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Unlucky  作者: 碧眼の黒猫
第三章 降りかかる災難
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温泉宿、王宮

 眠気も覚め、俺以外は寝ている馬車の中は馬車が動く音と屋根に雨粒が当たった音を除けば静かだった。


 窓の外を見ていると不思議と心は落ち着き、気分も少しは良くなった。


「もう眠らないんですか?」


 声がした方を向くと見覚えのある女性がいつのまにか座っていた。


「お前は……宿屋に居た」


「ええ、お久しぶりです。ふふ」


 思った通りどうやらあの時、首を折られたあの女で間違いないらしいが確かに死んだはずの女の姿を見て俺は疑問に感じた。


「何故生きているのかと聞きたいような顔をしていますね」


「………幽霊になったか?」


「そうですね、でもなんと説明すればいいのか……実は私、死んでいるのに生きているようなのです」


「意味がわからないな」


「そうですね。自分でもわかりません、なので幽霊でもいいと思いますよ」


「それで、幽霊になって何しに来た」


「特に何かをしに来た訳ではないのですが……強いて言うなら救済でしょうか?」


 そう言うと立ち上がり、俺の前まで来ると俺の肩に触れた。

 女が触った場所は確かに触れている感触があった。


「……本当に幽霊か?」


「言ったはずですよ、死んでいるのに生きているようだと……手を握ってみてください」


 女が手を出して握るように言う、俺はその手を握った。


「……冷たいな」


「そうですね、それが悩みでもありますが……仕方ないことでしょう」


「幽霊は人間の体を通り抜けると聞いていたが……」


「そうですね、しかし、どうやら私は夢の世界の存在らしいので……こうやって触れることができるんです」


「夢の世界?」


「はい、確か死んだ時にそう言われました。神なのか誰なのかはわかりませんでしたが……とにかく私は夢の世界の存在になったらしいですよ?」


 女の言っている夢の世界とは聞いたことがなく、俺は首を傾げた。


「夢の世界がなにかは知らないが……あの時の復讐でもするつもりか?」


「まさか、今の私は救済を目的かつ生き甲斐として動いていますから危害は…絶対とは言いませんが危害を与えるつもりはありませんよ?」


「その救済とはなんだ?」


「それは勿論、困っている方を助けることですよ。主に子供達を救ってあげています」


「信用できないな」


「あの時の私を見ている貴方なら確かにそう思ってしまいますよね……ですが本当ですよ?」


「あの時は狂っていたとでも?」


「ええ、あの時の私は人々を救えず、子供達を守ることができなかったことで狂ってしまった。だからこそ、今やっていることはその罪滅ぼしなのです」


 申し訳ないと言うような顔で言っているが俺は信用せずに女を睨み続けていた。


「今は信用してもらえないでしょう、ですがそのうち信用するようになるでしょう」


「何故そう言い切れる?」


「私の救いを受けた人々が多くなるからです」


「……なるほど」


「さて、そろそろソフィさんが起きる頃でしょうから最後に……私の名前はフリーゼと言います。それではまた夢の中で…ジョンさん。あ、それと服は返してもらいますね」


 フリーゼと名乗った女はそう言い残すと目の前から消え、それと同時にソフィが目を開けた。


「……はっ!ご、ごめんなさい!私、寄りかかって寝てましたか?」


 目を開けると謝罪し、ソフィは自分がどうなっていたのかを聞いてきた。


「ああ、寝ているうちに寄りかかってきた」


「ご、ごめんなさい、眠れませんでしたよね?」


「いや、大丈夫だ。眠れはしたからな」


「そ、そうなんですか…」


 ソフィは顔を赤くして下を向いてしまった。

 その後はずっと黙ったままだったがエルマが起きたことで少し会話をするようになった。


「今から行く街ってどんな感じなんだろう…」


「そうですね、聞いた話によればいい街だと聞いていますが……私もよく知らなくて」


 今向かっている街はソフィも詳しくは知らないらしいが多少は知っているようだ。


「確か……温泉が有名だとか」


「温泉?温泉があるんですか?入ってみたいな〜」


「ふふ、住んでいた街で私も温泉は入ったことはありますが、他の街の温泉がどんなものなのか知らないので是非、入ってみたいですね」


「ここ最近の疲れを癒したいです」


 会話を聞いている限り、温泉とは疲れを癒すことができるようだ。

 温泉が何かは知らないが話を聞いていると気になってくる。

 2人の会話を聞いているとナディアが目を覚ました。


「……そろそろ見えるかな」


 ナディアは起きると窓の外を見たが雨が降っていることで霧もあってとても視界は悪いはずだ。


「……もうそろそろ」


 ナディアは外を見たまま呟き、俺も気になり外を見るとうっすらと壁のようなものが見えてきた。

 外を見ていると段々と近付いていくのがわかり、ついに壁の近くまで来た。


 馬車が一旦止まり、ナディアが降りて行った。


「私達も行った方が良いんでしょうか?」


「いや、門を開けてもらうだけかもしれない」


「なるほど」


 俺の予想を聞いてソフィが納得していると目の前の巨大な扉が開き始めた。

 大きな音と共に扉は開き、ナディアが戻ってきた。


「温泉がある宿で働くけど…何か質問はあるかな?」


 ナディアが働く場所に行く前に質問がないかまだ寝ているブッチャーを除いて俺達全員に聞いてきた。


「そうですね……私は温泉で働いたことがなくてわからないのですが…」


「大丈夫、従業員の人が教えてくれるから」


「金はどのくらい貰える?」


「うーん、良くて5万くらいかな」


 俺が質問すると少し考えた後、ナディアは答えた。


「それって1ヶ月働いてですか?」


 俺の次にエルマが質問する。


「ううん、1週間働いてだよ」


「えぇ!?…ほ、本当ですか?」


 エルマの驚きようを見るに相当良いらしく、ソフィも黙ったままだったが驚いていた。


「うん、本当だけど…良くて5万だからそんなに簡単には貰えないと思う」


「それでも5万ですか……凄いですね」


「正式な従業員になれば結構貰えるらしいよ」


「そうなんですか……ちなみにいくらくらいですか?」


「1週間で大体10万だとか」


「え?1週間で金貨1枚ですか?」


「それぐらい忙しいらしいからね」


 そんな話をしているうちに街の中へと入って行き、馬車はある建物の前で止まった。


「ここは?」


 ソフィがナディアに質問した。


「ここがフレデリカが言ってた場所だと思う」


 王宮と書かれた大きな看板がある建物の前へと俺達は馬車を降りてナディアについて行くようにして入って行った。

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