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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第五章 続く災難と不運
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引き剥がされる二人

今回はサブタイトル通り二人が引き剥がされます。

 私はフランと二人きりで話をする為、私の自室へと場所を移した。

 私はフランと部屋に入ると、フランは笑った。

 フランはいつも笑顔だが、長く付き合っていると表情を変えなくても笑っているのか怒っているのかがわかるようになっていた。


「へ〜、三百年前と変わらないわね」


「もうそんなに経つのか、随分と大きくなったものだな。この街も」


 窓に近付いて、窓から見える街を見る。

 国を作った時はそこまで大きくはなかったが、今はとても大きくなり、最初の頃は壁の上にいた兵士がゴマ粒程度で見えていたが今は壁がゴマ粒程度に見える程遠くになっていた。


「………はぁ」


「あら?まだ気にしているの?」


「ああ、気にするさ。本来なら私がやらなければならなかった仕事だったんだ。この国を管理するのは、私の側近の仕事じゃない」


「貴女は人を信用し過ぎなのよ。まぁ、それが貴女の良いところでも悪いところでもあるけど」


 私は窓から離れてソファに座ると収納空間魔法を使ってリンゴジュースが入った瓶を取り出した。


「まぁ、そうなんだが………改善はしたいとは思うが中々難しいんだ。飲むか?」


「いらないわ」


「そうか」


 フランに断られ、私はガラスのコップを取り出してその中にリンゴジュースを注いだ。

 そして、リンゴジュースを一気に飲み干すと気分がスッキリしたような気がした。


「はぁ!美味い!やっぱりリンゴジュースは美味いな!」


「そう、良かったわね。それよりどうするのかしら?ジョンのこと」


 再びリンゴジュースをコップに注いで一気に飲み干すとコップと瓶をテーブルの上に置いた。


「ふむ、どうするか。ソフィには諦めてもらおうと思ったのだが、あんな行動を取られては引き剥がせないぞ」


「容赦なく引き剥がしちゃいなさい、それも人生よ」


「うーむ、しかしなぁ……」


 私は腕を組んでソファの背もたれに背中をつけ、ため息をついた。


「あの二人、もしかして付き合っているのか?」


 ふと思ったことを口に出すとフランが片手で輪っかを作り、もう片方で人差し指を立てて人差し指を輪っかの中へと入れた。


「これ、してるかもね」


「馬鹿な。まだ会ってそんなに経ってない筈だが……」


「無いとは言えないわよ」


 私は二人の様子を思い出しながら、二人が付き合っているのかどうか考えた。


「フラン、冗談だろう?」


「ええ、冗談よ?」


 あっさりと冗談と言われて肩の力が抜ける気がした。

 フランは昔から冗談を言うのが好きで、時々本気なのか冗談なのかよくわからなくなることがある。

 再び二人の様子を思い出し、見ていた限りだと、ジョンはソフィと別れることに抵抗はなかったようだった。

 しかし、ソフィはまるで行くなと言うように抱き付いていた。

 何故そんな行動をとったのか、一つ思い浮かんだことがあった。


「………もしかしたらソフィには戦死した兄とジョンが重なって見えているのかもしれないな」


「どうしてそう思う?」


 フランに聞かれて、私はある写真を収納空間から取り出した。

 写真には私と並んで金髪の男性が緑の戦闘服を着て、M16A3を両手で持って笑顔で写っていた。

 その側にハルの姿もあった。

 その写真の裏にはジョニー・ヴェルシアと名前が書いてある。


「これがソフィの兄なんだが……背丈がジョンと同じくらいで、金髪だ。顔は似てはいないが……身体的特徴は似ている」


 写真をフランに見せるとフランは頷いた。


「ふーん、確かにねぇ……」


「もし重なって見えているのなら、引き剥がしたらソフィがどうなってしまうのか心配だ」


 腕を組んで写真を収納空間へしまい、ソファに寝そべった。


「寝るの?」


「少しな、最近忙しかったんだ」


「そう、ゆっくり寝なさい」


「ああ」


 私はジョンとソフィを引き剥がすべきか、それともソフィと一緒に居させる為に何か考えるべきかと考えながら目を閉じた。




 〜城入り口前〜


「準備は良いか?」


 無線機で仲間達へ作戦の準備が完了したか、確認するための連絡をする。


「トロイ、全隊員の準備完了を確認した。指示待つ」


 無線機で仲間の準備が完了していることを確認し、後ろを見ると後ろに居た隊員が頷き、隊員の準備ができていることを確認した。


「作戦開始。全隊、作戦を開始しろ」


 無線機で作戦開始の命令を出すと、城の入り口が開き、街からは爆発音が連続して鳴り響いて街から火の手が上がった。

 私は隊員と共に城内へと入って行き、城内に居た使用人と兵士達をGrozaを使って撃ち殺していく。


「こちらハンク、城へ突入した。これより城の破壊工作に取り掛かる」


 無線機で城へ突入したことを報告する。

 無線機からは声も何も返ってこないが、本部に報告するように言われているため、何も返って来なくても私は状況を無線機に向かって報告する。


 私は爆薬を持って、邪魔をしてくる兵士や使用人を撃ち殺して城内を進み、城を破壊する為に城の柱を探した。




 〜城内・客室〜


 ソフィが落ち着いて眠ってしまったため、ソフィをベッドへ寝かせてソファに座っていると爆発音がし、それから少し経つと廊下が騒がしくなっていた。

 廊下からは大勢の人が走っているのが聞こえ、俺は扉まで歩いて行き、扉を少し開けて隙間から覗くようにして見ると廊下で武装した使用人達と兵士が忙しく走っていた。


「……ジョンさん?」


 ソフィの声に振り向くとベッドで寝ていたソフィが上半身を起こしていた。

 どうやら扉から入ってきた音で起こしてしまったようだ。


「……何かあったのでしょうか?」


「……わからないが、嫌な予感がする」


 扉を閉めてテーブルに置いた銃とナイフを取り、ナイフはポケットへ入れ、銃はマガジンを出して弾が入っているか確認して銃に戻し、スライドを引いて銃の中にも弾があることを確認する。

 確認を終えて扉へ近付こうとすると廊下から激しい銃声が鳴り響いた。

 しかし、連続で数回撃った後は人が倒れる音と共に扉が開き、中へ腹や口から血を流しながら武装したメイド服を着た黒に近い紫色のセミロングの髪型をした女性が入って来た。


「……?お客……様……?」


 女性はそう言って俺に近付いてくると俺の前で倒れそうになった。

 俺は女性を支えるために脇の下から腕を通して、抱き抱えるようにして支えると女性が持っている武装のせいでとても重く、俺はゆっくりとしゃがんで女性を床に寝かせた。


「一体何が起こってる?」


 何が起こっているのか聞こうと女性に問うと、女性は震える手でポケットから何かを取り出した。


「……ハァ……ハァ……」


 女性が取り出したのは棒状の銀色の容器だった。

 それを首まで持って行こうとしていたのはわかったが、女性の手から容器は落ちて俺の足元に転がってきた。

 左手で拾い上げてよく見るとボタンのように押せる場所があり、反対側には三つの穴があった。


「……注射器か?」


 これが注射器なら中身は恐らく体の傷を回復するための薬が入っているのだろうと思い、俺は女性の首に三つの穴がある方を着けるとボタンを押した。

 

「んっ……」


 ボタンを押すと何かが容器から女性の体へ注入され、女性が負っていた傷がゆっくりと塞がっていった。

 しかし、ナディアやフランシールの使っていた回復魔法とは違って服は直らないようで、傷のあった場所から女性の白い肌が露出している。


「……申し訳ありません、お客様。服を私の血で汚してしまったようですね」


 支える時に着いたのか、服やズボンに血が少し着いていた。


「気にしなくていい、それよりも一体何が起こってる?」


 着いた血は気にせずに立ち上がろうとしている女性に手を貸して立ち上がらせる。


「信じ難いのですが、この街に敵が侵入したらしいのです。お客様は私が責任を持って避難させていただきますので、ご安心ください」


「避難と言っても何処にですか?」


 ソフィが女性に質問すると女性は持っていた武装を確認すると扉を開けた。


「避難用の通路があります。申し訳ありませんがお客様、時間がありません。すぐに通路へ向かいましょう」


 女性は廊下へ出ると素早く銃を構えたまま左右を確認して、手招きをした。

 俺とソフィはそれに従うように部屋を出て女性の後をついて行った。


 廊下には使用人と兵士達の死体しかなく、敵らしき人物の死体は無かった。

 壁や天井は銃撃戦でできたのか、傷だらけで壁は飛び散った血が着いて血だらけになっていた。


 左右に分かれ道になっている場所で女性は顔を少しだけ出して左右を確認すると手招きをした。

 女性について行くようにソフィを女性の後ろに居させ、俺はソフィの後ろで銃を持って背後を警戒していた。


 曲がることも無くそのまま進んでいると鉄でできた扉があり、鉄の扉を女性が開けると扉の先は階段になっていた。


「この非常階段から避難用の通路に行けます」


 女性が先に入って安全を確認すると手招きをしたため、ソフィを先に行かせて続いて入ろうとすると銃弾が顔の前を横切って壁に当たって火花が飛び散った。

 頭を低くして扉の先へ進んで扉を閉めると爆発音で扉が揺れた。


「急ぎましょう!」


 女性が急いで階段を下って行き、その後に続いてソフィと俺も急いで降りて行くと爆発音がし、少し間をおいて人が階段を走って来る音が複数聞こえた。


「突破して来たらしい」


「あと少しです!急いで!」


 走って階段を降りて行き、避難用通路を目指していると1Fと書かれた左側にあった扉が突然開くと黒い服装をした黒髪ロングの女性が先導していた女性の銃を奪ってそのまま蹴り飛ばした。

 女性は突然現れた女性に対応できずに勢いよく背中から壁にぶつかり、そのまま前に倒れてしまった。


 突然現れた女に銃を向けて引き金を引いたが、引き金を引いても銃から弾が発射されることはなかった。


 弾が発射できない銃では投げつけるか殴ることしかできない、俺は女に銃を投げつけて女がそれを受け止めた隙を突いてソフィの横を通って階段から飛んで女に突撃した。

 突撃された女は持っていた銃を衝撃で手放して俺の肩を掴んでいた。

 女の肩を掴んで押し、壁まで追い詰めてすぐには動けないようにした。


「ソフィ!行け!」


「ジョンさん!?」


「早く行け!」


 女を押さえつけていると手を振り払われ、俺は女に顔を殴られて後ずさりし、ポケットからナイフを取り出した。


「ジョンさん!」


「ソフィ、早く逃げてくれ……俺がここで足止めしている意味が無い」


「でも!」


 俺はナイフを振って女が近付けないようにしようとナイフを斜め上から振り下ろした瞬間女が右側に避けて俺の右手首を女は右手で掴んで引き、左腕で首を押されて踏ん張ろうとしたが右足の後ろに女の足があるせいで踏ん張れずにバランスを崩され、横を向くように倒れた。


「うぐっ!?」


 あまりの衝撃に力が入らなくなり、その間に女に組み伏せられてナイフを奪われてしまった。


「ジョンさん!……っ!」


「よせ……!」


 ソフィが突進しようとしているのを見た俺は止めるように言ったがソフィは階段を勢いよく走って来た。

 しかし、女に突き飛ばされて倒れていた女性がソフィを止めた。


「申し訳ありません……!」


 女性はソフィを担ぎ上げるとそのまま階段を降りて行った。


「ま、待って!ジョンさん!……ジョンさん!!」


「逃げるか」


 俺を組み伏せていた女が俺から手を離すと二人を追いかけようとした。

 俺は女の足を掴んで少しでも時間を稼ぐ為に強く掴んだ。


「ふん、諦めの悪い男だ」


「……俺にはこれぐらいしかできない」


 女は振り向くと掴んでいない方の足で俺の腕を蹴った。

 蹴られて手は女の足から離れてしまったが、女は俺が立ち上がるのを待っているようだった。


「……追いかけないのか?」


「ああ、他の奴に追わせる」


 他の奴とは今階段を降りてきている連中だろう。

 俺が立ち上がると女はナイフを折りたたんでポケットにしまった。


「……そのナイフ、返してもらう」


 女は無表情のまま、その場で俺が仕掛けてくるのを待っていた。


 俺は拳を作って構えを取ると、女に殴りかかった。

 右手で女の顔を殴ろうとしたがかわされて逆に膝蹴りを喰らい、後ずさりをしていると顔面を蹴られた。


「ぐっ……うっ……」


 倒れそうになって壁に手を着くと背後から膝裏を蹴られて俺は壁に向かって跪き、後頭部を蹴られて壁に勢いよく顔面を当てて反動で後ろに倒れた。

 衝撃で視界がぼやける中、追ってきていた連中の姿がぼやけて見えた。


「ハンク!その男の仲間は?」


「その階段の先だ。私はこいつを弱らせて国へ連れて行く」


「男を?ハンク、そいつを連れて行っても無駄だろう」


「実験体を調達しろと命令されている」


「なるほど、そういうことか。また後で話そう、行くぞ」


 再び連中はソフィ達を追うために俺の横を通り過ぎて階段を降りて行った。

 俺は天井を見上げたまま、動くことができなかった。


「さて、実験体の調達はこれで十分だろう」


 女は俺を担ぎ上げるとそのまま何処へか歩き出した。

 俺は段々意識が遠のいていき、そして意識を失った。

格闘の表現、難しいなぁ……もっと頑張ります。

次回はソフィ視点の話を書いていこうと思っています。

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