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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第一章 犯罪者と異世界の少女
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旅の前に

 森の中を歩いて道に出るまでの間、気になっていたことをナディアに質問する。


「ナディア、聞きたいことがある」


「……何?」


「転生者のことなんだが……」


「転生者?、転生者は……異世界から死んでしまった人間が……この世界に生まれ変わって、または……そのままの姿で死ぬ前までの記憶を持った状態で、この世界に来た人のこと」


「死んだ人間か……呼ばれた俺の場合はどう呼ばれる?」


「ジョンは……転移者、転移者はそのままの姿で記憶を持ってこの世界に呼ばれた人」


「なるほど、転移者は理解したが転生者はどうやってこの世界に来てる?」


「転生者は……神がこの世界送ってくれるらしいの」


「神?そんな奴が居るのか?」


「神はいると信じられているけど、本当にいるかはわからない」


「……そうか」


 神の存在をあまり信じていない俺にとっては神についての話は興味がなかった。

 ナディアも神についてはあまり信じていないのか神が居るとは言い切らなかった。

 話が途切れ、俺とナディアは森の中を歩き続けていると道に出た。


「道には出たが、ここだと狭いな」


 道に出たら車を出して、楽をしたかったが道が狭く二人並んで歩けるくらいの道幅だった。


「……あと少し歩けば、町に着くから」


 ナディアがそう言って先に歩き始め、俺はその後ろからついて行く。

 道に出てから数分歩き、森を抜けた先に小さな町が見えた。


「……あの町に少し用事があるから行こう」


「わかった。どこで待っていればいい?」


「………酒場なら今の時間、静かかな」


「そうか、ならそこで待っている」


「……わかった」


 あの町にナディアは用事があるらしく、俺とナディアは一旦町に着いたら別れることになった。

 町に着くとナディアに酒場を教えてもらい、ナディアと別れて酒場に入った。


(ナディアは今の時間は静かと言ったが…)


 店内にはカウンターに少し老けた男の店員がいるくらいで1人も客が居なかった。


「おや、こんな時間にお客様とは珍しいですね。何か待ち合わせでも?」


「……そうだ」


「そうですか、では何かお出ししましょうか?」


「……何がある?」


「ではこちらを」


 そう言うと店員はメニューの書いてある紙を出した。

 メニューには料理や酒などが多くあったが朝食は食べ終わっていて、酒は飲む気はないので酒以外の飲み物を探していてあることに気づいた。


(そういえば金が無いな)


 危うく金がないのに注文を取りそうになったが、気が付いて良かった。

 メニューに書いてあった無料の水を頼んでナディアを待つことにした。


「かしこまりました」


 そう言うと店員はカウンターの中にあった大きな樽の蓋を開けてその中の水を長い取っ手の付いたコップのような容器に入れ、その水を木でできたコップに入れるとそれを出した。


「他に何かありましたらお呼びください」


 そう言うと樽の蓋を閉めてさっき使っていた道具をカウンターの中にしまった。

 その後はただ物を整理しながらに立っているだけだった。

 しばらく俺はカウンターの席に座りながら水を少しずつ飲みながらナディアが来るのを待っているとしばらくして店内に人が入って来た。

 ナディアでは無いことは声でわかったのでそのまま振り向かずにいた。


「はぁ、今日も散々だな。マスターいつものだ」


「はい、少しお待ちを」


 男は俺とは少し離れたカウンターの席に座った。

 男はどうやら疲れているらしくため息を何回もしていた。


「どうやら何も収獲が無かったようですね」


「うるせえよ、マスター。あんたは良いよな、夜になりゃ金が沢山入ってくるんだろうからよ」


「はは、確かにお金は入って来ますがほとんどは店のために使っていますから、私の分はそんなにありませんよ」


「はぁ、俺も冒険者になりてぇな」


「でも、最近は勇者様や転生者様のお陰で冒険者も稼ぎが悪くなっているそうですよ」


「そうなのか?、それじゃあ本当に稼げる場所がほとんど無えな」


「そうですね、ですが平和なのはいいことですよ」


「平和でも金が無いと死んじまうよ」


「ふふ、そうですね。お待たせしました」


「おう、ありがとうなマスター」


 男はそう言うと金なのか銀色のコインを4つ出した。

 あれがこの世界の金なら価値を知りたいが、できれば知らない奴と話はしたくない。

 メニューを見ても銀貨か銅貨と書かれているだけで価値がわからない。


(仕方ない、ナディアに聞くのもいいがそれではいつになるかわからない。ここは聞いてみるか)


 そう思い店員に話しかけようとした時、店内誰かが入って来た。

 入って来たのはナディアだった。

 店員に金について聞こうと思ったが、ナディアが来たため質問をするのをやめてナディアの元に歩いて行った。


「用事は済んだのか?」


「うん、それじゃ……こっちに来て」


 俺はナディアに付いて行くと町の出入り口に向かっているようでそこには女が立っていた。

 女は黒く見えるが紫色の長髪、紅い目をしていてナディアと変わらない肌色で黒い服の上に黒いコート、下は薄い水色のホットパンツ、足にはニーハイのような黒い鎧のような防具が付いた靴を履いていた。


「来たか?では早く行こう」


「…その前にハル、自己紹介」


 ナディアがそう言うと勝手に歩き始めた女の足が止まり、その場で振り返る。


「我は認めた奴以外に名前で呼ぶことはない、覚えておくと良いぞ人間」


 そう言うとまた歩き始め、その後をナディアと一緒に追うようにして歩く。


「……誰だ?」


「彼女はハル、私の友人」


「随分と気高そうだ」


 第一印象をナディアに言うとナディアは頷いた。


「うん、それと……あまり人間が好きじゃない」


「人間が好きじゃない……ハルは人間じゃないのか?」


「うん、元魔王だから人間とは違う」


「魔王?」


「うん、元だけど凄く強いから頼りになる」


 そんな奴をどうしてナディアの友人なのかわからないがこの世界の魔王は俺が教えてもらった魔王と違うかもしれないためナディアに聞いてみる。


「魔王は確か、人よりも遥かに上回る力を持った奴のことだったか?」


「……うん、だけど魔王はハルだけじゃない」


「ハルだけじゃないと言うことは、他にもいるのか?」


「うん、ハルの他にも魔王は多く居る」


「…なるほど」


「だが我は他の魔王とは違って魔王の頂点に立っていた大魔王だ」


 突然後ろからそう言われ、後ろを振り返るとそこにはさっきまで先を歩いていたはずのハルが後ろに居た。


「大魔王?聞いたことがないな。どんな役割を?」


 突然後ろに居たことには驚いたが大魔王とは聞いたことがなかったため、ハルに聞いた。


「大魔王とは他の魔王よりも遥かに強い存在だ。昔は他の魔王を束ねていた魔王のことを言ったが、今ではただ魔王の中で一番強い魔王に付けられる呼称となった」


「なるほど、だがどうしてそんなに強い奴がナディアと一緒に?」


「それは私が……ハルを倒したからかな?」


「……ナディアが?」


 魔王であるハルを倒したと言うナディアの見た目は普通の少女に見えるが、まさかそんな力を持っているとは思いもしなかった。


「その話は後で良い。ナディア、面白い物を持っているだろう?」


「うん、それじゃ少し待って」


 俺にはハルの言う面白い物がわからなかったがナディアはそれを理解したようでナディアは魔法を使い、光の中から車を出した。

 面白い物とは車のことだったようだ。


「それではこれの操縦は任せたぞ人間」


 ハルはそう言うと助手席側のドアを開けて助手席に座った。


「ナディア、少し待ってくれ」


 俺は車のドアを開けて運転席を動かして、ナディアを後ろに座らせてから椅子を戻して運転席に座った。


「狭くないか?」


「……狭いけど、大丈夫」


 大丈夫そうではないが座る場所が他に無いためナディアには申し訳ないが我慢してもらうしかない。


「それでは出発だ人間」


「ああ、わかった」


 俺は車のエンジンをかけてとりあえず目的の場所もなく出発した。

いきなり元大魔王様がご登場です。何故元なのかは後々書いていこうと思います。

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