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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第四章 忘れ去られた修道女
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不運の連続

 街を出てからもヘリは俺達を追ってきていた。


「しつこいな」


「これからどうするんですか…?」


 ソフィが心配そうな顔をして聞いてきたがこれからどうするか俺は考えていなかった。

 あの場所にいるよりは街から出た方が安全だと思い、馬車を走らせたが街の外まで追ってくるほど敵がしつこいとは思わなかった。


「ジョンさん!ヘリが離れていきます!」


 ヘリの様子を見ていたエルマが離れていくヘリに指を指して教えてくれた。


「……諦めたか?」


 窓からヘリが離れていく様子を見ていると後ろからチェーンソーを起動させようとしている音が聞こえ、後ろを振り向くとブッチャーがチェーンソーを動かそうとしていた。


「ブッチャー、何故チェーンソーを?」


「……お肉……お肉…お肉」


 ブッチャーに問いかけたがブッチャーは答えることはなく、小さくお肉と言いながらチェーンソーを動かそうとしていた。


「ブッチャーちゃん?」


 俺の近くにいたソフィもブッチャーの名前を呼んだが何も答えずにチェーンソーを起動しようとしているだけだった。


「ブッチャー」


 俺はブッチャーに近付き、肩を掴もうとした時、チェーンソーのエンジンが起動し、チェーンソーを俺に向けて振り回してきた。

 俺はブッチャーから距離を取り、ホルスターから銃を抜いてブッチャーへ向けた。


 しかし、銃を向けた瞬間に勢いよくブッチャーは距離を縮め、振り回されたチェーンソーの刃が銃に当たり、一瞬火花を散らすと銃は俺の手から離れてブッチャーの足元に落ちてしまった。


「くっ…」


「ジョンさん!」


「ソフィ、下がっていろ」


 ソフィに下がるように言い、ソフィをブッチャーから遠ざける。


「ブッチャー、腹が減っておかしくなったのか?」


「お腹空いた……お肉、欲しい……お肉が欲しい……」


「ブッチャー落ち着け、肉なら後で食える。我慢してくれ」


「お腹空いた……ジョンサンを食べれば……お腹いっぱいになるかなぁ?」


 ブッチャーはどうやらこっちの話を聞いていないらしく、ブッチャーは持っているチェーンソーの刃を勢いよく回転させながら振り回して近付いてきた。

 俺はチェーンソーを避けつつ、ブッチャーの後ろへと回ってソフィ達に目を向けさせないように動いた。


 ブッチャーはチェーンソーを振り回しているうちに次第に口から唾液が垂れはじめ、もはやこちらを食べ物としてしか見ていないようだった。


 ブッチャーは広い範囲でチェーンソーを振り回してくるため、俺は逃げているうちに段々と馬車の奥へと追い込まれ、ついに背中に壁がついてしまった。


「ジョンさん!!」


 ソフィが大きい声で俺の名を呼んだ。

 それと共にブッチャーはチェーンソーを大きく振り上げて斜め上から振り下ろそうとした時、銃声が馬車の中に響いた。


「……あえ?」


 ブッチャーは変な声を出し、チェーンソーを振り下ろしたが振り下ろす速度が遅かったため、簡単に避けることができた。


 チェーンソーを避けるとブッチャーはチェーンソーを持ったまま俺の方を向いた。

 ブッチャーが見ているのは俺の後ろにいる銃をブッチャーに向けて撃った人物だろう。

 俺はブッチャーが再び襲いかかってくることが今はないことを確認すると後ろを振り向いて銃を撃った人物を見た。


「ソフィ…」


 ソフィは震えながら両手で俺が落とした銃を持っていた。


「……ぁ…ぁ…ジョン…さん……わ、私、私……」


 ソフィは銃を人に向けて撃ってしまったことで混乱状態になっているらしく、声を震えさせながら両手で持っている銃を下げた。


「ぁ…ぁ…ぁぁああああ!!……痛い!!…痛いぃぃぃ!!」


 ブッチャーが突然叫びだし、悲鳴を上げながらチェーンソーをさっきよりも勢いよく振り回し始めた。

 チェーンソーは窓や椅子に当たりながら振り回され、周りのものに傷をつけていく。


「ソフィ!銃を!」


 ソフィから銃を渡して貰おうとブッチャーを見たままの状態でソフィの名前を呼んだが返事はなかった。

 今は振り向ける状況ではなかったが一瞬だけ振り返るとソフィは銃を持ったまま下を向いて震えていた。


「あああぁぁぁぁ!!痛い!!痛いよぉっ!!」


 ブッチャーは目から涙を流し、鼻からも鼻水を出ている状態でチェーンソーを振り回し続けた。


 ブッチャーのチェーンソーを避け続けていると外からヘリの音がし、何かを発射する音がした後爆発音が後ろからした。


 その爆発音がした瞬間に体が浮き上がり、窓から見た景色を見て落ちていることがわかった。

 俺は視線をブッチャーへ戻すとチェーンソー持ったままブッチャーはこっちに向かって飛んできていた。

 俺は体を傾けてブッチャーの持っているチェーンソーを避けるとチェーンソーはソフィを通り過ぎてエルマの首へめがけてブッチャーの体ごと飛んで行った。


 エルマの首をチェーンソーの刃が切り裂こうとした瞬間に馬車が何かに当たり、その衝撃で馬車は横回転をし始め、視界が回って俺は馬車の中で天井や床に叩きつけられた。

 何回か叩きつけられていると椅子の角が強く左の胸下に当たり、俺は何か折れるような感覚がした。

 次第に回転が遅くなっていき、そして下まで落ちたのか馬車は横向きになって止まった。


 叩きつけられたせいで全身痛く、俺はなんとか上半身を膝で立たせて馬車の中の状態を見た。

 ソフィ達が倒れているところは血だらけになっており、酷い光景になっていた。

 ソフィは血だらけになっていたがソフィ自身には傷は無いようで気絶しているだけのようだった。


 エルマとブッチャーはチェーンソーで切り刻まれ、ブッチャーはチェーンソーで自分の体を切り裂いたようだがまだ息はあった。

 エルマは頭が無くなり、即死だということが一目でわかった。


 俺は全身の痛みに耐えながらソフィに近付き、ソフィを担ぎ、ソフィを横倒しになった馬車の扉を開けてから横倒しになった馬車の上へと先にソフィを馬車の外へ出し、次に俺が馬車の外へ出た。

 その行動をするだけでも全身に痛みが走り、うめき声が出るほどだったがなんとか馬車の外に出ることができた。

 馬車はどうやら森の中に落ちたらしく、外には木が多く生えていた。


 俺は先に横倒しになった馬車の上から降りるとソフィを下ろし、ソフィを寝かせるとパーカーを脱いで畳み、即席の枕を作ってソフィの頭の下に置いた。

 ソフィを寝かせ、周りを見ると馬はどこかへ行ってしまったのか姿は見えず、空にはさっきのヘリが低空を飛んで行った。


 俺は武器を取りに馬車の中へと戻り、血だらけになっている馬車の中から外に武器を投げて出した。

 全て出し終え、俺は馬車から出るときにブッチャーを一瞬見た。

 ブッチャーは血だまりの中で既に死んでいた。


 俺は馬車の外に出ると馬車の扉を閉めて外に出した弾薬をバックパックに詰め込み、武器は武器に付いていた紐を使って背負い、バックパックを背負うとソフィのところへ戻ってソフィの上半身を起こして畳んだパーカーを広げてからソフィの体を覆うようにしてソフィの血だらけの服の上にかけ、両腕で抱き上げて馬車から離れた。

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