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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第六章 囚われの身
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人体実験

今回はジョンのお話です。


最近、暑くてミイラになってしまいそうです。

自分は暑いのよりも寒い方が好きです。虫もいないですし。

「この男は何も知らないようだ。殺すか、博士に渡して実験体になってもらうか………」


「博士に渡せば………喜ぶと思うよ」


 二人の会話が聞こえ、反響するような部屋なのか二人の声が二重になって聞こえていた。


 今の俺は尋問を受けた後で、殴られ、斬られ、弄ばれた。

 体のいたるところから血を流し、足の感覚が無くなり、目からは涙が流れ、涙が傷口に入っただけで体が震えてしまうような状態まで俺の体と精神は追い込まれていた。


「さて………どうしてほしい?……殺してほしいか?……」


 挑発するような口調と表情で俺の前にたったのはリーナの母親だ。

 その後ろに静かに俺が尋問を受けているのを見ているのはガスマスクを着けたままのナディアだ。


「…………」


 俺は何も言わなかった……というよりは、すぐそこまで来ている死の恐怖にやられて上手く口が動かせず、ただただ口を震わせることしかできず、喋ることはできなかった。


「……恐怖でまともに口もきけなくなったか………つまらんな」


 女がそう言うと天井から両手を拘束されてぶら下げられていた俺は拘束を解放されて地面に落ち、その場に倒れた。


「アナスタシア、頼めるか?」


「……任せて」


 ナディアに無理矢理立たされると俺はナディアに引きずられるようにして部屋の頑丈そうな扉から外へ出た。

 外へ出ると白衣を来た女性達が廊下を行き交っていた。


 ナディアは俺を引きずりながら歩いていくと尋問をされていた部屋から離れたところの扉を開けて俺を連れて中へと入った。

 部屋の中には同じような服がいくつもある部屋だった。


 ナディアは周りを見渡すと俺をゆっくり下ろした。


「ジョン……ジョン、しっかり」


 ナディアはガスマスクを取ると俺に手をかざして魔法を使って回復させてくれた。


「………ナディア」


「ごめんなさい………あんな格好をしていたから……その……ジョンとは思わなくて………」


 好きであんな格好をしていたわけではないと伝えたかったが、酷く追い込まれた俺は名前を呼ぶのが精一杯だった。


「ここから連れ出したいけど、私にはやることがあるから……苦しいと思うけど……助けを待って……」


 体の傷が治るとナディアは俺に部屋にあった服を着させて立たせた。

 さっきよりは体は楽になったが、回復魔法は心の傷までは治せない。


 部屋から出るとそのまま歩き、エレベーターを使って地下へと降りていく、エレベーターが止まるとエレベーターから降りて人気の無い廊下を進んでいくかあった扉の一つを開けると鼻歌を歌いながら何かが書かれた紙を見ている女性が椅子に座っていた。


「ん~?おや、アナスタシアちゃん。また実験材料を連れてきたのかな~?」


 部屋に入ってきた俺達を見て女は持っていた紙を机の上に置くと椅子から立ち上がった。


「クラーラ、今度は失敗しないでと陛下が言ってた……」


「そんなこと言ってもねぇ~、無理矢理人体実験させられてる訳だし、私は気の乗らない実験はしたくないんだよねぇ~」


 手を後ろで組んで部屋の中を歩き回るクラーラと呼ばれた白衣を着た女性は机の周りを何周か回ってから俺に近付いて来た。


「ふ~む、随分と痛めつけられた?結構精神的にダメージを受けたーって顔をしてるけど」


 顔を覗き込むように見てくる博士は俺の顔を見ていると何故か考えるような仕草をした。


「なんか………誰かに似ているような……誰だろう………う~んと……ん……わかった、わかったぞ~」


 俺の顔を見たまま笑う博士の表情は何かを企んでいるように見えた。


「アナスタシアちゃん、もういいよ~後は私一人でも大丈夫だから~」


「……博士一人で大丈夫だったことなんて一度も……」


「細かいことは気にしな~い、はい、さよなら~」


 博士はナディアの言葉を遮り、背中を押して部屋から追い出して扉の鍵をかけた。


「ふっふっふ、さてさて~楽しい実験の時間だ~」


 扉を閉めた後、博士は鼻歌を歌いながら部屋の中にあった金庫のロックを解除しようとしていた。


 俺はその間に机の上に置かれていたペンを手に取ると静かに博士の後ろに近付いた。

 何をするつもりなのかはわからないが、ろくなことではないことは何となくわかる。


 博士に手が届く距離まで近付いた俺はペンを逆手に持ってペンを振り下ろした。


「甘いね!!」


 博士は振り向くと俺の手からペンを一瞬で弾き飛ばした。

 ペンを弾き飛ばされた俺は右手を素早くだして博士の首を掴んで壁に押し付けた。


「うぐぅっ……や……やっぱ……無理………かぁ………」


 両手で右手を掴んで引き剥がそうとする博士の力は弱く、左手を使わずとも引き剥がされる心配はなかった。


「博士、ここから出る方法は?」


 俺が質問をすると博士は腕の力が抜けたように掴んでいた手が俺の腕から離れてぶら下がり、右腕から力を抜くと横に倒れそうになったのを見た俺は博士の体を支えた。


「馬鹿な……そんなに力は入れたつもりは……」


 急いで脈を確かめてみると生きてはいるようだが、気絶させてしまったらしく、博士は目を閉じたまま少しも動かなかった。

 博士を床にゆっくりと寝かせ、俺は部屋の中を見渡した。


 部屋の中には色々な家具が置かれているが、入ってきた扉とは別の扉があった。

 あとで見てみるとして机の上に散乱している紙を流すように見ると気になる紙を見つけた。

 手に取り、紙の内容を見る。


 紙にはここでしている実験の記録が書かれていた。

 この紙に書かれている人物の名前はマーカス・フォールドと書かれていた。


 名前が似ているだけの他人だと思いたかったが、紙に貼ってあった顔写真でその望みは砕けた。

 その顔は俺の知っているマーカスだった。


「まさか………そんな………」


 手が震え、汗が出てきた俺は持っている紙を机に置いて内容を見続ける。


 マーカスにされた実験は不死身の兵士を生み出す実験と書かれていた。

 しかし、実験は失敗、マーカスは実験施設の人々を無差別に殺害した後、施設を出ていったきり行方がわかっていないと書かれていた。


「マーカス………」


 俺は頭を抱えて置いてあったソファに座った。


 実験の記録を読み続けていくと何度も何度も薬を打たれて性格が変化、凶暴化したと書かれ、更に身体的変化などもあったようだ。


 自分の知っている親同然の人物が実験台にされ、おかしくなっているということに俺は天井を見上げた。


「何故、マーカスが……」


 呆然と天井を見上げたままでいると扉が開いた音がした。


「お母さん?…………貴方は誰?」


 視線を天井から声のする方に目を向けると銀髪の赤い目をした女性が立っていた。


「……君こそ、誰なんだ?」


 俺が聞き返すと彼女は俺に近付いて来ると隣に座った。


「私はアナスタシアとある女性の細胞を使って産まれたクローン、名前はティファニー……よろしく」


 ティファニーと名乗った女性は手を出して握手を求めた。

 俺はゆっくりと手を出してお互いに握手を交わした。


「お母さんは……あ、お母さんはそこで倒れてる博士のこと……」


「……何故倒れているのか聞きたいんだろう?……少しトラブルがあって、気絶しているだけだ……」


 俺は事実を言わずに濁した答え方をした。


「そう………それよりも、貴方から懐かしい匂いがするわ」


「懐かしい?………誰かに似ていると言うことか?」


 俺の手を取るとティファニーは手の匂いを嗅いでいた。


「そう……かもしれない、この匂いは私を落ち着かせてくれる。あの人の匂いにとても……良く似ているの」


「誰なんだ、あの人と言うのは?」


 ティファニーの言う人物が気になり、俺は聞くとティファニーはゆっくりと目を閉じて両手で俺の右手を包んだ。


「ティファニー?」


「ジェーン………貴方の運命を変えてくれ、生きる目的となり、導いてくれる人物……」


「占いか……?」


「ふふ、そう……こうすると占いができるの……私」


 笑顔で答えたティファニーは手を離して目を開けた。


「あいたた……ちょっと~……イチャイチャしてないで母の心配をしてよ~ティファニー」


「あ、お母さん……起きたんですね」


 首を撫でながら立ち上がった博士は机の近くに置かれていた椅子に座った。


「全く……いきなり襲わないで欲しいよ、私体術苦手なんだからさ~」


「それより……聞きたいことがある」


「ん~?」


 俺は紙を持ってソファから立ち上がると博士の前にその紙を置いた。


「このマーカスと言う男にした実験について……詳しく聞きたい」

読んでいただきありがとうございます。


やっと連休に入ったので疲れを癒したいです。

できれば一日中寝ていたい、だけどゲームもしたいし、話を進めたい等々やりたいことだらけです。

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