王の気遣い
俺は選んだライフルを持って眺めていた。
「気に入ったか?」
「ああ、気に入った」
「しかし、M1903を選ぶとはな、もしかしてお前は骨董品の方が好きなのか?」
「そうかもしれないな」
「だがそれだけではまだ不十分だな、仕方ないサービスだ。もう1つくれてやる」
フレデリカは並べられた銃の中から1つの銃を取るとそれを持ってきた。
フレデリカが持ってきた銃はどうやら俺が選んだ銃よりも新しい様だ。
「UMPHCだ」
「UMPHC?良い銃なのか?」
銃にあまり詳しくない俺はフレデリカに銃の事を聞くとフレデリカは笑いながら答えてくれた。
「ああ、良い銃だ。弾は3種類あるがどれも使えるように私が改良したから好きなのを好きな時に使うといい、ここはこんな感じで折り畳むこともできる」
フレデリカは一部の折り畳める部分を折り畳んで見せ、そのまま俺に渡した。
受け取ると軽く、とても取り回しが良く感じた。
「なるほど、確かにいい銃かもしれない」
「そうだろう?ちなみにHCはフレデリカカスタムという意味だ。覚えておくといい」
「ああ、覚えておく」
銃を受け取り、ライフルをテーブルの上に置くとフレデリカは何か考えている様子だった。
「ふむ……まだ何か足りないな」
「……そうだな、できれば収納できるようにしたいが……」
「なるほど、ならバックパックをくれてやる。それとそのガバメントを入れるためのガンホルスターもな」
フレデリカは黒い光からバックパックとホルスターを取り出し、そして何か小さい箱のようなものも出した。
「これは?」
「その箱は弾薬箱だ。弾は無制限に出せて種類も選べる。これで転生者にも少しは歯が立つだろう」
「便利だが敵に奪われたら?」
「その箱は私が渡した相手にしか弾薬を供給しない、お前が渡すなら別だが渡さないのなら他の奴がその箱から弾薬を供給することはできない、心配するな」
「便利だな」
「ハハハ、そうだろう?折角そんな良いものを渡してやるんだ。簡単に死ぬなよ?」
「ああ、気をつけよう」
ホルスターを右の太ももに取り付けてポケットに入れていた銃をホルスターに入れ、UMPのストックを折り畳んでいるとフレデリカがまだ何か言いたいような顔をしていた。
「………ふむ」
「まだ何か?」
「人間とはあっけなく死んでしまうものだ。特に転移者などすぐに殺されてしまうからな、やはりお前にはこれも渡しておこう」
フレデリカはどこから取り出したのかベストと無線機をテーブルの上に置いた。
「これは?」
「アサルトライフル程度なら防げる防弾ベストだ。着てみるといい、軽いからそれほど気にならないはずだ」
フレデリカの言った通り、ベストを着てみると軽く、重さは気にならない程度しかない。
「……心配性だね、フレデリカ」
1人菓子を食べて、何も喋らないで見ていたナディアが口を開いた。
「そうか?だがこれぐらいはしないとな」
「心配なんだね、ジョンのことが」
「当たり前だ。簡単に死なれては私の銃が無駄になってしまうからな」
俺はナディアとフレデリカが会話をしている間にバックパックに箱や無線機、ストックを折り畳んだUMPを入れた。
「他に欲しい武器や兵器があれば、その無線機を使うといい、なんでも送ってやろう」
「そこまでするのか?」
「ああ、私がそこまでしたいからな、これが武器と兵器のリストだ」
フレデリカはまたどこからか2冊の本を出した。
どうやら武器と兵器で分かれていて、どっちも分厚い本だ。
後で見ることにして本はバックパックの中に入れていると使用人が扉をノックして入ってきた。
「フレデリカ様、失礼いたします。連合軍が我が国の前線を突破し、こちらへ進行中とのことです」
「そうか、わかった。全く良く諦めずに攻めてくるものだな」
フレデリカはそう言いながらも少し笑っているように見えた。
「戦争をしているのか?」
「ああ、相手が勝手に仕掛けてくるだけなのだが相手をしてやらなければ国民が危ないからな」
「俺達は街を出た方がいいか?」
「ふむ……そうだな、今日中には出て行ってもらうとしよう、奴らは足が速い、始まってからではお前達を守り切れないこともあるだろう」
「そうか、わかった」
「じゃあ、馬車に戻ろう…ジョン」
「ああ」
俺は椅子から立ち上がり、ナディアは菓子を食べるのをやめて俺より先に椅子から立ち上がって出口へ歩き始めた。
「すまないな、平和になったらまた来るといい」
「機会があればな」
「ああ、それで良い」
俺とナディアは城から出て馬車へと戻った。
「おかえりなさい2人とも」
「戻ってきましたか」
「ああ」
「……街をすぐに出る」
ナディアはすぐに馬車を走らせて、街から出るために門へと馬車を走らせる。
「えっ?夜にお仕事を探すんじゃ…」
「戦争をするらしい」
「せ、戦争ですか?噂にはなっていましたが…」
「どこへ向かう?」
「義手を作ってるところを目指そう、遠いけど……この馬車なら3週間あれば行けると思う」
「そんなに遠いのか?」
「うん」
「そうか、わかった」
俺達は国の戦争に巻き込まれることを避けるためにフレデリカの街を出て義手を作っているという街に向けて出発した。
街から出てまだそんなに時間は経っていないが来た時と同じように濃い霧が出てきた。
街にいた時は曇りではなかったはずだが何故か空は曇り、周りは霧になっていた。
「……霧」
エルマは窓から外を見て小さく呟いた。
恐らくあの村で起こったことを思い出しているのだろうと思い、俺はエルマには声をかけずに他の仲間を見るとブッチャーは寝ているがソフィは何かを読んでいた。
見られていることに気付いたのかソフィが本から目を離してこっちを向いた。
「気になりますか?」
「何を読んでいる?」
「自分の身を守るための体術入門編です」
本を見るとこの世界の字ではない文字で書いてある本のようだった。
「ナディアから貰ったのか」
「どうしてわかったんですか?」
「それは俺の居た世界のものだろう、そんな物を持っているのはナディアくらいだ」
「確かにそうですね」
「本か…」
俺はバックパックから本を2冊取り出し、武器の本を開いて中身を見始めた。
「それはなんですか?」
「これか?武器の本だ。ソフィも武器を持った方がいいと思うが……」
「そ、そうですね、これからは自分の身を守るためにも持っておいた方が良いかもしれませんね」
「ならこれを見るといい、何か欲しい武器があれば俺が無線機で頼んで運んでもらう」
「そんなことができるんですか?」
「ああ、フレデリカがそう言っていた」
「王様が……わかりました。じゃあお借りしますね」
ソフィに武器の本を渡すと早速本を開いて興味深そうに本を見ていた。
しばらくソフィは見続けていたが見ている限りだと全部読み終わらない限りは決まらない様子だった。
俺は兵器の本を取り出して本を見てソフィが決まるまで待つことにした。