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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第五章 続く災難と不運
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人違い

今回はソフィのお話です。前回に続いて少し重い話です。

 私はハルバード様から戦い方を教わっていた。

 ハルバード様に教えてもらっているのは銃の扱い方、撃ち方や装填等を教えてもらった。

 そして、今はハルバード様に教えてもらったことを思い出しながら人に見立てた的に向かって撃つ訓練をしていた。


「くっ……!」


 私はブッチャーちゃんの背中を撃ったことがフラッシュバックして銃を撃つ際に手が震えてしまい、狙いを定めても震えのせいで的には一発も当たっていなかった。


「ふむ……今日はここまでにしよう、また明日にするぞ」


「大丈夫です。まだ……」


「これ以上は訓練はしない、我の言うことを聞かないのであれば、戦い方は教えてやらないぞ」


「………わかりました」


 私はできれば返したくはないと思いながらもゆっくりと銃をハルバード様に返した。


「それでいい、また明日あのテントへ来るといい、また教えてやる。ゆっくり休め」


 そう言うとハルバード様は私の肩に手を置くと私は来たときと同じように炎に包まれると炎が消えた時には私だけが自分のテントに戻っていた。


「はぁ………少し、外を歩こうかな……」


 気持ちを落ち着かせようと私は外に出て散歩をすることにした。

 外に出ると夜になっていて、空を見上げると空には綺麗な星達と月が輝いていた。


「……綺麗」


 少し空を見た後、私は避難場所を見渡しながら歩くことにした。


 避難場所を歩いているとテントの中から泣く声やお酒を飲んでいるのか、酔っ払っているような声が聞こえてくる。


 皆、大切な人を失って悲しんでいるのだろうか。

 テントの影に隠れるようにして座っている子供や地面に座って空を見上げたまま動かない人も居た。


 しばらく歩いていると一人の男性に後ろから声をかけられた。

 私は振り向くと男性は驚いた顔から嬉しそうな顔をして近付いてきた。


「セシール?……セシールじゃないか!良かった!生きてたのか、本当に良かった!……さぁ帰ろう!」


 男性は誰かと勘違いしている様子で男性は私の手を握ると引っ張った。


「あ、あの!……人違いです!」


「何を言っているんだい、僕が妻の顔を間違えるわけがないだろう?セシール、もしかして僕のことを忘れたのかい?」


 男性は私の両方の肩に手を置いた。

 私はとにかく人違いであることを男性に伝えようとした。


「ごめんなさい、人違いです。私はセシールと言う方ではありませんよ」


「まさか……本当に僕を…忘れているのかい?セシール、僕だよ!……そ、そうだ、写真…写真がある」


 男性は慌ただしく服のポケットから一枚の写真を取り出して見せた。


「ほ、ほら……僕とセシールとマイケルだ」


 写真には私に似た髪の色をしている女性が赤ん坊を抱えて男性と一緒に笑顔で写っていた。

 とても幸せそうだ。


「マイケルも君の帰りを待っているんだ……僕じゃ…泣き止まなくて……」


 男性は弱々しい声でそう言った。

 男性の表情や写真を見ているととても心苦しいけれど、私は彼の探している奥さんでは無いと伝える。


「ごめんなさい……私は違います。あの……あそこにある大きなテントに行けば、もしかしたらわか……」


「もうあそこには行ったんだ!!……でも、妻は…………頼むよ、君であってくれ………僕は……君が居ないと……う…うぅ……」


 男性は膝を着いて目から涙を流し始めた。

 私は目の前の男性に何かできることはないかと考えていると後ろから肩を叩かれた。

 後ろを振り向くと右目に眼帯をした私より背の高い長身の金髪の女性が立っていた。


「何か問題か?」


 私が振り向くと女性は無表情で聞いてきた。


「あ、えっと……」


「頼む……セシール……セシール……」


 男性は私の体にしがみつくようにしてくると女性がそれを引き剥がした。


「なるほど、妻と間違えられているのか。状況はわかった」


 今の言葉だけでわかるものなのかと思ったけれど、地面をみると地面にさっき見せてくれた家族の写真が落ちていた為、女性はそれを見たから理解したのかなと私は思った。


「違う……間違えてなんかいない……間違えてなんかいないんだ!」


「何を言ってる。写真とよく見比べろ、身体的特徴は似ているかもしれないが顔は違う」


 女性は落ち着いた声で男性に言うと男性は突然暴れ始め、女性を突き飛ばした。


「おっと、下がっていろ」


 突き飛ばされた女性は後ろに下がりながら私に腕を使って静かに下がるように言った。


「僕が妻を間違えるはずがない!!邪魔を……しないでくれ!!」


 男性はポケットから折り畳める剃刀を取り出すと刃を出した。


「落ち着け、そんなことをしても何もならない。自分に嘘を言い続けても、いつかは真実を知ることになる」


 女性は冷静にあまり声を大きくせずにそう言った。

 しかし、彼はますます冷静を失っていた。


「うるさい!!……妻は死んでなんかいない!!……セシール……今、君を連れて帰るから……」


 彼の目から光が消え、もう何を言っても彼は止まらないと感じた。


「はぁ……説得は失敗か、仕方ない」


 女性はため息をついた後、男性に向かって歩いて行った。


「あ、危ないですよ!」


「大丈夫だ」


 女性が男性に近付いて行くと男性は持っていた剃刀で切りかかった。

 私はその瞬間反射的に顔を背けて目を閉じてしまい、私は切りつけられるところを見なかった。


 ゆっくりと目を開けて女性を見ると女性の手に彼の持っていた剃刀があった。


「え……?どうして……」


 どうやって彼の手から剃刀を奪ったのかわからなかった私は思わず声が出てしまった。

 女性は両手で男性の肩を押し、押された男性は後ろへ下がり、二人の間に再び距離ができた。


「人殺しになってしまったら子供が悲しむぞ」


「くっ!……うおぉぉぉぉぉっ!!」


 女性は後ろに剃刀を投げ捨て、男性は女性に叫びながら体当たりをしようとした。

 しかし、それを女性は少しの動きだけで男性を地面に倒してしまった。


 その動きを見た私はこの人は一体何者なんだろうと思った。


 男性は痛そうな声を出しながらもゆっくりと立ち上がった。


「まだやるのか?」


 女性が聞くと男性は何も言わずに今度は殴りかかった。

 それを女性は避けると首に腕を回して男性の首を絞め上げた。


「ぐぅぅ……セ…シール………」


 男性は私に手を伸ばして奥さんの名前を言うと全身から力が抜けたように動かなくなってしまった。


「こ、殺してしまったんですか?」


 女性に聞くと女性は男性を担ぎ上げて私の方に顔を向けた。


「いや、気絶させただけだ。殺そうと思えば殺せるが、その必要はない」


 そう言うと女性は男性を担ぎ上げて歩きはじめた。

 私は彼女の背中をただ見つめていた。


 彼女は人を殺さずに抵抗できないようにできる術をあの人は知っている。

 そう思った私は彼女の後を無意識のうちに歩いて追いかけ始めていた。


 彼女を追いかけていると彼女はひとつのテントへ入って行った。

 私は歩いてテントへ近付くと、彼女がすぐにテントから出てきた。

 彼女はテントから出てくると私の方へ歩いて近付いてきた。


「何か用か?」


 私の前に立つと彼女はそう聞いてきた。


「えっ……あ、は、はい……」


「そうか、なら場所を変えよう。ここじゃ落ち着かない」


 彼女はテントとテント間を歩いて行き、私は彼女の後に着いて行った。

最近、重い話ばかり書いているような気がすると思い、何処かで重くない話を入れたいと思っています。読んでいただきありがとうございます。


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