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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第六章 囚われの身
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失敗作の実験体

「下がってジャック」


 ティファニーに腕を引かれて後ろへ下がるように言われた俺は言われた通りにティファニーの後ろへ下がる。

 博士はライトを扉に向けて本で固定していた。


「クリス、これを」


 ティファニーは魔法で銃を取り出すとクリスに渡した。


「MP40か、久しぶりに使うよ」


「ジャックもこれを」


 もう一つ武器を取り出したティファニーから渡された武器はショットガン、ポンプアクションと呼ばれる作動方式のショットガンだった。

 銃身の下にあるマガジンチューブと呼ばれる部分についているハンドグリップと言われる部分を手前に引くことによって空になった薬莢を外に出し、新しい弾を薬室へと送る仕組みらしい。


「使い方は分かる?」


「ああ、問題ない」


 ショットガンは前の世界でもよく見かけた為、使い方は勿論、整備の仕方も多少はわかっていた。


「モーゼルC96ちゃんの出番だね~」


 机の中から拳銃を取り出した博士は銃を撫でた後、弾が縦に並んだ状態にされた金具を使って銃に弾を押し込むようにして弾を銃に入れた。


「見たこと無い銃だな」


「結構有名な銃だよ?知らない?モーゼルC96」


「知らないな」


「じゃあ、後でゆっくり教えてあげるよ」


 博士と話をしている間に扉にへこみが増えていき、金具が外れ始めた。

 扉の向こうからは複数のうめき声が聞こえ、そろそろ突破されそうな扉に向けて銃を構えた。


「お母さん、拳銃じゃなくてこっち使って」


「ん?……ちょっ、これPM1910重機関銃じゃん!」


 後ろを向くと机やソファが壁に寄せられ、ティファニーが忙しく車輪と一緒になっているような見た目の大きい銃を扉に向けて弾を入れていた。


「これ座らないと撃てないからあんまり好きじゃないんだけどな~」


「文句言わない……、そろそろ来るよ」


 博士は床に座って撃つ準備をすると、ティファニーは魔法を使っているのか大きい銃に手を当て、当てている手から光が出ていた。


 その光景を見ている間についに扉が倒され、扉の向こうから人の形をした何かが走ってきた。

 咄嗟に引き金を引くと同時に博士達も撃ち始め、部屋の中に銃声が響き渡る。


 ショットガンで撃たれた人のような奴は体に穴が空いて勢いがなくなり、そのまま地面へ倒れた。

 死体を見る暇もなく次から次へと来る奴等にショットガンで撃ち抜いていく。


 何体か撃っていると弾が切れて引き金を引いても弾が出なくなり、襲いかかってきた奴を銃床で殴り倒した。


「ティファニー、弾切れだ」


 ティファニーに弾切れを伝えると手渡しで弾を渡され、渡された弾をすぐに装填して博士が撃ち漏らした奴を撃った。

 十体撃ったか撃っていないかの辺りで扉の向こうから現れる奴がいなくなり、博士達も撃つのをやめ、クリスが死体を避けながら廊下へと出て廊下を見渡していた。


「大丈夫、もうなにもいない」


「いや~やっぱりヘビィマシンガンは良いねぇ~………それよりもこれはヤバイ事態になってるかもね……」


 博士はライトを取ると死体だらけの出入り口に近付いて死体の近くにしゃがみ、ライトで照らしながらなんとか聞こえるくらいの声で言った。


「何かあったのか?」


 博士の近くに行って聞くと博士は立ち上がってこっちを向いた。


「あー、これね……隔離してたはずの実験体なんだけどね、ここに来たってことは誰かが隔離してた場所からこの施設内に出したってことだね」


 さっきは見る暇が無かったせいでわからなかったが、ライトで照らされた実験体には毛が一本も無く、身体中にシワがあるが筋肉はあって体つきは男らしかった。


「この実験体は一体何だ?毛が一本も生えていないようだが……」


「この実験体は確か上の階で生み出されたクローンだったかな、失敗作って言ってたよ。私がクローンを生み出す方法を教えなかったから、上の研究員達が自力で考えて生み出したんだろうね。報告書で存在は知ってたけど、これじゃあ細胞の無駄遣いだね」


「クローン………つまり、私達の…………」


 俺と博士の会話を聞いていたのか、クリスの呟く声に振り返るとクリスは複雑そうな顔をして死体をじっと見ていた。


「クリス、このクローンは違うから安心しなさい、姉妹じゃないよ」


「………うん」


 クリスは博士の言葉に返事はしたが、表情はそのままだった。


「さて、それじゃあ……」


 博士はライトと拳銃を持って死体を踏まないように廊下へと出ると左右を確認してライトで何かを照らしていた。


「あちゃー、エレベーター壊されてるね~。無事だったら使える方法があったのになぁ」


 博士はどうやらエレベーターの様子を見るために廊下に出たようだったが、エレベーターは壊されているらしく、楽に上へ上がることはできなくなってしまっているようだ。


 博士が廊下から部屋へと戻ってくる際に一瞬照らされた実験体の体に空いていたはずの穴が消えていたように見えた。

 見間違いかと思ったが気になり、博士にライトを借りることにした。


「博士、ライトを貸してくれ」


「ん?わかった。ちょっと待って……」


 博士が死体を照らしながら避けて戻っているその後ろに人影のようなものが見え、俺は口より先に体が動いた。

 博士の片手で腕を引いて抱き抱え、ショットガンを撃つと博士の後ろに居た影は頭が飛んで体は撃たれた反動で後ろに倒れた。


「大丈夫か?」


「あっ、う、うん……大丈夫」


 片手で抱き抱えていた博士から手を離し、無事を確認すると薄暗く見え辛い部屋の中で倒れていた死体が次々と立ち上がり始めた。


「どうなってる……」


「ゾンビ映画みたいになってるね」


 立ち上がるとこっちを向いてゆっくりと歩いてくる実験体に向けて俺はショットガンを構えた。

 ティファニー達の様子を見ようと横を見ると、博士の隣でティファニーが両手を前に出して何かをしようとしていた。

 何をするつもりなのかと見ていると、ティファニーが何かを呟いた瞬間、立ち上がった実験体が氷に包まれ、そのまま動きが止められた。


「これは………」


 目の前の光景に驚き、構えていたショットガンを下ろしてティファニーを見るとティファニーは両手を震わせながら下ろした。


「時間稼ぎ……くらいは………できると………思う………」


「ティファニー!」


 前に倒れそうになったティファニーをクリスが抱いて支え、ティファニーはクリスに抱かれたまま目を閉じて動かなくなった。


「無茶するね、ティファニー」


 博士はそう言うとティファニーに近付いてティファニーの頭を撫でた。


「さて、ティファニーがくれたチャンスだよ。今の内に非常階段に向かおう」


 博士は立ち上がるとライトを持って廊下へ向かって歩き出した。

 クリスがティファニーを背負ったところで俺も氷を避けて廊下へ向かった、

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