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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第一章 犯罪者と異世界の少女
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魔法使いと名も無き青年

 目を覚ますとすっかり夜だった。

 月の光が窓から入って部屋の中がうっすらと見える。

 ナディアはまだベッドで寝ているようだ。


(まだ夜……当たり前か)


 俺は窓の外を見てそう思いながらこれからどうするかを考えたが他にやることもなく、ふと思いついたことが外に出てみることだった。

 ゆっくりと音を立てないように歩いて扉をゆっくりと開け、廊下に出て閉める時も音が出ないように扉を閉めた。


 家の構造は知らないが廊下の突き当たりにある扉を開けたら外に出ることができた。

 外は風の音とその風で木が揺れる音が聞こえるだけだった。


「……月がよく見えるな」


 俺のいた世界の月とこの世界の月もあまり変わらないように感じた。

 しばらく月を見続けた後、家の中へと戻った。


(家の中の構造でも覚えるか)


 家は外から見た通り一階しかなく、家の中もそこそこ広い程度で1人で住むには十分な家だ。

 家の中には部屋が3つあった。

 1つ目は寝室、2つ目は怪しげな部屋、3つ目は物置状態になっていた。

 リビングと思われる場所には暖炉があり、客が来た時用なのか長い机と5つほどの椅子があった。


 そしてキッチンにはしっかりと手入れのされた包丁、綺麗にされた皿がしまわれた棚があった。


「………変わったキッチンだな」


 俺がいた世界にあったキッチンと似ているが少し違いがあった。

 本来ならコンロがあるはずの場所には何かが描かれた紙が置いてあるだけで、コンロのような物がなかった。


「………ん?ナディアか」


 気配を感じ、後ろを振り返ると起こしてしまったのか眠むそうな目をしているナディアが居た。


「なに……してるの?」


「家を見て回っていただけだ」


「……そう」


「まだ眠むいようだな」


「うん……とても眠い……ジョン?」


「…なんだ?」


「できれば……そばに……居てほしい」


 ふらふらとしているナディアを見てとっさに俺はナディアの体を支えた。


「……危ないぞ」


 ふらふらとしているナディアを抱き上げて寝室に向かう。

 寝室に入ってベッドに寝かせた後、離れようとしたがナディアが腕を掴んできた。


「お願い……離れないで……」


「……椅子に座らせてくれ」


 そう言うと椅子の1つが浮いて近付いてきた。


「……これでいい?」


「……ああ」


 宙に浮いた椅子を手に取ってベッドのそばに置き、椅子に座るとナディアは手を握ってきた。


「お願い……起きるまで……そばに居て」


「………わかった」


「……ありがとう」


 ナディアは目を閉じて、すぐに眠ったが俺の手は離さなかった。

 手を繋いだ状態になったことで自由に動けない俺はどうするかを考えていた。


(ナディアと同じように寝るしかないか)


 そう思い目を閉じた。

 だが手を繋いでいるせいなのか寝ることはできずに目を閉じたまま時間が過ぎていくだけだった。

 結局寝れないまま朝を迎え、俺は少し体が重く感じていた。


「………ん、……ジョン?」


「……起きたか?」


「うん……迷惑だった?」


「……いや、大丈夫だ。少し体が重くなった程度だ」


「……もしかして寝られなかった?」


「……ああ、それよりいつまで繋いでいるつもりだ?」


「できれば……ずっとこのままで居たいな」


「それは困る……」


「ふふ、冗談……でももう少しだけで良いから……繋いでいて?」


「……ハァ」


 俺はため息をついてしばらくナディアと手を繋いだままにしていたが、ナディアが一向に離さなかった。


「……もう十分じゃないのか?」


「うん、ありがとう…」


 ナディアはベッドから起き上がると手をやっと離してくれた。

 ナディアと一緒に昨日と同じように向き合う形で机を挟んで椅子に座る。

 扉が勝手に開きトレーが浮いて部屋の中に入り、机の上に運ばれてきた。

 朝食は昨日のスープとパンだった。


「……ジョン」


「なんだ?」


 朝食を食べているとナディアが口を開いた。


「旅に……興味ある?」


「旅……?……なくも無い」


 旅に興味がないわけでは無いが、旅をするということはあまりしたことがなった。


「そう……じゃあ、一緒に…旅に出ない?」


「どうして急にそんなことを?」


「だって、ここに居て……楽しい?」


「いや、楽しくないが……」


「だったら……旅に出ない?」


「俺とは昨日会ったばかりだろう……」


「……私はジョンと旅がしたい」


「………変わった奴だ」


 ここに居ても何もできないと思った俺はナディアの提案に乗り、一緒に旅の準備をすることになった。


「家にあるものは持っていくのか?」


「一様……全部持って行く」


「全部持っていけるのか?」


「魔法を使えば……大丈夫」


 そう言うとナディアはしゃがみこみ、目を閉じて家の床を触った。

 その瞬間家具の下に光が現れて、その光にゆっくりと家具が沈んで行くようにして入っていった。

 部屋の中はそれほど時間をかけずに何もなくなった。


「これで終わり」


「この部屋の物だけか?」


「ううん、この家の中にあるものも全部」


 本当に家に中にある物が無くなったのか部屋から出て廊下に出てみる。

 すると昨日まではあったはずの物が無くなって、リビングなどもただの広い空間になっていた。


「本当に魔法は便利だな」


「……これで準備はできた。行こう」


 ナディアと一緒に家の外に出た時気になるものが家の影から出ていることに気付いた。


(あれは車か?)


 そう思いナディアに質問する。


「ナディア、あれが何かは知ってるのか?」


「……?、あれは確か……召喚魔法で出てきた物だけど……使い方がわからなくてそのまま置いてある」


 車らしき物に近付くとそこにあったのは白い車だったが俺が知っているような車ではなく、外国の車のようだ。


「もしかして…知ってる?」


「ああ、名前は知らないが……これは動くのか?」


「どうやって動かすのか…知らない」


「そうか、動かすには鍵が必要なんだが…」


 鍵があるかどうか調べるために車に近づいてみる。

 車は普通の車よりも車高が低くく、車内は狭い気がするが運転席と助手席のシート、その後ろにも車内の端から端まで長いシートがあって、頑張れば3人は乗れるくらいにはあった。


「ドアは……ちゃんと開くな」


 右側にある運転席に座ってハンドル周りを見てみると鍵穴にささったままの鍵を見つけ、ドアを開けたまま鍵を回してみる。

 都合よく動けば良い程度の軽い気持ちで回したがエンジンがかかり、静かだった森の中に車の音が響き渡る。


「あまり期待はしていなかったが……エンジンはかかるな」


「……動く?」


「……多分な」


 俺は車の運転席に座り、車を動かしてみる。

 問題なく車は動き、エンジンも不具合がありそうな音もしていない。


「問題ない、あとは道だ」


 だが広い道がなく森の中も走って通り抜けられそうではなかった。


「ナディア、これもしまえるか?」


「うん、できる」


「そうか、それなら頼む」


「…わかった」


 俺は車のエンジンを切って、鍵はそのままにして運転席から出てドアを閉める。

 車から離れると、さっきと同じように車の下に光が現れて車がその中に沈んでいった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

のんびりやっているので遅くなるかも知れませんが次も読んでいただけると嬉しいです。

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