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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第三章 降りかかる災難
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異世界での初仕事

 風呂場の掃除を任された俺とソフィとエルマは3人で風呂場にある汚れを取っていた。


 今回俺達が任された場所は大きな風呂場で夜になると大勢の客で賑わうらしく、夜までにこの風呂場にある汚れを落とさなければならない。


 しかし、あまりの広さに3人ではとても足りず、始めてから1時間は経った気がするが汚れはまだまだ残っていた。


「風呂場の掃除はかなり重労働だな…」


「ごめんなさい、もう一つ手があれば手伝えるんですが…」


「気にしなくて良い、次はそっちに水をかけてくれ」


 エルマは片手だけなのでホースから出る水を汚れにかけてもらい、汚れをソフィと俺でブラシで擦り落としていた。


 しかし、ソフィは段々と疲れてきたのか汚れを落とす速度が遅くなっていった。


「ソフィ、少し休んでいい」


「いえ、大丈夫です…」


「無理をしても良いことはない」


「で、でもそれだとジョンさんが…」


「気にしなくていい、休んでからやった方が良い」


「ソフィさん、ジョンさんの言う通り休んだ方が良いですよ」


「……すみません、では少しだけ休みますね」


 俺とエルマの説得に応じてソフィはまだ濡れていない場所に腰を下ろした。


 俺はそのままエルマと一緒に作業を続けた。

 しばらくはソフィも座って見ていたが休憩をやめて再び作業に加わり、再び3人で風呂場の掃除をした。


 やっと汚れを取りきった頃に女将のイチカが風呂場に入ってきた。


「……上出来です。これなら文句もありません」


 風呂場を軽く見て回ったイチカがそう言った。


「さあ、まだまだやることはあります。次は……玄関の掃除をしましょう」


 どうやら今度は玄関の掃除をするらしい、エルマはともかく俺とソフィは疲れていたが疲れを隠して次の仕事場へ向かうことになった。


「…サヨ、これを」


 俺はイチカからネックレスのような物を渡された。


「これは?」


「それを首から下げると女性の声になります。だから気にせずにお客様に挨拶してください」


「ああ、わかった」


「言葉使いは丁寧に」


「頑張ってみよう」


 どうやらこれを首から下げて客に挨拶して欲しいらしい、それも仕事なのか聞きたかったが今は次の場所に忙しく向かうしかなく、ネックレスを渡されると玄関までに行く間に首から下げると服の中へとしまった。


 玄関まで来ると掃除道具のある部屋から道具を持ってきて箒で埃やゴミを集め、塵取りでゴミを取ると袋に入れる。

 客が来ると一旦手を止めて頭を軽く下げて挨拶をした。


 しばらく掃除をしているとソフィが客に話しかけられていた。


「君見ない顔だね。新しい従業員さんかい?」


「いいえ、アルバイトですよ」


「そうかー、少し残念だなぁ。いつまでここで働いてるかな?」


「まだ来たばかりでいつまでいるかは決まってないんです」


「そうかい、それは嬉しいね。今日は泊まらないけどまた近いうちにまた来るよ」


「はい」


 ソフィが笑顔で中年の男性に手を振って送り、男性も笑顔で手を一瞬だけ上げて離れて行った。


 俺は外に出て雨に濡れないところで掃除をしていたが見るだけで通り過ぎて行く人が大半で一瞬立ち止まってみる奴も居たが気にせず仕事をしていた。


 風呂場よりは楽だが客に挨拶をし、時には目立つところで掃除もすることがある為割と精神がいる仕事だった。


 仕事を終えるとまたイチカが来て仕事を伝えられた。


 今度は食事を運ぶ手伝いをする仕事を頼まれた。

 厨房へ行き、注文の入った部屋へと完成した料理を持っていく仕事だ。

 エルマは片手が無いため、この仕事は任されず、先に俺達の泊まる部屋で休むことになった。

 イチカがエルマを部屋へと案内し、俺とソフィは従業員についていき、厨房へ向かった。

 できた料理を板のようなものに乗せて従業員と一緒に部屋へと向かう、従業員が扉を開けて入ってから俺も入り、料理を運び入れていた。


 その仕事を繰り返していた。


「お料理をお持ちいたしました。入ってもよろしいでしょうか?」


 従業員が部屋に入っていいか確認をする。

 相手の返事はほとんど良いと言うため、この確認をする意味があるのかと思ってしまうがそれがこの店のやり方なのだろう。


「はい、どうぞ」


「失礼します」


 従業員が扉を開けて料理を持って部屋に入って行くのを見て、俺も一緒に入って行く。

 この部屋の客は若い男女2人で注文が多くなかった為、ソフィは付いて来ていない。


「ありがとうございま…す」


 若い男が俺の顔を見て何故か驚いた顔をしていた。

 自分が男だと気付いたのかと思ったがどうやら違うようだった。


「何か?」


「あ、いえ……知り合いに似ていたもので…」


 男は目をそらして明らかに誤魔化しているが俺は気にせず、料理は運び終えた為部屋から出て行き、従業員が扉を閉める。


 料理を運ぶことを繰り返す。

 注文が入ることがなくなった頃にイチカが再び俺とソフィの元へと来た。


「お疲れ様でした。今日の仕事はこれで終わりです。服を着替えてゆっくり休んでください」


「はぁ……とても大変でした…」


「……ゆっくり休むとしよう」


 どうやら今日俺達がやる仕事は終わったようで俺とソフィはロッカールームへと向かった。

 ロッカールームに入ろうとした時、扉の隣に時間表が書かれていた。


「どうしたんですか?」


「……今の時間は女性が先に着替える時間らしい」


「…時間で決まっているんですね」


「ソフィ、急いで着替えた方がいい……後5分だ」


「えぇ!?い、急いで着替えないと!」


 ソフィは慌ててロッカールームに入っていき、俺はロッカールームの外で待つ間、俺はトイレへ行き、ウィッグを外して顔を洗って化粧を落とし、ロッカールームの前に戻った。

 そして時間になり男性従業員が次々とロッカールームへと来た。


 ソフィはギリギリのタイミングで部屋から出てきた。

 そのせいか少しばかり髪が乱れている。


「なんとか間に合いました……」


「部屋でゆっくり休むといい」


「はい……先に部屋に行っていますね」


 ソフィは男性従業員とすれ違うようにしてソフィは部屋へと向かった。


 俺もロッカールームで着替えて出てくるとイチカではない女性が待っていた。


「初めまして、若女将の紅葉と申します。お部屋へ案内いたします」


 クレハと名乗った女性はイチカと同じように頭から角のようなものが生えていた。

 どうして人の頭から角が生えいるのか不思議だったが気にせずにクレハについて行くと誰も居ない部屋へと案内された。


「ここが貴方の泊まるお部屋となっております」


「わかった」


「それでは、今日はお疲れ様でした」


 クレハは廊下を戻って行く際に俺から見えないようにはしていたが鼻を押さえる仕草をしていた。


(血の匂いに気付かれたか?)


 自分ではわからないがこの服は一旦ソフィが洗ってくれたがそれでは落ちていなかったのかもしれない。

 自分の部屋が決まった為、俺は疲れを癒すために風呂場へと向かった。

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