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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第六章 囚われの身
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完全なるクローン

 部屋から出てすぐ近くにあった扉を開けると博士の言っていた非常階段があった。


「あー……」


 博士が階段を見ると面倒と思っていることがわかる様子で階段を見ていた。


「大丈夫か?嫌なら背負うが……」


「大丈夫、大丈夫、辛くなったら頼むよ」


 博士は笑顔でそう答えると階段を上り始めた。

 博士の後から俺とティファニーを背負ったクリスが続いて階段を上り始める。


 さっきの博士の話からして、かなり下に居るらしく、上に出るまで時間がかかるだろう。

 階段を上りながら博士の様子を気にしていたが、階段を上り始めてから数分経ったところで博士の息が荒くなっていき、汗を流しながら手すりを掴んで上っていた。


「博士、大丈夫か?」


「はぁ……はぁ……あ……あはは……………やっぱ、動かないと……駄目……だね………はぁ……はぁ」


 階段の途中で博士は座ると袖で汗を拭いた。

 俺達は少し休憩をすることにし、俺は階段の途中で座って休憩の間、銃の整備をすることにした。


 できる範囲で整備をして、終わったら抜いた弾を再び銃に装填する。

 ティファニーに目を向けるとまだ目を閉じたままだった。


「よし、そろそろ行こう。悪いけどジャック、お願い」


「ああ、わかった」


 博士に背中を向けると博士が肩に手を置き、俺は博士の両足を持って立ち上がり、博士を背負って階段を再び上り始めた。


「もっと行けると思ったんだけどね……、やっぱり動いてないとこんなもんなのかな……」


 落ち込んでいるのか、さっきよりも博士の元気がなかった。


「無理をしなくてもいい、何かあったときの為に体は動けるようにしておいておけ」


「……うん」


 階段を上り続けていると階段の途中に段ボールや機械が階段を塞いでいた。

 荷物の横から階段を塞いでいる荷物の先を見るとまだ先に続いていた。


「まったく、非常階段に置くなって言われてるはずなのに聞く耳を持たない奴等ね。ジャック、このカードキー使ってそこの扉を開けて」


 後ろからカードキーを渡され、言われた通りにカードリーダーにキーを通すと扉が開いた。

 開いた扉の先は荒れた廊下があった。

 紙やペン等色々落ちており、床には誰かの血の跡が近くの部屋に続いていた。


「何処か休める場所がほしいな」


 休める場所を探そうと歩こうとすると博士に肩を叩かれた。


「私、邪魔だよね?下ろしていいよ」


「体は大丈夫か?」


「平気、平気」


 博士を下ろすと博士は血の跡を辿って歩き始めた。

 本当は血の跡が気になって下ろしてほしいと言ったんだろう。

 そして、血の跡が部屋の中へと続いているのを見た博士は扉を少し開けて中の様子を覗こうとしていた。


「博士」


「ん?これは……!」


 博士は何かを見つけたのか、突然部屋へと入って行った。

 俺はその後を追うようにして部屋へ入っていくと透明な筒状になっている容器の中に黄緑色の液体に満たされ、容器の中には女性が入っていた。


「これは……なんだ?」


「あのサイコパス……やっぱり頭がおかしいわね」


 博士が近くにあった操作パネルを操作し始めると容器の中に満たされていた液体が抜け始めた。

 俺は部屋の中を見渡して服の代わりになるような物がないか探すが、機械ばかりで服になるようなものはなかった。


「お母さん?」


 クリスが遅れて部屋に入ってくると容器に視線が釘付けになり、驚いた表情になった。


「博士、これは一体なんだ?これもクローンか?」


 操作盤に両手をついて容器を見ている博士に容器に入っている女性について聞くと博士は顔だけをこちらに向けた。


「……そうだね、だけど私でも作れるけど作ろうとしないクローンだよ、これは」


「どういうことだ?」


「このクローンは完全なる複製体、寿命が短い代わりに完全にオリジナルと同一のクローン体なんだけど、でも………どうやって……」


 博士は容器を見つめたまま何か考え事をしていた。

 容器の中の液体が抜けきると容器のガラスが下へ落ちて女性を囲っていたガラスがなくなると女性が立ったままゆっくりと目を開けた。

 博士が着ていた白衣を脱いで女性に近付くと白衣を女性に着せた。


「大丈夫?体におかしいところとか無いかな?」


 博士が女性の肩に手を置いてそう聞くと女性は頷いて博士の質問に答えた。


「そっか、まずはここから降りよう、歩けるかな?」


 ゆっくりと歩いてガラスがなくなった台の上から二人が降りると女性と目があった。

 何処かで見たことがあるような顔のような気がし、思い出そうと考えていると突然女性が博士から拳銃を奪って突き飛ばした。


 それを見た俺はショットガンを構えようとしたが、女性が誰もいない場所に向けて拳銃を撃ったことでショットガンを構えようとしていたのを途中で止めた。

 女性が撃ったのは何もないはずの空間、だが彼女が撃った弾丸は壁には当たっていなかった。


 少し間を置いてから彼女が撃った場所に姿を表したのは、襲撃を受けた街で俺を襲ってきた兵士を一瞬にして皆殺しにした大男だった。


 大男の手には大きい包丁がライトの光で輝き、包丁から滴り落ちる赤い液体もライトの光によって輝いていた。


 ライトに照らされた男から強い殺気を感じた俺はショットガンを男に構えて引き金を引く、だが男は少し後ろへ下がった程度で耐えた。

 もう一度、またもう一度と次々に撃った。

 そして撃っていると引き金を引いても弾が発射されず、金属音だけが鳴るようになり、弾切れになった。


 しかし、弾が切れるまで撃ったのにも関わらず、男は平然として変わらず強い殺気を放ちながら立っていた。


「化け物か……」


 そして、一歩前に来るように足を出した瞬間に博士を無理矢理立たせて逃げるように言う。


「逃げろ!!」


 ライトを女性に渡して先に行かせ、少しでも時間を稼ぐために一発だけ装填して引き金を引いて男を撃った。

 しかし、弾が体に直撃したにもかかわらず、何事もなかったかのように真っ直ぐに歩いてきた。

 至近距離でショットガンを撃たれて生きている上に歩いているのは人間ではない、恐怖を感じた俺は部屋から飛び出して博士達の後を追いかけた。

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