻いて最後に留め具を使って包帯を固定した。


「すみません……ボス」


「気にしなくていい、さぁ早く外へ出よう。全員、何か使いたい装備があれば好きなものを使え、傷だらけでは商品として出せないからな」


 ジェーンはエリカに肩を貸してトラックの後ろの扉を開けるとエリカを放して外へ出ていった。

 俺は車内に転がった銃の中からエリカが触っていたHK416を拾い上げ、衝撃で開いた床下の弾薬保管庫から出てきた弾倉の中から416の弾倉と同じものを見つけて服に付いているポケットへ入れた。


「準備ができたら言ってくれ、まだ奴らがここに来るまでには時間があるはずだ」


「あぁ、わかった。エリカ、こいつはこのままで撃てるのか?拳銃のようにスライドか何かを引いたりは?」


「ええっと、コッキングレバーを引くんです。レバーを引かないと薬室に弾が送られませんから」


「……どれの事だ?」


 俺はレバーと言われてどれかわからず、引くことができる場所を探すとボタンのように押せる部品の近くに引ける部品があり、俺はそれに指を引っ掛けて限界まで引っ張り、元に戻した。


「いっぱいまで引っ張ったら離しても大丈夫ですよ」


「こういうもの使ったことが無いからわからないな」


「じゃあ、今教えたことをちゃんと覚えておかないといけませんね」


 エリカとソフィが武器を選んでいる間に俺は銃の使い方をしっかり頭に入れ、ジェーンから渡された銃を持ってトラックの外へ出た。

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