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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第八章 過去、忘れることのできない記憶
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エリカの過去・2

 ジェーンさんに出会った夜から身寄りの無い私はジェーンさんと行動を共にすることになり、彼女と相談をして昼間は彼女のお手伝いを、夜は戦闘訓練という日程になった。

 ジェーンさんがトラックを隠しているトンネルに着くと早速確認作業のために荷物を下ろし始めた。


「多いですね……。トラックからわざわざ下ろすんですか?」


「ちゃんと確認しておかないと気が済まなくてな、安心しろ。初めは誰でもミスはする」


「むっ……大丈夫です!私は確認作業には自信があります!ミスなんてしません!」


「大した自信だ。頑張れ、私は銃の点検をしながら見ている」


 そう言うと彼女は木箱に座り、ウィンチェスターを点検し始めた。


「手伝ってくれないんですか!?」


「私はやることが多くてな、嫌だと言うのなら先にトラックに乗って待ってていい」


「うぅ……わかりました。よし!頑張りますよ!」


「ああ、その意気だ」


 私は彼女が銃を点検している間、荷物を確認する作業を進めていった。

 荷物には弾薬や日用品、服にネックレスや指輪等のアクセサリー類、そして最も多かった食料品と様々な物が分別されてそれぞれ木箱の中に保管されていた。

 作業は順調に進んでいき、ついに確認作業を終えた私は彼女に報告することにした。


「ジェーンさん、終りま…した……」


 振り返ってジェーンさんを見ると手にリボルバーを持ったまま、静かに寝息を立てていた。

 私はそっと近付いて目の前で手を軽く上下に振ってみるが、反応はなかった。


 ふと、彼女の持っているリボルバーに目がいき、私はゆっくりとリボルバーに手を近付けていき、彼女の手からリボルバーを静かに取って眺めて見る。


「これは……まさか!」


 彼女が持っていたリボルバーはシングル・アクション・アーミーだった。

 それも本物と偽物を見分けるための隠された印が付いている物で、間違いなく本物のSAAだった。


「カッコいい!美しい黒に美しい木製のグリップ!フフ、お前が銃を抜くより先にお前の頭を撃ち抜いてやる。なんちゃって……」


 私は銃を指で回しながら映画の主人公の言った台詞を真似てみた。

 本当は主人公は決闘の前だったから銃を抜いてもいなければ、回してすらいない。


「凄い!でも、どうしてこの銃をジェーンさんが?」


 よく銃を回して見ていると銃身にJと刻まれていることに気が付き、私は凍りついた。

 映画の主人公の名前はジュエリー・リーカーと言う名前の主人公で、愛用のSAAにJの刻印を銃身にしていた。


「……ん?……いつの間にか寝てしまったか、私の銃は?」


「ジェーンさん……」


「あっ、おい勝手に……」


「ジェーンさんも映画好きなんですか!?」


「……いや、別に……」


「隠さなくても良いんですよ。この刻印はジュエリー・リーカーが持っていたSAAと同じ場所にJと書かれています。つまり、ジェーンさんもあの映画のファンだということではないのでしょうか!?」


「そんな映画知らないが……ジュエリー・リーカーか、フッ……変な名前だな」


 彼女は本当に知らないらしく、真顔で映画のことも知らないと言った。

 てっきりジェーンさんも映画を見る人だと勝手に思っていた私は急に恥ずかしくなり、SAAを返して背を向けた。


「今度は勝手にいじるんじゃないぞ、見せてほしければ見せてほしいと言えばいい」


 怒るような口調でなく、優しくそう言ってくれると彼女は木箱から立ち上がったのか、こっちに歩いてくる音が後ろから聞こえてきた。

 そして、音が後ろで止まると私の肩を叩いた。

 振り向くとジェーンさんはSAAから弾を抜き取り、ポケットにしまっていた。


「映画が好きなんだろ?いいものを見せよう」


 そう言うと彼女はポケットにいれずに残しておいた一発の弾丸を見せてからSAAに装填すると、弾丸が発射できるように調整してからホルスターに入れた。


「いいか?……よく見ているんだ」


 彼女の姿勢から彼女が早撃ちをしようとしていることに気付いた私はじっと見つめてその瞬間をこの目に焼き付けようと思っていた。


 しかし、銃を掴んでから撃つまでの間が速過ぎて見えず、一瞬のことだったことに私は驚きを隠せなかった。


「な、なんですか今の!!」


「早撃ちだ」


「私の知ってる早撃ちじゃないですよ!!凄い!!」


「拍手はしなくてもいい、恥ずかしいだろ」


 私はあまりの凄い瞬間を見れたことに感動して無意識に拍手をしていた。

 私が手を止めると頬を少し赤らめたジェーンさんは左脇の下のホルスターからもう一挺のSAAを取り出すと私に差し出した。


「えっ?」


「これをやろう。大切にするんだぞ?」


「い、いい、良いんですか!?これとても大切な銃なんじゃ!?」


「ああ、だが二挺も必要ない、売りに出すことも考えたが結局売らずに持っていた物だ。気にせず受け取れ」


 私は差し出されたSAAを受け取ると両手で強く握り締め、大切にしようと心に誓った。


「おいおい、銃を曲げる気か?」


「そんなに力はありませんよ!」


「ハハハ、冗談だ。さて、トラックに荷物を積んで出発だ」


「もう……本当に意地悪な人ですね」


 私は貰ったSAAをジーンズとシャツの間に入れて、荷物をトラックに積みながら呟いた。








「それから二年間はボスと一緒に行商のお手伝いをして、ボスの紹介でミラーシャ教官……じゃなくてミラーシャ陛下と出会って、この国で衛生兵として使って貰えることになり、そして懲罰隊に入れられて今に至ります」


「ミラーシャ?」


「この国の一番偉い人です。兵士を一人前にするために教官も自らやっている方です」


「まさか、黒いロングヘアに蒼い瞳をしている奴じゃないだろうな?」


「よくご存知ですね。珍しい瞳をしているのでその人で間違いないです」


「あいつの尋問のせいで危うくあの世へ行きかけた。思い出したくない……」


「えっ?……ジョンさん、ミラーシャ陛下に尋問されたんですか?」


 不思議そうな顔をして聞いてきたエリカに俺はエリカと目を合わせた。


「ああ、そうだ」


「うーん、おかしいですね。今まで尋問されて殺されなかった男性は一人もいないはずですが、なんででしょう?」


「……さぁな」


 確かに男嫌いとは聞いていた為、何故俺が生かされたのか、今思えば疑問に感じる。

 エリカとリーナの話からして確実に男ならあの女にあった瞬間から人生は終わったようなものだろう。


「あっ、もしかして一目惚れとか?」


「ありえないな、一目惚れした相手を瀕死にさせるなんて頭のおかしい愛情表現だな」


「そう……ですよね。でも生きていてよかったじゃないですか、運が良かったんですよ」


「……そうだな、運が良かったんだろうな。さて、次は俺が話す番か」


「ついにジョンさんの過去が聞けるんですね」


「それほど面白くもないと思うがな」


 俺は何処から話すか、過去のことを思い出したくないところは省きながら思い出し、なにを話すか考えた。

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