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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第八章 過去、忘れることのできない記憶
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師弟対決

「よくわからないな、何故俺にそんなことを教える?」


 俺は何故彼女が普通なら秘密にしそうなことを俺に教えたのか気になった。

 何か理由があるはずだと思った俺は本を閉じてジェーンと顔を合わせて聞いてみると、彼女は俺と顔を合わせてから首に視線を向けた。


「ん?その首にある注射器の痕……何かを打ち込まれたのか?」


「あぁ、蜘蛛みたいな身体に女性の上半身がくっついた化け物に液体を打たれたが……これがどうかしたのか?」


「……明日は博士のところへ行って検査を受けろ。少しそれが気になる」


「ん?ああ、わかった。それで質問の答えは?」


「理由はない、理由が欲しいならお前は信用できるからとでも言っておこう」


「そうか、理由はない……か」


 適当な理由に俺はため息をつきながら言った。


「なんだ?何か文句でもあるのか?」


「いや、文句は無いがまだ若いと思ってた美しい女性が800歳を超えてる化け物だっ……」


「時に冗談を言うことは身を滅ぼすことと同様になるぞ?」


 彼女はホルスターからリボルバーを取り出すと横から俺の頭に銃口を突き付けた。

 彼女の放つ強い殺気に俺は軽く冗談を言おうとしたことを後悔した。


「ま、待て……落ち着け……」


 彼女は持っているリボルバーを撃てる状態にしたのか、銃を突き付けられているところから金属音が聞こえてきた。


「今、ハンマーを下ろした。外に出ろ」


 リボルバーを突き付けたまま、俺はジェーンに押されるようにして一緒にトラックの外へ出ると膝裏を蹴られて俺はその場で膝立ちになって両手を上げた。


「さあ、ジャック……お前はさっきなんて言おうとしたのか、もう一度言ってみろ」


「悪かった、少し冗談を……」


「違う、私は謝罪しろとは言っていない、さっき言おうとしたことをもう一度言えと言ったんだ」


「言ったら引き金を引くつもりだろ」


「ジャック……二度も同じことを言わせるな、お前が口に出していい言葉はさっき言おうとしたことだけだ。わかったか?」


 彼女が葉巻を吸って吐き出した煙が俺の頭の後ろから前へ来ると暗い洞窟の中に溶けていくようにして煙は消えていった。


「ジェ、ジェーン……落ち着け、話せば……」


「そうか、そんなに早く死にたいんだな。よし、わかった」


「よせ!」


 後ろから銃声が洞窟内に鳴り響き、俺はその瞬間目を閉じて歯を食いしばった。

 だが、痛みを感じることはなく、目をゆっくりと開けると俺はまだ洞窟の中で膝立ちしたままだった。


 俺は両手を下ろして後ろを振り返ると彼女がリボルバーを指で回し、そのまま回しながらホルスターにリボルバーを入れた。


「フフフ……空砲だ」


 俺は自分の体を見て何処にも穴が空いていないことを確認すると膝を地面についたままジェーンを再び見上げた。


「……心臓に悪いぞ」


「なっ、なんですか!?敵襲!?」


 今の音で起きたのか、エリカがテントの中から拳銃を持ってテントの外へと急いで出てきた。


「いいや、大丈夫だ。今のは私だ」


「ボ、ボスが?……良かった」


 ジェーンが振り返ってエリカに言うとエリカは安心したような表情をして拳銃をホルスターへ入れた。


「何事かと思いましたよ、なにをしていたんですか?」


「少し遊んでいただけだ。安心していい」


 俺は冷や汗を拭いながらジェーンには冗談を言う時は気を付けようと考えていると彼女が近寄って来て手を差し出した。


「大丈夫か?漏らしたのならオムツがあるぞ」


「いや、いらない。漏らしてないからな」


 俺は差し出された手を掴んで立たせて貰い、膝についた汚れを叩いて落とした。


「動かないで!」


 突然、洞窟内に女性の声が響き、俺は声のした方を見るとソフィがエリカの後ろから銃をエリカに突きつけていた。


「ソフィ?」


「やっと来たか、ソフィ。来ると思っていた」


 ジェーンは葉巻を手に持って煙を吐き出すと再び葉巻を咥えた。


「ジョンさん、こちらに来てください」


 俺が一歩前に出ようとするとジェーンが手を横に出して俺を止めた。


「いや、行かなくていいぞ。行っても意味はないからな」


「どういうことですか?」


 ジェーンは葉巻を咥えたまま煙を吐き出して無線機を取り出した。


『作戦中止、作戦中止、作戦遂行中のコンバット・タロンは速やかに帰投せよ、繰り返す、速やかに帰投せよ』


 無線機から女性の声が聞こえ、それを聞いたソフィは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに警戒している顔へ戻った。


「二度も騙されませんよ、そうやって敵の心を揺れ動かす……それが貴女のやり方ですからね」


「フッフッフ、確かに一度騙したからな。警戒されるのは当たり前だが、今の無線は本物だ。もうソフィが持っている無線機ではあっちに繋がっていないはずだ。確認してみるといい」


「えぇ、そうします。ジョンさんを渡して貰った後に」


「いい顔になったな、兵士らしくなった。だが、まだまだだな」


 ジェーンがそう言うとエリカが振り返りざまにソフィの持っていた銃を奪い、ソフィに向けた。


「手を上げ……えっ!?あぁっ!!」


 だが、すぐにソフィはエリカが奪った銃から弾倉と銃に入っている弾を素早く抜くとエリカを投げ飛ばし、足のホルスターから銃を抜いてエリカに向けた。


「あぁ……まだまだなのはエリカの方だったか……」


 少し残念そうにジェーンは言いながらため息をつき、葉巻を捨ててソフィの元へと走っていった。


 ジェーンが近付くとソフィは銃を向けようとしたが、向けようとした瞬間にジェーンに体当たりされて突き飛ばされた。

 ソフィは突き飛ばされた衝撃を使って後ろへ転がり、素早く片膝をついた姿勢で銃を構えたが、ソフィの銃から必要な部品が無くなっていた。


「スライドが……」


 異変に気付いたソフィはジェーンを見上げると、ジェーンの手にはソフィの持っていた銃の部品があった。

 ジェーンは微笑みながら部品を手放すとソフィは銃だった物を捨ててジェーンに殴りかかった。


「ナイフは使わないのか?使っても構わないぞ、当てられないだろうがな」


 ソフィの攻撃を避けながら挑発するように言うが、どうやらソフィには効き目はないらしく、ソフィは挑発には乗らなかった。


「その挑発には乗りませんよ」


「冷静だな」


 ソフィが攻撃を止めてお互いに構えて睨み合う中、動いたのはまたソフィの方だった。


 ソフィが殴りかかるとジェーンは避けながらソフィの右腕を掴んで後ろへ回り、それにソフィは左腕を振って肘で後ろに回ったジェーンを殴ろうとしたが、ジェーンはソフィの攻撃を避けると左肩に手を置いてソフィの左斜め前へ移動しながら左足をソフィの左足に掛けるとソフィは足を引っかけられて倒れた。


 ソフィは仰向けの状態から体を横にして腕と足を使って体を浮かせ、その体勢でもう片方の足で蹴りをするとジェーンが後ろへ一歩下がって避け、ソフィは蹴りの勢いを使って立ち上り、再びお互いに睨み合う状態になった。


「痛たた……今度こそ手を上げてください」


 エリカが銃を撃てる状態にしてソフィに向けて言うとソフィはまだ抵抗するつもりなのか、構えをやめようとはしなかった。


「ソフィ、基地で私が嘘をついたのには理由がある。その理由を聞いてから私と戦うか、考えないか?」


 ジェーンが話をしようとするが、ソフィは警戒を解かず、機をうかがっていた。


 俺はソフィの元へと歩いて行き、ソフィの肩に手を置いた。


「ソフィ、諦めろ。抵抗しても相手が悪い」


「ジョンさん……」


 ソフィはゆっくりと腕を下げると、ジェーンがソフィの銃の部品を拾い集めて銃を元通りにしてソフィに差し出した。


「それでいい、それと……成長したな。ソフィ」


 ソフィは差し出された銃を受け取るとジェーンが微笑みながらソフィの肩を叩いた。

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