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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第五章 続く災難と不運
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特訓開始

特訓開始です。

 特に何事もなく、ハンクと会話することなく化粧室で着替えて部屋へ戻るとリーナは本を読んでいる様子だった。


「リーナ、特訓を始めるぞ」


 ハンクがリーナに近付いて言うとリーナは本を閉じて床に置き、立ち上がった。


「よし、じゃあ始めよう」


 リーナはそう言うと部屋の中央へ歩いていき、それを見た俺はリーナと手が届かないくらいの距離でリーナと向かい合って部屋の中央に立った。


「特訓を始める。その前に一つお前に言いたいことがある」


 そう言ってハンクは俺に近付いて、横に立った。


「リーナに怪我をさせたら許さん」


「ああ、気を付けよう」


 そう言うとハンクは俺から離れて壁に背中をつけた。


「お互いに手加減はしなくていい、それでは特訓にならないからな。全力でやるんだ」


 俺とリーナはお互いに構える。

 リーナは緊張しているのか、無駄なところに力が入っているように見える。


「リーナ、落ち着けば大丈夫だ。少し力を抜け」


 俺はリーナにそう言うとリーナは深呼吸をして微笑んだ。


「ああ、ありがとうジャック」


 少し無駄な力が抜けたように見え、さっきよりはリーナは落ち着いたようだ。


「まずはリーナが覚えている範囲で攻撃や反撃をしてくれ、それを見て直してほしいところを指示する」


「つまり、最初は自由にやってくれと言うことか」


 俺がそう言うとハンクは「そうだ」と言った。


 リーナは見たところ戦ったことがあるようには見えない、リーナの構えを見れば誰でも素人だとわかってしまうだろう。

 だが、ハンクはそこに触れずに特訓を始めようとしている為、俺は余計な口出しはせずにリーナの特訓に付き合うことにした。


「始め!」


 ハンクの声と共に俺は素早くリーナに近付いた。

 近付かれたリーナは後ろへ逃げるように下がった。




 ~避難所・王のテント~


「どうしても駄目なんでしょうか?」


 私は眠りから覚めるとジョンさんの事が気になり、王様のテントへ行ってジョンさんの行方をハルバード様から聞いた。

 どうやら彼は生きているらしく、あのハインドと言うヘリコプターに女性兵士さんが担いで乗せたところを見た兵士さんがハルさんに報告したそうだ。


 その情報をハルバード様から聞いた私はジョンさんを助けられないかとハルバード様に聞いてみた。


 答えは助けることはできないと言われてしまった。


「駄目だな。その男を助けてもなんのメリットもない、兵士が無駄に死ぬだけだ」


「……どうすれば」


 私はまだジョンさんに恩返しを一つもできていない、このモヤモヤした気持ちを残したままでは落ち着いていることも難しかった。


「何故、そんなにあの男にこだわる?」


 ハルバード様は私にそう聞いてきた。


「それは……恩返しをしたくて……」


「本当にそれだけか?ただ恩返しをしたいだけでそこまでこだわる女は珍しいと思うがな?」


 ハルバード様は椅子から立ち上がると私に近付いて右から左手を私の後ろに回すと私の左肩に手を置いた。


「我も少し暇になった。場所を変えるとしよう」


 そう言うと足元から紫色の炎が私とハルバード様を包み、炎が消えるといつの間にかテントではなく、家具も何もない、少し汚れている広い石造りの部屋の中央に私達は立っていた。


「ここは?」


「私の城の地下室だ。……まぁ、今となっては廃城の地下室と言った方が正しいか」


 ハルバード様は肩から手を離すと部屋を見渡した。


「ここなら誰にも話は聞かれない、何を話しても大丈夫だ」


 ハルバード様は収納空間から椅子を取り出して置くと椅子に座った。


「お前も座れ、立っていては足を痛めるぞ」


 ハルバード様はもう一つ椅子を出すとお互いが向き合うように椅子を置いた。


「は、はい」


 私は椅子にゆっくり座るとハルバード様は微笑んだ。


「さて、あの男を助けたい理由を聞くが……本当はどうなんだ?」


「本当の理由……ですか」


 ジョンさんに恩返しをしたい気持ちは本当だけど、でもそれ以外にも理由はあった。


「私は………ジョンさんに何度か命を救われました。恩返しをしたいのは本当です。でも……その理由とは別に、またジョンさんに会いたいんです」


 ハルバード様は足を組んで静かに私の話を聞いていた。


「なんと言えばいいのか……ジョンさんと離ればなれになってしまってから、気持ちが落ち着かなくて………」


 私は俯いて自分の足の上で両手を握った。


「恋と言うものか?」


 ハルバード様が言った恋と言う言葉で、私はジョンさんに助けられたときのことを思い出した。

 彼が側に居ないというだけでこんなにも寂しく、不安になってしまうのは私が彼に恋をしているからなのかもしれないと思った。


「……そう……なのかもしれませんね」


 私は今まで恋をしたことが無かったため、恋という感情はよくわからなかった。

 友達とは恋について話したことはあるけど、本当に恋に落ちた感情とはどんな気持ちなのかは知らない。

 この気持ちが本当に恋なのか、私にはわからないけれど、確かなのはジョンさんを助けたいという気持ちがあることだった。


「本当にその男を助けたいなら、一つだけ方法があるが……聞きたいか?」


 ハルバード様の言葉に私は顔を上げた。


「な、なんですか!?その方法って!?」


 彼を助けられるかもしれないことに私は椅子から立ち上がった。

 ジョンさんを助ける方法とはなんだろう。


「その方法は……お前が助けに行く、これがその男を助ける方法だ」


「え?……私が、ですか?」


 私が直接ジョンさんを助けに行く、それがハルバード様の言う彼を助ける方法だった。


「姉上の兵士や使用人を助けに向かわせることはできない、だからと言って私が行くこともできない……だが、お前が本当に助けたいという気持ちがあると言うのなら、我が協力して助けに行かせてやる。だが、助けに行くのはお前一人だ」


「私だけ……」


「そうだ。敵地にお前一人で乗り込み、その男を救出する。場合によっては人を殺さなければならない時もあるだろう」


 私は迷った。


 ジョンさんを助けに行きたいけれど、私は人を殺したりすることはしたくない、その思いが助けに行きたい思いを躊躇わせた。

 私は兵士さんのように強いわけではない、行ったところですぐに捕まって助けに行くことができなくなるかもしれないと言う不安もあった。


「必要なら私が直接戦い方を教えてやるが……どうする?助けに行くのか、助けにいかずに普段通りに生活するかのどちらかだ」


 普段通りに生活することの方が良いのだろう。

 いつものように楽しく話をして、笑って過ごせることの方が幸せかもしれない。

 でも、私はこの気持ちを抑えたまま普段通りに生活をしたら後悔するだろうと思った。


 この気持ちを抑えるくらいならと思い、私は助けに行くことを決心した。


「ハルさん……私に……戦い方を教えてください」


 ハルバード様は真剣な表情をして私と目を合わせた。


「本当に良いのか?……しばらくは普段の生活には戻れなくなるぞ?」


「それでも構いません。私はジョンさんを助けたいんです。だから、ハルバード様、私に戦い方を教えてください」


 椅子に座ったままハルバード様に頭を下げて、私の決意を伝えるとハルバード様は「そうか」と言って立ち上がった。


「いい目だ。良いだろう、そこまで頼むのなら断りはしない、戦い方を教えてやる。だが我は手加減などしない、厳しいぞ?」


「はい!お願いします!」


 返事をするとハルバード様は笑い、収納空間から色々取り出し始めた。


「少し待っていろ。準備する」


 私はもう守られるだけではなく、誰かを守ることができる人になりたい。

 そんな思いを胸に私はジョンさんを助けるため、ハルバード様に戦い方を教えてもらうことになった。



 ~豪邸・近接戦闘訓練用部屋~


 俺とリーナはお互いに息を荒くし、疲れながらも特訓を続けていた。


「はぁ…はぁ…はぁ……も、もう……立っていられないぞ……」


 リーナの足は震え、もう立っているのが限界の様子だった。

 俺はまだ体力はあったが、リーナに投げ技を使われたり、ハンクと同じ技を使ったりされて腕がひどく痛く感じるようになっていた。


 投げられているうちに衝撃の受け流し方やリーナの技を覚え、俺も同じように見様見真似の投げ技で反撃をしていた。

 勿論、リーナに怪我をさせないように注意しながら投げ技を使っていた。


「もう良さそうだな。今日の特訓はここまでにしようリーナ」


 ハンクが特訓の終わりをリーナに伝えるとリーナはその場で仰向けに倒れた。


「も、もう……動けない……疲れ……た……」


 リーナは倒れたまま目を閉じると、そのまま眠りについてしまった。


 俺は痛くなった右腕を撫でながら、息を吐いた。


「お前……なかなかやるじゃないか」


 ハンクは腕を組んだまま俺に近付くとそう言った。


「そうか?」


「ああ、リーナに怪我をさせないようにしながらも投げ技を使っていただろう?あんなことを見様見真似の投げ技でできるのは凄いことだ」


「そうか、俺としてはリーナの方が凄いと思う。あの素人同然の構えで投げ技を使ってくるとは思わなかった」


 ハンクは少し笑う表情を見せるとリーナに歩み寄った。


「正直、私も驚いた。リーナには才能があるようだ」


 ハンクはしゃがんでリーナを両手で抱き上げて立ち上がると扉へ向かって歩いていき、扉の前で立ち止まった。


「お前に興味が湧いた。ここで待っていろ、リーナを部屋で寝かせて戻ってくる」


 そう言うとハンクは扉を開けて部屋から出ていった。


「興味が湧いた……か」


 俺は壁を背にして座った。

 座ってしばらくすると眠気に襲われ、俺は眠気を抑えきれずに目をゆっくりと閉じた。

読んでいただきありがとうございます。

最近、文字数が増えたことで誤字や脱字を見逃しているかもしれないと不安を感じるようになりました。

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