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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第五章 続く災難と不運
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ソフィの兄

何とか休日が来る前に書けました。

多々おかしな点があると思いますが、仕事の休み時間を使って少しずつ見直して直していきたいと思っています。

 二人が笑顔で手を握り合っていると扉が三回叩かれた。


「入って良いぞ」


「失礼します」


 一人の使用人が紙を持って扉を開けて入って来た。

 二人は握り合っていた手を離すとフランシールは落ちたベールを拾い上げて黒い穴が出てくるとその中へと投げた。


「王様、首都の様子ですが……どうやら内戦が始まっているようです」


「何?内戦だと?どういうことだ?」


「連合側に居た国外追放を受けた者や精神異常者、殺人鬼などが首都内へ裏ルートで入れられていたようです。現在首都は機能が混乱し、通信も困難な状態にあります」


「ふむ、わかった。この国の中にいる連合側から流れて来た奴らは見つかったか?」


「はい、既に約四百名ほど捕らえることができました。ですがまだ多くこの国の内部に潜んでいると思われます」


 その報告を聞いたフレデリカは腕を組んで悩んでいる様子だった。

 すると何かを思い出したのか、俺の方を見た。


「……黒いパーカー、カーゴパンツ……」


 フレデリカが独り言のように呟いたのは、俺の服装だった。

 フレデリカが俺を疑うような目で見ていることに気が付き、俺はソフィを見た。


「ジョンさん?」


「ジョン、今から二つ質問する。正直に答えてくれ」


 俺はソフィから視線をフレデリカへ移すと頷いた。


「ああ、わかった」


「最初の質問だが、ナディア達が来た当日に若い女性が首を切られて死んでいたのが宿で発見された。あの日、お前は何をしていた?」


 宿で首を切られて死んでいた女性、間違いなく俺が殺したセリーネのことだろう。


「その死んだ女と買い物をして、宿で料理をした後、女に殺されかけたソフィを助ける為にその女を殺した」


「それは本当か、ソフィ?」


 フレデリカは俺の隣にいたソフィに目線を移すとソフィは頷いた。


「はい、ジョンさんの言う通りです」


「ふむ、わかった。では次の質問だ。肉が美味いことで有名な店があったのだが、そこの店長が連合側から流れて来た殺人鬼だった。こいつの店から最後に出て来たのはジョンとソフィ、それから大きい袋を持った少女と言うことだが、間違いはないか?」


「そうだ。間違いない」


「はい、間違いありません」


「そうか……それは困ったな」


 フレデリカは腕を組んだまま目を閉じた。


「……人殺しはこの国では合法化されているのか?」


 俺がそう聞くとフレデリカは深呼吸をすると腕を組むのをやめて目を開けた。


「この国では人殺しは重罪だ。たとえ、誰かを救う為だったとしても殺してはならない」


「ちょっと待ってください王様ーー」


「ソフィ、口出ししないでくれ」


 フレデリカが強い口調で言うとソフィは黙り込んでしまった。


「ジョン、お前はソフィを、この国の一人の民を助けてくれた。そのことは感謝しているが、それでも人殺しを何もせずに放置するわけにはいかないんだ」


 フレデリカは申し訳なさそうな顔をしていた。


「ジョン、申し訳ないが………国から出て行ってもらう」


 俺への罰として言い渡されたのは、国外追放だった。

 特に驚くことでもなく、当たり前と言えば当たり前だ。


「ジョンさん……」


 振り向くとソフィが涙を浮かべながら俺のことを見ていたが、俺はフレデリカの方へ向き直るとバックパックを置いた。


「返すものはあるか?」


「いや、あげたものを返せとは言わない」


「そうか、だが後々面倒ごとになられても困るだろう」


 俺は防弾ベストを脱いで地面に置き、足からガンホルスターを外して銃はパーカーのポケットへ入れるとフランシールが指を鳴らし、空間に隙間ができて勝手に穴が広がっていき、人一人が立ったまま入れる穴ができるとその穴の中は外の風景だった。


「ここを通れば街の門の外に出る。外に出たら後は好きにしなさい」


「ああ」


 俺が穴を通ろうとした時、後ろから手を握られた。

 俺が後ろを振り向くとソフィが涙を流して俺の手を両手で強く握っていた。


「……離してくれ、ソフィ」


「……嫌です」


「ソフィ、もう恩返しは必要ない」


「……駄目です。まだ……まだ……」


 言葉を言うたびに強く握り、俯いて俺の手を離す様子がなかった。

 俺がどうしようかと悩んでいるとフレデリカがソフィに近付いて肩に手を置いた。


「ソフィ、どうしてもジョンとは別れたくないのか?」


 フレデリカの問いにソフィは涙を流しながら頷いた。


「ふっ……そうか」


 フレデリカは微笑むと俺に顔を向けて目を合わせた。


「ジョン、お前にソフィを守ることはできるか?」


 フレデリカの突然の質問に少し驚いたが、俺はすぐに答えが出た。


「いや、無理だ。俺には誰かを守ることができるほどの力はない」


「……そうか、なら仕方なーー」


 フレデリカが言葉を言い終える前にソフィが手を離したかと思うと抱き着いて来た。

 まるで大切な人を失いたくないと訴えているように俺は感じた。


「……二人とも、部屋を用意する。今日はそこに泊まってもらっても構わない、フラン」


「わかったわ」


 フランシールが指を鳴らすと穴の中が外の風景から部屋になった。

 俺はソフィの両肩に手を置きながらソフィと一緒に歩いて穴の中へと入った。

 穴の中へ入るとそこは客専用なのか、隅々まで綺麗にされた部屋でダブルベッドやソファ、タンスなどが置いてあった。

 振り向くと穴は消えて部屋の扉があった。


「ジョンさん……」


「なんだ?」


「その……さっきみたいに頭を撫でてもらっても良いですか?」


「ああ、わかった」


 俺は右手を肩から離してソフィの頭を撫でた。


「……よく兄にも私が落ち込んでいるときにこうしてもらったんです。頭を撫でてもらうと不思議と気持ちが落ち着いたんです」


 どうやらソフィは兄にこうしてもらったことがあるらしい、不思議と落ち着くと言うのはなんとなく俺にもわかった。


「……変、ですよね。頭を撫でてもらっているだけなのに……」


「いや、俺にもわかる」


「ジョンさんにもわかるんですか?」


 ソフィは顔を上げて俺の顔を見上げた。

 俺は一旦頭を撫でることをやめて、ソフィの肩に手を置いて一緒に歩いて行き、ソファにソフィを座らせると俺も一緒に座った。


「……俺もソフィと同じだ。落ち込んでいる時に頭を撫でてくれた奴が居たんだ」


「……そうなんですね。その人はご家族ですか?」


「いや、家族ではなかったが……俺にとっては親みたいな存在だった」


「ジョンさんには……ご家族はいらっしゃらないんですか?」


 会話をしている内に気持ちが落ち着いたのかソフィが手を離してくれた。

 俺はポケットからナイフと銃を取り出してソファの前に置いてあったガラステーブルの上に置いた。


「俺は……捨てられた。だから親の顔も名前も知らない」


「えっ……?ジョンさんが………ごめんなさい」


 ソフィは謝るとさっきと同じように俯いてしまった。


「謝ることはない、親がいなくて困るのは名前だけだ」


「……………ジョンさん、私と初めて会った時を憶えていますか?」


 少しの間を開けてソフィが聞いてきたのは、ソフィと初めて出会った時のことだった。


「ああ、あの宿でソフィが料理をしている時のことだったな」


「……あの時、作っていた料理は兄の為だって言いましたよね?実は………あの時、兄はもう居なかったんです」


「……居なかった。もう既に死んでいたと言うことか?」


 そう言うとソフィは頷いた。


「私の兄はこの国の兵士だったんです。毎日帰ってくると怪我ばかりでしたけど、いつも国の人達を守るために、私を守るために付いた傷は勲章だって言って笑っていました。兄が休暇中には家で私の料理を食べて、体を鍛えていました。兄は優しくて、とても頼りになる人でした」


 笑いながらそう話すソフィの目からは涙が出ていた。

 俺はソフィの話を黙って聞いていた。


「でも、長い戦争がやっと終わりそうだと兄が言って出かけた日でした。王様が戦争が終わったことを国中で放送しました。その時、私はまた兄と平和に暮らせるんだと確信していました。家で私は兄の好きな料理を用意して兄の帰りを待っていました」


 兄の好きな料理、恐らくあの時俺に渡したレシピだろう。


「兄の戦死した報告が書かれた紙を兵士さんから受け取った瞬間、私は目を疑いました。きっと何かの間違い、別の人と間違えられて届いたんだと信じませんでしたが、何度見ても紙には正しく兄の名前が書かれていました。それから私は兄の好きだったあの料理を作れなくなりました。必ず兄と一緒に食べていたあの料理を………何度作ってもあの時の味にはならなくて、メモしてあったレシピ通りに作っても見た目は同じなのに味は違いました」


「………それで友人に手伝って貰いながらその味を探していたのか」


「あの時………あの時、兄を引き止めていれば………兄は死ぬことはなかったはずです」


 ソフィはスカートを握りしめて泣いていた。

 俺は少し迷ったが、ソフィを右腕で抱き寄せて左手で頭を優しく撫でた。


「……泣くことを我慢する必要はない。泣きたい時は泣けばいい」


 この言葉もマーカスに言われた言葉だが、この言葉を言われた時俺は泣くことはなかったがマーカスの腕の中で眠ったことを俺は思い出した。

 ソフィは再び俺を抱きしめて泣き始めた。

 それからしばらく、俺はソフィの頭を優しく撫でながら泣き止むまで一緒に居た。

ソフィが作ろうとしていた料理は思い出の料理でした。もっと詳しく書きたいのですが、実はあんまりよく考えていなかったので料理についてはどうしようか悩んでいます。読者の方は思い出の料理はありますか?。

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