男嫌いの母親
暑いですね。いつのまにか夏になってしまったようです。ブックマークありがとうございます。
俺は女に拳銃を向けられながらヘリから降り、女もヘリから降りるとヘリの扉が閉まり、再び上昇してヘリはそのまま何処かへ飛んで行った。
女に「歩け」と言われて歩きながら首を動かして周りを見る。
周りはコンクリートの壁で囲まれた敷地の中のコンクリートや鉄でできた建物の上にヘリで降りたようで、いくつかある建物の内の一つの屋上にいるようだった。
屋上を女に指示されながら歩いて端の方へ行くと鉄でできている少し錆びた手すりがある階段があり、階段を使って降りて行くと階段の途中で二階へ入れるような扉があったがその前を通り過ぎて建物の屋上から地上に降りると一台の軍用トラックが敷地内を走ってくると俺を少し通り過ぎて止まり、女に荷台に乗れと言うことなのか銃で押されてトラックの荷台に乗った。
女がトラックの荷台へ乗り込むと運転席の奴が荷台を見る為にあるのか、トラックの小窓から一瞬だけ覗くとすぐに前を見てトラックを走らせ始めた。
走り始めてからまだ1分も経たない内に女の無線機が小さな音で鳴ると女は耳にしていたヘッドフォンの様な物に左手の手の人差し指と中指を当てる様にして話を始めた。
「はい………えぇ、今実験施設へ向かっているところです。………………そうですか、わかりました」
無線機で話をしながらも俺から目を離さずに銃を向けたまま、女は話をしていた。
「……つまり、実験体では無く、アンゲリーナ様のプレゼントにすると言うことで間違いないでしょうか、閣下………………わかりました。すぐに向かいます」
女は通信を終えたのか耳から手を離すと左手に銃を持ち替えて銃を向けたままトラックの覗き窓を右手で三回叩くとトラックが止まった。
「運の良い男だ。……いや、運が悪いとも言えるか」
「どう言う意味だ?」
「すぐにわかる。降りろ」
俺はトラックの荷台から降りると女に後ろから手を掴まれてそのまま両手を後ろにした状態で両手首に手錠をかけられた。
「何故今頃……」
「黙って車に乗れ」
女に引っ張られ、駐車されていた車の左後部座席へ押し込まれる様にして座ると女は運転席に座って運転をし始めた。
女は急いでいるのか運転がかなり雑だった。
曲がる時にスピードを落とさずに曲がり、時々走っているトラックにぶつかりそうになったりと乗っている俺は体が一瞬冷える感覚を覚えながら後ろの席に座っていた。
その運転で転送装置と書かれた看板がある正方形の建物の中へスピードも落とさずに勢い良く入って行った。
中に入った瞬間、体が少し浮くような感覚がすると白い光に包まれたと思っている間には既に光は消え、車の外はさっきとは違う風景になっていた。
外にはコンクリートと鉄でできた建物があるわけではなく、花や木などの植物があった。
前を見ると高い鉄格子の柵と門、その外側に花畑があり、それらに囲まれるようにして三階建ての豪邸がひとつだけ建っていた。
女がブレーキを踏みながらハンドルを左へ切って少しだけ横滑りをさせて豪邸の門の前に停めると踏ん張っていた俺は手が後ろにあるせいでバランスが上手く取れずに隣の席へと勢いよく倒れた。
シートのお陰でそれほど痛くはなかったが、普通に停めることはできないのか。
「さっさと来い」
運転席から降りてきた女は左のドアを開けて俺を引っ張り、引きずり出されるように俺は車の外へと出されると女はドアを閉めて門へ向かった。
門は三メートルくらいの鉄格子のような門で、女が手で押すと簡単に門は開いた。
俺は女に引っ張られながら豪邸の玄関まで来ると女が扉を三回ゆっくりと叩いた。
すると、中から一人の女性が出てきた。
女性は暗い紫色の髪をして髪型はポニーテール、目は青色で肌は白く、服装はグレーの長袖の服に黒いロングスカート、靴はどうやらスニーカーを履いているようだ。
「ハンク、帰ってきたのか」
「いや、こいつを届けに来た。閣下からのプレゼントだそうだ。リーナ」
二人の短い会話から先程、無線機で出てきたアンゲリーナと言う名前の女性が、恐らく豪邸から出てきたこの女性なんだろう。
それと同時にこの女がハンクと呼ばれているのもわかった。
「なんだそう言う事か、まったく……母さん、また慌ててプレゼントを考えて……ん?……ハンク?……その人は……男じゃ……」
俺の姿を見るなり、リーナと呼ばれた女性は青ざめた表情をしながらハンクに聞いた。
「ああ、そうだな」
「そうだなじゃない!君!こっちだ!早く!」
リーナは俺の腕を掴むと強く引っ張った。
しかし、俺がバランスを崩しそうになると俺の手に手錠がかけられていることにリーナは今、気が付いたようだった。
「う、うん?……て、手錠?……ハンク!早く鍵をよこせ!」
「ほら」
ハンクは投げてリーナに鍵を渡すとリーナは慌てて手錠を外して、俺は抵抗する間も無く再びリーナに引っ張られて豪邸の中を走った。
「一体なんだ?」
「走りながらで悪いが簡単に説明するとだな!君は男だから私の母さんに殺される!」
「男だから?……つまり男嫌いか?」
「そう言う事だ!この部屋だ。さぁ早くメイクをしないと!」
リーナは木でできた装飾されている扉を開けて部屋に入るとメイクに必要な道具が鏡の前に大量に置いてあり、リーナは部屋に入ると部屋の中にあった扉を開けて、中から新しい化粧道具を出していた。
リーナが慌てて用意している様子からして、本当にリーナの母親がここに来るのかもしれない。
「男だから殺すとは、相当男が嫌いなんだな」
「ああ、一瞬見ただけで処刑するくらいには」
「理不尽だな」
「ああ、かなり理不尽だ。じゃあ、えぇっと……」
リーナは俺を見ながら何かを言おうとした。
恐らく名前が聞きたいのだろう。
「……名前か?名前ならジョンかジャックと呼んでもらえればいい」
「そうか、わかった。ジャック、今から女装してもらう。本当に申し訳ないが我慢してくれ」
久しぶりにジャックと呼ばれて、一瞬マーカスのことを思い出してしまったが、今は女装をすることだけを優先的に考えた。
「いや、構わないが……化粧は俺に任せていい」
「へ?……ジャック、化粧ができるのか?」
俺が化粧ができると思ったのか、リーナは驚いた表情になった。
「いや、一回化粧をしてもらったことがあるだけだが……そのやり方を覚えている」
「そ、そうなのか?じゃあ必要なものがあれば言ってくれ、なるべく早く終わらせるんだぞ!」
「ああ、わかった」
道具を手に取って、旅館であの女将のやり方を思い出しながら鏡を見て化粧をしていく。
自分で化粧をするのは初めてだが、旅館で女将がやってくれたようにしていくと、あの時と同じようにとはいかないがいい感じに仕上がった。
「次は……ウィッグはあるか?」
「あ、ああ、えっと、これで良いか?」
リーナはタンスから長い金髪のウィッグを取り出してくれた。
ウィッグを鏡を見ながら着けると、髪の長さは腰まであった。
「あと服だが……このままで大丈夫か?」
「ちょっと待ってくれ、えぇっと……これはどうだ?」
リーナがクローゼットから持ってきた服はロングスカートのメイド服だった。
「……着させたいだけじゃないのか?」
「そ、そんな事は……無くも……ない……ダメか?」
どうやら着て欲しいようだ。
俺は少し考えたが、考える時間も無いと思い、リーナからメイド服を受け取って服を脱いで着替え始める。
服を脱ぎ始めるとリーナは後ろを向いて俺の着替えが終わるのを待っていた。
着替えが終わり、鏡の前で服と化粧の確認をした。
鏡を見ると自分では自分と同じ顔の長身でメイド服を着た女性が鏡を見ているようにしか見えないが、他から見たらしっかり女性に見えるだろうか。
「あと問題は声だな……」
「ジャック……本当に男か?私より綺麗じゃないか……」
「そうか、上手く化粧できているということだな。あとは声だが……」
旅館の時は声を変えていたが、ここにはあれの代わりになるものは無いのだろうか。
「声か……声はどうにもならない。だが、黙っていれば長身の美女だ」
「そうか、わかった」
「よし!これで母さんが来たとしても誤魔化せるだろう!どこからどう見ても女だ!」
満足そうに笑顔を浮かべたリーナは俺が使った道具をひとつの箱にまとめてしまい、物置部屋へと持って行った。
そして、物置部屋からリーナが戻ってくるとリーナは自分を鏡で見ると俺の方を見た。
「……ジャック、どうしてだ。どうして女の私より綺麗なんだ……」
「……そんなに綺麗か?」
「……ああ、何回言っても良いくらい綺麗だ」
「大袈裟だな」
「大袈裟じゃないぞ!」
リーナと会話をしていると突然扉が開き、俺は扉の方を向いた。
扉の向こうから現れたのはハンクだった。
「ハンクか……もう来たのかと驚いた」
「その心配はないぞリーナ、どうやら忙しくてここに来るのは仕事が落ち着いてからだそうだ」
「え?……来ない……と言うことか?」
「そういうことだ。それと、戻ってきたついでに予定していた作戦を代わりの奴に任せて、私はリーナの警護に当たるように言われた」
「良かった………」
ハンクの話を聞いて安心したのかその場にリーナは座り込んだ。
「どうやら女装は必要なかったようだな」
「確かにそうだな、あっそうだハンク見てくれ!ジャック、凄く綺麗じゃないか?」
リーナは素早く立ち上がるとハンクに素早く近付いた。
その勢いにハンクは一歩後ろに下がっていた。
「ジャック?……あぁ、この男のことか。そうだな、男とは思えないな」
「そうだろう?」
リーナは腕を組んで自慢げにハンクに言っていたが、ハンクは相変わらず無表情のままだった。
「そうだ。自己紹介をしないとだな。初めまして、私はアンゲリーナ、アンゲリーナ・ヴェジェルニコヴァ、リーナと呼んでくれ、よろしく」
手を差し出されて俺は手をゆっくり出すとその手をリーナは握り、俺達は握手を交わした。
「………名前は無い、好きなように呼んでくれ」
「そうなのか……理由は聞かない、こっちはハンクだ。私の数少ない友達だ」
「私も名前は無い、好きなように呼ぶといい。武器庫の整理に行ってくる」
そう言ってハンクは部屋から出て行ってしまった。
「まあ、あんな感じだけど本当は良い奴なんだ。気を悪くしないでほしい」
「大丈夫だ。気にしていない」
「そうか、それなら良いんだ。ジャック、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ。ついてきてくれ」
リーナは部屋の出入り口の扉を開けるとそのまま部屋から歩いて出て行き、俺はその後を追うように部屋から出て扉を閉めるとリーナの後をついて行った。
展開が早すぎるんじゃないかと思い、しばらく平和な話を書きたいなと思っています。




